1〜転生はランダムで
「死んだ後って無になるんだと思ってたけど、違ったんだ…」
無気力だったからあまりよく覚えてないけど、多分私はさっき死んじゃったと思う。
死ぬってことにずっと漠然とした恐怖があったけど、死んでしまった今私はとっても清々しい気持ちになっている。
むしろ死ねて良かったとすら思った。
「でもここはどこなんだろう…?」
さっきまで居た私の部屋とは違い、ただひたすら何もない真っ白な空間がずっと続いている。
「そもそも私全く動けなかったはずなのに、今は身体がすごく軽い。幽霊だからなのかな…?」
それにしては身体が透けたりしてないし、心なしかお腹が空いた気がする。
「幽霊って何食べたらいいんだろう?」
そんなことを考えていると、頭の中に直接声が響いた。
『ようこそ、ここは選ばれた者だけがこれる場所。あなたの魂は死んだ時、他の世界に転生する権利を得ました。ちなみに魂の選定はランダムです。』
他の世界?転生⁇ランダム⁇?
「あの…あまり意味が分からないのですが…」
『もちろん転生するかはあなたの自由です。そして転生先もランダムに決まりますが、前居た世界に戻ることは出来ません。』
「転生をしなかったらどうなるんですか?」
『転生を拒否された場合、魂はリセットされます。でも一般的な人は、基本的に死んだらすぐリセットされるんですけどね。』
つまり生まれ変わることがあっても、私が私じゃなくなるということか…
私はどうだろう…まだ私として生きたいんだろうか。
「………」
『あなたはランダムとはいえ選ばれたことによって転生します。その為、その世界に合った能力であなたに最適なものが与えられます。だから転生後はちゃんとその世界に適応出来ると思いますよ。』
もう一回生きてみたら、何か見つけられるかな?
今度こそ、自分で決めた仕事から逃げずにいられるだろうか…
「ーー決めました。転生させてください。」
『かしこまりました。それでは転生先に魂を送ります。あなたの記憶は残っていますが、転生してからいつその記憶が戻るかは私にも分かりません。そこはご了承ください。』
「分かりました。よろしくお願いします。」
『転生はあなたにとって、きっと意味のあるものになるでしょう。新しい人生を、どうか楽しんでください…』
そして私は転生をした。