SSみんなたのしいクリスマス??(おわり)
クリスマス限定回も最終回を迎えました。
澄香たちは楽しい異世界クリスマスを送れたのでしょうか?
このお話は、本編とはちょっとだけ繋がっていますが、
設定が少しだけ先の話になっています。
※本編の先のお話なので、ネタバレが含んであります。
※本編にはあり得ない内容もあります。
※性的な表現が少しだけあります。
いずれも知りたくない方、苦手な方はご遠慮ください。
(4/4)
前回のあらすじ
調子に乗った澄香は、アイテムボックス内のクリスマス風お菓子を、みんなにばら撒いて配ってしまう。
ただ、そのお菓子は、効果の高い回復薬だった。
それをむやみに配った澄香は、ルーギルとクレハンにお叱りを受ける。
自分のせいで、雰囲気が悪くなったと思った澄香は、ある作戦を思いつく。
その作戦とは一体。
「ねえ、メルウちゃんとラブナちゃんは、これからの時間も大丈夫?あまり遅くなるなら、途中で送って行くけど」
私はある事を思い立って、確認の為にふたりに聞いてみる。
あれ、よく考えたら、ラブナちゃんは、ナゴナタ姉妹とセットだった。
まあ、聞いちゃったものは仕方ない。まだその事に慣れていないんだから。
「わたしは大丈夫なの。お父さんには少し遅くなるかもって言ってきてあるの」
「アタシは全然問題ないわよっ。ってかひとりじゃ帰れないし」
よし、これでふたりの子たちの言質は取れた。あとは、
「ねえ、ルーギル、クレハン、ギュウソたちはこれから予定あるの?」
後はこの三人と、他の人たちから許可を貰えればOKだ。
「アンッ?なんだ俺もクレハンもまだ仕事が残ってっけど、なんかあんのかァ?なんかあんなら聞くがァ」
「だったら、ギルド脇の練習場?だっけ、貸してくんない?そこでお肉パーティーやりたいから」
と、ルーギルの他にも、クレハンやギュウソたち冒険者を見渡して聞いてみる。
幸い道具も、材料も揃っている。やろうと思えばどこでも出来るのだ。
ルーギルとクレハンは少し悩んでいるようだったけど。
「お、お、お肉パーティーですかっ!スミカお姉ちゃんっ!!」
やっぱりと言うか、さすがと言うべきか、いち早くユーアが反応してきた。
「そう、お肉パーティー。みんなとやりたいでしょ?」
私はユーアの頭に手を置きながらそう尋ねる。
「うんっ!だったら、みんな連れてきていい?スミカお姉ちゃんっ!」
「えっ?別にいいけど、みんなって?」
ユーアの言う、みんなが分からずに聞いてみる。
みんなはここにいると思うけど。他にって事だよね?
別に材料は異常にあるので、一人二人増えたって構わない。
それか、数十人でも。
「うんとね、ログマさんとか、カジカさんとか、ニスマジさんとか、マズナさんと、後は、ワナイさんとか、あ、それと、ハラミも連れてきていい?スミカお姉ちゃんっ!」
ああ、そういう事ね。
そう言えば「ハラミ」はお留守番させてたっけ。孤児院裏に。
「別に大丈夫だよユーア。それじゃひとりで危ないから、ナゴタにおぶって貰ったら?その方があっという間だし、それで、帰りはハラミに乗ってくればいいし」
「はい、わかりました。スミカお姉ちゃんっ!ナゴちゃんお願いします!」
「はい、わかりましたスミカお姉さまとユーアちゃん。それじゃ私とユーアちゃんは少し出てきますね」
そう言って、ナゴタは、ユーアを背負ってギルドを出て行く。
何かあっても、ナゴタなら大丈夫だろう。
「スミカの嬢ちゃん、俺たちも大丈夫だぜっ!ここにいる全員参加できるぜっ!なあ、お前らぁっ!」
ギュウソは、そう振り返って冒険者たちに確認を取る。
『うおぉぉぉォォォッッッ!!!!肉だぁぁ!!』
かなりの盛り上がりの様子だった。
そりゃそうだろう。ただ肉食えるんだもん。
「で、ルーギルたちは、どうすんの?来るの?それともちょっとだけ顔出す?」
私は、未だ思案顔のルーギルに再度聞いてみる。
「んあっ、そうだな、今日はもう終いにすっか?なっ、クレハンッ!!」
「そうですねっ!それがいいでしょう。隣で楽しくやってるのに、仕事になんか集中できませんものね。わたしも賛成です。ギルド長。是非招待させていただきますよ。スミカさん」
よし、これでほぼ全員かな?
思ったよりも人数が増えそうだね。
まあ、どんなに大人数がきたって、私のアイテムボックスには、まだ大量のオークが残っている。それに「トロノ精肉店」のログマさんが来れば、どんどんオークも解体してくれる。
無くなることなんて絶対にない。しかもトロールも数体まだ残っている。
「だったら、ここの職員も連れてきていいかァ?なんだったら、嬢ちゃんの肉は俺が買い取ってやるし、それと、酒は俺とクレハンが用意してやっから」
「別に、肉は腐るほどあるから気にしないでいいよ。そもそも私たちが、冒険者たちにプレゼントしたかったんだから。まあ、お肉パーティーは予定に入ってなかったけど。あ、お酒は、元々持ってないから、お願いしたいけど」
と中々の気遣いを見せるルーギルに、やんわりと断りを入れる。
肉は腐るほどって言ったけど、このアイテムボックス内では新鮮なままだ。
「よし、わかったッ!クレハン、今日は職員たちも終わりにして、ギルドは閉めちまうぜッ!それと職員たちにも伝えてくれやッ」
「はい、わかりました、ギルド長。そのように段取りしてきます」
ルーギルから指示を受けたクレハンは、冒険者ギルドの職員たちの、説明に向かって行った。
「それじゃ、ユーア達が帰ってくる前に、私たちは準備しちゃおうか」
そう言って、私たちと、ここにいる全員で、ギルド脇の広場の練習場に集まる。
私はアイテムボックスより、大型のコンロと、加工済の生肉と、
数体のオークの死体を並べる。
ついでに、テーブルセットも数セット取り出し、その上に、
飲み物と野菜と食器とを並べていく。お肉だけじゃ飽きちゃうし。
大人たちが飲むお酒類は、冒険者たちが数人で、近くの酒場から樽ごと買い占めてきた。
この料金は、ルーギルとクレハンが出してくれた。
「スミカお姉ちゃんっ!みんな連れてきたよぉ!」
「スミカお姉さま、戻りましたわ」
ここまで準備を進めた時に、他のみんなを連れに行っていた、ユーアとナゴタが戻ってきた。
ユーアは、お気に入りのハラミの背中に乗ってきた。
どうやらきちんとお留守番できてたみたいだ。
「スミカ、今夜はわざわざ俺たち夫婦を呼んでくれて、ありがとうな。カジカも俺も、肉を捌けるから、肉は俺たち夫婦に、任せてくれ」
「スミカちゃん、今夜は楽しませていただくわ。呼んでくれてありがとうね」
ユーアが連れてきた、知り合いの中で、最初に声を掛けていたのは「トロノ精肉店」店主のログマさんと、奥さんのカジカさんだった。
「違うよ、呼びたいって言ったのはユーアだから、ユーアに感謝してあげて」
私はユーアを腕の中に入れながら、ログマ夫妻にそう伝える。
「ああ、それもそうだが、許可を出してくれたのはスミカだろう?なら、あながち間違ってもないさ」
「そうよね、ユーアちゃんが私たちを呼んでくれたのは嬉しいけど、お姉ちゃんの許可がなければ、私たちはここに来れなかったんだからね」
ログマさん夫妻は、そう言って私にお礼を言ってくれる。
相変わらず律儀な人たちだ。
「あらぁ、ワタシもいるわよぉ~!スミカちゃん。今夜は呼んでくれてありがとねぇ」
そう言って、クネクネと歩いてくるのは「ノコアシ商店」の店長のニスマジだ。
「突然呼んで、ゴメンね。お店は大丈夫だったの?」
まだ暗くなったばかりの時刻だから、まだ店は営業中だろうと。
そう言ったら、ログマさん夫妻もそうなんだけど。
「ええ、大丈夫よぉ、他のお店の子に任せてきちゃったからぁ。今夜は朝まででもOKよんっ」
と、気味悪いウィンクをしながら、そう答えてくれたけど、
「朝まではいないよっ、ユーアたち子供もいるんだから、ほどほどだよっ」
ニスマジには、そう適当に返事をする。
てか、朝までなんて嫌だよっ!身の危険を感じるよっ!
「スミカさん、ありがとうな、今日もメルウと遊んでくれて。店の方は、そう言ったわけだから今日は閉めてきた。スミカさんとユーアさんの誘いなら、絶対に参加しなくちゃなっ!ガハハハハハハッ!!」
「もう、お父さんはうるさいのっ!静かにするのっ!」
「スミカ、なんだか悪いな、俺も呼んでくれてさ。ルーギルからも聞いたが、元々は冒険者たちだけの集まりだったんだろう?」
復活して今や、この街の人気店のメルウちゃんのお父さんの「大豆工房サリュー」の店長マズナさんと、後から声を掛けてきたのは、この街の警備兵の「ワナイ」だ。いつもパンツで注意されている。
「二人ともゆっくりしていってね。食べ物も飲み物も、お酒もたくさんあるからさ。それと呼んで欲しいって言ったのはユーアだから、ユーアにもお礼を言っておいてね」
「おうっわかったぞ、スミカさんっ。ユーアさんに感謝だなっ!ガハハハハハハッ!!」
「もう、いちいちお父さんは大声上げないの。みんなびっくりしてるのっ!」
「ああ、そうさせてもらう。今夜は死ぬほど飲んで食べてやる。酒はルーギルの奢りらしいからな」
二人は、そう挨拶をして、他の人たちと話し始める。
そして、
私は、予想以上に集まった人たちを見て、高らかに声を上げる。
「みんな、飲み物は持ったねっ!それじゃ乾杯するよっ!!」
「はい、スミカお姉ちゃんっ!」
「わかったわよ、スミ姉っ!」
「わかりましたの。スミカお姉さん!」
「わかりましたわ、スミカお姉さまっ!」
「わかったよっ、スミカ姉っ!」
『わおんっ!』
「オウッ!了解だぜ、スミカ嬢ッ!」
「わかりました、スミカさんっ!」
「わかったぜ、スミカの嬢ちゃんっ!お前たちもなっ!!」
『うおぉぉォォォ!!!!』
「ああ、わかったぞ、スミカっ」
「ふふ、了解よ。スミカちゃん」
「おっけーよん、スミカちゃあんっ!」
「おう、わかったぞ、スミカ」
私はみんながグラス(コップ)を持ったのを確認して、
「それじゃっ、せえのぉ―――――――
「メリーーーークリスマーーーースッ!!!!」
『『『かんぱーーーーーーいいいっ!!????』』』
はぁっ!?
「い、いや、そこは『メリークリスマス』でしょっ!!今日はクリスマスなんだからっ!なんで合わせてくれないのぉ!これじゃ台無しだよっ!!」
「ハァァァッッッッ!!!!、そんなの知らねえだろうッ!!初めて聞いたぞッ!ってか、なんだよ、その『メリー喰い過ぎます』ってよォ!!」
「わ、私だって、よく知らないよっ!誰かの生誕祭みたいなもんだもの!!」
「はぁッ!なら何で、そんな訳もわかんねえ事を言わせるんだよッ!スミカ嬢も、知らねえんだろうッ!」
「あーーーーもう、うるさいなっ!!いちいち変なとこだけ、細かいんだよルーギルはっ!」
「い、いや、お前が言う程、細かくはねえだろッ?今のは細かい質問じゃねえだろ?嬢ちゃんが適当過ぎんだよッ。なんだよ誰かって?」
「し、仕方ないでしょっ!私の国ではそうだったんだから、あーーもうっ!----」
「スミカお姉ちゃん………………」
『くう~~~~んっ』
売り言葉に買い言葉なのか、私とルーギルの言い合いは中々終わらないーーーー
そんなこんなで、私と私たちのクリスマスの夜は更けていく。
大きなケーキや豪勢なご馳走、高価なプレゼント、
そして、この世界にはサンタもいないけど、
そんなものはなくたって、楽しい仲間と、家族と呼び合える人がいれば、
どこでもいつでも、異世界にもクリスマスはやって来る。
それでみんなが笑顔になってくれる。
それが私の―――――
『クリスマスプレゼント』なんだから。
《Happy merry christmas》
前4話にもなる短編のお話でした。
皆さんクリスマスをいかがだったでしょうか?
何か楽しい事があったでしょうか?
なくても澄香たちのように行動を起こせればきっと楽しく過ごせるかもしれません。
私は……
これを書いている時点で察していただけると幸いです。