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『剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?』  作者: べるの
第16蝶 影の少女の解放と創造主

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ジーアの覚悟と脅威の黒蝶

あけおめことヨロで~す!

4年目になりますが、今年もよろしくお願いいたします!


今回は謎の村の少女、ジーア視点のお話になります。

スミカたちが到着する前と後の話です。




 魔物が現れた村に、スミカたちが救援に向かう、その少し前。

 農業が盛んなこの村では、再び緊張感に包まれていた。



「ジ、ジーアっ! また魔物が戻ってきやがったっ!」

「数は大型の3匹で、ついさっき結界に反応があったみたいよっ!」


「うそぉ~っ! も、もう戻ってきちゃったのぉっ! はわわ~」

 


 その理由は、一度撃退したはずの魔物が、再度この村に向かっているとの知らせを受けたためだった。


 突如現れた、黒い羽根を持った大量の魔物。

 まるでどこからか湧いて出た様に、いきなり結界の中に現れた。


 村人たちはみなで団結し、一度はこれを退けた。

 だが、全員が無事とはいかず、攻撃を受けた村人の半数が昏倒したままだった。 


 そんな矢先での、魔物の再来を知らせる結界の反応。

 戦える者はまだ残ってはいるが、それでも危機的状況には違いなかった。



 全員が全員、一定レベルの魔法を使え、幾度となく村を守ってきたここの住人でさえも、さすがに動揺を隠せなかった。


 正体不明の謎の魔物。

 人族より長い寿命を持つ、ここの村人たちでも初見の魔物だった。


 漆黒の身体と8枚の羽根を持ち、空から攻撃を仕掛けてきた。

 速度はそれほどでもなかったが、その代わりに『軌道力』が異常だった。


 通常、空を飛ぶ生物は、進路を変える時に弧を描いて旋回する。

 自身が進む方向に、物理的なチカラが働いている為、急には止まれないのと一緒だ。


 だがこの魔物は違った。

 

 急旋回や急減速などの現実的な軌道ではなく、突如、目の前で直角に曲がり、一気に最大速度まで動けるのだ。


 そもそも、地上で生きる種族には、空を飛ぶだけでも充分驚異的とも言える。

 だと言うのに、そこに理解不能の『軌道力』が加わる事で、更に脅威度が増していた。


 この村を襲った魔物は、文字通り、自由自在に宙を動き回る事が出来るのだ。


 そんな魔物が、今度は大型らしきものの3体。

 魔力も人員も万全の体制ならともかく、今の状況では凌ぎ切るのさえ困難だ。


 だがそんな危機的状況でも、村人たちには絶望感の欠片もなかった。



 その訳とは――――



「ジーアっ! さっきのように私たちが魔物を引き付けるから、上級魔法の準備をしていてちょうだいっ!」


「ひゃ、ひゃいっ!」


「なら最初に俺たちが火魔法で注意を引き付けるから、下からは土魔法の部隊で攻撃してくれっ! 上手くいけば一体でも落とせるぞっ、ジーアっ!」


「お、お願いしますっ!」


「よし、そうとくれば、次は私たち水魔法部隊で、火と土の魔法を、水鏡の魔法で見えなくするわ。そうすれば直ぐには発見されないわ」


「み、みんな、よろしくですぅっ!」


「んで、最後の締めは、絶壁の開墾少女ジーアの最強魔法エリザ(岩蛇)の出番って訳だっ! エサには不味そうだが、こんな時に好き嫌いは無しだぜっ!」


「ぜ、ぜっぺきって言わないでよぉ~っ! もうっ!」


「「「わはははは――――っ!」」」



 こんな状況でも、村人たちが戦意を失わない理由は簡単だった。

 一人の少女を囲み、みなの士気が再び甦る。



 それは、この村一番の特化戦力『ジーア』が健在だったからだ。

 


 この村は今までも、ジーアを筆頭に魔物を撃退してきた。

 危機的状況でも絶望的でも、この少女を中心に全てを退けてきた。


 この村にとっては、それが日常茶飯事。

 だから何の不安も懸念も憂いもなかった。


 ジーアがいれば恐れるものなど何もない。

 今回の危機もきっとジーアが何とかしてくれる。


 みなが敬仰(けいぎょう)する、大陸一の土魔法使いに認められた、このジーアなら、と。




「ジーア、奴らが見えたぞっ! 急いで見張り台に移動してくれっ! 他のみんなはさっきの作戦通りに頼むぞっ!」


「ひゃ、ひゃいっ!」

「「「おうっ!」」」


 一人の村人の号令で、みながそれぞれの持ち場に移動する。

 ジーアを中心に作戦を組み、今までと同じように撃退するために。


 だが、今回は相手が悪すぎた。

 悪すぎたと言うか、そもそも戦いにもならなかった。


 何故ならその相手が、



 トンッ


「あれ? 着いたのはいいけど、魔物の姿が見当たらないんだけど」



 ジーアたちでも手に余る、謎の魔物相手に――――



「ん、気配はある。だからもっとよく探す」

「気配? ちょっと待ってて」



 ――――ここまで無双している、蝶の英雄だったからだ。



 そもそも戦いとは、実力が伯仲している者同士で成立するもの。

 そこに如何ともし難い差があったのなら、この先の結果はわかり切っていた。






『うぇっ! 3体って聞いてたのに2体しかいないよっ! なんでぇっ!?』


 見張り台の中からそっと顔を出し、報告と違う事実に驚くジーア。


 3体と聞いていた魔物が何故か2体で、村を見下ろす上空に留まっている。

 両方とも黒を基調とした風貌で、背中に羽根が生えている。


 間違いなく、さっき村を襲ってきた()の魔物だ。

 サイズは大きいが、その他の特徴が一致している。



『も、もしかして1体はどっかに行っちゃったのかな? なら魔物さんが減って良かったかも。でもなんかさっきの魔物さんと違うような……』


 シュっとした体型は一緒。特にヒラヒラしている魔物の方は。

 けど羽根が4枚も少ないし、足だって2本少ない。



『あ、あわわ、あ、あれきっと蝶の親分さんだよぉ~っ! 仲間がやられて仕返しに来たんだよぉっ!』


 心音が一気に跳ね上がる。

 恐らくさっきの蝶よりも、ずっと強敵だと本能が訴えてくる。



『で、でもたったの2体だよっ? みんなもいるんだから大丈夫だよねっ? さっきみたいに頑張れば大丈夫だよね? ね?』


 鼓動を抑える様に、手で胸を押さえ、気持ちを落ち着かせる。

 きっと大丈夫。今回も大丈夫と、自身に暗示をかける。


 争いごとが苦手なのは自分でも理解している。

 一日中、土をいじってた方が性に合っている。


 けど、それとこれとは話が別だ。

 戦えるチカラがあるのならば、戦わなければならない。


 

『そうやってクロ様は教えてくれたんだっ! だからクロ様が留守中はわたしが頑張るんだっ! そして今度も村を守れたら、わたしは本当の弟子になるんだもんっ!』


 自分に言い聞かせるように、更に自己暗示を重ねる。

 憧れのあの人の弟子になると、勝手に妄想して、モチベーションを上げる。


 これもいつもの事。

 こうやっていつも村を守ってきた。

 こうやってご褒美を用意することで、最大限の実力を発揮してきた。

 


『ふぅ、だから大丈夫だもん。今回もきっと大丈夫……』


 早鐘を打っていた胸の鼓動が鎮まる。

 敵を迎え撃つための、心の準備が終わる。



『よ、よしっ! 行っくよぉ~っ!』


 そんなジーアの目には、敵に立ち向かう強い意志が見て取れた。

 どんな相手でも勝てると言う、断固たる気迫に満ち溢れていた。



 だが、そんな強固な意志は――――



「よっと」


「あひゃ? あわわわわわ――――っ!!」



 一瞬にして打ち砕かれた。

 みんなの放った魔法は、空中で消滅させられ、全て跳ね返されてしまった。



 そして現段階でジーアの持つ、最強の土魔法の岩蛇エリザでさえも、



「おまけで」


 ズババババ――――――ンッ!


「ひ、ひえ――――っ! あばばばばっ!」



 見えない何かに細切れにされて、あっという間に霧散してしまった。

 

 歯が立たないどころの話ではなかった。

 そもそもこの場には、戦いが起きた()()すら残らなかったのだから。






スミカの第一印象はきっとこんなものですね。

次回は村人を返り討ちにした、その後の話です。

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― 新着の感想 ―
[一言] >『そうやってクロ様は教えてくれたんだっ! だからクロ様が留守中はわたしが頑張るんだっ! そして今度も村を守れたら、わたしは本当の弟子になるんだもんっ!』  そのクロってのとナジメは、ど…
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