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はじめてのおつかい

ゴールデンウイークにモッテガタードに行く。今…ザイードに会うのが~とか、それに頭を悩ませている時間がなかった。


「え?お?う~ん。」


「出来ましたか?」


横でスラスラと書いている海斗先輩が憎らしいっ。自信が無いけど金髪碧眼の妊婦さんヒルデ=ナンシレータ先生に解答用紙を渡した。


ヒルデ先生が赤ペンで解答用紙を採点していく。少し眉間に皺が寄っている…。むむ?


「篠崎 麻里香さん、70点ですね。」


「び、微妙…。」


「先生、出来ました。」


海斗先輩が解答用紙をヒルデ先生に渡した。何気にこっちを見て鼻で笑った気がした!


「うん、うん…はい。栃澤 海斗君、95点ね。」


海斗先輩ガッツポーズしてるし、腹立つわー!


「ナジャガル語とカステカート語の筆記は、ほぼ大丈夫ですね。後はリスニングか…。」


そう実は私も海斗先輩も転移者では無いので、この世界に帰って来ても自分の知っている言葉しか話せない。取り敢えずの母国語のモッテガタード語。後はコスデスタ公国の言葉を少々。それとナフガラン帝国の言葉だ。


さすがヒルデ先生は異世界で元中学校の国語の先生なだけあって、教え方がお上手なんだけど…私筆記は70点だよ?大丈夫かな…。


「リスニングはこちらの世界に居る時は、出来るだけ現地の方と話して勉強して下さいね。異界の迷い子の皆様に頼ってはだめですよ。彼女達は全世界の言葉が話せますから。」


「は~い。」


「はいっ!」


言葉の加護が欲しい…だってまともに意思疎通出来るのヒルデ先生とカデリーナさんと異界の迷い子のお姉様達だけなんだもん。


あの日本語ベラベラだと思っていたザックでさえ、こっちに来て話しかけたら怪訝な顔をされたしね。


という訳で、今はお城の中の売店でお菓子を買う実地訓練に来ています!海斗先輩とは別行動です。私の後ろには那姫さんとジューイ様ご夫妻がついてきてくれてます。


「はいっ、麻里香ちゃんのミッションは…クッキーお得袋を3個買う!はい、お金はこれね…お釣りをもらうまでがミッションよ。」


そう言って那姫さんから小さい巾着袋を預かる。しかし那姫さん美人だなー。フランス人の血が入っているんだってね。格好いい旦那様と2人並んでると絵画みたいだよ。


「マリカガンバレ!」


ちょっと…僅か6才の金髪の菫色の瞳の女の子が流暢な日本語喋っているんだけど…。しかもジューイパパに話かけられたら瞬時にナジャガル語を喋ってるんだよ。


「ミリィエ~一緒について来てよ~。」


「マリカ、ダメだよ。これもシュギョウだって。」


修行?なんでまたそんな難しいこと知っているのよ。早く行けーとばかりにミリィエに体を押されて売店の中に入る。ぎょええっ…よりにもよって軍人のお兄さん達が結構いる…。でかい上に怖い…。通路が狭い、そうか…こういう時に通して下さい~とか、後ろ通ります~とかをサラッと言えればいいんだよね…分かっちゃいるが…。


何とか軍人のお兄さん達の隙間を縫って菓子売り場に着くと、クッキー詰め合わせお得袋と書かれた値札を探す。クッキーと袋は分かるんだ…え~と、これだ!これを3個だね。


そしてクッキーの袋を持って精算を待つ軍人のお兄さんの間に挟まれる。緊張する…もしかして今、話しかけられたらどうしよう。ああ、レジが空いた…小走りでレジに向かい……ちょっと待てよ?


この世界ってレジスターないじゃん!金額のディスプレイ表示が無いから目視で金額が確認出来ない!リスニングキタコレ!よ~し、レジのおねーさんが金額を教えてくれた。うん…1枚と2枚と聞こえたよ。


え~とまさかの金貨じゃないだろうし、銀貨でも無いだろう。大体の異世界価格で300円~1000円くらいが相場だとして銅貨?と木貨?どっちだ?


私が巾着袋を覗き込んでいると、ヒョイと手が伸びてきて木貨1枚と銅貨2枚が抜き取られた。


『…早く……。』


後ろを振り向くとプラチナブロンドの目付きの若干鋭い格好いいお兄さんが、顎でクイッと指示した。レジのお姉さんが伝票を渡してくれた。


商品名?の横に3という数字と金額が書かれている。これレシートだ。あ、さっきのお兄さん巾着からお金を出してくれたんだ。


お兄さんがレジを済ませるまで入口付近で待って、そのお兄さんが精算を済ませてこちらに向かって来た所へ駆け寄った。


『ありがとうございました!』


お兄さんはちょっと目を見開いたが、はにかんだように笑われると私の頭をクシャッと撫でてくれた。


もしかして…はじめてのおつかいだと思われているのか?


私は売店を出ると那姫さんの所へ戻った。


「はい、お疲れ。どうだった?ふむ、商品は間違いないね。よし、ちゃんとお金のやり取りも出来たね。」


「あ…お金は私がレジでモタモタしていたら後ろに居た、あのお兄さんが巾着からお金を出してくれて…。」


「それはイエローカードだね。あー!シューテ君じゃない!もうっ今は試験中なんだから手出しは駄目よ!」


シューテ君と呼ばれたレジで私を助けてくれたキリリとしたお兄さんは、こちらに近付いて来ると那姫さんにナジャガル語で話しかけている。


すると那姫さんはさっきまで日本語を話していたが、一瞬でナジャガル語で切り返している。いつ見てもこの言葉の加護はすごいな…。本当にネイティブな話し方みたいだ。


そしてシューテ君と呼ばれたお兄さんが私を見て仰け反っている。どうしたの?何だか指まで差されている。


「あの子ああ見えてもうすぐ17才なのよ?」


「マジっすか?!俺、8才くらいの子供だと思ってました。」


こんな感じの内容を那姫さんとシューテさんは話しているのだろう…ふぅ、好きでドチビに生まれた訳じゃないさ…。


今日の外国語?の授業は何とか終了した。私と海斗先輩はナジャガル皇族の方と軍の一部の方しか立ち入りを許可されていない皇宮の部屋に居る。


この部屋が今『異界の門』という名前で呼ばれて、異世界と繋がっている魔法陣が置かれている部屋だ。厳重に障壁が張られて、その封印の奥の大きな台座の上に…チマッとしたA3くらいのヨロヨロの紙が置いてある。あれが魔法陣だ。早く作り直せばいいのに、と思っているのは私だけか?


『じゃ帰るか。』


『はい。』


くうぅ…こんな時までナジャガル語で話しかけて来る海斗先輩っ!ていうか、昔からナキート殿下って努力の人だったんだよね。人より何倍も寝る間を惜しんで勉強したりする方だった。


そう言えば…さっきから気になっていたんだけど、売店で支払いを手伝ってくれたお兄さんと同じ格好のお兄さんともう1人とあのイケマッチョジャックスさんと美鈴さんがザックと話しながら私達の後を付いて来てるんだよね。え?もしかしてこの人達も異世界に行くの?


葵妃にお聞きしたら


「向こうに帰ったら、本人達が説明してくれるから。」


としか言わないんだけど、何だろうか?


そして魔法陣を発動して、新築の海斗先輩の家に帰って来た。この転移してきた部屋も特殊な作りになっている。一見フローリングの普通の6畳の洋間だがザックのパパ、アポカさんの特殊障壁が張ってある。そしてここは土足でOKにしている。転移してきた人はここで一旦靴を脱いで室内に入るようにと、唯一部屋に置いてるのが下駄箱とスリッパ置き場だ。


私が初めて屋根に乗る不審者を発見したその日から、屋根の上の不審者、アポカパパは毎日屋根の上でずっと魔法陣を描いていた。丁度春休みだったしさ、お昼時は昼食差し入れたりしていたんだけど…アポカさんに何を描いてるの?と聞いても難しい魔法理論を語られて…正直寝そうだった。


要は、異世界からこちらを繋ぐ術と一度に大人数を異世界転移出来るようにした術だそうだ。後は便利魔法をちょこちょこっと加えたから~と言われた。なんか怪しい。最初から不審者だけど…。


ザックはそんなパパさんが魔法陣を描いている間、とても楽しそうに屋根の上で2人で喋ってた。実は父上とは子供の時は離れ離れに暮らしていて、寂しかったんです。と、ザックが教えてくれた。やっぱり家族は一緒にいなくちゃね。


さて


ナジャガル皇国からこちらに転移してきた、お兄様達と向き合う。ところがお兄様達が一斉に騎士の礼をされたっ!


「モッテガタード前国王妃とは存じず、先ほどは失礼を致しました。シューテ=ゼベロッパーと申します。」


と流暢な日本語で話されると、私の手の甲にく、唇が触れたーー!


「本物の騎士様だっ!」


「何だとっ?!俺だって元軍人だぞっ!」


急に海斗先輩が割り込んできた。


「何言っているんですか?!海斗先輩は元軍人ですがもう錆び錆びのヨボヨボじゃないですか、こちらは現役の騎士様でしょう!」


「また始まった…もうどっちでもいいじゃないですか…。」


「ザックはどっちの味方なのっ?!」


「僕は中立です。」


ザックに冷ややかな目で見られる。だって海斗先輩じゃやっぱりヴィジュアルが日本人なんだもん。


「やっぱり、騎士の礼とか軍服とかは見た目重視で行きたいのよねっ!金髪碧眼ここは外せないわ!」


「そーかよ。悪かったな…黒目黒髪で。」


海斗先輩がブツブツ言っているけど今は無視だ。膝を突かれたお兄様達はキョトンとしている。済みません…お騒がせして…。


シューテさんと名乗ったお兄様が咳払いをして、横で同じく跪いている茶髪のお兄様を見た。


「実は、今度のモッテガタードの訪問時は私と…。」


「ジーパス=ヤデスと申します。近衛から私共が護衛としてお供させて頂きます。」


シューテさんもジーパスさんも護衛っ!


そしてジャックスさんがニヤッと笑いながら


「軍部からは俺と通訳でミスズを連れて行く。後はザックと…それとな、シュテイントハラル神聖国から王弟殿下、アルクリーダ殿下が来られる。後はデッケルハイン一家かな。」


ヴェルヘイム様…のご家族来るのか。それは楽しそうなんだけど、圧がすごそう。しかし王弟殿下だって~?神様に近い方が来られるのか…緊張するな。


ザックにそのことを伝えると何だか爆笑しながら答えてくれた。ジャックスさんや護衛のお兄様までも少し吹き出している。


「あ~気にしないで大丈夫ですよ。出会いを求めて彷徨っているクリぼっち?とかいう状態なんですって。」


「く、クリぼっち?」


海斗先輩と見詰め合った。


「クリスマスに1人の状態のクリぼっちのことか?」


神様に近い人がクリぼっち?状態…謎過ぎる。どういう意味だろう…。


次回はモッテガタードに出発です。

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