2〜戻った記憶
「もう‼︎いい加減起きなさい。朝ごはん出来てるから食べちゃいな。じゃあ私は仕事をしてくるからね。」
そう言って起こしに来た女性は部屋を出て行く。
私は目をこすりながら辺りを見回す。
ーーん?ここは…?
あー…思い出した、私ここに転生して来たんだ。さっき見てた夢…それは前に死んだ時の出来事。
てか今10歳だから、10年も記憶がなかったんだ。確かに記憶を思い出すタイミングは分からないって言ってたけどこんなに遅いとは…
ちなみに起こしに来た人は私のお母さん。
私の家族はお父さんとお母さん、そして弟のリクの四人家族。
私の今の名前はリナである。
えっと、とりあえず朝食を食べながら軽くこの世界のことを振り返ってみよう。
ここは剣や魔法が当たり前にある世界。
15歳で大人と認められ、成人の儀で自分の適性にあったジョブをもらう。
また様々なギルドがあり、基本的には自分のジョブにあったギルドに所属して仕事を行う。
人が得られる能力はジョブによっても個人差があり、能力に応じて出来る仕事が違う。
もちろん能力が高ければ、それだけいい仕事が出来て稼ぎもいい。
この世界は分かりやすく能力主義な世界である。
戦闘能力が無い者は、商業ギルドに属して商売をしたり、偉い人の側に仕える為に使用人ギルドに属したりする。
私の両親は、共に戦闘に必要な能力をもっていなかったが、薬師の適性があり薬師ギルドに属して家の一階で薬屋を営んでいる。
そして私はまだ見たことはないが、街の外には普通に魔物もいるらしい。
「…姉さん、何ぼぉーっとしてるの?口にソース付けてるよ。」
一緒に食事をしていた弟のリクが、呆れながら私の口元を拭いてくれた。
リクは8歳だけど、私なんかよりもすごくしっかりしている。何より、贔屓目を抜きにしてもかなりのイケメンだ。
そんなリクに口元を拭かれた私は、実の弟ながら一瞬ときめいてしまう。
「なんでもないよ…ただリクのカッコイイ顔に見惚れてただけ。」
思わず冗談を言ってしまったが、リクは顔に手を当てて赤面している。
「何をバカなこと言ってるんだよ、姉さんは…大体僕の顔なんて毎日見てるじゃないか////」
私がこの世界に生まれてから10年…こんななんてことない日常がすごく心地いい。
記憶が戻るまでの今のリナとしての記憶もちゃんとある。
だから記憶が戻って改めて自分がいかに両親に大切に育てられていることも知った。
ふとカレンダーを見ると今日の日付に印が付いていた。
ーーーあぁそうだ、今日は母の誕生日だ。
「ねぇリク、リクはお母さんへのプレゼント決めた?」
「んー、最近薬屋が忙しくて母さん疲れてるみたいだからなんか疲れをとる効果がある物を送るかな。」
「あー最近流行り病のせいで薬が足りなくなるくらいだもんね…」
「この街には今治癒士がいないからね。」
この世界には色々なジョブがあり、その中には魔法で治療が出来る治癒士もある。
ただ治療士の適性を持つ者は少数であり、地方で働いていてもすぐに王都に派遣されてしまうのだ。
その為、治癒士のいない街では薬屋に頼るしかないという訳である。
でも薬の材料になる薬草は、街の外にある森にある。
戦闘能力のない薬師は、魔物が出る森には行けない。
だから毎回冒険者ギルドに依頼を出している。
でも依頼料が安い為、あんまり受けてくれる冒険者がいないのもまた悩みのタネであった。
だから最近の私の夢は冒険者になり、少しでも両親の役に立つことだった…