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チビッ子枠

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「モッテガタードは一年中暑い国ですか?」


「いいえ、寒い季節もあります。」


私の答えを聞いてシューテさんは満足げに微笑まれる。この近衛のキリッとしたお兄様、見た目クールっぽいんだけど、凄く面倒見が良いんだよね。どうも私は、チビッ子枠に入れられているみたいでお兄様にずっと心配そうに見詰められて、事あるごとに手伝われる。道すがらのリスニングの勉強まで見てくれる。


私もう子供じゃありません!と言っても優し気に微笑まれるだけだ。その笑顔に弱い…。


今は、クラバッハの最南端の転移門の前で待機中だ。ここまではナジャガル皇国→ガンデンタッテ王国→クラバッハ王国の各地方の転移門を潜り抜けて、順調に移動出来ている。クラバッハから南へは…。


そうだ、私は肩にかけたショルダーバッグを見下ろした。


うへへ…私も『ヨジゲンポッケ』買ってもらったんだぁ〜!ナッシュルアン陛下ありがとう〜!


ポッケいいなぁ!いいなぁ!って言ってたらベビーピンク色のレデスヨジゲンポッケがプレゼントされた!


え?パパ活みたいだって?オホホ…。


早速、プレゼントしてもらったレデスヨジゲンポッケの中をゴソゴソ…。ザックから借りた世界地図をポッケの中に入れてるんだ。


「え~とシメリアン共和国とカーカイト国でナフガラン帝国…そしてモッテガタード王国ですね。」


思わず顔を上げてシューテさんの同意を求めてしまう。


「はい、正解です。」


ぐへへ、にっこり笑顔頂きました。


「ここからは国交の無い国が続く…。ナジャガル皇国とカステカート王国の王の紹介状もあるが気を抜くな。」


「御意!」


ぐへへ、御意!て私もどさくさで皆と一緒に叫んでみた。ヴェルヘイム様の号令がカッコ良くて一回言ってみたかったんだよね。


それにしても噂?のクリぼっち王弟殿下…アルクリーダ殿下。もうアラサー何だけど、見た目は全然おっさんじゃないんだよね。キラキラ…。でもね、余計なことを言うおっさんだね。初めてお会いした時に淑女の礼をした私を見て…こう言ったんだ。


「ほぉ~異世界転生で…これはまた面妖な。ん?あなたはまだ幼児かな?」


「……。」


何だろうか…シューテお兄さんに心配されているのと違ってあからさまにイラつくのは私の気のせいか?


そんなアルクリーダ殿下の腕をレオンヘイム君が引っ張っている。


「伯父上!いけませんよ、マリちゃんはこう見えて16才ですよ。」


「おいっこらっ!こう見えてってどういう意味だぁ?!ああん?」


「……麻里香先輩、もう十分カステカート語、喋れてるみたいだね。」


ザックに溜め息と共に見詰められる。ウフン~とウインクをザックに返してみたら、それを見た海斗先輩に腹を抱えて笑われた……。この変態めっ転移中に別の国に落っこちてしまえ!


『…っ!…k……Shi。』


クラバッハの役人の人が美鈴さんに声をかけている。さすが美鈴さんはそれに淀みなく答えている。


「準備が出来たって、まずはシメリアンよ!」


美鈴さんも結構威勢のいいお姉様なんだよね…聞けばジャックスさんとご結婚してナジャガル皇国に来るまでは、某食品会社の営業事務をされていたそうだ。


その美鈴さんの営業スキルが遺憾なく発揮されている!転移門のゲートを素早く地図で探し無駄なく移動!素晴らしい!そうそう最初は恐々だった転移門での移動だけど、何回もしていると慣れて来る。おまけに現地に着いた早々、皆さんが術で高速移動で連れて行ってくれるので…楽である。


「いよいよ近付いて来たな。」


海斗先輩が私の横に立った。後半分の距離だがまず一日目のお泊りだ。美鈴さんが本日の宿の手配をしてくれている。美鈴さんは宿泊先の説明をしている。まるで班別け作業のようだ。


「え~と、この先のシスの止まり木亭は、カステカート王国の皆様の宿泊先です。シュテイントハラル神聖国の皆様方は宿屋アスロイテでございます。ナジャガル皇国の異世界人チームはゴンゴロドの夢亭を、私達とザックとメイドの2人はシシリサ屋に泊まります。以上、ご質問のある方は?」


皆様、美鈴さんの指示に従います。無駄口は叩きません。国によって通貨貨幣が違うという事なので、美鈴さんは宝石を換金して現金化しているのだが、そのお金をお小遣いとして各人に渡している。お土産買う時間は明日作りますからね!と言いつつ…アルクリーダ殿下にも渡している。それにしても美鈴さんの準備が良すぎる。え?全部葵妃の指示?流石です、葵お姉様。(おば様と言っちゃいけない)


「宿代は今から私が宿泊先に付いて行って支払いを済ませますから、まずはアルクリーダ殿下~こちらで~す!」


添乗員、美鈴さんが引率してアルクリーダ殿下方を連れて行った。


「ミスズとジャックスが戻るまでここで待機。」


「御意!」


ぐふふふ、最近ヴェルヘイム様の指示が出そうなタイミングが分かってきたよ。御意クル?と思ってニヤニヤしながら構えてしまう。


「これで半分ってこの世界も大きいですね。」


私が隣に立つ海斗先輩を見上げると、そーだ!と海斗先輩が私を見た。急に日本語で話しかけてきたので私も日本語で返した。


「お~知ってるか?ヒルデ先生な、この世界の宇宙…大気圏辺りまで移動してこの星を見てみたことあるんだって。」


「ええっ?!ヒルデ先生すごい!」


そう言えばヒルデ=ナンシレータ先生は、ナジャガル皇国で女性で一番強いんだって。しかもコスデスタ公国では国一番の強さだったみたい……。絶対怒らせるな、と何故だかご主人のルル様に言われたことがあるんだけど、もしかしてルル様、怒ったヒルデ先生に大気圏突破するほど殴り飛ばされたことあるのかな?


「この世界、星ってどんな感じだったのですか?」


科学だ!地学か?凄い流石、ヒルデ先生!多分疑問に思ったから調べに宇宙まで飛んでみたんだよね。


「ほぼ地球と見た目は一緒だと言っていた。大気圏に出ると引力で引かれる感じがするのと、球体であるので星のマントルも同じくあるのだろう。そして魔力が星の空気の層の下に同じく魔力層として薄い膜を張っていたそうだ。そして星から離れると、どんどん魔力が使えなくなるそうだ。つまりだな、この星から離れると魔法は使えなくなるし、大気圏を普通に出ると真空状態になりそうだったので慌てて帰って来たらしい。」


それは怖い…ということは、私達の世界の地球も同じ構造だとすると、私達みたいな魔法使いは他の惑星には不便過ぎて住めないね。まあ月や火星に移住なんて出来るご身分ではございませんが…。


本日のお宿、ゴンゴロドの夢亭に着いた。美鈴さんが宿代を先払いしてから、お店の人に何か聞いたりしてメモを取っている。


そして、宿屋の女将さんとこちらにやって来た。


「今から部屋に案内してくれるそうよ。明日の朝食は価格が一律でその緑色の紙幣一枚です。要らない人は頼まなくても構いませんのでご自由に。明日の集合場所はシスの止まり木亭の前の広場に9刻。その後お土産が欲しい人は市場でお店を周ります。行かない方も13刻に再び広場に集合でお願いします。」


すごい…完璧に添乗員さんだ。説明もスムーズです。


「これ麻里香ちゃんに渡しておくわね。」


美鈴さんは先程書いていたメモを私にくれた。何だろう…メモを見たら何語なんだろうか…。


「これはね、シメリアン語ね。『私はマリカです。道に迷いました。広場はどこですか?』さっき宿屋のおばさまに聞いたから大丈夫だよ。明日迷子になったら道を歩く人にこのカード見せてね。」


ま、迷子カードだった!くぅぅ…嬉しいけどやっぱり美鈴さんからもちびっ子扱いだったぁ!


「ドチビで悪かったなぁぁぁ!」


美鈴さん達がいなくなった後、宿屋の部屋の窓を開けて叫んでいたら、隣の部屋から窓を開けて海斗先輩が顔を出して


「幻術で背を高くして見せてやろうか?」


とニヤニヤしながら聞いてきた。そんな後から絶望を与えるような嫌がらせいるかっ!


と、吞気にしていたが…ナフガラン帝国に着いた早々関所を抜けたすぐ後に、なんとナフガラン帝国軍に取り囲まれてしまったんだよぉぉ…!


ま、周りの魔王とか魔王の弟とか、魔王の子供とかがすんごいすんごーーい魔圧をあげて、ナフガラン帝国軍にオラつくから、こんな街へ向かう山道で戦闘が行われるのかと緊張が走る。


…初?異世界に来てからの血生臭い展開だーとドキドキしていたら……どうやら違ったみたい。


私達を取り囲む軍人さん達の囲いが解けて、めっちゃヨボヨボの杖を突いたおじいちゃまが現れたけど、私はすぐ気が付いた。


「ビュワンテ殿下!」


私がそう叫ぶと、海斗先輩がびっくりしたような表情をしてから、すぐに膝を突かれたので私も腰を落とした。


「はは…いやいや~どうやら界渡りの術式上手くいったみたいだね。」


と、当時はアイスブルー色の瞳を持つ怜悧な美貌の皇太子殿下だったビュワンテ=クベリ=ナフガラン様はすっかり総白髪の腰の曲がったおじいちゃまになっていた。


「ああ…殿下が、あのアイスブルーの瞳で『くだらない質問は受け付けませんよ』とか言っていたあの殿下が…。」


シワシワのおじいちゃまに…近衛のお兄様達に支えられて近付いて来られた殿下の瞳を見ると…綺麗なアイスブルー色の瞳が優しく細められている。


因みに今はナフガラン語で会話させて頂いてます。


「それはそうとビュワンテ上皇…。何か物々しいですが…。」


海斗先輩の言葉にああそうかビュワンテ…上皇に退位されたのね、と気が付いた。それに何だかびっくりしてスルーしてしまいそうだったけど、さっき界渡り~とか術式~とか不思議なことを言ってたよね?海斗先輩とビュワンテ上皇の顔を見ていると…ビュワンテ上皇が


「私が、ナキート前国王に界渡りの術と巡輪の楔の術をしたんだ。と皆に言っても誰も信じてくれなくてね、いつかナキート様とマリアティナ様がこうやって生まれ変わって会いに来てくれると、待っていた。ほら、言っただろう?確かにナキート様に頼まれたんだと…。」


と、仰った。は、話が見えてこない。


という訳で、半信半疑な感じのままナフガラン帝国軍の皆様と私達とで、微妙な緊張感を抱きつつ、ナフガランのお城にお招き頂いた。


私達の後ろを歩くヴェルヘイム様達に美鈴さんが通訳をして今の状況を説明している。するとヴェルヘイム様がすごい形相で前を歩く私にズオオッと背後から襲い掛か……追いかけてきた。


「マリカ、界渡りと巡輪の楔とはなんだ…。」


「私にもさっぱり…海斗先輩はご存じ…なんですよね?」


海斗先輩はビクッと肩を震わせた。魔質がパトランプのようにグルグル回っている。


「え~と俺とマリアティナとぉ……永遠に巡り合えるっておまじないを使ってもらったんだ☆彡」


てへっ…と笑って笑顔を向けた海斗先輩の顔を見て、私は肺の中まで空気を吸い込んだ。


「………アホかぁ?!可愛く言っても許されると思うのかっ?!今なんっつた?ああん?!永遠だぁ?!おまじないなんて曖昧な言葉で逃げられると思うなよっ!それ呪詛だろっ?そうだろ?」


私は海斗先輩に飛び蹴りをした。蹴った時に足を振り上げて、足の筋が吊って…余計にムカついた。


よしっちゃーーんと説明してもらおうじゃないか!


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