表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
353/593

これも凱旋?きっと凱旋?

街へ戻るだけのお話回です。

またリブが騒いでいます。

それと、討伐の報告を待ちわびるあの人も。




「はぁ…………」

「どうしたのリブ。溜息ばっかりつくと幸せが――――」

「はぁっ!?」

「って、今度は溜息じゃないみたいよ? スミ姉」


 ラブナと二人でさっきから情緒がおかしいリブを見やる。


「そりゃそうでしょっ! あなたたちといると色々と常識がおかしくなるのよっ!」

「リブ。あまり常識に拘ってると自分の可能性を――――」

「そんな話聞きたくないわっ!」

「リブさん。いちいちスミ姉のやる事に――――」

「それも聞き飽きたわっ!」

「リブ。人の話を聞かない人は、いざって時自分の話も――――」

「ああもうっ! 何で私が説教されるのさっ!」


 もの凄い剣幕で叫びだすリブ。

 一体何が気にくわないのだろうか?


 もしかして女性特有の日?



「違うわよっ!」

「あれ? また声に出して――――」

「――――たわよ、スミ姉。あと小言が多過ぎだわ」

「そ、そうなんだ教えてくれてありがとうラブナ。あ、お替りは?」

「ちょうだいスミ姉っ! コクコク」


 お替りを所望だったので、ラブナのグラスに果実水を注ぐ。

 朝から天気もいいし、日差しも近いから余計喉が渇いちゃうよね。


「そうだ。ケーキもあるけど、紅茶も出す?」

「う~ん、アタシはこのまま冷たいので良いわ、スミ姉」

「じゃ、私はいただこうかな?」


「それよっ! それがおかしいのよっ!」


「え?」

「へ?」


 紅茶を注ごうとした瞬間、私を指さし金切り声を上げるリブ。

 何だろう。今度は反抗期かな?



「あのさ、リブ。あまり人のことを指さすのは――――」


 さっきからマナーの悪いリブに注意しようと口を開くが、


「ほんっとうにっ、何やってるのさっ! 何で空を飛びながらテーブルセットでお茶してるのさっ!」


 それさえも遮られ、更にヒステリーを起こすリブ。

 まぁ、今の状況は、大体はリブの説明口調の言う通りなんだけど。


 だって街の流通に影響を与えていた元凶は退治したんだもん。

 後はシクロ湿原の景色を満喫しながらのんびり帰りたいよね?


 そんな訳で、帰りは透明壁スキルに乗って、上空からお茶をしながら帰るところだ。



「何でって………… 一仕事終わったから?」 

「それでいいんじゃない? スミ姉も帰りくらいはゆっくりしたいわよね?」


「~~~~~~っ!!!!」 ぷるぷる


「そうだね。それにここからだとシクロ湿原も見渡せるし、きれいで可愛いキューちゃんたちの花も見れるからね」


 空中から壮大で広大な湿原を見渡し、そして水の中にいるだろうキュートードを想って心を休ませる。ラブナの言う通り、アバターの私だって精神は休息を取りたいのだ。



「だからリブも帰りはのんびりしなよ。お替りならいくらでもあるから」


 ずっと立ったままのリブの前に紅茶を注ぐ。

 ついでにレーションのケーキも添えてあげる。


「はぁ~~、もうどうでも良くなってきたわ…… でも帰ったら色々聞かせてもらうからねっ! スミカの魔法の事もラブナちゃんの属性魔法の事もっ! ゴクゴクッ」


 長い溜息の後で出された紅茶を一気に煽る。


「ブブ~っ! 色々聞くのは禁則事項よ、リブさんっ!」

「ブホゥッ~~!! ゲホゲホッ! もう、本当に色々と納得できないわっ!」


 いつものラブナの警告に、口に含んだ紅茶を吹き出し不満爆発のリブ。

 その光景はたった半日でもう恒例になりつつあった。



 私たちはそんなやり取りをしながら、数時間ぶりにノトリの街の外門に戻ってきた。

 散歩よりも短い時間だけど、これも凱旋って言うのかなって疑問に思いながら。



――――――――



「あれ? お前たち帰ってきたのか…… ああ、それも正解だな。じきに国への要請で討伐隊が来るだろうからな。だからって別に恥じる事はないぞ? 誰だって命は惜しいからな」


 門に着いた途端、出る時にも会ったノトリの街の門兵さんに、励ましなのか、慰めなのか、良く分からない気遣いをされる私たち。


「え? あ、ありがとう」

「「………………」」


 まぁ、勘違いしているのはわかるけどね。


 通常であれば往復だけで半日を使う距離のはず。

 なのに、午前中に出て、ケロッとした顔でお昼前に帰ってきたのだから、途中で引き返したと思うのは普通だろう。


 どこもケガしてないし、疲労もあるようには見えないし。


 そして、まだ言い足りないのか門兵さんの話は続く。

 その内容は勘違いしたままだけど。


「まぁ、それは仕方のない事だ。俺もかなり期待してしまったが、あれは忘れてくれ。いくら強い冒険者だといっても、子供だけに任せるのは間違ってたと思うからな。ははは」


「「「………………」」」


 口ではそう言っているが、何となく肩を落としている様にも見える。

 最後の笑顔も無理しているのだとわかる。


「ああ、それとこの街では有名な食い物があってな、特にシクロ湿原で採れる『あしばり帰る亭』で絶品のキ………… うおっ!? な、なんだそれはっ!!」


 話を続ける門兵さんの前にドスンと白リザードマンのボスの半身を置く。 

 半分でも全長は30メートルを超えるから驚くのも無理はない。


「これは――――」

「論より証拠ってね。おじさん、スミ姉が一撃で倒した湿原の魔物よっ!」


 何故か私の代わりにラブナが前に出て指さし説明をする。

 いつもの仁王立ち姿で。


「だから俺はおじさんって歳じゃ…… にしても、コイツはなんなんだっ!?」


 その大きさと異形さに驚愕する門兵さん。


「うん、あのね――――」

「これは湿原に現れた謎の敵の親玉みたいなものよ。小さいのはスミカが捕まえて、私とラブナちゃんで爆発させちゃったから残っていないけどさ。だから暫く湿原は安全らしいわよ。スミカが言うにはさ」


 今度はリブが事細かく門兵さんに事情を説明をする。

 ただし、謎の襲撃者のアヤの存在は伏せたままだ。

 

 って言うか、何で私のセリフを全部横取りするの?



「こ、これを一撃で倒したっ!? それと安全っ!? 本当かスミカっ!」


 二人の説明を聞いて、更に仰天して私に詰め寄る門兵さん。


「うん、確実とは言えないけど私はそう判断してる。理由は事情があって言えないんだけどね…… まぁ、また出たら退治に来るから心配しないでいいよ。その時は依頼して?」


 目の前の門兵さんに冒険者証を渡す。

 って言っても、これ見せないと中に入れないんだけど。通行証の代わりだし。


「あ、ああ、もう名前もパーティー名も覚えているっ! お前のところはリーダーも含めてメンバーは異常だからなっ!」


「異常って…… まぁいいけど」


 すぐさま突っ返され微妙にディスられる。


「で、俺はこれから報告に行って来るっ! 一応事実の確認の手配をしなくてはならないからなっ! お前たち…… じゃなかった、英雄さまは宿でゆっくりしててくれっ! それじゃ後でなっ!」


「え? あ、ちょっと――――」


 一気に捲し立てて全力で駆けだす門兵さん。


 そうするとここの門の守りはどうするんだろうか?

 それとラブナとリブは通行証見せなくても入っていいのだろうか?



「なんだか随分な慌てようだったわね、あのおじさん。仕事ほったらかして」

「いや、ラブナちゃんあれが普通だから。あんな報告とあんな巨大な魔物見たら」


 後ろ姿を見送って、呆れ顔で感想を言い合う二人。

 十分にあなたたちもおかしいからね。



「多分交代を寄越すと思うよ? あの人だけじゃないし。だから私たちは宿に帰ろうよ。マハチたちもエーイさんたちも待たせているんだから」


 二人の背中に声を掛け先に歩き出す。


「いや、待ってるって言っても数時間だけだわっ! しかも早く帰っても、もう終わったなんて信じてくれないわよっ!」


「うん、確かにリブさんの言う通りだわ。なら少し街を見てから戻る? やっている露店とかも結構あったわよ」


「う~ん、でも心配してるだろうから、早く顔見せて安心させたいよね。特にマハチとサワラは直接あいつらと対峙してるから、余計に心配してそうだし。ね? リブ」 


「そうね、冗談はここまでにして、早く宿に帰りましょう。遅い方が良いって事はないからさ」 


 リブもラブナもお互いの顔を見合わせ、私の隣に並んで歩き出す。



 さぁ、これから宿に戻ったら居残り組への報告と祝勝会だ。




次回は謎の魔物の討伐を祝っての祝勝会です。

なのですが、澄香を泣かせるある出来事が……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 何か常識人達が大袈裟だと思われますね、スミカさんの異常識に毒されたかもw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ