SS お披露目!?6人のサンタちゃん
2話で完結させる予定のSSでしたが、
書いてみたらかなりの文字数になってしまいましたので、
4話に分けて投稿いたします。
このお話は、本編とはちょっとだけ繋がっていますが、
設定が少しだけ先の話になっています。
※本編の先のお話なので、ネタバレが含んであります。
※本編にはあり得ない内容もあります。
※性的な表現が少しだけあります。
いずれも知りたくない方、苦手な方はご遠慮ください。
(2/4)
前回のあらすじ
澄香の用意したサンタコスを着た6人で、澄香自身の願望を叶える為、
季節外れのクリスマスを開催する。
女性陣それぞれの、可愛い衣装姿に満足した澄香は、ナゴナタ姉妹とラブナちゃんにだけは、恐怖を抱きながら、街へと繰り出すのであった。
私たち女子組、
『私と、ユーア、ラブナちゃん、ナゴタ、ゴナタ、メルウちゃん』
のサンタコスの6人は、孤児院裏のレストエリアから出て、
冒険者ギルドを目指して、街中を歩いて行く。
冒険者ギルドへ行くのには、ここ居住区を抜けて、
商業地区の中にある一画に行く事になる。
辺りはもう夕暮れ、もう少しでこの街にも、夜の戸張が降りてくる。
街ゆく人たちは、私たちの珍しくも、ちょっと露出の多い衣装に、
目を止めては、囁くように噂している。
『お、おいっ!見ろよっあの双子。ヤバいぞっ!』
『うおっ、なんだあれっ!今から出勤か?歓楽街にっ!?』
『ど、どこの店だろうなっ!是非、お酌して欲しいぜっ!』
『えっ?お、俺、もう小遣いないよ……』
こっちの声は、ナゴナタ姉妹に向けてかな?
『あのちっこい子たち、小動物みたいで、か、可愛いなぁ』
『そ、そうだな、あ、あの、直線的な体形が、クッキリと、ハァハァッ』
『あの、赤毛の強気な表情で、ちょっとモジモジしてるのもっ』
『あ、ああ、意外と悪くないっ、しかも意外とデカいなっ!ご、ごくりっ』
こっちは、ユーアとメルウちゃんとラブナちゃんだろうか?
『……………………』
なんか、危ない気がする。
「ちょっとみんな、こっちに来てっ」
私は5人を、人気のない路地に誘導する。
「はいっ!スミカお姉ちゃん」
「一体何なのよっ、こんなところに連れてきて」
「どうしたんですの?スミカお姉さん」
「スミカお姉さま、何かありましたか?」
「スミカ姉っ?」
私は5人が揃ったところで、背中の羽根を操作して、
私を含め、透明の鱗粉を全員に散布する。
「よし、これで大丈夫っ」
私は街の人たちに、5人が奇異な目で見られている事に、
色々危険を感じて、姿を隠して移動することにした。
「さあ、みんな冒険者ギルドに行くよっ!暗くなる前にねっ!」
私たちは路地裏から出て、再度冒険者ギルドを目指して歩いて行く。
◆ ◆ ◆ ◆
「みんなお菓子は持ってるよねっギルドでみんなに配るからねっ」
私はギルドに着く前に、5人に振り返って、そう確認をする。
「はい、スミカお姉ちゃんっ!」
「うん、わかったわよっ、スミ姉」
「うん、わかったの。スミカお姉さん!」
「はい、わかりましたわっ、スミカお姉さまっ!」
「おう、わかったぜっ、スミカ姉っ!」
「よしっ!」
私はみんなの元気な返事を聞いて、ちょっとだけ気合を入れる。
なんてたって、友達と呼ばれる存在との、初めてのクリスマスだ。
家族と過ごす事が多かった私は、こういうイベントで、正直何をすればいいのかよくわからないが、私も含め、みんなが楽しんでくれればそれでいいと思っている。
それは、これから行く、色々お世話になった冒険者たちに、
ちょっとしたプレゼントで、笑顔にできればいいかななんて、思ってのことだ。
カランッ
私を先頭に、6人で冒険者ギルドに入っていく。
今は夕暮れ時なので、ギルド内は、依頼の報告や報酬の受け取りなどの、
大勢の冒険者たちで、溢れかえっている。
真っ赤な衣装に身を包んだ、私たちが入ってきた事により、
冒険者の一同は興味深く、一様にこちらに視線を向け、
何やら、ざわざわとし始める。
『『……………………!!ッ』』
『『っっっっっっっっっ!!』』
『『!!っ~~~~~~~~』』
『ああ、そう言えばーーーー』
よく考えたら、このメンバーで冒険者じゃないのは、メルウちゃんだけだ。
「メルウちゃん大丈夫、恐くない?こんなゴブリンみたいな男たちがいる場所に、連れてきちゃって」
『ってオイッ!!誰がゴブリンだッ!』
こんな厳つい男どもが集まる巣窟に来て、恐くないかなと心配になり、
ユーアと話しているメルウちゃんに声を掛ける。
「うん大丈夫なの。ゴブリンは見慣れてるの。それに、お店にもギルドの依頼にも、何度か来てるから、慣れちゃったの。もう恐くないの」
大豆工房サリューにくるお客さんにも、素材の依頼を出しにギルドにも、何度も足を運んでいるようで、強面の冒険者にも慣れてしまったらしい。
「そう、それは良かった。ゴブリンも、オークも見慣れちゃえば、
恐くないって事なんだね」
大丈夫そうな、メルウちゃんを見て、私は胸を撫で下ろす。
無理をしていないようなら良かったと。
『って、今度は誰がオークだってッ!?』
「何よっ、さっきから、いちいちうるさいなルーギルは」
私はちょくちょく口を挟んでくる、ルーギルを睨む。
ルーギルは、いつの間にか、私たち6人の後ろに立っていた。
きっと外出をしていたんだろう。扉から入ってきた様子だったし。
「それで、どうしたんだ?その恰好は。ユーアやメルウはわかるとしても、ナゴナタ姉妹まで、スミカ嬢の趣味に付き合ってんのかァ?」
「はぁっ!?趣味って何?それじゃ私が無理やり着せたみたいじゃない?ねえ、みんなっ、そうじゃ無いって教えて上げてよ」
ルーギルのそんな濡れ衣みたいな発言に、私は後ろを振り向き、
5人の女性陣に聞いてみる。
「あれっ!?」
振り向いた先には、もう誰もいなかった。
『おおっ!今日も可愛いなっ!ユーアちゃん』
「おじちゃんありがとうっ!お礼にこれ上げるねっ!」
『あれ?お前は、最近登録した、ツンツン娘か?』
「だ、誰がツンツン娘よっ!いいからこれ受け取ってっ!」
『どうしたメルウ。そんな可愛い格好して、今日も依頼に来たのか?』
「ち、ちがうのっ!きょ、今日はみんなにこれを渡しに来たのっ!」
『お、お前たち姉妹は、一体なんて恰好をっ…………』
「あ、あなたたちっいったいどこを見てっ!!」
「ナ、ナゴ姉ちゃんっ!?あっ!お前もワタシのどこをっ!!」
『…………………………』
気が付いたら、ユーアも含め、女性陣は男たちに囲まれていた。
それでもしっかりと、お菓子をそれぞれ渡しているようだった。
姉妹の二人は、色々隠すので精一杯みたいだったけど。
って言うか、ユーアがいつも呼んでいる「おじちゃん」って誰?
みんながそれぞれ、男たちに囲まれているのに対し、
私はルーギルただ一人だけだった。
別に羨ましいとは思わないけど、世の男性は、
露出と、恥じらいに弱いらしい。
その両方を持ち合わせていない私は、この場所では、
ヒエラルヒーの底辺に位置するって事なんだろうか。
『まぁ、別にいいかっ!お菓子渡しに来ただけだったし。
ルーギルで我慢するか』
「………………………」
「スミカさん、わたしもいますよ?」
「てか、スミカ嬢、色々聞こえてんぞォ!」
私がそんなどうでもいい事を考えていると、クレハンがルーギルの後ろから「ヒョコ」っと顔を出してきた。クレハンも外出していたようだった。
「クレハン、ちょうど良かった。これあげるよ」
私は用意してきた籐カゴの中から、クリスマス風のお菓子を渡す。
「こ、これは、随分とカラフルなお菓子が入ってるんですね?」
受け取ったクレハンは、その色とりどりのお菓子の種類
に驚いているようだった。
小袋になっている中には、数種類のクッキーやらアメが入っている。
包装も、原色に近い派手な色だから余計だろう。
「ひとつ食べてみてもいいですか?」
クレハンは、そう言ってクッキーを口に含む。
「こ、これってっ―――――――!!」
「はい、それじゃ、ルーギルにも一応あげるよ。みんなに配って、ルーギルにだけあげないのはおかしいからさ。なんか微妙に癪だけど」
仕方ないので、ルーギルにもカゴから出して手渡しする。
「お、おうッ!ってか、嬢ちゃんからもらう食い物は、いつも不味いから恐えんだけど、ありがたく受け取っておくぜッ。それと、嬢ちゃんたちは、これを渡しにわざわざギルドの顔出したのか?」
受け取ってルーギルは、そう言いながらお菓子の一つを口に含む。
「そう、私のいた国では、今日は特別な日なんだよ。美味しいもの食べて、プレゼントを渡す日、みたいな。だから、なんとなくお世話になっているここに来たんだよ」
「オウッ!そうなのか?嬢ちゃんから、そう言われると、喜んでいいのか、――――んんッ!なんだこれッ!?」
とりあえず、ギルド長コンビに渡し終えた私は、まだ男たちに囲まれている様子を外から見ている。
ミニスカサンタコスの5人は、未だに囲まれてワイワイと騒がれている。予想以上の反響ぶりだった。
見目麗しい、幼女と少女の生足と、頬を染めての、羞恥の表情は、ここでは正義といったとこだろう。私が入る隙間はこれっぽちもなかった。
『えっ?そういう方向だと、私は悪役?今流行りの悪役令嬢?』
なんて、そんな事を考えて、独り落ち込む。
令嬢はもしかしたら、当てはまるかもしれないけど、悪役はないよね?
「おうっ、スミカの嬢ちゃん、ここにいたかっ!」
そう言って、独り身の私に近付いてきたのは、
この冒険者を纏める冒険者のギョウソだった。
いったい何の用だろう?
明日お話もこの続きになります。
なんでこんなに長くなってしまったんでしょう?
どうか、次回もお付き合いよろしくお願いいたします。