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『剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?』  作者: べるの
第16蝶 影の少女の解放と創造主

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マスターと利用規約

かなり間を開けてしまい申し訳ございません。

冒頭の規約云々の訂正&手直しに時間がかかってしまいました。

それと整合性を合わせるのにちょっと苦労しました……


前回までのあらすじ

この地下の最奥にある、行き止まりから次の通路に入ったところの続きです。

その目的は、マヤメのマスターの工房にある、その遺体を回収する事です。




==============================




 ~引き継がれた"縺溘∪縺励>”と新たな"蜀帝匱”~



①『リバースワールド・リキャプチャーズオンライン』(通称RRO)に於いて、365日以上ログインが確認できないアカウントに関しては、自動で削除されますので予めご承知下さい。


②その際、保有していた全ての"蜩∫岼”は、【思い出の欠片】へと変換され、既存のワールドの全域にランダムで配置されます。


③尚、②の欠片は、通常では視認できませんが、"蜩∫岼を入手した際の(MM/DD/HH/SS/MM)になると可視化され、パーティーメンバーのみが回収可能となっております。


④作成されたアバターについては、①のログを全て辿る事で、【軌跡の欠片】と変換され、③の欠片と合成することで、【凛とした無垢で深い愛】が可能となっております。


⑤但し、場所・時間、ワールドの指定はできず、全てランダムとなっております。


  


==============================




『…………これ、ちょっとだけ話題になってたっけ』



 メニュー画面に映る、利用規約にあった、謎の文面。

 規約なんて回りくどく長文なので、普通は飛ばしてしまうもの。

 

 それでも一時期ウワサになっていた。

 これを発見した、ごく一部の数名の中だけで。


 どうして、わかりにくい場所にあったのか?

 何故、あちこち文字化けしているのか?

 いつからこの文面があったのか? って。


 それはそうだ。


 重要な要項なら、規約の中に埋もれるような真似はしないし、ましてや解読が難解な文面にもしない。それに、新たに増えたのならば、その時にインフォがあってもおかしくはない。

  


『それで、運営に問い合わせたって人がいたけど、運営側からの返答は「その様な文面は記載していないし、確認もできなかった」だった。なにせその文面は、たった数時間で消えたからね……』

 

 今、私が見ているのは、その内容をスクショしたものだ。

 あらゆる世界線からいなくなった、実の妹、清美の命日の日に。

 


『あの時の私は、藁にも縋る思い―― いや、蜘蛛の糸を掴む、だったかもしれない。目的の為には、敵も味方も区別なく葬ってきた。立ち塞がるもの全てが、私の敵だと錯覚してたから。それもあの文面にあった、全ての"欠片”を集めるために……』


 そう。私は集め続けた。

 あの謎の文面を解読し、5年近くの年月を費やして。


 ワールド中に飛び散った、数百、数千を超える、清美の欠片を――――


 

 あの文面を要約すると、②の【思い出の欠片】と、③の【軌跡の欠片】があり、その全て集める事で、④の【凛とした無垢で深い愛】が合成可能になると言う。


 ②の【思い出の欠片】とは、ワールド中に散らばった、清美のアイテムの事。

 それを入手した際の、何月何日何時何分何秒にのみ出現し、回収できるもの。


 ③の【軌跡の欠片】は、プレイログの事。

 要は、ワールド内を移動した、清美の足跡(そくせき)の事だ。



 そして、最も不可解で、どこか意味深な、④の【凛とした無垢で深い愛】は――――



『――――恐らくこれは、二つの単語を足したものだと思う。まず"無垢で深い愛”は、カーネーションの花言葉の由来。それに前半の"凜”を足して【リンカーネーション】になる。そして、その単語の意味と言えば……』



 【転生】=生まれ変わる事。

 【輪廻】=生きかわり死にかわりする事。

 【輪廻転生】=生き物の魂が生まれ変わる事。




==============================




「どうしたの? スミカちゃん」

「ん、澄香?」


「……え? ああ、ゴメンゴメン。ちょっとこの前の世界の事を思い出しちゃっただけ」


「前の世界って?」

「ん」


「そこまで気にしないでいいよ。夢の世界みたいなものだから」   


 トテラとマヤメに答えて、急いで二人の背中を追う。


 今、私たちは、1本の薄暗い通路の中を歩いている。

 行き止まりの壁の奥に隠された、マヤメのマスターの工房に向かって。



『はぁ、なんでこのタイミングで、()()()の事を思い出しちゃったんだろ? きっとRROを連想させる、タチアカやマカスって奴に会ったからだろうな……』


 脳裏に浮かぶのは、あの懐かしくも、暖かい情景。

 軌跡を奇跡に変えた、夢現(ゆめうつつ)のような出来事。


 あの時、あの謎の文面だけを頼りに、全ての欠片を集め終えた。

 その瞬間、目の前に光と共に現れた。


 生きる意味を失い、世界に絶望していた、私の前に、あの妹の清美が。 

 


 ――――いつも助けてくれてありがとう。澄香お姉ちゃん――――



 そう言い残し、清美の姿は掻き消えた。

 私の腰に抱き着き、無邪気な笑顔を浮かべたままで。



『……あれは、まぼろしだったってわかってる。精神も疲労も限界だった、私の中にあった大切な記憶なんだって…… でも奇跡は起きた。今でも温もりを感じるから』 

 

 助けてくれてありがとう、と、あの時の清美は言っていた。

 そう言われたが、本当に救えたかどうかはわからない。


 でもあの時の笑顔は、別れの笑顔ではなく、いつもの()()に見えた。


 また助けられ、また助けてもらうつもりの、甘えっ子のような。

 その笑顔を見たくて、つい助けてしまう、そんな私の心を見透かしたような。   


『でも助けられたのは、私だった。あれからちょっとだけ前向きになれたし、心の整理もついた。これもあのまぼろしと、この世界でユーアに会ったから……』


 心残りがないとは言えない。

 完全に立ち直ったとも思えない。  


 だって、失くした者の存在が、私の中で大き過ぎたから。

 


『……そう言えば、あの文面のタイトルって、解読すると――――』



 ガチャ


「ん、やっと着いた。良かった……」

「ほぇ~、なんか見た事ない物ばっかりだね?」


 最後の扉をくぐり、ホッとするマヤメと室内を見渡すトテラ。  

 私も慌てて二人の後を追って室内に入った。  


 そこは、如何にも工房の名に相応しい、見た事もないような怪しげな機械や器具が立ち並んで…… はなく。どちらかと言うと、この部屋のイメージは―――



「子供、部屋?…………」


 にしか見えなかった。  


 室内の大きさは6畳くらい。


 部屋の奥には、何かのキャラクターが描かれた、ピンクの枕と布団が乗った小さなベッドがあり、その隣には、色とりどりのネコのぬいぐるみがたくさん置かれた、背の低いチェストがあった。


 そして、真っ白な部屋の壁と、そのベッドの隣には――――



「これって、時間割? と学習机?」


 更にその机の脇には、赤色のランドセルと、黄色いメトロ帽子がかかっていた。



「な、なに、ここ?……」

「あ、これ可愛いねっ!」


「ん、ありがとう。澄香とトテラ。ここまで連れて来てくれて、本当にありがとう……」


 目を瞑り、深々と頭を下げたマヤメは、ベッドの下から一つの箱を取り出す。


 その大きさは、凡そ30センチ程。

 表面は黒く着色されており、中は完全に見えないが、



「それは?」

「ん、これがマヤの一番大切なもの。守りたかったもの」

「え? そうなの? でもその大きさって……」


 どう考えても、人一人が入れる大きさではない。

 もし仮に、この中に入れる大きさだとすると、 

 


 それは――――



 パカッ



「ん」


「…………は?」

「え?」


「ん、遅くなってごめんなさい……」

 

 そっと()()を箱の中から取り出し、その中身を大事そうに抱き寄せるマヤメ。

 目を閉じ、片方の頬を付け、薄っすらと涙を浮かべている。


 その姿を見れば、それがマヤメのマスターだとわかる。

 こんな幸せそうな表情で、涙を流すマヤメを見たことはない。



「……そうか、そういう事か」


 抱いているものを見て、あの人物の話を思い出す。

 クロの村のジーアが、マヤメを視て言っていたことを。


 それは、マヤメの中には、『黒猫』が視えていたって、事を。


 

今回のお話にあった『欠片』については、

140話付近の『SS 澄香のゲームオーバー』の、その1と2と、

450話付近の『初夏の空と桃ちゃんと』で語られている内容でした。


それと文字化けについては『文字化けテスター』で変換したもので、

規約の冒頭の『引き継がれた"縺溘∪縺励>”と新たな"蜀帝匱”』を解読すると、

『引き継がれた"たましい”と新たな"冒険”』となっています。


それでは次回も遅くなると思いますが、今後ともよろしくお願いいたします。



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― 新着の感想 ―
 うむ。  重要な部分を代名詞で伏せてるから、まっっったく、分からん!(背景にどっかの映画の冒頭みたいな波しぶき)
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