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『剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?』  作者: べるの
第15蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編
466/593

強襲!? ピンクの災害幼女

異世界人同士の初対面です。

色々と常識外の二人ですが、初の接触は果たして。




「よし、なら先回りしようメドっ!」

「ん、それが最善」


 私とメドはインビジブルの魔法で姿を消し、蝶の冒険者が来るのを待っていた。 

 そして宿の廊下で、メドに似た少女との会話を盗み聞きする事に成功した。

 断片的だったけど、街を見てからシクロ湿原に向かうとの情報を手に入れた。



『はわわ~、それにしても本当に――――』


 美少女さんだねっ!


 メドの大人バージョンのような可憐な少女に、小悪魔的で凛々しい蝶の少女。

 タイプ的には光と影みたく正反対だけど、その違いがまた良かったりする。


 ただ蝶の少女の頭に、キュートードが乗っている理由がわからないけど。



「ん、フーナさま。早く行くっ」

「はへ? う、うん、わかったっ!」


 二人を覗き見ている私の服を引っ張り催促するメド。

 少しだけ語尾が強く聞こえたのは気のせいかな?


 

――――



「さ~て、それじゃあの子らが来るにはまだ時間があるから、キュートードでも狩ろうかな? 昨日の分は全部調理してもらったしねっ!」


 蝶の少女たちよりも先に到着したシクロ湿原を見渡す。

 相変わらずたくさんの花びらが水面を華やかに漂っている。


「ん、わかった。でもほどほどに」

「え~、でもあんなにたくさんいるんだよ? 昨日と同じくらいなら大丈夫だよ」

「ん、確かにフーナさまの言う通り。でも――――」

「大丈夫だってっ! あの杭の外にはもっとたくさんいるんだからねっ!」

「ん、杭?」

「それにアドたちもたくさん食べるでしょ?」

「ん」

「あとメイドのシーラちゃんだって好物って言ってたしっ!」

「ん、なら仕方ない。わたしも手伝う」

「よしっ!」


 少しだけ心配するメドを説得して、二人でキュートードを狩る事にした。


 お屋敷に帰った時の、みんなの笑顔を思い浮かべてウキウキしながら。

 メドもシーラちゃんの名前を出したら、やる気になったみたいだし。


「なら目標は100匹ねっ! どっちが早く狩れるか競争しようよっ!」

「ん、魔法は使っていい?」

「いいよっ! ただ範囲魔法はダメだよ? 跡形もなくなるから」

「ん、わかってる。素材がダメになる」

「で、もしわたしが勝ったら今日は膝枕してくれる?(素っ裸で)」ボソ

「ん、勝ったら」

「よしっ! 更にやる気が出たっ! 今日は色んな意味でご馳走だぁ~っ!」


 グッと拳を握り大きくガッツポーズをする。

 因みに握っている拳は萌え袖のせいで見えない。


 でもこれで言質が取れたっ!


 今夜はメドのツルツルのおみ足をスリスリできる。

 うつ伏せで膝枕してもらって、思う存分メド成分を堪能できる。


 間違ってペロペロしても良いよね?

 寝ぼけた振りして誤魔化せばいいよね?

 美味しかったってお礼を言えば、きっと許してくれるよね?


 ザバ――――ンッ!


「うりゃりゃりゃりゃ――――っ!!」

「んっ! フーナさまズルイっ!」


 メドが魔法を唱えるより早く湿原に飛び込み、片っ端からキュートード狩っていく。

 水面を裂くように爆走し、その余波で浮いたキュートードに、風の魔法を撃ち込んでいく。


「ん、負けないっ!」


 私よりも一歩遅れ、メドも火の魔法『ファイアアロー』を数十本周囲に展開し、水面に浮かぶ花びらに撃ち込んでいく。あっという間に水面に、大量のキュートードが浮いてくる。


「うわっ! そっちの方が早いっ!」

「ん、フーナさまには負けない」


 メドの方を振り向くと、若干あっちの方が早い気がする。

 魔法一発一殺に対し、私の場合は走りながらだから遅れるようだ。

 そもそも魔法の扱いはメドの方が上なので、更に分が悪い。



「スピードアップっ! うりゃりゃりゃ―――――っ!」


 ズババババ――――ンッ!!


「んっ!」


 シュパパパパ――――ッ!!


「よしっ! もう少しだっ!」

「んんっ!」


 私とメドの白熱した勝負は、私が追い抜いたままで逃げきれそうだ。


「あと5匹っ!」

「ん、マズイっ!」


 このままいけば、今夜はメドの生足を独り占めだ。

 ペロペロサワサワプニプニと、この世の天国を堪能できる。


「ぐヘヘヘヘヘ――――っ! あと1匹っ!」

「んっ!」


 なんて、ここに来た目的も忘れ、夢中になっていると――――



「あのさぁ、ここ狩りが禁止って知ってる?」

「ん、ダメ」


「へ?」 

「ん?」


 唐突に現れた二人に声を掛けられ、顔を見合わすメドと私。


 一人はメドを大人にしたような少女。

 もう一人は…………


「狩りをするのは自由だよ、ただし他の場所ならだけど。それと、そんなゲーム感覚で倒されるキューちゃんの気持ちを考えた事あるの? 命を何だと思ってるの?」


 もう一人は、黒のゴスロリドレスに、羽根が生えている美少女だった。

 しかもかなりご立腹の様子で、険しい表情で睨んでいた。



『ま、間違いないっ! この少女は――――』


 この世全ての幼女の敵の、蝶の英雄だっ!



――――



「ねぇ、聞いてる? 私の話」


「………………」

「………………」


 マヤメと私が現れてから、顔を見合わせて固まる幼女二人。

 時折眉が動くから、何かしらの意思の疎通をしている事はわかる。



『…………この子供は一体何者?』


 水飛沫を見付けてここまで来たが、その道中で普通じゃない事は理解した。


 ここはまだ水深が浅いとはいえ、何の抵抗も感じる事なく疾走する子供。

 サイズが異常に大きい、ピンクのローブを身に纏っている。


 もう一人は、服装の色は真逆だけど、マヤメと似た容姿の子供。

 無数の火の魔法の矢を扱い、難なく全てを命中させている。


 こんな子供が普通の訳が無い。

 脚力にしても魔法にしても、私がこの世界で見た中でも上位のものだ。



「………………きい……て、るよ」


「え?」


 ピンクの子供が何かを呟いたけど聞き取れない。


「なに? もう一度言って? 言い訳なら一応聞くけど」


「聞いてるよっ!」

「んっ!」


 突如ギンと私を睨み、鋭い視線を向ける二人。


「なんだ聞こえてるじゃん。なら――――」


「聞いてるよっ! あんたが子供たちを無理やり働かせて、言う事を聞かないと、()()()()しちゃうって脅している事をっ! その隣の美少女もそうなんだってっ!」


「ん? フーナさま。ちょっと話が違う?」

「ん? マヤって脅されてるの?」


「はぁ? それどこで聞いたの? そもそも今の話と関係は………… ある、みたいだね? あなたにとっては。今ので良く分かったよ」


 憤るピンクの子供を見て納得する。

  

 何故なら、その子供から発する殺気は、この世界でも、元の世界でも感じた事もない程強力なものだったから。

 私のように見た目と中身は別物だとわかったから。



「マヤメっ! 一旦避難してっ!」

「んっ!」


 マヤメが能力を使って、私の足元に消えた。

 これなら数分間は安全でいられる。



 ギュンッ!


「この色情の英雄めっ!」


 ピンクの子供が一足飛びで、私の間合いの中に飛び込んでくる。

 いつの間にかその手には、長柄の杖が握られていた。



「って、魔法使いの格好なのに接近戦ってっ! しかも誰が色情だよっ!」


 ギリギリで反応し、攻撃が来るであろう、左脇腹を庇う。

 重さ10tの透明壁を、丸盾のように展開して。


 ところが、


 ドガンッ!


「ぐっ! って、防げないっ!?」


 ギュンッ!


 全く威力を相殺する事なく、小石のように飛ばされる。

 普通ではないと感じていたけど、想像以上に強い。



 タンッ


「マヤメ大丈夫っ!」


 透明壁を足場にし、数十メートル飛ばされたところで着地する。

 その際に、一緒に飛ばされたマヤメの無事を確認する。


「ん、問題ない」

「ならそのまま隠れててっ! 隙を見て透明壁で覆うから」


 追走してくるピンクの子供を視界に収めながら、足元の影に声を掛ける。



「んっ! 澄香、左に飛んでっ!」

「っとっ!」


「ん、外したっ!」


 私が立っていた水面に、無数の炎の矢が突き刺さる。

 その矢はもう一人の、マヤメに似た子供が放ったものだった。



「んっ! 今度は前っ!」

「わかってるっ!」


 矢を避けると否や、待ち構えたようにピンクの子供が追って来る。

 恐らくだけど、魔法の矢で回避先を誘導されていたようだ。



『ふっ! 中々に良い連携だね。動きも魔法もかなりのレベルだよ。だけど気になるのは、そんな実力者がなぜ私を目の敵にするの?』


 攻撃を避けながら、その横顔を見るが、見覚えが無い。


 ただ分かっている事は、相手が私を敵と認識した事。

 そして私が相手を敵と認識した事。


 戦う理由はそれだけあれば十分。

 双方の意志が合致すれば、それは正当な理由に足り得る。

 


「ん、思い出した澄香っ!」

「何を?」


 不意に足元のマヤメが叫ぶ。


「あの子供はAランク冒険者のフーナとその家族のメド」

「………………マジ?」

「ん、マジ」

「はぁ、なんでそんなのに狙われるのかわからないけど――――」

「ん? けど?」


 向かってくるなら返り討ちにするしかない。

 私もあの子供たちに苛ついているんだから。


 キューちゃんたちを、無作為に無作法に無造作に狩ったことは許せない。

 まるでゲームのように競って、か弱い命を無情に摘むのは腹が立つ。


「だったら私も――――」


 その幼い命をゲームのように、(もてあそんで)んでやろうか。



色々と噂を曲解して怒っているフーナです。

ただ単に羨ましいだけなんですけどね……

次回は一度街のお話に戻ります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まぁ、膝枕の魅力に気を取られて周りを見えなくなる気持ちも判らなくもないw しかし意外に両方もそれなり怒ったぽい?
[一言] どっかのギルマス&サブマス『っ!!?』  言い知れない悪寒が、背筋を這い回ってそうですわな。  回避しようとしていた事が、別の所で結果的に発生。  つまり、面倒事を他所へぶん投げた結果にな…
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