謎の腕輪の公開
今まで隠していた、謎の腕輪の話をするそうです。
それと400話も超えたのでタイトルとあらすじを変えてみました。
殆ど変わってはないですが、そろそろ変化が欲しかったので。
「なんですか? これは。これもマジックアイテムでしょうか?」
ナゴタがテーブルに出した謎の腕輪に手を伸ばす。
「あっ! 一応触らないで。何があるかわからないから」
触れられる前にすぐさまアイテムボックスに収納し、再度私の前に出す。
「ねぇねや。もしやそれは危険なアイテムなのか?」
その様子を見ていたナジメが、鋭い視線を腕輪に向けながら聞いてくる。
「危険って言うか、効果がわからないって言った方が合ってるかも。触れる分には問題ないとは思うけど、一応は用心した方が良いね」
5つの腕輪に視線を向けてそう話す。
「効果が分からない、ですか…… そんな物をなぜお姉さまが?」
私とナジメのピリとした雰囲気が伝わったのか、神妙な表情に変わるナゴタ。
「うん、これを身に着けていたのは魔物だったんだけど、その魔物とは、みんなも戦ってるんだよね。正確にはその魔物の取り巻きみたいな魔物と」
「え? ボクもですか、スミカお姉ちゃん?」
まさか自分も含まれるとは思わなかったのだろう。
ユーアがキョトンした顔になっている。
「あっ! スミ姉っ! もしかして、シクロ湿原で戦った、あの消えるリザードマンの事言ってるんじゃないっ! アタシとリブさんと、スミ姉で倒したっ!」
ハッとした顔で立ち上がり、声高に話し出すラブナ。
「うん、正解。で、ユーアはサロマ村で戦った、最後に出てきたオークを覚えてる?」
「う、うん、あの早くて見えないのと、おっきいのですよね?」
「うんそうだね。で、次に、ナゴタとゴナタ。再生能力の高いトロールは覚えてるよね? ビワの森の山の頂上にいた」
ユーアを撫でながら、姉妹の二人にも確認を取る。
「はい、もちろん覚えてます。あんな巨大でしぶといトロールは初めてでしたから」
「うん、うんっ! それとお姉ぇが潰したのを見て、ワタシたちが気を失った事もなっ!」
「あ。そう言えばそうだったね、あの時は、ごめんね?」
ゴナタの一言で思い出し、その時の事をまた謝る。
「いいえ、それはいいんですけど、それとこの腕輪が関係あるって事なんですね? 今までのお話を聞いていると」
「うん、そうなんだ。実は――――」
「わしはまだ戦っていないのじゃ」
話し出した矢先、ナジメがボソと呟く。
「え?」
「わしは、素早いオークもデカいオークも、消えるリザードマンも、トロールとも戦っていないのじゃ。わしだけなにも知らぬのじゃ」
今度は聞こえるように言って、プイとそっぽを向いて腕を組む。
もしかして、仲間外れにされたとか思っているのだろうか?
「いや、戦わない方が良いって。あれは個人でどうこうできる種類の魔物じゃないから。この世界の魔物とは一線を画す強さの異常種の類だから」
「その異常種たちは、わしでも倒せぬ魔物なのか? 全力のわしが戦っても」
さっきよりも鋭くなった視線で私に問い掛ける。
「それは――――」
どうなんだろう。
相性の問題もあるけど、本気のナジメなら圧倒できる気がする。
ナジメの能力と、多彩な魔法と掛け合わせた戦略の数々で。
それにナゴタとゴナタでも充分戦える。
あの限界突破した、特殊能力を使いこなせれば。
ユーアやラブナとハラミも、チームで戦えば、かなり善戦出来そう。
ハラミの機動力と、ユーアの射撃、そしてラブナの混合合成魔法とかで。
「心配する事ないのじゃよ、ねぇねよ」
「え?」
「そうですよ、お姉さま。たまには私たちに頼ってもいいと思います」
「ナゴタ?」
「そうだぞ、お姉ぇっ! ワタシたちだって強くなってるんだっ!」
「ゴナタも?」
「だからアタシたちに、このアイテムを渡したんでしょっ!」
「う、ラブナ……」
ナジメの一言で考えに没頭していた私に、全部お見通しだとばかりに、的を得た答えをそれぞれにくれるみんな。
更に、
「スミカお姉ちゃん。いつもボクたちとみんなを助けてくれてありがとうっ! ボウとホウちゃんからも聞いたんだけど、スラムの大きな虫もスミカお姉ちゃんが倒したって言ってたんだっ! ビエ婆さんもスラムの子たちも、みんなありがとうって言ってたんだっ! だからね――――」
たどたどしくも、一生懸命に訴えるユーア。
「――――だからね、今度はボクも戦うっ! だってボクは自慢のスミカお姉ちゃんの妹だし、ボクだって、この街の英雄のパーティーメンバーだからねっ!」
最後までハッキリと言い切り、グッと小さな力こぶを作って見せる。
「ふふっ」
そんな可愛い仕草で参戦宣言されても、正直頼もしくは見えない。
むしろ癒されるぐらいだ。
それでも私は知っている、そしてこれからも期待している。
ユーアには、何か特別な力がある事を。
誰にも負けない、戦う強い心を持っている事も。
だから私は小さくても可愛い妹を頼もしく感じるし、これからも守って行く。
ユーアの存在と、その想いと意志を。
だから、
「うん、わかった。ユーアもみんなと同じように頼りにしてるからね。だから私が困ったらユーアも助けてね」
小さなユーアの手を握りながら、笑顔でそう告げる。
「うんっ! ボクもハラミもラブナちゃんも、みんなでスミカお姉ちゃんを助けるっ!」
私の手をグッと握りしめて、力強く答えてくれた。
それを見て、守っていたはずが、守られていたんだなって、しみじみと思った。
「それじゃ、この腕輪の話と、今起こっている事、そしてこれから起こるであろう出来事を、私の考えも含めてみんなにも話すね」
以前よりも頼もしく映る仲間たちを前に、私は何の逡巡もなく話を始めた。
―
「先ずは、この腕輪なんだけど、実はさっき言った魔物が着けていて、私が後から回収したものなんだけど――――」
一つの腕輪を手に取り、みんなに見せる。
「はぁ? スミ姉。さっきもおかしいとは思ってたんだけど、アタシが見た白いリザードマンはあり得ない大きさだったのよ。そんなサイズの腕輪を着けてたって本当なの?」
話の冒頭からいきなりラブナから質問が飛ぶ。
「うん、言いたい事は分かるし、それに良いところに気付いたね。そもそもこの腕輪の作りからして異常なんだよ。それじゃ似たようなもので再現するけど…… あ、ユーア。ラブナに水着を貸してあげて」
良い見本を思い出して、ユーアにお願いする。
「はい、ラブナちゃん。まだ洗ってないけど」
マジックポーチから、さっきまで着ていた水着を渡す。
「で、これをどうするのよ? まさか着ろって言わないわよね?」
「その通りだよ。察しがいいねっ!」
水着を手にしたまま、ソワソワしだしたラブナに頷く。
「い、いや、だってアタシとユーアとじゃ、色々と大きさが違うじゃないっ! そもそもまた水着に着替えるのも面倒よっ!」
小さな水着を開いて、声高に反論するラブナ。
まぁ、確かにユーアとラブナとではサイズが合わない。
そもそも胸部装甲『AA』のユーアと、ラブナの『D』もそうだし、体つきやお尻の肉付きにしても、大人の丸みを帯びてきたラブナと、色々と真っすぐなユーアとはかなり違う。
それでもそのぐらいの僅差であれば、問題なく着れるのが、自動調整付きの装備だ。一部例外もあるけれど。
「いいから着てみなよ。それとそのまま服の上から着れば大丈夫だから」
「え? これを着ろって…… しかもこの上から? って……」
疑ってそうな顔で、渋々と体に合わせるラブナ。
すると、
「あっ! 何これ? サイズがピッタリっ! も、もしかして、アタシの胸がユーアみたいにぺったんこにっ!? スミ姉と同じにっ!?」
何か勘違いして、モミモミと自分の胸を揉んで確かめる。
ってか、どさくさに紛れて余計な事言わなかった?
「良かったわっ! ちゃんと残ってたわっ!」
「あ、でもラブナちゃんっ! 代わりに服がなくなっちゃったよっ!」
胸部装甲を確かめ終わったラブナに、ユーアがその変化に気付く。
「へ? あああ――――っ! ほ、本当だわっ! なんでっ!?」
自身の全身を見渡し、水着に着替え終わってる事に驚愕するラブナ。
「ね? これでわかったでしょ? 私が持っているアイテムの異常性に」
「う、うん」
「なら、それを知った上で、この腕輪も似たような物だと言ったら?」
謎の腕輪をもう一度持ち、ラブナに見せる。
「そ、それは、色々とヤバいわね………… そんな高度な技術のものを、魔物と、そしてスミ姉以外の誰かが持っているって事は」
そう言って腕輪を恐々と眺めるラブナ。
どうやらこれで、その危険性に気付いたようだ。
腕輪の効果や魔物も脅威ではあるが、それはただの副産物に過ぎない。
それよりも危惧しないといけない事は、この世界ではオーバーテクノロジーの部類のアイテムを所持している、個人か組織が存在するって事だ。
この事実こそが今、最も私が恐れる事だ。
謎の腕輪。
長々と引っ張ってしまいましたが、少しづつ情報を開示していきます。
(ここまで来るのに長くてすいません……)