第88話 ピエナスとは
今回、読み返している時間が無かった為、誤字脱字があると思います。
後日読み直して修正を書ける予定ですので、ご了承ください。
「さて、女神の使徒のレオナルド君。キミに提案があるんだけど、いいかな?」
僕がピエナスの目的を聞き、そのヤバさに戦慄している間も、ピエナスの話しは続いている。
「あ、はい。何でしょうか?」
もうコイツは、世の為にも排除することが決まっているけど、その紳士的な態度に、つい返事をしていしまいました。
だってね?ここ数年、と言うか、アステリア王国を発ってからずっと、ここまで紳士的な対応をして来る人とは殆ど会っていなかったんですよ。
紳士的な対応をしてくれたのは、セレスユカティス1番の宿の受付にいた紳士と、レジスタンスの参謀であるヘックスさんくらいかな?
貴族として育った僕としては、ここまで礼儀正しく接されると、ついついこちらも礼儀を持って対応してしまうのです。
それはともかく、僕が話しを聞く気があると判断したピエナスは、そのまま話しを続ける。
「キミ、女神の使徒なんか辞めて、私を組まないかい?」
「は?何言ってんの?アホですか?」
おっと、ついつい素で返してしまいましたよ。
それほどバカげた質問でもあったわけですが、よりにもよって自分と組まないか、って、何を言っているんでしょうね?
女神の使徒を辞めるに値するメリットが、コイツにあるのかな?
いや、どう考えても無いでしょう?
「ふふ、まあ予想通りの反応ではありますね。では、交渉に入りましょうか?」
え?僕が素でしてしまった返事も予想通りだったの?
あ、違うか。
きっと断られたことだよね?
いや、そんなことより、
「その前に、ここを離れませんか?」
そう、ここはまだセシリアの部屋なのだ。
もしコイツと戦闘になった場合、少なからずこの部屋に被害が出てしまうでしょう。
もしかしたらこの部屋の中に、セシリアが大事にしている物があって、それを壊してしまったら・・・
想像するのが怖いので、僕としてはすぐにでもここを離れたいと思っています。
別に何か壊しても、何でも出来る万能スキル『空間支配』で復元できるけど、バレたら怖いからね。
リスクは出来る限り少なくしよう、と思います。
「ふむ。私としては、このままここにいても一向に構わないのだけどね?まあ、キミがそう言うなら移動しようか?」
「ええ、お願いします。話は歩きながら聞きますよ」
「そうかい?じゃあ、そうしようか」
良かった、断られなくて。
心底安心しましたよ。
今だけは感謝します。
ありがとう!ピエナス!
そうして僕らは部屋を出て、城の通路を並んで歩く。
できれば並びたくなんて無かったけど、ここは我慢します。
あ、セシリアの部屋は、僕達が離れてからちゃんと『空間支配』でキレイに掃除しておきましたよ。
これで一安心ですね!
「では、先程の続きからだね。まず、キミが私と組むメリットだけど、それは私と敵対しなくて済む、という事だね」
「それのどこがメリットなの?」
コイツと敵対しないことがメリットって、何かあるのかな?
「だって私、凄く強いんですよ。その私の敵になる、という事は、キミの死を意味するんですよ?」
「いやいや、それは無いです」
僕が死ぬって、何言ってくれてんでしょうね、この人は?
よっぽど自分の力に自信があるのでしょうけど、僕より上ってことは無いでしょう?
いや、油断は良くないですね。
ここは念の為、VITとMNDだけはステータス抑制を1/10000から1/10にしておきましょうか。
これなら、ピエナスが億のステータスを持たない限り、大丈夫でしょう。
「残念ですが、事実です。キミは女神の使徒に選ばれるくらいだから、凄く強いんだろうね。けどね?世界には上には上がいるんだよ?」
「ええ、そうですね。そして僕は、自分が強いと思っている貴方より、さらに強いですよ?」
「ふうん?」
ちょっと空気が剣呑なものに変わりましたね。
それまで相手が、つまり僕が子供だからと、諭すように優しい口調で話していたピエナス。
それが僕の挑発で、少し気が立ったのでしょうね。
さあ、どうなるかな?
「ふう、やれやれ。やはり子供には、私の力が分かりませんか・・・いや、この国の聖騎士達でさえ分からなかったのだから、キミに分かる訳がないですね。いいでしょう。少し私の事を話しましょうか」
え、別にしなくていいですよ。
と、答える間もなく、ピエナスの過去の話しが始まってしまいました。
ハッキリ言って、微塵も興味が無かったのですが、ピエナスが話し始めてしまったので、仕方なく聞いてあげましょう。
ピエナスはかつて、別の世界で生まれ、そして死んだ。
その時のピエナスは、孤児院を経営している教会の神父であり、今と変わらない温和な見た目と話し方をする男だった。
彼は身寄りのない子供たちを引き取り、自分の子のように愛情を持って育てていた。
その結果、血は繋がっていなくても本当の家族以上の絆で結ばれ、その男は子供たちには父と呼ばれ慕われ、自身もまた、本当の子のように接していた。
そんな彼はずっと独身であり、伴侶はいなかった。
けど、いつも大勢の子供に囲まれて、幸せな日々を送っていた。
その孤児院には、13歳になったら出ていく、という決まりがある。
いつまでも子供達を孤児院に留めておくと、子供がどんどん増えてしまい、孤児院を経営することが難しくなる為、1人立ちできる年齢になると、孤児院を卒業して巣立っていくのだ。
この孤児院では、1人でも生きていける術を学び、人格者である神父のコネで仕事の斡旋もしていた。
もちろん、まっとうな職業だ。
そんな彼も50歳で病にかかり、大勢の子供達に看取られて、天に召された。
そして神の間に誘われ、そこで神に出会い、この世界に転生されたのが32年前の話し。
転生した神父は、レシタクルス大陸東部のユキアという小国の子爵家に生まれる。
付けられた名は、ピエナス=アガシナ=バトケス。
バトケス子爵家の次男として第2の生を受け、貴族としての生活が始まった。
ピエナスの生まれたバトケス子爵家は、領民の生活向上を目標に掲げ、領主である子爵と領民が手を取り合っている、この世界でも珍しい貴族だ。
その為、10歳になったピエナスが孤児院を作りたいと父親に申し出た時も、その提案は快諾され、ピエナス主導での孤児院経営が始まった。
前世での経験を活かし、さらに貴族である実家からの支援もあり、その孤児院の経営は順調に進んでいく。
また、ピエナスは転生の特典で得たチートスキルにより、何でもこなせるようになっていた。
魔物の討伐はもちろん、領地内にいる山賊や盗賊達の殲滅を1人で成し、一度勉強したことは全て吸収し、その高い知能を以って父親の領地経営の手助けをし、領地内の作物の生産性も向上させた。
また、教師としても優秀で、自らが経営する孤児院の子供達に教育を施し、孤児院を出る頃には同年代の子供と比べ、明らかに優秀な人材となっていた。
それだけの成果を上げているピエナスを、当然父親は次期当主として期待をかけ、兄を含めた家族全員がそのことに納得していたが、ピエナスはそれを辞退した。
なぜか?それは、前世から続くピエナスの趣味に他ならない。
ピエナスにとって、貴族の当主になることなどに微塵も魅力を感じておらず、ただただ孤児院で子供たちに囲まれて生活することに悦びを感じていた。
家族一同が必死に説得するも、決して首を縦に振らないピエナスについに家族の方が折れ、それならこの地に留まり、兄をサポートすることを約束させ、結局長男である兄が家督を継ぐことになった。
それからのピエナスは、より一層孤児院経営に力を入れ、その規模をどんどん拡大していく。
20歳を迎えようとした頃、未だに独身であることを心配した家族により、結婚を勧められるも、その全てを拒否。
ピエナスのその能力の高さは、本人の意向により外部にはそれほど知られていなかったが、その性格は広く知れ渡り、実は縁談は以前から何度もあった。
だが、ただ1度を除き、ピエナスが縁談の相手と顔を合わすことすらなかった。
では、その1度とはどんな相手だったのか?
それはピエナスが15歳の頃、ある男爵家の娘との縁談を持ちかけられた時だった。
ピエナスが子供好きで、孤児院に力を入れていることを知っていたその男爵は、当時まだ8歳だった長女との縁談を持ちかけたのだ。
その縁談を受け、ピエナスは顔合わせを了承し、そしてその8歳の女の子と顔を合わせた。
要はお見合いだ。
最初は両家の家族と一緒に会食し、その後、2人だけで話しをする。
その時にどのような会話がされたのかは知らないが、その結果は、破談となった。
その女の子は今後一切、ピエナスに近付くのを拒んだと言う。
それ以降、ピエナスは縁談を受けることはせず、それから月日は流れ、気付いたら30歳になっていた。
孤児院は徐々に規模を増し、施設は大きくなっていた。
最初は10名程度だった孤児たちも、今では100名近くとなり、さらにその100名が孤児院を出る頃には、ちゃんとした教養を持ち合わせ、バトケス子爵領の発展に貢献できる人材となり、さらに領地を潤してくれていた。
この孤児院は、ピエナスが前世でも経営していた孤児院と同じく、13歳になったら出ていくこととなっている。
理由も同じく、新しい子供を受け入れる為ではあったが、ここまで規模を拡大したのなら、もっと長くいさせても良いのでは?という意見もあった。
だが、ピエナスが頑としてその規則を変えることを譲らなかった。
そんなピエナスが、新領主となった兄の代理としてセレストメディエル聖教国に赴いた時、遂に出会った。
それは、首都セレスハートに到着した日だった。
ピエナスが街を歩いていると、人が道の両側に分かれ、中央に通り道が作られた。
誰かが通るのだと分かり、しかしその時はそれが誰だか分からなった。
暫くすると、奥の方から歓声が聞こえて来た。
そこには、数十人の聖騎士に守られて馬車から手を振っている男と、その娘と思われる2人がいた。
その姿を見たピエナスは、心からある衝動が沸き起こったことに気付いた。
そして思った。
《遂に、遂に見つけた!私が前世から探し求めていたものが、ここにあったか!》
と。
近くにいた人に、あの馬車にいるのが誰かと尋ね、そして知った。
男は現教皇のフォルセシウス=ライバッハ=ストラテラで、ピンクの髪をした女の子は、教皇フォルセシウスの娘であり、聖女でもあるセシリア=ストラテラだと。
そこからのピエナスの行動は早かった。
用事を済ませ、すぐにセレスハートで情報を収集し始める。
その過程で、数年前に女神の使徒が現れたことを知り、女神の使徒の詳細を調べた。
この男、孤児院の事しか考えていなかった為、女神教については最低限の知識しか持っていなかった。
そして、女神の使徒の証として、女神像に祈りを捧げると金色の光りに包まれる、と言う言い伝えがあることを知った。
ピエナスは思った。
これなら、私のスキルを使えば再現できるのではないか?と。
人目が無い場所で試してみた結果、自身の体が金色の光りに包まれることに成功し、これで女神の使徒を名乗る準備が整った。
その後、バトケス領に戻り、兄にこの地を離れることを報告した。
当然、猛反対を受ける。
それも、家族だけでなく、領民たちからもだ。
それだけピエナスは慕われていたのだ。
が、それらを全て、スキルを使って黙らせた。
もちろん、物理的に黙らせたのではない。
人々の精神に干渉し、従わせたのだ。
催眠や洗脳と言っても過言ではない、そんな非道なやり方で。
無事、領地を離れることに成功したピエナスは、あれだけ愛情を注いでいた孤児院もあっさり見捨て、セレスハートを目指して移動を開始。
ただし、すぐに行くのではなく、ゆっくりと進んで行く。
道中、至る所で教会に立ち寄り、女神像の前で祈り、金色の光りに包まれるところを人々に見せ、自身が女神の使徒だと喧伝していった。
そうすることで、女神の使徒がセレスハートに向かっている、という情報を流し、さらに自身に付いてくる者を集めた。
最初は敬虔な信者が集まって来たが、次第にならず者たちが近寄ってくるようになる。
だが、ピエナスは来るもの拒まずで、そんな者達も引き込んでいった。
その際、自分に忠誠を誓うなら騎士に取り立て、さらに女神の使徒として力を与える、と言い、了承した者に力、つまりバフをかけてステータスを上げた。
その効果は永続する為、それを女神の奇跡だと人々は錯覚した。
これまでのピエナスの数々の行為は、実はたった1つのスキルによるものだった。
それは、転生特典として貰ったチートスキルであり、そのスキルとは『無属性魔法(小)』だった。
これは神の魔法とも呼ばれ、自身のMPが続く限り何でも出来る、と言う魔法。
このスキルを約30年間研究したピエナスは、これが自身にも干渉できることを突き止め、ステータスを大幅に上げていた。
現在のステータスは平均500万。
もはや、人外と呼ぶにふさわしい力を有している。
そして、それだけのステータスがあれば、『無属性魔法(小)』を用いれば何でも出来てしまう。
自分の体を金色に光らせたり、効果範囲内の誰かを洗脳したり、ステータスを上げてあげたり、何でもだ。
さらにその副産物として、各種魔法が(極)になっている。
この『無属性魔法(小)』は、この30年間で『無属性魔法(中)』となり、最初は1mだった効果範囲も、今では4mとなっている。
そうして勢力を増やし、1年と少しの時間をかけ、遂にセレスハートへと到着した。
その目的はもちろん、聖女セシリアを手に入れる為。
この少女こそ、ピエナスが探し求めて来た、理想の女性だった。
もう、見た目がどストライクだった。
今まで孤児院を経営し、子供を集めて来たのも、理想の女性を探すためだ。
ピエナスにとって、恋愛対象となる女性は12歳までであり、13歳以上は年増だと決めつけている。
そしてピエナスには、この『無属性魔法(中)』により、人の成長を止めることが出来る。
それはとっくに実験済みだ。
しかし、ピエナスには妙なこだわりがあり、相手と相思相愛にならなければいけない、と考えている。
その為、今まで何人か理想に近い女性と出会っても、必ず相手に拒否されてしまい、想いを成就することが出来なった。
が、今回は違う。
聖女の結婚相手は、女神の使徒と決まっているようなものだ。
ならば、自分が女神の使徒になってしまえば、それは両想いになるはずだ。
そう信じた結果、ピエナスは女神の使徒を名乗ることを企てたのだ。
ここまで説明されれば、もうお気付きでしょう。
このピエナスと言う男、子供にしか性的興味を示せないペドフィリアだった。




