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『剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?』  作者: べるの
第16蝶 影の少女の解放と創造主

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レッツ育成!

今回スミカは戦闘に不参加ですが、決してサボってる訳ではありません。

どっちかっていうと、レベル上げたいので参加したいはずです。




「さっきみたいにバラバラにならないでっ! どうせ魔物はこっちを狙って来るんだから、中央に集まって、順番に魔法を放てばいいよっ!」


「「「お、おうっ!」」」


「それと、相手は蝶の魔物なんだから、きっと炎が弱点だよっ! 当たらなくても羽根にさえ掠れば、軌道力を半減に出来るよっ!」


「「「は、はいっ!」」」


「あと、魔物の攻撃の範囲を絞りたいから、前面には土魔法でバリケードを作って、空に誘導してっ! そうすれば上からの攻撃に注意するだけになるからねっ!」


「「「わ、わかりましたっ!」」」



 私の出した指示に、何の疑念もなく、懸命に動いてくれるみんな。

 見通しの良くなった森の中央に集まり、各々が得意な魔法を撃ち込んでいく。 


 その効果は絶大で、徐々に数を減らしていき、既に半数ほどになった。


 それでも残りは40以上。


 魔物の数が減れば減るほど、魔法を当てにくくなる。

 今までは、押し寄せる魔物の群れに、がむしゃらに撃ち込んでただけだから。


 だからこそ、ここからが正念場になる。


 数が減ればそれだけ奴らの移動範囲が広がるからだ。

 そうなると必然的に、あの厄介な『軌道力』が猛威を振るう事となる。



「ん、澄香」


「あっ! 水魔法は蝶の特性上弾かれるから、あんまり多用しないで牽制に使ってっ! あと一気に撃つんじゃなく、時間差で撃って、相手の動きを誘導してっ!」


「んっ! 澄香っ!」


「なに? 今忙しいんだけど」


 後ろからマヤメに呼ばれるが、首だけ動かして返答する。

   

 これからがある意味本番なのだ。

 なので、おしゃべりをしてる暇なんてない。



「んっ! なんでマヤだけ戦う」

「なんでって、マヤメの戦い方を見本にして欲しいからだよ?」


 どこか不満げな表情のマヤメにはそう返答する。


 因みに私とジーアは透明壁の中に引きこもり、戦場を俯瞰で見ている。


 その中で私は指揮を取り、危なくなったらスキルで援護できるように、かなり神経を集中させている。


 ここまで連れてきた責任もあるし、みんなの実力も知りたかったから。


 そして、村一番の実力者のジーアには、私の指揮や、みんなの動き、それとマヤメの戦い方を見て欲しく、戦闘には参加させず、私の隣にいてもらっている。 

  

 その理由は簡単だ。


 ジーアには、もっと広い視野と、状況や仲間に合わせた戦略や戦術を。

 村のみんなには、ジーア無しでも戦える自信を持って欲しくて、このような配置にした。



 

「ん? 見本? マヤが?」


 スパンッ


「そう。接近戦と回避に特化したマヤメなら、こんな魔物ぐらい簡単に倒せるでしょう? しかも無傷で」


「ん、そんな簡単じゃない。動きが変で難しい」  

 

 そう言いながらも、マフラーで相手の動きを誘導し、そこへ更にナイフを投擲し、それを避けたところに、黒塗りのナイフの一突きで絶命させている。


 確かに簡単ではない。

 たった一体を倒すのに、3度の動作を行っていた。 


 この蝶の魔物の厄介なところが、正にそこだった。


 飛び込んできた瞬間を狙えば、普通の魔物には絶好のカウンターになるが、この蝶の魔物は、直前で急停止したり、直角や垂直に急回避し、こちらに向けて急接近してくる。


 まるで某レトロゲームの『蛾』が攻めて来る、あの敵の動きそのままだ。

 こっちのカウンターが、そのまま相手のカウンターになってしまう。


 それはマヤメも承知済み。

 だから攻撃を空打ちして、相手の動きを誘導して倒しているのだ。

 

 そんな訳で、マヤメだけは単独で戦ってもらっていた。

 少しでもみんなの参考になればと、私なりに考えての事だった。



「ん、だったら澄香が見本になる。マヤだけズルい」


 理由を説明したのに、まだ納得しないマヤメ。

 口をへの字に曲げて、ジト目で不満をアピールしてくる。


 まぁ、ジト目はいつもだけど。



「私が見本ねえ?…… ならちょっと見てて」 


 『通過』を使って、透明壁スキルから外に出る。

 するとすぐさま蝶の魔物が襲ってきた。



「よっ!」


 ガシッ


「んっ!?」

「へっ?」 


「これでお終い」


 ドガンッ!


『ぐgyつッ!』


 顔面を掴まれたまま、地面に叩きつけられた魔物は、そのまま破裂するようにバラバラに砕け散り、一瞬にして絶命した。  


「んんっ!」

「あわわ……」


 その様子を見ていた二人が、矢継ぎ早に質問してくる。


「んっ! どうして一度で捕まえた。マヤはもっとかかる」

「ス、スミカしゃんっ! 一体どうやったですかっ!」


「どうって、体が勝手に反応するんだよ。私の手を避けた瞬間に、それ以上の速さで掴んだだけ。簡単に言えば条件反射みたいなものかな?」


 これは『spinal reflex 改(脊髄反射)』の派生形で、相手が避けた方向に、反射的に体が反応するプレイヤースキルだ。


 ただそうは言っても、誰しもが日常的に行っている動きでもある。


 蚊やハエが視界に入ったら、咄嗟に叩き落とそうとするのと一緒。

 それの究極系だ。



「だから私がやっても見本にならないんだよ」


 戦場に視線を戻しながら、マヤメとジーアにはそう答える。 


「ん……」

「そ、そうでしゅね……」


「そんな訳で、マヤメは引き続き魔物退治をお願い。後でマロンケーキ(レーション)をご馳走するから」


「ん、わかった。それとイチゴ味の飲み物も所望する」


「了解。なら()()終わったらお茶にするよ。みんなの事も(ねぎら)いたいからさ」


「ん、ならマヤも頑張る」


 グッと親指を立てて、足取り軽く、マヤメはまた戦場に戻っていった。

 

「よろしくね、マヤメ」


 私はその後ろを見送りながら、今言った言葉を心の中で反芻する。



()()かぁ…… 今までの流れだと、雑魚敵を一掃すると、最後に必ず出てきたんだよね? あの謎の腕輪を身に着けた、ジェムの魔物が』


 今のところ、このパターンが崩れた事はない。

 なら、今回も現れるとみて間違いないだろう。



『ただちょっと気になるのが、アイツら戦う度に強くなってんだよね。これも今まで通りだったら、かなり面倒かも。もしそうだったら、さすがにみんなには避難してもらった方がいいかな』


 そう。これも事実。

 現れるたびに飛躍的に強くなり、戦うたびにやりにくくなっている。


 直近では、ナルハ村に出現した、顔面が杭のジェムの魔物。

 

 この世界に来たばかりの私だったら、恐らく苦戦していただろう。

 敗北はないにしろ、全力を出さぜる状況まで追い詰められただろう。


 化け物級の強さだった、あのフーナとの戦いのように。



『まあ、そんな事態になっても、最後に立ってるのは私なんだけどね。相手が強くなるなら、それ以上に強くなるだけだから、そこまで心配しなくていいかな? それに今はこの世界に来た、あの時の私とは違って――――』



「スミカお姉さん、どうしたんでしゅか?」

「え、あ、なに?」


 唐突に、ジーアに声を掛けられて、我に返る。


「なんか、マヤメさんを見て笑ってましたですよ?」

「私が笑ってた? こんな時なのに?」

「はいでしゅ。ちょっとだけ笑顔になってたです」


 不思議そうに私とマヤメを交互に眺めるジーア。


「ああ、だったら何も心配してないよ」

「へ? 心配?」

「うん、ここでは一人じゃないからね」

「??」

「まぁ、元々()()()()ジーアには関係ないから、気にしないでいいよ」

「???」


 ジーアは私の返事を聞いて、更に困惑した表情になる。  

 まるでたくさんの疑問符が、頭の上に見えるようだ。


 

『そう。今はゲームの世界と違って、この世界では私も()()()()んだよね。だからそこまで身構える必要なんてないし、どんな敵が来ても心強いよ。今は私もひとりじゃないからね』 


 影と影の間を自在に移動しながら、確実に数を減らしていく影の少女。

 そんな後ろ姿を見て、頼もしいと思ったが、その当の本人は、



 スパンッ


「ん、ご褒美はマロンとイチゴ♪ それと――――」


 何かをブツブツと呟きながら、どこか上機嫌で魔物を倒していくマヤメ。

 その戦いぶりを見ると、なんの不安も懸念もないが、



『あ――』


 ただアイテムボックス内の、スイーツの在庫だけが心配だった。



陣頭指揮も出来るスミカさんでした。さすがリーダーですね。

って言っても、パーティープレイは殆どしてない……。

全員揃う時がコムケの街に帰った時くらいですから。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「了解。なら全部終わったらお茶にするよ。みんなの事も労いたいからさ」  この全部を強調してましたが、スミカ達と敵対状態になっている仮称エニグマの壊滅後って事でしょうか?(悪い顔) …
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