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招待されたお家に驚愕しました




 ユーアに手を引かれ、二人の影がなくなる頃、武器屋、雑貨屋などの商業地区を抜け、その先にあるユーアの住んでいる孤児院に着いた。


 近くには教会などがあり、さらにその先には一般地区や少し離れたブロックには貴族街、ここを統治する領主の住む館に続く。



『……やっぱりいるんだよね? 貴族とか領主とか』



 ありがちだけど、もの凄く嫌悪感しかない。

 西洋ファンタジー物を読んでる読者は8割そう思っている。はず。


 だって、


「この平民風情がぁ――!!」 とか

「貴様ぁっ! 誰に向かって口をきいているっ!!」 とか

「俺に逆らってただですむと思っているのかぁっ!?」 とか

「越後屋、お主も悪よのぉっ」 とか


 そんな事言って、権力を盾に偉そうにふんぞり返ってる。

 そんなイメージなんだよね。


 自分が一番偉いと勘違いしてる人種。


 ん? なんか違うのあるって?

 そう? 似たようなもんでしょう。


 そんな奴らにできれば会いたくないし、関わりたくもない。

 絶対に絡まれるし目を付けられる。

 

 私はきっとその良い見本だろう。



◇ ◇ ◇ ◇



 そんな偏見ばかりの自己中的な事を考えてたら、

 ユーアの言う、孤児院に到着していた。




 『ここが、ユーアがお世話になった孤児院かぁーー』



 私は薄暗い中で、孤児院を眺めてみる。


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孤児院に着いた。


ここが孤児院です。どうしますか? 

ピッ『孤児院をみる』


 ――――らしきものがありますね。


どうしますか?

ピッ『孤児院を見る』


廃墟らしきものがありますね。


どうしますか?

ピッ『話を聞く』


誰に話を聞きますか?

ピッ『ボクっ娘』


何を聞きますか?

ピッ『廃墟のこと』



「……スミカお姉ちゃんここが孤児院だよ。廃墟じゃないよぉ」

「えっ?」


 はっ!?

 ま、また声にだしてたっ!?


「あ、ごめんねっ!! ホラーハウスだよね?」


「『HORROR HOUSE』? ちょっと何言ってるかボクにはわからないです」


「えっ?」


 絶対わかっているよね? 

 なんでそんな流暢な発音なの?

 なんで視線が泳いでるのぉ!


「あ、そうなんだっ! ここが孤児院だった()()なんだ。お姉ちゃん勘違いしちゃった」


 私は舌を出しながら、コツンと頭を叩く。


「スミカお姉ちゃん、ここが孤児院ですっ!」

「わっ!」


 び、びっくりしたぁっ!!


 ちょっとお姉ちゃん、妹にそんな目で見られたらショックでまた引きこもっちゃうよ? 5年じゃ済まないよ?きっと。


 でもやっぱり、


 ここが孤児院って、まっ!? 



 ピッ『廃墟を見――』



「スミカお姉ちゃんっ!!」

「わはっ!?」


 またびっくりっ!!

 そんな大きな声も出せたんだねっ!

 でももう夜だからご近所の迷惑になっちゃうよ?


「……スミカお姉ちゃんが、言わせてるんですっ!!」

「あれ?」


 …………またまた声に出てた?



 ――私は思った。


『………………』


 もしかしたら5年もの引きこもりの間、独り言を当たり前の様にしていたんじゃないかと。


 ――私は考えた。

 声を出して話す行為は、返事をする相手が欲しかったのではないかと。


 ――私は悟った。

 その相手はここにいるという事を――――。



「……そうだったんだね、ありがとうユーア」


 私は心から感謝した。

 そしてその小さな体を抱きしめた。


「えっ? えっ!? なんでそうなるんですかっ!!」


 そんなユーアは目をぱちくりさせて、びっくりしていた。




□ □ □ □




 私はもう一度孤児院を見てみる。



 辺りは暗くて灯りが見えない。


 辛うじて教会の前の街灯と、月明かりが申し訳程度に孤児院を照らしている。孤児院の内側に灯りは見えない。人はいる筈だけど。


 建物に窓はあるが、ガラスの代わりに大きな布?で塞いである。

 壁は石造りなのだが所々に亀裂や、穴が空いている。

 屋根があるが壁と大体同じような状況。


 庭らしきところは名前の知らない雑草が生き生きとし、木の囲いがあったのだろう箇所は、腐ったのか朽ちた木がボロボロに立っていた。


 さっき私はふざけた訳じゃなく。

 本当に廃墟にしか見えないのだ。


『――――』


 孤児院とかって、国の補助とか街の義援金みたいなもので運営するもんじゃないのだろうか。それにユーアだって身を削ってまで稼ぎを渡しているはずだ。


 なのに何故こんな状態なんだろう。

 そもそも運営の仕方が違うのだろうか。



「スミカお姉ちゃん、こっちだよっ!」


 私の手を引いてユーアは孤児院の裏に連れていく。


 孤児院がこれだと、ユーアの住み家が心配になる――――


 私は手を引かれ、案内されたユーアの住んでる場所に到着する。


 そこにはただの布を張っただけの――


『………………』


 まるでボロボロのテントのようなものだった。



 そしてユーアに連れられてテントに入る。



 中は小柄なユーアなら5人くらい寝れそうな広さ。

 私と二人で寝ても充分余裕はある。


 もちろん家具などのものは一切なく、代わりにユーアの私物などを入れる大き目な布袋があり、布団は薄い毛布のようなものがあるだけだった。


 『……雨風はなんとか防げそうだけど、暑さ寒さは無理だよね』


 ユーアは最初に何も無いって言ってたけど本当に何もなかった。



「スミカお姉ちゃん、ごめんね何もなくって……。ちょっとお水もらってくるので待っててください。孤児院の井戸から持って来るので」


「あ、いいよユーア、それよりも外の土地って少し借りても大丈夫?」


 私の持て成しをしてくれるユーアを引き留めて聞いてみる。


「うん、孤児院の裏は使ってないみたいだから大丈夫です」

「それじゃ、一緒に私も外いくから、空いてるところ教えて」

「? わかりました。こっちですっ!」


 ユーアを先頭にテントを出て、孤児院裏に案内される。


『ああ、ユーアのテントの後ろが広く空いてるのね』


 そして、そのテントの後ろは薄暗い雑木林になっていた。


「それじゃ、ユーアは危ないから少し後ろに下がっててくれる?」

「? はいわかりました。スミカお姉ちゃん」


 ここは当初の目的であった『ユーアを守る』の絶好の機会だっ!!

 きょうは散々ユーアに残念な目で見られたし、呆れられたし怒られた。


 一世一代の名誉挽回のチャンスだっ!!


『よしっ!』


 お姉ちゃん頑張っちゃうぞ――っ!!!!


 私は必要のない腕まくりをし、

アイテムボックスより、ゲーム内のあるアイテムを取り出した。


「えっ? ええええええっ!!!!」


 ユーアの絶叫が静かな森の中に響いていた。



孤児院のところは、某レトロゲーのコマンド式ADVにしてみました。

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