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幼女と国王

「麻里香ソレは…まずいんじゃないか?」


「やっぱりそう思います?」


私は海斗先輩を見上げた。海斗先輩は渋い顔をして私を…そしてザイードを見詰めていた。


「ザイード陛下…ごめんね。嬉しい気持ちは分かるんだけど、流石に()()()()()()()は倫理的な観点から問題ありだと思うわ。」


そう…私は今、自分の息子に膝抱っこをされています。いくらね、ザイードの嫁(国王妃)がニコニコしながら私達のことを見ていたとしても限りなくアウトだと思うんだ。それにさ傍目から見ると、50代のおっさんが幼女を膝に乗せてニコニコしているのは立派な変態様の光景だと思うんだ。


「どうして?異世界人の風貌の母上は可愛いね、実に可愛いね。」


「こらっ!聞きようによっては、父親の変態度を上回るど変態な発言と取られてしまうでしょう!どう見てもエロじじいと幼女の図になるからいい加減、降ろしなさい!」


「自分で幼女って言っちゃってる…。」


「ナキートお爺は一々揚げ足取りをするなっ!」


私は、残念そうな顔のザイードの膝の上から降り立つと、対面のソファに移動した。因みに、ザイードの横に座っている海斗先輩の両脇には美しい美女…孫娘達が(はべ)っている。


「いや~流石、私の孫ねぇ~私の良い所全部生き写しで~いや~流石、私の遺伝子だわぁ。」


「やだっお婆様っ!そうだわっ私、髪がとても綺麗ね~マリアティナ様もお美しかったわ!ってご婦人方に褒められてますの!お婆様に似てて良かった!」


キャピッと笑いながら…孫娘、つまりは16才のソエイド君の母親が微笑んだ。まあ、こっちじゃ10代に結婚して子供を産むのが平均的だからね。親だって30代だもんね。若いわ…。


私と海斗先輩は今は休憩中だけど、隣の会議室ではモッテガタード王国とカステカート王国の国交樹立の調印式が行われている。因みに、調印式はザイードの息子、長男の王太子殿下が出席している。


そうそうザイードは近々退位する予定だそうだ。だって18才から国王でしょ?このド変態がすぐ退位するから若いのに大変だったわね。


「あ、そうだ!忘れそうだった。ザイード陛下これね。作ってきたのよ。」


私は、レデスヨジゲンポッケの中から保存容器に入れたブツを取り出した。使い捨てのフォークと紙の皿も出してきた。


「母上これは…もしかして異世界の食品ですか?!」


ザイードが目を輝かせた。私は『ジャガイモとベーコンの甘辛炒め』と『ツナとわさび和え』『豚肉ピリ辛炒め』の辛いもの(おつまみ系)をテーブルの上に出した。


ザイードが毒見もしないでおかずを食べ始めた。後ろで侍従達が慌ててる。ザイードは一口食べて悶絶している。侍従が益々慌てている。毒に当たったんじゃないと思う…よ?


「お…いぃしいです。甘辛くて堪らない…。」


「お父様~私も欲しいわ!」


興味津々の孫娘2人にも取り皿を渡して皆で私の手料理を食べた。娘達も顔を輝かせた。


「う~ん何これ?!甘味の中にピリッときて~。」


「それワサビという山菜なのよ。」


「おおっワサビが入っているのか!さすが麻里香!」


皆で食べていると、調印式を終えた孫達やヴェルヘイム様達も戻って来て…試食会になった。おおっといけない!ヴェルヘイム様に作ってきた、おはぎもあげなきゃ…とポッケからおはぎの入った保存容器を取り出し、ヴェルヘイム様に差し出した瞬間、ものすごい魔圧を上げた魔王にひったくられた。


その魔圧ヤメロ!一瞬皆が魔王に攻撃されるんじゃないかと身構えただろうがっ!


今回ヴェルヘイム様達、カステカート王国と交易を始めるにあたり、モッテガタード王国にも世界各地に繋いだ転移門の設置とカデリーナさんの経営するショップ『ユタカンテ商会』の支店をモッテガタードに開店することになったらしい。


その設置に関しては、リューヘイム君とアルクリーダ殿下のプロモーション活動が功を奏した…とザックが言っていた。


その日の夜


私達の歓迎の晩餐会が行われた。私は孫やら曾孫に取り囲まれていた。


マリアティナが幼女に転生?という噂を聞きつけて、親戚一同の注目が集まっていたようだが、小柄だが16才だ!と力説したら何とか納得してくれたみたいだった。そして、マリ婆様、可愛い可愛い!と曾孫達に引っ張りだこでダンスを踊らされた。


ダンスは止めろ!盆踊りになるんだよっ!この体は躍動感と反射神経が著しく欠損しているんだ!とここでも力説しておいた。またも曾孫達にバカ受けだ。どうなっている?私は珍獣か?


篠崎 麻里香的には基礎体力はあるほうだけど、なけなしのリズム感を研ぎ澄まさなければならなかったので、一通り曾孫達と踊り終わると精神的に疲弊し、ヨロヨロしながら会場の隅に設置してある長椅子に腰かけた。ザックとソエイド君がヨロヨロの私の体を支えてくれる。どうやら2人共同い年同士なので、すぐに仲良くなったみたい。


「マリ婆様、はい果実水。」


「ありがとぉぉ…しばらく踊りはいいわ…。」


ソエイド君から果実水を貰うと、喉を潤した。そんな私の横で力説するイケメン孫が居る…。


「お爺様!私も異世界にお邪魔してみたいのですが…。」


そう言って熱心に海斗先輩に言っていたのはザイードの息子、次男の第二王子殿下のレナードだ。外見はマリアティナとナキートのどちらの特徴も合わせ持っている良い所取りの風貌なのだが、彼は魔力量が半端ないらしい。確かにすごい魔力を感じる。魔王には負けるけど…。


何故、レナードが叫んでいるかと言えば…このモッテガタードの近隣に魔獣や魔物が大量発生する森や谷は無い。その力を揮おうにもその対象がいないという訳だ。勿論最近は世情も落ち着ているし、外国と戦争なんてものもない。


レナードは魔力を持て余しているのだろう。それを異世界に求めている。


「しかしだなー異世界に行ってもお前が望むような力を揮う…あ~魔物がいるか……~確かにいたな。」


私も海斗先輩も思い出していた。そうだ魔人が出たんだった…。そう考えると犬や猫だって魔に憑かれたら「魔物」化する危険性もある。そういう案件は今の所ザックが適任だけど、彼は学生だ、学業優先!だったらすでにアラサーのレナードが適任なのか?


海斗先輩は暫く唸っていたが、深く考えることを放棄したのだろう。


「ナキート陛下やクロード王太子殿下が許可をされたら構わないよ~。」


と、簡単に子供達に丸投げしちゃったけど、そんなこと言って大丈夫なの?


取り敢えずゴールデンウイーク期間内にあちらに帰ることを前提に、モッテガタードで決める条約などを海斗先輩と捌いて行く。この辺りは段々昔のコツを思い出して来ていた。


「いや~麻里香が使える嫁だったことを再認識したな!」


「そーでございますか…。」


いよいよ明日ナジャガルに帰る。帰りはヴェルヘイム様とザックが転移魔法でナジャガルまで一気に連れて帰ってくれるらしい。魔王兄弟は魔力が桁違いだね。


転移魔法は術者の記憶に無い場所に飛べないので、行きは転移門を使って移動したので時間はかかったが、あれはあれで旅行みたいで楽しかったな。


ナジャガルでも今回の特使のご報告もしなければいけないので、イエーイ異世界だぜーと、遊んでいる暇は無い。


という訳で、ゴールデンウイークぎりぎりまでかかってなんとかモッテガタードとナジャガルの仕事を片付けて帰って来た。


「ただいま~。」


さり気なく、出かけていて戻って来た風を装って玄関から帰って来た。


「マリ姉おかえり~!」


夏鈴が走って玄関まで出て来た。


「ザックのお家どんなのだった?」


「大~きな大~きな洋館だったよ!」


ナジャガル皇国の皇宮だ。洋館には違いあるまい。


彩香もリビングから飛び出して来たので、お土産のユタカンテ商会製の石鹸を渡した。


取り敢えず私はゴールデンウイーク中はザックの実家に遊びに行っていることになっている。偽装工作で国や地域を特定されないように極力、室内とか森とかで写真を撮ってきていた。


デジカメを悠真に渡すと、リビングに入って…来客が来ていた。


「名取さ…じゃなかったっ下島さん!」


まだ新婚さんの旧姓名取さん…現在下島さんが、ソファに座っていた。


「麻里香ちゃん、お邪魔してます。」


あ、あれ~新婚さんのはずの下島夫人の魔質が…暗い。何だか元気が無いみたい。


「麻里香、マサ君から何か聞いている?」


「ん?何が?」


由佳ママと下島夫人が顔を見合わせている。どうしたの?


取り敢えず荷物を自室に置いて戻って来ると、ママ達はキャアキャア言いながら写真を見ていた。


「この人ザック君のお兄様でしょう?格好いいわねー!この金髪の子達は?」


「ザックの従兄弟なの~もう大変だったんだよ。言葉が通じないし、お土産買うのも一苦労!」


「英語もダメだったの?」


「う…ぉ…うん、まあね。」


英語じゃなくてカステカート語だ!とはとても言えない…。


今ちょうど、由佳ママと下島夫人が覗き込んで見ている画像は、モッテガタードの皆と撮った時のものだ。


「やだぁ!これなぁに?!皆さんドレスとか着ているわ!」


「ちょうど舞踏会みたいなのしてたんだ~。ザックのお父様の伝手で飛び入りで参加させてもらったの!」


ドレス姿の貴婦人やお兄様達…正体は自分の孫や曾孫達との集合写真はそういう方向で説明しよう…と海斗先輩達と決めてある。


「素敵っ!いいなぁ~舞踏会!」


「夢があるわねぇ!」


下島夫人と由佳ママから歓声を浴びる。そして下島夫人がある人物を見た時に顔色を変えた、喜色の方に…。


「っ!これ…ちょっ…麻里香ちゃん?!ちょっと!この人…!」


先程とは打って変わって魔質が光り輝く下島夫人。今度はどうしたんだろう?指し示された画像を見る。


モッテガタードの息子、ザイード現国王陛下の子供達を撮った写真だ。え~と、一応私の孫の男三人、右から王太子殿下、第二王子殿下、第三王子殿下、それが何か?


「サイストリアの機甲剣士の銀竜のゼフェリーガ!」


「んぇ?」


下島夫人は立ち上がった。あれ…こういう雰囲気と興奮度の人達…最近見たことあるぞ?


「この人っゼフェ様にそっくりじゃないっ!素敵ぃぃぃ!」


この人…と下島夫人がプルプル震える指でさしているのは、第ニ王子のレナードだった。私のオババ目線で見ても兄弟の中で一番イケメン王子だ。


それよりも何よりも、旧姓名取さん現下島夫人が、前田 萌ちゃんと同じアニオタ様だとは知らなんだ。


どうしよう…そのゼフェ様がお隣に越して来るかもしれないのですが…。


それにそこにはすでにザックことサイストリアの機甲剣士の蒼竜のロウヘイザー様もお住まいなのですが?下島夫人はザックヘイム=デッケルハインの写真も見付けて、「ロウ様もいる!尊いっ!」っ!とか叫んでいるけど…どうしよう。


その噂の2人が同じ屋根の下に同棲(同居)するかもしれないなんて…腐の住人達が喜んでしまうよね。


もっと怖いことに気が付いたよ。もしかしたら、うちの隣がロウ様とゼフェ様の愛の巣(仮)だとバレたら、そういう住人の方々が聖地巡礼とかで押し寄せて来てここが観光地になったりするんじゃないだろうか…。


海斗先輩に相談しよう…。


サイストリアの機甲剣士の銀竜のゼフェリーガ!調子に乗ってスミマセン…。

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