第69話 女神様にできること
「実はね、神としての制約のせいなんだ。過去に起きたことなら全て分かるんだけど、現在のことはそれほど分からないってことは、以前説明したよね?過去の事をいくら知っても、手の施しようがないけど、現在の事を全て知ってしまうと、女神の使徒や聖女を使って何でも思い通りにできてしまうからね。それは世界の成長にならないから、必要以上に干渉できないように制限されているんだよ」
「え?じゃあ何で、今起きていることを把握できているんですか?例えば、セシリアの家族が無事だとか、偽物の女神の使徒が現れたとか」
「ああ、それは簡単なことだよ」
僕の質問に、ニヤリと笑って答えてくれたセレナ様。
「私、世界中どこでも見ることが出来るからね」
「「え?」」
「だから、私は今世界で起きていることなら、どこでも見ることが出来るんだよ。もちろん音声付きで」
すっごいドヤ顔をキメてくれる女神様。
本人としては自慢の能力で、羨ましいだろ~?とでも言いたそうな顔。
でも、それって、ただの覗きじゃないですか!?
喉まで出て来た言葉を、僕は全力で飲み込むことに成功しました。
横を見ると、同じく言葉を飲み込んだであろうセシリアと目が合い、瞬時にアイコンタクトを取りました。
すなわち、一切ツッコまない、と。
「すごいでしょ~?私はここから出られないけど、こうやって世界を見ることは出来るんだよね~」
「そ、そうだったんですね?」
「べ、便利な、能力、ですね?」
「えへへ~」
良かった、ツッコまなくて。
下手に何か言っていたら、ここから出られないというセレス様が拗ねてまっていたかも知れません。
この人、じゃなかった、この女神様、拗ねると絶対に面倒そうだからね。
でも、それを聞いてちょっと疑問が。
「セレス様はここから出られないって言ってましたけど、どうやっても出られないんですか?一時的にとか?」
昔は世界に降臨した、という事実があったのに、今は出られないというのが気になってしまいました。
何か条件でもあるのかな?
それとも、魔神との戦いで相当力を失ってしまったのかな?
「うん、出られないよ。でも、一時的になら出る方法はあるんだけど、結構条件が厳しくてね」
「どんな条件なんですか?」
「ステータスが20億を超えた者が、私を呼ぶ、って言うのが条件だね。しかも、私が呼ばれている間その20億のステータスは、私が世界に留まっているのに使用されているから、私を呼んだ者はステータスが20億減ってしまうんだよね」
「20億ですか。それだと今は無理ですね」
僕ですら約8億なんだから、普通の人には無理ですね。
今後、僕が成長すればあるいは、って感じですか。
「そ。だから私は、ここから世界を見守っているのさ。この能力のおかげで、世界中で起きていることを見ることが出来るんだけど、見ていないことは把握できないし、見ていても誰が何を考えているのかまでは分からないのさ。詳細を知れるのは、その出来事が過去になり、手の施しようなない状態になってから。だいたい事が起こってから、1年後くらいだね。そうなると自動的に私の頭の中に、全ての情報が入って来るんだよ」
「なるほど。だからだったんですね」
その後も少し話しを聞き、捕らえられているセシリアの家族には危険が今の所ないため、急いで救出に向かう必要はないから、折角ダストレア大樹海にいるんだから、セシリアとついでにチェスカさんのレベル上げでもしてあげれば?と言われた。
偽女神の使徒は手下も相当数いるようなので、もし2人が戦いに巻き込まれた際、自衛できるようにしておけば安心でしょ?とアドバイスを頂きましたので、戻ったら早速レベル上げをしようと思います。
「それじゃあセレス様。また今度来ますね」
「女神セレス様。お会いできて、お話ができて光栄でした。これで失礼いたします」
「うん。それじゃあ2人共、元気でね~」
セレス様が話したいことも尽きたようで、僕達は女神の間を後にした。
「ふぅ~、戻ったね」
「ありがとう、レオ君!貴重な体験をさせてもらったわ!」
目を開けると、そこは当然さっきまでいた樹海の中でした。
近くにはさっき仕留めた最上級の肉、ミノタウロスゼファロスと、たぶん素材は高く売れるであろうガデッサインフェルノが転がったままだった。
そして目の前、というか足元には、土下座から祈りを捧げる姿勢に変更したチェスカさんがいた。
「えっと、チェスカさん?」
「チェスカ、何をしているのですか?」
僕とセシリアの質問に、祈りの姿勢を崩さずにチェスカさんが、
「レオナルド様。あなた様が金色に輝いたことで、女神の使徒様だと確信いたしました。つきましては、今までの数々のご無礼をお許しください」
と、言ってきました。
いや、それは別にどうでもいいんですけどね?
何で謝っているのに祈りのポーズをとっているんですかね?
普通そこは、頭を下げる所では?
祈られながら謝られても、違和感しか感じないですよ。
あ、きっとあれかな?
神の前で懺悔する時、神に祈りながらするって聞いたことがあるので、そんな感じなのかな?
確か、女神の使徒は女神セレス様の代弁者、だから、女神教の教徒にとっては神みたいなものなんだろうね。
よし、そういうことにしましょう!
「チェスカさん。もう気にしていませんから、立ってください」
「はい。寛大な対応、ありがとうございます」
そう言って、チェスカさんは立ってくれました。
立ってくれたんですけど、僕から5歩くらい離れ、手を胸の前で組んでいる。
どうしよう、見ただけで僕を崇拝しているのが分かるよ。
「あの、チェスカさん?」
「はい!何でしょうか、使徒様!」
「もっと楽にしてくれていいんですよ?さっきまでと同じように」
「そんな!使徒様に対してそれは、畏れ多いです!」
「あと、使徒様は止めてください。レオナルドでいいですから」
「分かりました、レオナルド様!」
「様も要りませんから」
「そんな!?レオナルド様は女神セレス様の代弁者なのですよ!?そんな御方を呼び捨てになど、女神教の信徒として、絶対に出来ません!」
面倒になってきましたが、これは放っておくと、今後女神教の信者全員がこのような態度で僕に接してくる、という未来になるのでは?という危機感が生まれました。
考えても見てください。
このレシタクルス大陸にある宗教は、基本的に女神教のみ。
そしてほとんどの住人が女神教の信徒なのである。
つまり、この大陸のほぼ全員が、このチェスカさんみたいに接してくる可能性がある訳ですよ!
もしそうなった場合を想像してみましょう。
僕が何気なく街を歩いていると、すれ違う人々が足を止めて膝を着き、僕に祈りを捧げてくる。
そして僕が去った後、手は組んだまま立ち上がり、僕の方を熱に浮かされたように見ているわけですよ。
うん、街を歩きたくなくなりますね!
そんな未来にならないように、ここは対応を間違える訳には行きませんね!
「取りあえず、中に入って落ち着いて話をしましょうか?」
「はい!レオナルド様の仰せの通りに!」
「・・・・・セシリアもいい?」
「うん・・・・言いたいことは分かるから、中でイスにでも座ってゆっくり話そう?」
疲れた表情をした僕とセシリアは、チェスカさんを伴って小屋の中に戻りました。
あ、放置していたミノタウロスゼファロスとその他は、しっかり異空間収納にしまっておきました。
その後、約1時間かけてチェスカさんを説得し、さっきまでのようにはいかなくても、せめてセシリアに接する時のようにしてもらえるようになりました。
疲れた・・・
「さて、これからの方針なんだけど、何か意見はある?」
「今すぐ教皇様達を救いに行くべきではないでしょうか?」
「あ、チェスカには言ってなかったですね。どうやら私がセレスハートに戻るまでは、偽物の女神の使徒はお父様達に手を出すことはないそうです」
「え?なぜそう断言できるのですか?」
「女神セレス様がそう仰ったからですよ」
「女神セレス様が・・・それならば信用できますね」
「そうなの。ですから、時間に関してはまだまだ余裕があるのです」
「そうでしたか・・・・それでしたら」
そしてチェスカさんはチラリとこちらを見て、
「レオナルド様、私を鍛えてはもらえないでしょうか?強くなりたいのです!」
覚悟をした目で言ってきました。
良かった。
もしチェスカさんがレベルを上げる気が無く、すぐにセレスハートまで行こう、と言ってきたら説得が面倒になると思っていましたよ。
いや、今のチェスカさんなら、僕の一言であっさり意見を翻すかな?
一応、強くなりたい理由を確認してみましょうか。
「どうしてですか?僕1人がいれば、たぶん偽物を倒し、教皇様達を開放することは容易いですよ?」
「そうかもしれません。ですが、私は見習いとは言え聖騎士です。尊敬する聖騎士長様や団長の方々がやられてしまい、黙っているわけにはいかないのです!敵わないまでも、女神の使徒を名乗る不届き者に、せめて一太刀浴びせたいのです!」
ほぼ予想通りの理由でしたが、目がね?
死を覚悟した人のような目をしているんですよね。
偽女神の使徒と刺し違えてでも、とか考えていないですよね?
まあ、強くなりたいって言うのなら、いくらでも協力するけどね。
ちょうどここは、敵には困らないダストレア大樹海の中だし、僕の魔導具を使えば、そこまで苦戦することなく敵を倒し、レベルもすぐに上がるだろうからね。
「分かりました。それでは2人共、ここで修行をしましょうか?」
「お願いします!」
「ええっ!?セシリア様もですか!?」
「ええ、私も家族を取り戻すために強くなりたいのです」
「そうでしたか・・・なんとご立派に成長されたのでしょう・・・・分かりました!一緒にレオナルド様に鍛えて頂き、強くなりましょう!」
「ええ!」
やる気は十分のようですね。
それでは、専用の魔導装備を作って、さくっとレベルアップしてもらいましょうか!
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




