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『剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?』  作者: べるの
第15蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編
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チンプンカンプン

チンプンカンプンって、久し振りに見ました。

今回のマヤメの心情の事です。





「ん、なんでメドは大人しく見てる。それと澄香はどうしてここに? フーナはどうしたの? なんでマヤはまだ動ける? あとマヤの頭に付いてるのなに?」


 橋の上のメドや、目の前の澄香。さっきまでフーナがいた湿原の向こう。それと頭に生えた何かを触りながら、息継ぎなしで一気に質問する。

 目覚めた時の状況が、劇的に変化していて混乱する。



「いや、そんなに聞かれても、あまり時間ないよ?」 

「ん? 時間ない。なんで?」 


 見るからにソワソワしている澄香。

 さっきから湿原の向こうを気にしている。


「あっちは実体分身に任せてるんだよ。なんかフーナが話がしたいって言うから、その隙をついてこっちに来たんだよ。なんか変な感じの影が見えたから」


「ん、変な影」


 それは『ククリナイフ弐 隠遁式』を使用した影響だとわかる。


「そ、だから試しに『発光』の能力で一気に照らしたら、パッと掻き消えて、その中からマヤメとメドが出てきたんだよ。で、衰弱したマヤメには、そのアイテムを着けたんだ」


「ん? これ?」


 一本だけヒョイと長い、髪の毛のようなものを引っ張る。


「そう。その効果は後で説明するよ。それも試しに使ったものなんだけど、今のところ問題なさそうで良かったよ」


 安堵した表情に変わり、ポンポンと頭を叩く。


「ん、やっぱり澄香が、マヤを――――」

「あ、あと、メドの事なんだけど」 

「ん」

「話があるって」

「ん?」


「ん」


 澄香に言われメドに視線を向けると、軽く頷いている。

 表情からはなにも読み取れないが、さっきよりも敵意が薄れたのだけはわかった。


『ん――――』


 だけど、


「じゃ、そんな訳だからもう行くよ。あの感じだともう戦わないだろうし」


 チラとメドを一瞥して背中を向ける澄香。

 視線はフーナがいるであろう方向を見ている。


「ん、待ってっ!」

「なに?」


 ここを離れようと踵を返す、澄香の背中に声をかける。


「ん、まだ終わってないっ!」

「なにが?」

「マヤとメドの戦い」

「えっ!? でも、マヤメではメドに――――」

「んっ! そんなの理解してるっ! でもまだ終わってないっ!」


 澄香、そしてさっきまで戦っていたメドを見て声を張る。


 それは強がりや、負け惜しみなどでは決してない。


 敵わないのは最初からわかっていた。 

 手を抜かれてるのも途中から気付いていた。


 でもそうじゃない。


 このまま助けてもらうだけでは、今後一緒にいられない。

 これからも何かあるたびに、きっと救いを求めてしまうから。


 だって私は助けてもらいたいのではなく、ずっと傍にいたい。

 他のシスターズのように、胸を張ってシスターズを名乗りたい。

 

 このまま負けるわけにはいかない。

 助けを期待するだけの存在にはなりたくない。


 だから私は戦う。

 心まで負けてしまっては、この先もずっと独りになるから。 



「ん、ワタシもそれでいい。あなたが納得しないならまだやる」


 見ているだけだったメドが、ようやく口を開き返答する。 

 

「ん、なら今度は――――」


「ちょっと待ったマヤメっ! これ以上続ける理由ってなに?」


 メドと私の間に入り、どこか納得できない表情の澄香。


「ん………… これからのマヤに必要なこと」

「必要って?」

「ん、覚悟みたいなもの。それと悔しい」


 メド、そして澄香の目を見てそう答える。


「…………わかった。ならマヤメが納得できるまで戦いなよ。でも今度は助けに来れないよ? フーナもようやく本気になったっぽいし」


「ん、それでいい。マヤはきっと勝つから心配しないで」

 

「そう。でもまた無茶したら本気で怒るからね? それじゃあ、私は行くよ」


「ん、ありがとう。澄香」


 遠のく後ろ姿に頭を下げて感謝する。

 羽根を揺らして去っていく、大きな背中を、また追い駆けたいと願って。

 


「ん、それじゃ始める。今度は魔法と格闘も使う」


「ん、望むところ」


 こうして澄香が去った後で、メドとの再戦が始まった。


 今度は誰かの為にだけ、じゃなく、私自身の未来の為に戦う。



――――



 ※スミカ視点。


「こっちは何とかするから、マヤメも頑張りなよ。どんな理由があるか知らないけど、その覚悟は大切な人が喜ぶだろうから」


 湿原を少し離れたところで、さっきのマヤメを思い出す。

 感情の起伏がわかりにくい分、逆にその本気さが伝わった。

 

 本音を言えば心配でしょうがなかった。

 メドからは敵対する意思がないように見えたが、それでも不安を払拭できない。


 私が間に合わなければ、あの時マヤメは活動を停止していただろうから。



「また無茶されても、私は駆け付けられない。もう余裕がないんだよね」 


 さっきマヤメに説明した通りに、実体分身をフーナの元に残して駆け付けた。

 提案がどうとか言っている隙に、気配を分身体に移し、本体の私は透明化して、二人の戦い場に急いだ。


 その道中に組み合っている二人から暗闇が溢れ、それに飲み込まれた。

 私はその光景を目の当たりにし、絶句した。

 

――


「な、なんなのこれ?……」


 小さなブラックホールのような闇の空間を前に、一瞬言葉を失った。


 そこでなりふり構わずに『発光』の能力で最大出力の閃光を放ってみた。

 暗闇に対抗するには光だろうと、あの時はそれしか考えられなかった。


 結果的にはそれで二人を救出することに成功したが、マヤメだけが無事ではなかった。


 橋の上に横たわったまま、全く動かないマヤメ。

 白い肌が侵食されるように、影の色に変色していく。


 まるで存在そのものを上書きするように、黒く塗り潰されていく。



「ん、まさかこんな事になるなんて……」


 その脇でメドは、私がいる事にも気付かずに茫然としていた。

 メドにとってもきっと、予想外の出来事だったのだろう。



「あのさ、今は休戦しない?」


 何か手立てがないかと頭を巡らしながら、立ち竦むメドに提案する。


「ん、それでいい」

「うん、ありがとう。それでマヤメはどうしてこうなったの?」

「ん、ワタシに抱き着き、自分の胸にナイフを刺した」

「自分に? なんで?」

「ん、きっとそれで発動するアイテムなんだと思う。自分の命を燃料にワタシを閉じ込めたんだと思う」


 マヤメの傍に落ちている、黒いナイフを指差しそう告げる


「命を燃料に、か? わかった。ならもしかしたら、これで――――」


 アイテムボックスからあるものを取り出し、マヤメに装着する。

 黒に侵食されていた肌が、瞬く間に肌色に塗り替えられていく。


「ん…………」


 その直後、マヤメが僅かに身じろぎをした。

 意識は戻らないが、どうやら窮地を脱したようだ。



 私がマヤメに使ったアイテム、それは、


『メンディングロッド』


 マシン系に装着する事で、修理と補給を同時に行うアイテム。

 長さ20センチほどで、普段は先端が垂れ下がったロッド。

 装着箇所に合わせて色が変化し、周りから目立たなくする

 夜の時間帯に充電し、充電中は雷のような形状で立っている。




「ふぅ~、これで後は様子見だね」


 全身の色が、いつもの肌に戻ったのを見てホッとする。

 これで最悪の状況にはならないだろう。

 頭に着けちゃったので、アホ毛に見えるのはご愛敬だけど。



「んっ! 何そのアイテムっ! もしかして蝶の英雄も…………」


「で、目を覚ましたらどうする? まだ戦うってなら、私が二人を相手にするよ? マヤメに要因があったとしても、ここまでされたら黙っていられないからね』


 驚くメドの言葉を遮り、キッと威圧を込めて睨む。


「ん、戦わない。もうわかったから」

「本当に? でも、わかったって何?」

「ん、それはまだ言えない。でも戦わない」

「………………そう」


 何か腑に落ちないが、戦う意志がないのならそれでいい。

 今はメドを怪しがるよりも、マヤメの方が優先だから。 



「…………ん、それと――――」

「なに?」

「もし目が覚めたら、話したいことある」

「マヤメに?」

「ん」


 横たわるマヤメを見ながら、コクンと微かに頷く。


「う、ん………… 眩しいっ!」


 ちょうど話が終わったタイミングで、その当人が目を覚ました。


「眩しい? もしかして寝ぼけてる? それとも――――」

「んっ! 澄香なんでっ!? ん? ここは橋の上?」

「そうだよ。体は大丈夫みたいだね?」


 眩しいとか言ってたけど、私も含め、周りも見えているようで安心した。


 そしてその後、メドとの再戦を望んでいたから、私はフーナのところに戻った。

 今まで感情をあまり出さなかったが、その目に確固たる決意と覚悟を感じたから。


 だからか、メドとの再戦は今のマヤメにとって、きっと大事なものだろうと察した。

 不安は拭えないが、それでも生きようとする、強い意志を感じたから。



「よし、なら次は私の番だ。こっちは色々とキツそうなんだけど、その分収穫もあったから文句も言ってられないからね。それとキューちゃんたちの件もあるし」


 メニュー画面、そして、さっきのマヤメを思い出して、一人気合を入れなおした。




今回でマヤメとメドの戦いはあらかた終了です。

その後の話はどこかで語られる予定です。

次回はスミカの話に戻ります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 戦ってはいるけど未だ喧嘩の範囲内なのに、マヤメさんだけは命を燃やし尽くすの感じて、かなり危なくてヒヤヒヤしましたね。スミカさんがなんとか来られて処理が間に合って本当に良かったです〜 しかし…
[一言] >夜の時間帯に充電し、充電中はピンと立っている。 >頭に着けちゃったので、アホ毛に見えるのはご愛敬だけど。  んー。  充電中はピンと真っ直ぐになるより、雷の形になった方が“らしい”気もし…
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