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謎のウエストポーチ

基本的に過去作の登場人物は出ない予定です。


国王妃だって?この人…何者?


「嫁、落ち着いて話そう。先ずは靴を脱いでソファに座れ。」


バーガーを咀嚼して口をモゴモゴ言わせてはいるが、言っていることは正論な元旦那…。


私は玄関で靴を脱ぐとソファに座った。海斗先輩もザックも靴を脱いで同じくソファに座った。


「ザック、麻里香に俺の知っている君のことを話しても大丈夫か?」


海斗先輩がそう聞くと、ザックは一瞬思案したようだが頷いた。その後海斗先輩はザックの正体を明かしてくれた。


「ナジャガル皇国…。知っているか?グローデンデの森を挟んだ向こう側だ。森の中を通過しない方法なら数十カ国の国を横断しなければ行きつけない遠方の地域だ。」


昔の記憶を呼び起こして世界地図を思い描くが自分の住んでいたモッテガタードの周辺国の国名しか思い出せない。


「あ、地図がありますよ。」


えっなに?と、思った私の前にザックが腰のウエストポーチから、B5サイズくらいの冊子を取り出してきた。あれ?B5サイズだよね。ザックの腰のウエストポーチを見る。明らかに容量オーバーだ。むむ?


ザックはそのB5の冊子を広げていった。なるほど、折り畳み様式の地図か~。テーブルの上に広げた地図は…私の知らない言葉で地名が書かれている。だが絵で何となく分かる。


「これがグローデンデの森です。こちらがコスデスタ公国…この国は分かりますか?」


うん、コスデスタ公国は知っている、圧政が酷くてモッテガタードにもごくまれだが難民がやってくることがあった。ザックは指でコスデスタ公国からグローデンデの森の反対側の国を順に指差して行った。


指差している地図を見ながら海斗先輩が説明を続けた。


「ザックは元々カステカート王国の出身だ、そしてナジャガル皇国に籍を置いている。一応軍属だ。」


「ナジャガル皇国…軍属っ軍人ですか!」


魔術師じゃないけど、軍人だったんだ!ザックは少し照れている…。照れ顔も破壊力満点だ。


「ザックは子供の時に、異界の迷い子の伝手を頼ってシュアリリス学園の初等部に短期留学という名目でこちらに来ていたんだ。」


「シュアリリス学園?!いっ異界の迷い子様はナジャガル皇国にいらっしゃるのですか?!」


つまりはこの世界からあちらの世界に転生や転移した人のことを『異界の迷い子』と総じてそう呼ぶのだったよね?モッテガタードに異界の迷い子は現れたことはなかったけど…うわぁ~今考えると、私と海斗先輩の逆バージョンだよね。


海斗先輩とザックから色々と告げられる情報が多すぎて、頭がパニックになる…。え~とつまりザックは異世界人で、ナジャガル皇国から異世界からこっちに来ていて…来ていて?んん?来ているのよね?どうやって来たの?


私は恐る恐る手を挙げた。


「何だ、嫁。」


「ザックはどうやってこちらの世界に来られたのですか?」


海斗先輩とザックは揃ってキョトンとした後、顔を見合わせた。


「言っても構わんか?」


「あ…僕は大丈夫ですが、一応国王陛下にお伺いを立ててきます。」


もしかして…何か国家絡みのプロジェクトなの?聞いちゃって大丈夫なのかな…と若干ビクビクしているとザックは玄関から普通に


「また来ます~。」


と言って帰って行った。あれ、何だったんだ?ジーッと海斗先輩を睨む。


「つまりだな…ザックがシュアリリス学園の初等部に来た時に、あいつのとんでもない魔力に気が付いて声をかけたんだ。その時に俺の素性はザックに話してあるんだ。それになぁ今はあんなにデカくなって可愛げも喪失しているが、昔はザックも可愛らしくてな~こちらに聞かれるままに色々と異世界…ナジャガル皇国のことなどを教えてくれたんだ。どうやら俺や麻里香が死んだ後、こちらの世界に来ている間にあちらでは勇者の剣の召喚が行われて魔の眷属が随分と減ったらしい。」


「勇者の剣?!そうか…異界の迷い子…異界の乙女を召喚されたのですね!」


勇者の剣ってもはや伝説の域に入っている存在じゃない。実在したんだ!それにしても私が亡くなった後に色々世界が変わったんだね。まさに激動の時代!見てみたかったぁ。


海斗先輩は大きく頷いた。


「ザックはその異界の乙女達の助力でこちらで暫く生活をしてみてどうやら気に入ったらしく、高等部から正式に入学することにしたらしい。」


何だかすごいね。異世界人で高校生。あれ?私達もそういう意味でも凄いのか?


「それに…麻里香を期待させてもいけないか、と黙っていたのだがザックの異世界からの移動方法ならこちらからも異世界に渡れるらしいんだ。」


異世界に渡れる?それって…。


「向こう…の世界に行ける……ということですか?」


声が震えている。海斗先輩の頷いた顔を見て、視界が霞む。ザイードに会える?私が亡くなった後の世界の様子を確認出来る!怖い反面、感動と興奮で胸が締め付けられる。


「麻里香、何度も言うが期待半分にしておいてくれ。異界間転移は高位魔法の中でも最高位魔法だ。そう簡単なことじゃない。」


「は、はい…。」


そうだよね、召喚魔法はものすごく魔力を使う魔法だったはず、確かモッテガタードでも数度試したけど失敗ばかりだったと聞いたことがあるもの。


そうして2月の下旬…シュアリリス学園にて


放課後下校時刻に窓際に集まって女子達が何やら騒いでいた。その輪の中にいた萌ちゃんが廊下の掃除を終えて帰ってきた私に走り寄って来た。


「ま…麻里ちゃん!大変っ大変だよ!門の所に…ロ…ロウ様がいるんだよー!」


門の所?ロウ様…ロウ様が居る?確か…。


私は窓からシュアリリス学園高等部の門の辺りを見た。………二次元様が女子に囲まれていた。


「サイストリアの機甲剣士の蒼竜のロウヘイザー様だよっ!」


萌ちゃんのキャピッとした声を最後まで聞く前に廊下に走り出ていた。私が外に出た時にはすでに、二次元様の周りには女子も男子も群がっていた。


ただ周りで騒いではいるが誰も二次元様に近づかない…二次元様、ザックの周りで彼を遠巻きに見ている、理由は簡単だ。ザックの顔が半端なく怖えぇぇぇ…!


嘘でしょ?前ザックに会った時はあんなに朗らかな顔だったのに、今は人1人殺してきたかのような…物凄い殺し屋顔だ。綺麗だけど怖えよぉぉぉ!


「ザック!」


私がそう声をかけるとザックの表情が一変した。先日会った朗らかな優しい笑顔に変わった。周りの女子が悲鳴を上げる。


「麻里香先輩、すみません。海斗先輩はいらっしゃいますか?携帯に連絡をしたら『門で暫く待て』と言われたので…。」


うおっ!何だと?こんな所で二次元様を待たせるなんてぇ!悪目立ちしているじゃないかっ。


「ま、麻里ちゃん!麻里ちゃん!そ…ロ……彼はお知り合い?!」


ぜーはーぜーはーと息を切らした萌ちゃんが私の後ろに走り込んで来てめっちゃ興奮している。気持ちは分かる!萌ちゃん落ち着け!


「え~と海斗先輩のお知り合いなんだよ?初等部に…。」


と私が萌ちゃんにザックの説明を言いかけた時に


「うぇーい!ザック!」


「あ、マジで来てる!久しぶり~!」


な、何だ?数人の男の子が(中等部の制服だ)軽やかに走り寄って来るとザックの周りに群がった。ザックはその子達が来ると、それはそれは嬉しそうに顔を綻ばせている。そのザックの顔を見て益々女子が悲鳴を上げる。


「お~!何だ、皆!固まって無いで早く帰宅しろよ。」


とか言いながら吞気に待ち人の海斗先輩が現れ、そう女子達を促したので女子達は渋々、その場を後にして行く。


「あ、海斗先輩。」


ザックが5,6人の男の子達の輪の中から声をかけた。海斗先輩は手を挙げてその男の子達を交えて何か話をしている。


「麻里ちゃんっ!」


凄い形相の萌ちゃんにがっつり肩を掴まれてにじり寄られた。分かったよ~ザックの正体を話すから~。


「あの子、昔シュアリリス学園の初等部に短期留学してたみたいだよ?海斗先輩の知り合いだって。4月から高等部に入学するんだって。」


「マジでぇぇ?!やったぁ!」


私の後ろで帰らずに粘っていた女子達が、私達の話を聞いて色めき立った。うん、騒ぎたい気持ちも分かる。ただね…今喋っている男子の輪に果敢にも女子が近付こうとしたら、ザックがさっきの怖いー目で睨んでくるんだよぅ。威嚇するな!


しかしザックは女子が嫌いなのかな?……はっ!もしかしてザックは今、流行りの腐の世界の住人なのか?!


すると、ザックの一番近くにいる茶髪の男の子が苦笑いしながら


「お前~まだ女子を警戒してんのかよ?大丈夫だって、もうお前の方がデカイし怖くないだろ?」


と、言った。ザックはその茶髪の彼の方を見て舌打ちしている。二次元が舌打ち…いや、別にいいんだけど。


何となく私と萌ちゃんが少し近づいたら、海斗先輩が困ったような顔をして私を顧みた。


「今はこんなにデカいがな~昔のザックは可愛らしい美少年でなぁ~それはそれは年上の女生徒から可愛い可愛いと愛でられて…。」


「頭を撫でられるだけなら全然平気だ。夜に部屋に忍び込まれるよりマシ。」


ザックの言い放った言葉に男子達は息を飲んだ。周りに居た男子達が一斉にザックに抱き付いていた。女子の絶叫が響く。


「よく耐えた!」


「辛かったなぁ!」


ザックは顔を赤らめて男子達に抱き付かれている。うん、なんと美しい光景か。しかし今は一番背が高くなっているね…皆がザックに飛びついて縋り付いているみたいになっているよ。


という訳で、ザックは中等部の男子達に連れられてどこかに遊びに行ってしまった。萌ちゃんと腐女子?の皆様方がシュアリリス学園の門前で大騒ぎである。


空前のロウ様祭り状態だ。どうやらザック君と戯れる男子達の写真や動画を撮っていた猛者もいたようで、SNSに載せようとしていたのを後から来たラオウ(旭谷先輩)に見付かって怒られて削除させられていた。


海斗先輩と私はその騒ぎを少し離れた所で見ていた。


「ロウ様って何だ?」


「これです。」


私は検索したアニメの公式サイトの画面を海斗先輩に見せた。


「サイストリアの機甲剣士の蒼竜のロウヘイザー…アニメか。なるほど、確かに髪色と目の色そしてさっきのオラついた感じがザックに似ているな。剣士なのは間違いないしな。」


「そうですね~。」


この時は実感がなかったのだが、後にザックヘイム=デッケルハインが凄い魔法剣士だということが分かる事件が起こったのだった。

サイストリアの機甲剣士の蒼竜のロウヘイザー!すみません、調子に乗ってます…^^;

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