第79話 レジスタンスのアジトへ
強面の串焼き屋のおっちゃんに案内されて、僕達3人はセレスユカティスの大通りを歩いている。
おっちゃんは僕の隣を歩き、僕らの周りを10名の屈強そうな男達がさりげなく囲んで、一緒に移動しています。
あの程度のやり取りだけでは、当然のことながら、味方だと信用されるはずがないですからね。
それと、僕らを囲んでいる男達なんだけど、格好は普通の人なんだけどさ、その逞しい鍛え抜かれた筋肉と、溢れ出る物騒なオーラにより、違和感がハンパない。
そのさりげない動きで、僕らを囲み続けているのは見事なんですが、存在感がありすぎて不自然すぎる!
逆に目立ってますよ、貴方達!
と、ツッコみたい衝動を必死に抑えています。
「テメェら、俺達のことをどこまで知ってる?いや、どこで知った?」
しばらく歩いていると、おっちゃんから質問が来た。
おそらく、ここでの返答を間違えた場合、別の所に連れていかれ、周りにいる男達によって襲撃されるのでしょう。
それは非常によろしくないので、なんとしても避けねばなりません。
おっちゃん達の安全の為にも。
この程度の相手なら、僕らの中で最弱のチェスカさんでも、余裕で返り討ちに出来てしまいますからね。
なので、返答は慎重にするべきでしょうか?
まあ、おっちゃんみたいな人には、正直に話すのが一番ですかね。
「この街に来て、いろんな人達からセレスハートの話しを聞いていたら、自然と浮かび上がってきましたよ。この街には、女神の使徒に不信感を持ち、セレスハートを、教皇様を奪還しようとする人達が集まっている事が。そうなれば当然、その人達をまとめる組織が生まれるはずです。抵抗勢力、レジスタンスがね」
「ほう、ガキの割には、結構よく見えてるじゃねえか。で、そんなテメェはどこの誰なんだ?」
「大陸北部の国、アステリア王国伯爵家の次男坊です。今言えるのはそこまでですね。これ以上は、アジトに着いたらお教えしますよ」
「なるほど、北部の出身で、しかも貴族様か。道理でしっかりしているわけだ。ってことは、後ろの2人は護衛か?」
「違いますよ。2人の正体についても、アジトに着いたら、という事で」
「胡散くせぇガキだな?だがその度胸は気に入った。お望み通り、アジトに連れて行ってやるぜ?ただし、少しでも怪しいと思ったら、分かるよな?」
「ええ、もちろんです。僕としても、貴方達とは協力したいですからね。決して悪いようにはしませんよ。」
「目的が一緒だからか?まあいい。詳しいことはアジトで聞いてやるよ」
「ありがとうございます」
そうして僕達は、おっちゃんの案内で大通りに面した1軒の宿屋に入った。
その宿屋は、この街1番の高級宿で、実は僕らが宿泊をしようとした宿でした。
ただ、今は部屋が満室で空きがないと言われたため、泊まるのを断念したのですが、まさかここにアジトが?
「いらっしゃいませ、ヴァンド様。そちらの方は?」
「こいつらは同志だ。安心しろ」
「それはそれは。おや?あなた方は先程いらした方では?」
「ええ、先程はどうも。故あって、またお邪魔させて頂きます」
「そうですか。先ほどは失礼いたしました。では改めて、ようこそ我が宿へ。ごゆっくりお寛ぎください」
「ありがとうございます」
「おう、こっちだ。着いて来い」
今話していたのは、僕がこの宿に泊まろうとした時に対応してくれた受付の紳士です。
僕の顔をしっかり覚えてくれていたようですね。
どうやら、この宿は今、レジスタンス関係者しか泊まれなくなっているようですね。
だから、僕らが泊まろうとした時、断られたのでしょう。
僕らがおっちゃん改め、ヴァンドさんと一緒に来たことにより、僕らを受け入れてくれたようですね。
受付の紳士に挨拶をして、そのままヴァンドさんに着いて行く。
そして、地下へと向かう階段を下りると、正面には大広間と書かれた扉が1つだけあった。
「ここだ。入るぞ」
ヴァンドさんが扉を開けると、そこは100名以上の様々な人達が集まっていた。
屈強な体躯の男や、ひょろりとした男、女性も何名かいる。
おそらく、全員が戦いを生業としている人達だろう。
ここはこの宿の地下1階を全て使った大広間で、かなり広い。
地下なのに明るいのは、魔導具である魔力灯をいくつも設置しているからでしょう。
魔導具としては安い方だけど、それでも結構な値段がする魔力灯をこんなに設置しているとは、さすがはこの街1番の高級宿だね。
それにしても、こんな所にレジスタンスのアジトがあったとは、驚きですよ。
確かに、普通は人通りの少ない所、裏通りとかスラムとかにアジトがあるから、盲点を突いた場所ではあるね。
僕達が中に入ると、全員がこちらを向く。
「お帰り、ヴァンドさん。その子達は誰ですか?」
全員の疑問を、近くにいた見た目が魔術師風の男の人が代表して聞いて来た。
「新入りだ。大陸北部のアステリア王国の伯爵様のお子様だってよ。それ以上の詳しいことは知らねぇ。おい、坊主。ここが俺達のアジトだ。さあ、お前のことを教えろ」
「初めまして、レジスタンスの皆さん。僕はアステリア王国スティード伯爵家の次男、レオナルド=シオン=スティードです」
そう言う約束だったからね。
しっかり自己紹介をさせてもらいますよ。
「スティード伯爵家って確か、アステリア王国でも有数の武力を持った貴族ではなかったですか?」
「そうですよ。我が家をご存じなのですか?」
何と我が家を知っている人がいましたよ。
その人は見た目がゴツイので、きっと戦士系の人でしょうか?
「ええ。スティード伯爵家は有名ですからね。決して権力を求めず、ただひたすらにダストレア大樹海から溢れる魔物の脅威から、祖国を守り戦う一族と」
「さすがに詳しいな、ヘックス。それで、レオナルド?改めて聞くが、さっきの話は本当なのか?今セレスハートにいる女神の使徒様が偽物だってのは」
「「「「「何っ!?」」」」」
ヴァンドのさんの問いかけを聞いた全員が、一斉に声を上げ、騒ぎ出す。
「そんなバカな!?」「いや、ヤツが偽物なら、今のセレスハートの状態も納得できるぜ?」「それは信用できる情報なの?」「俺は始めからそうじゃねえかと思ってたんだ!」
ちょっと収拾がつかなくなりそうですよ。
と、思ったら
「うるせぇぞテメーら!ちょっと黙ってろ!」
「「「「「・・・・・・」」」」」
ヴァンドさんの一喝で静かになりました。
この人、意外と統率力が高いのかな?
もしかして、レジスタンスのリーダーだったりして。
そんな都合良くはないか?
「で?何でテメェはその事を知っている?今セレスハートにいる女神の使徒様は、本物だって話だぞ?」
「その前に、なんで皆さんは、あれが本物だと言えるんですか?」
「証拠があるからだよ。お前も大陸北部の出身なら知ってんだろ?女神の使徒様が、お前の住んでいる大陸北部で誕生したって。で、その女神の使徒様が、女神セレス様の依頼を遂行し終え、このセレストメディエルに来たんだよ」
「ええ、そうですね。でも、それが何の証拠に?」
「その使徒様はな、女神像の前で祈ると、伝承の通り、体が金色の光りに包まれたそうだ。金色の光りなんざ、どんな魔法でも生み出すことが出来ねぇ。そしてその姿を、多くの女神教の信者が見てんだよ。それが女神の使徒様である、何よりの証拠だ」
なるほどね。
取りあえず金色に光れば、女神の使徒の証拠になる、と。
確かに、僕も金色に光ったことで、女神の使徒だと即座にバレたわけだし。
「それで、お前がその使徒様を偽物だと断言する理由は何だ?」
「ああ、簡単ですよ。セレス様から直接聞きました。アイツは偽物だって。
女神様本人が言うのですから、間違いありませんよ」
「「「「「ハァっ!?」」」」」
また全員が一斉に声を上げる。
皆さん、とっても息が合っていますね?
「おい小僧!どういうことだ!?なんでテメェが女神様から、直接話しを聞けるんだよ!?」
「僕が本物の女神の使徒だからです」
「そんなバレバレのウソを吐くんじゃねぇよ!」
即否定されてしまった。
本当なんだけどなぁ・・・・
「ウソではありません」
それまで黙っていたセシリアが、静かに、けど良く通る声で喋った。
「ああ!?小僧のお付きは黙ってろや!」
「いいえ、黙りません。彼が、レオナルド様が女神の使徒だという事は」
セシリアは、それまで付けていた『認識阻害』を付与された眼鏡を外しながら
「この私、教皇フォルセシウス=ライバッハ=ストラテラの娘、セシリア=ストラテラが保証します」
「な、せ、聖女様ーーー!?」
この瞬間、広間に大絶叫が響いた。
もし僕が慌てて防音の結界を張らなければ、きっと1階どころか、この宿の外にまで声が届いていたことでしょう。
それ程までに、この場にいた全員が発した声はでかかった。
それはそうだろう。
本物かどうかすら分からない、自称女神の使徒の登場よりも、顔も知っていて、自分達の保護対象でもある聖女セシリアの登場は、とてつもない衝撃だったのでしょう。
セシリアが素顔を晒したことにより、一緒にチェスカさんも眼鏡を外す。
「聖女様、よくぞ御無事で!」
ヴァンドさんを筆頭に、全員がその場で跪き、セシリアに頭を垂れる。
え、何?聖女ってこんな扱いなの?
教皇の娘だから、ある意味王女とも言える存在だし、これが普通なのかな?
「皆さん、頭を上げてください!私は、そんなにたいした人物ではありません!」
あ、セシリアが慌てている。
やっぱりこれは、過剰な対応だったようだね。
「しかし聖女様・・・」
「私が良いと言っているのですから、みなさん、どうか頭を上がてください」
「は、それでは・・・」
やっと全員が頭を上げてくれたけど、まだ跪いたままですよ。
「それで聖女様。この小僧、いえ、このお方が女神の使徒様というのは本当ですか?」
ヴァンドさんが、跪いたまま質問して来た。
セシリアも面倒になって来たのか、もうスルーしていますね。
「ええ、間違いありません。女神セレス様からの神託もありましたし、私はこのレオナルド様と共に、かの女神の間に招待され、直接お話しをさせていただく栄誉も授かれました」
「おお、それでは、本当にこのお方は、女神の使徒様なのですね?」
「はい、聖女セシリア=ストラテラの名に懸けて、間違いなく」
「お、お、オオオオォォォォォッ!」
ヴァンドさんが雄たけびを上げると、それに釣られて全員が雄たけびを上げる。
その音量は、さっきの比ではないほどのデカさです。
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




