表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

となりのおばあちゃん

 アニメの登場人物、特に主役達はものすごい能力を持っていたりしますよね。

 とっても高いところから落ちても平気だったり、人間を何メートルもぶっ飛ばしたり、走り幅跳び世界記録を数倍上回りそうな距離を跳んでみたり。

 その点、脇役の方々は控えめなことが多いです。日常系のほのぼのアニメだったらなおさらです。


 しかし、そのような脇役の方々でも、意外なシーンで意外な能力を見せてくれることがあるものです。

 今回は、知らない人はほぼいないと思われるアニメ「となりのトトロ」から、カンタくんのおばあちゃんを取り上げてみます。


 それでは、斜め上に向かって出発!


【おばあちゃんの凄い場面】

 カンタくんのおばあちゃんが凄さを見せつける場面はこちら。


 行方不明になったメイちゃんを探しあぐねて、ついにトトロに助けを求めたサツキちゃん。

 ネコバスに乗ってメイちゃんを迎えに行く途中で、おばあちゃんのすぐそばを通りかかります。

  おばあちゃん:「メイちゃー」

  サツキちゃん:「あ」 (おばあちゃんのそばを通過)

  おばあちゃん:「ーん」


 凄いでしょ!………判らないって?まあ、文字で書いてると判らないのですよ。


 このシーン、ドップラー効果が起きていないんです。

 画面から判断すると、視聴者はサツキちゃんと同期して動いています。なので、おばあちゃんの声は前半は高く、後半は低くというように聞こえなければなりません。

 ところが実際には音の高さに変化はありません。となると、何らかの方法でドップラー効果をキャンセルしたことになるのです。


【ドップラー効果って何?】

 ドップラー効果についてご存知の方は、ここは読み飛ばして大丈夫です。


 ちょっと固めの定義だと、音源と観測者の相対速度によって、聞こえる音の高さが変化する現象の事です。

 厳密には音以外でも、光等の波の発生源と観測者の相対速度によって振動数が変化する現象もドップラー効果と言います。


 身近な例では、救急車のサイレンの音が、近づいてくるときは高く、離れていくときは低く聞こえるという現象がそれにあたります。

 以降の話を理解する際は、「音源が自分に近づくときは音が高くなる、離れるときは低くなる」とう事を知っていてもらえれば充分です。


【おばあちゃんの高速移動】

 ネコバスの速度について、作中では具体的な速度の値は出ていませんが、少なくとも市街地を走るバス並みの速度は出ているように見えます。

 そこで、ネコバスの速度を仮に時速40kmとして考えます。


 ドップラー効果をキャンセルするならば、まずはおばあちゃんが移動するという方法が考えられます。

 前半の「メイちゃー」ではネコバスから遠ざかる方向に移動し、サツキちゃんの「あ」の瞬間にささっと元の場所に戻り、後半の「ーん」ではネコバスを追いかけるように移動するのです。


 ネコバスの速度が時速40㎞なので、声を出しているときの移動速度は、最低でも相対速度をゼロに出来る時速40㎞となります。

 100m走だったら9秒。充分に世界が狙えます。


 しかし、100m走の世界記録を狙える速度で移動するのは、年齢を考えるとかなり酷な気がします。

 また、画面上ではおばあちゃんの位置は動いていないように見えます。この方法はやめておいた方がよさそうです。


【首を振れ!】

 音源と聞いている人の相対速度が問題なのですから、おばあちゃんごと移動する必要はありません。音源だけ移動すればよいのです。

 今回の場合、音源がおばあちゃんの口であるのはほぼ間違いないと思われます。

 幸い、口は首の回転軸から多少離れていますので、首を回せば音源だけの移動が可能になりそうです。


 自分の体で、口の先から首の回転軸までの距離を測ってみましたが、これ難しいですね。

 回転軸の中心がうまく決まらないのですが、大体このぐらい、という場所に定規を当ててみたところ、14cmくらいになりました。

 おばあちゃんはちょっと小柄な方でしたので、12cmくらいになるでしょうか。


 この条件で接線速度が時速40kmになる回転速度は、毎秒14~15回転になります。

 いかに凄いおばあちゃんでも、一方向に何回でも自由に首が回る、なんてことは無いと思われますので、実際には可動範囲内で1秒間に14往復ぐらい首を振ることになります。


 ちょっと挑戦してみましたが、めまいもするし、首筋をおかしくしそうだったので諦めました。

 もし1秒間14往復を達成できた人が居ましたら、ぜひ御報告ください。


 この方法を取る場合、声の出し方にも工夫が要ります。

 ネコバスの位置に合わせて、適切な速度が出ている瞬間だけ声を出す必要があるのです。

 しかし、このように瞬間的に声を出すようだと、サツキちゃんには途切れ途切れに声が聞こえる筈です。

 実際には声は連続して聞こえていますので、この方法での実現は困難そうです。


【実は元声楽家?】

 よくよく考えてみれば、声の高さはおばあちゃん自身が制御できる筈。

 であれば、「ネコバスが近づいてくる間は低い声、離れるときは高い声」を出せば、ドップラー効果をキャンセルできそうです。


 私には絶対音感などという便利なものは無いのですが、サツキちゃんに聞こえた声は大体220Hz(ラ音)ぐらいかな、と見当をつけた上で、ネコバスの接近前後でどんな声を出せばよいか計算してみます。


 おばあちゃんの声の周波数:fo

 サツキちゃんに聞こえる声の周波数:fs:220Hz

 音速:Vv:346.5m/s (気温25度として。山間部の夏の夕方なので、このぐらいかな?)

 ネコバスの速度:Vn:11.1m/s (時速40km)

 とした場合、計算式はこんな感じ。

 ネコバス接近中:fs = fo × (Vv + Vn) / Vv

 ネコバス離脱中:fs = fo × (Vv - Vn) / Vv


 それぞれに値を当てはめると、接近中のおばあちゃんの声は213.2Hz、離脱中は227.3Hzになります。

 ソ#が207.7Hz、ラ#が233.1Hzなので、半音のさらに半分くらいの、かなり微妙な声の調整が必要そうです。

 実はおばあちゃん、過去に声楽家をしていたのかもしれませんね。


【あなたにもトトロが見える】

 ここまで来て、とんでもないことに気づいてしまいました。


 どの方法を取るにしろ、おばあちゃんが音の高低を切り替えるためには、ネコバスが見えていないといけません。それも、感じ取るというレベルではなく、走行速度までしっかり判るレベルで、です。

 ネコバスが見えるという事は、同じ分類に属すると考えられるトトロも見える可能性が高そうです。


 さらに、メイちゃんを一緒に捜索していた人たちにもネコバスが見えていた可能性が高いです。

 もしネコバスが見えていないとしたら、おばあちゃんが突然高速移動したり、首を高速で振ってみたり、声を不自然に上げ下げしたりなど、錯乱して奇行に走ったようにしか見えません。

 作中、誰も不審に思っている様子がないので、他の人たちにもネコバスが見えていて「ああ、ばあちゃんのドップラーキャンセラー発動だな」と思われている、という事なのでしょう。


 トトロのエンディング曲の歌詞から考えて、トトロは子供にしか見えないんだ、と主張したいあなた。実は、それは誤解なのです。

 あの歌は「出会い」が子供の時だけと言っているのであって、「再会」とか「日常的遭遇」とかは言及していないのです。ですから、子供の時に出会ってさえいれば、その後は幾つになっても村の人たちと同様にフリーパスで見れる、のではないかと思います。


 私も子供のころにアニメで見たんだから、大人になった今でもネコバスが見えたりしないかなぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ