雲にのぼる
わたしは、空にのぼれる。そらの上の雲までのぼれる。
ひみつだけれど、空にのぼるには、ちょっとした「コツ」がある。
目に見えない階段を空の雲までイメージする。そうして、イメージした一段目を、右足でさぐるようにしながら、空気を踏み固めていく。何度か踏み固めると、空気が固くなり、透明な階段の一段目ができてくる。
その一段目に右足で体重をかけてのぼる。
次は、左足。透明な階段の二段目をイメージして、何度か空気を踏み固める。そうすると、空気が踏み固まってくるから、二段目に体重をかけてのぼる。
一歩一歩、透明の階段を踏み固めながら、空の上の雲までのぼっていくのだ。
透明の階段をのぼる時は、絶対に怖がってはいけない。怖がると透明の階段は、ふわふわの空気に戻ってしまい、体の重みで空から転げ落ちてしまう。それから、「自分のこころ」を楽しく、悩みなんか消して、軽くしないといけない。わたし自身も、ふわふわの空気になっていくイメージだ。
いちばん最初に空にのぼったのは、大好きな「Kくん」に告白された時だった。うれしくてうれしくて、学校からの帰り道で、だんだん身体が軽くなった気持ちがして、気がついたら空中に浮いていた。ためしに、透明な階段を想像しながら空に向かってのぼってみたら、「ぞうさんの形の雲」にたどりついていた。雲の上は、とてもふかふかで、甘い匂いがして気持ちがよいところだった。幸せな気持ちを、ぜんぶ形にしたようなところだ。あんまり楽しすぎて、夕焼けのオレンジに雲が染まりはじめてしまい、あわてて地上におりたくらいだ。ちなみに、おりるのはのぼるより簡単で、はねるように地上に向かって歩くだけでいい。少しずつ、自分の体の重みでおりてこられる。
その日以来、たのしいことがあった日には、雲までのぼるようにしている。甘くて、素敵な時間をすごせるから。
どうか、みなさんもやってみてください、ね。