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『剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?』  作者: べるの
第16蝶 影の少女の解放と創造主

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5体の機械兵VSスミカ

目的地まで、あと僅かなところで現れた5体の機械兵。

今回はその正体と、新しい能力の話になります。




「機械兵っ! なんでここにっ!?」



 目の前に現れた、5体のヒト型兵器を見て驚愕する。

 ゲーム内で散々相手取った、あの機械兵(マシナリーソルジャー)が、この世界に転移していた事に。



「ちっ!」


 タンッ


「んっ! すみ――」

「スミカちゃんっ!?」



 立ち止まり、唖然とする、マヤメたちの脇を擦り抜け、機械兵の前に躍り出る。



『………………』

『………………』

『………………』


 正面に陣取るのは、電磁式警棒を装備した3体の機械兵。

 通称【軽機兵】と呼ばれ、最も汎用型の個体で、戦闘力が低い分、数が多い。



『………………』


 2列目の4体目は【重機兵】。

 軽機兵よりも装甲が厚く、威力の高い武器や銃火器を扱う。

 右手に大型振動ククリナイフ、左手にはガトリング銃を装備している。



『………………』


 そして、最後方でライフルを構える個体は【狙撃兵】。

 片膝立ちのまま、銃口を私たちに向けている。



「ん、澄香っ! そのヒト型は敵じゃ――」


「マヤメたちは曲がり角に避難しててっ! コイツ等の連携は厄介だからっ!」



 単体ならそこまで脅威ではない。

 駆け出しプレイヤーの初期装備でも、充分戦えるレベルだ。


 が、隊を組まれると、途端に脅威度が上がる。

 連携のレベルが、一気にプレイヤーを凌駕するからだ。


 そう、この機械兵たちは、人間のような経験則や意思疎通なんて、曖昧で不確かなものではなく、今まで蓄積された、数万、数千万のデーターを元にこちらのパターンを読んでくる。


 最新式の【戦闘用AI】を搭載している事によって。 




『………………』


 ブンッ


 先頭の軽機兵1体が動き出す。

 バチっとエレキを纏っている、電磁警棒を振り下ろす。



 ザンッ



 下から振り上げる様に、なんちゃって短剣で切断する。

 クルクルと弧を描き、手首ごと電磁警棒が宙を舞う。



「よっ!」


 ガンッ


 すかさず跳躍し、宙に浮いた手首を思いっきり蹴り飛ばす。

 最奥で私に狙いを定めている、1体の狙撃兵に向かって。



 バチッ!



『グ…………』


 避ける事なく、一撃を受けた狙撃兵は、そのまま硬直する。

 スタン効果のある、電磁警棒を喰らって。



『よし、これで数秒は持つ。次は――――』 



 スパンッ



『グ、ア…………』


 降り向き様に、手首を失った1体の首を刎ねる。

 つま先に装着した、なんちゃってナイフの回し蹴りによって。



 スタッ


 ブンッ! ×2


『………………』

『………………』


 床に足を付けた瞬間に、残り2体の軽機兵が、同時に襲い掛かってくる。


 仮に、この攻撃を受けても、今の私には殆ど影響がない。

 スタンなどの状態異常は、この装備のおかげで、ほぼ無効化できる。

 



 ズバンッ


『ガ…………』 ×2



 それでも、わざわざ受ける必要はない。

 警棒を振り下ろすより先に、2体の間に滑り込み、胴体から2分割する。



『………………』


 ド、ガガガガガガガ―――――― ッ!


 前衛が全滅すると否や、背後にいた重騎兵がガトリング銃を乱射する。



「それぐらい、わかってるってっ!」



 カカカカカ―――――― ンッ!


 短剣からトンファーに変形させ、銃弾の中に身を投げる。

 直撃を受けそうなものは、片っ端から弾いていき、一気に懐に潜り込み、そのまま――――



 ボンッ!



『グ、ガ――――』


 

 重騎兵の首から上が爆散する。

 重さを10tプラスした、トンファーの一撃を受けて。



「んっ! 澄香、凄い…………」

「はわわわわ…………」



「はっ? なんで消え――――」


 ここに来てふと気付く。

 倒した4体の機械兵が、そのまま()()している事に。



『………………』


 パンッ


 その矢先、回復した狙撃兵の銃口から、一発の弾丸が放たれる。

 その狙いは正確に、戸惑う私の眉間目掛けて迫ってくるが、



「『100G』」



 グシャッ



『グ、ガ………………』


 私に弾が届く瞬間に、狙撃兵と弾丸は動きを止める。

 床に数十センチめり込み、武器もろとも全身を粉々にさせながら。



「ふぅ、よし。これ以外もう残ってないね? でも……」


 索敵を完了させ、活動を停止した、5体の機械兵を注意深く眺める。


 

『一体これってどうなってるの? 私の知っている機械兵は、ドロップアイテムだけを残し、光の粒子となって、どっかに消えちゃうんだけど。なんでコイツ等はそのままなの? それに――――』


 不可解な点が多い。

 この世界に出現した事もだが、未だに消滅しない事に。


 だけどそんな理由はすぐに解決する事となった。  



 タタッ――



「ん、澄香っ!」

「スミカちゃーんっ!」


 私の元に駆け付けた、マヤメの話を聞いて納得した。



「二人とも大丈夫? 銃弾とか破片とか飛んで行かなかった?」

「ん、澄香っ! あれ敵じゃないっ! マスターが創ったゴーレムっ!」 


 破壊された機械兵を見渡し、珍しく声を荒げるマヤメ。



「ゴ、ゴーレム? あの機械兵がっ!?」

「ん、ここを守るロボ。工房のガーディアン」

「…………マジ?」

「ん、マジ」


 気のせいか、マヤメの目が冷ややかなものに変わった。


「じゃ、じゃあさ、なんで私を襲ってきたの?」

「ん? 澄香が先に仕掛けた。だから反撃した」

「…………ゴメン」


 痛い視線に耐えきれず、素直に頭を下げる。 


 でも今のでようやく理解した。

 どうりで残ったままで、しかも"弱かった”はずだと。


  

『そう。判断の鈍さもそうだったけど、連携がかなりお粗末だったんだよね。私が知っている機械兵とは、明らかに後手後手の動きだったし…………』


 相対する度に強くなる、数々の機械兵(マシナリーソルジャー)たち。

 その強さの理由は、最新AIによる、学習能力の高さのはずだが。 


 

『でも、いくらマスターが優秀だからって、この世界でいちからあの技術を?…… いや、マヤメもそうだけど、ロボカラスやアルマジロとかいるから、それもあり得るって事?』


 だとしたら、マスターって人物は優秀どころの話ではない。

 この世界の概念を、覆すものを数々生み出しているからだ。


 

『それが可能だったとすると、弱体化していたのって、ただ単に、経験値が足りなかっただけって事? この限られた地下の空間じゃ、実戦の経験なんて積めないだろうし。それか魔法って線も……』


 未知の技術が多過ぎて、正直理解が追い付かない。

 この世界の魔法や理についても、あまり知らないし。 



「後は、マスターが未来――――」

「ん、澄香?」

「え? あ、なんでもない。それよりも聞きたい事あるんだけど」


「ねぇ、ねぇ、スミカちゃんっ! さっきのどうやったのっ!」


 マヤメとの話の最中に、トテラが腕に抱き着いてくる。

 長耳をブンブンと振り回し、キラキラした瞳で見上げてくる。



「さっきのって?」

「あの奥のお人形、突然潰れちゃったでしょっ!」

「ああ、あれね?」


「ん、マヤも気になってた。あんなの初めて見た」


 スクラップと化したゴーレムを、3人揃って繁々と眺める。



「ああ、あれはね『重力』を操作する魔法なの」


「ん、じゅう、りょく?」

「??」


「ん~、簡単に言うと、重さを最高100倍まで、自由に変えられる魔法なの。この魔法壁の真下の範囲に限定されるけど」


 狙撃兵の上、そして、私たちの真上のスキルを視覚化する。

 色は黒で、大きさは約2平方メートル程の。  



「えっ!? それじゃ、なんでスミカちゃんは潰れなかったのっ!」

「ん、ん」


 頭上を見上げ、最もな疑問を口にするトテラ。



「そこら辺も自在に調節できるんだよ。それと、こんな面白い事もできるよ」

  

 ふわ~、


「んっ! 浮いたっ!」

「わ、わわわっ!」


 足が床から離れ、ふわりと宙に浮く二人。 

 溺れたかのように、バタバタと手足をバタつかせる。



「ね? 面白いでしょ?」


 驚く二人の手を取り、ゆっくりと重力を元に戻す。


 トン


「んっ! こ、これはマヤもびっくり」

「うん、面白かったっ!」


「でしょ? 重さを0にもできるからね。はい、これ飲んで、少し落ち着いて」 


 床に降りた二人に、ドリンクレーション(黒蜜味)を渡す。

  


「ん、ゴク。やっぱり澄香は凄い。さすがはみんなの英雄さま」

「うわ~、これも甘くて美味しいよっ!」


「まあね、でもそんなに使い勝手は良くないよ。範囲を広げれば、それだけ効き目が弱くなるし」


 ドリンクレーション(ソーダ味)を口に含みながら、今の説明に付け足す。 




============



 『重力』


 対象者及び、その範囲内の重力を自在に操作できる。

 操作可能な範囲は、頭上に展開したスキル面積の範囲のみ。

 スキルの大きさと比例し、その効果が薄くなる。

 最小0Gから、最大100Gまで操作可能。



============





「よし、そろそろ落ち着いたみたいだから、引き続き案内よろしく」


 マヤメの肩をポンと叩き、再び道案内を頼む。 



「ん、そこを曲がって、一番奥の突き当りがそう」


 トテラと二人で歩き出した、マヤメの後を追いかける。



「あっ! あれがそうだねっ! でも、壁しかないよ?」

「ん、魔法で隠してる。無視してこのまま進む」  


 立ち止まり、不思議がるトテラと入れ替えで、マヤメがそのまま壁に進むと、スッと何の抵抗もなしに、白い壁の中に消えていった。 



「あ、マヤメちゃんが消えちゃったっ!」 

「なら私たちも行こうか?」 


 こうしてトテラと二人、マヤメの後を追って中に入っていった。 


 マヤメを創り、エニグマから身を隠し、こんな辺境の地に工房を構えた、元プレイヤーのマスターが眠る場所に。



 だけどこの時、私は知らなかった。

 マヤメ以外にも、まさか自分が救われるなんて事が。


 魔法以外にも、奇跡もあるんだよって、この世界に来て、ようやく実感できた。


 


新しい能力の『重力』は、一度目のタチアカとの戦いで覚えたもので、

(4話前の『救出劇』でそれらしい事言ってました)

裏世界で使用しなかったのは、マカス(科学者)の目を警戒したからでした。


※最後の一文はまどマギのパクリです。


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― 新着の感想 ―
>簡単に言うと、重さを最高100倍まで、自由に変えられる魔法なの 某野菜人「そうなんか? 100べぇなら修行がはかどる……と思ったけど、ブル◯の宇宙船でとっくに修行済みだったわ!」 >魔法以外に…
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