第68話 何でいるの!?
目を開けると、そこはいつもの真っ白な空間、女神の間でした。
正面には、緩くウェーブのかかった深い緑色の髪を膝まで長く伸ばし、ゆったりした白いローブを纏った女性、この女神の間の主、女神セレス様がイスに座って待っていた。
「こんにちは、セレス様。ちょっと聞きたいことがあって、ここに来ました」
「聞きたいことは分かっているよ。よく来たね、レオナルド。それと会うのは初めてだね?聖女セシリア」
「え!?」
慌てて振り向くと、僕の後ろにセシリアがいた。
「何でお前がいるの!?」
「何でって言われても私にも分からないよ!?ここどこ!?それに今、レオ君、あの女の人のこと、セレス様って言わなかった!?言ったよね!?ね!?って言うか、この女性から溢れる神々しいオーラ。間違いなく女神セレス様よね?私の本能と言うか、細胞の1つ1つが全力で女神セレス様だって言っているんですけど!?」
「ちょっと落ち着け!ちゃんと説明するから!」
驚く僕に、それ以上に驚いているセシリア。
そして正面には、ニヤニヤしている元凶の女神がいる。
あの顔、殴りたい!
おっと、女性に対してそれはマズイですよね。
何とかセシリアを落ち着かせ、用意されていたいつものイス、が無く、代わりにあった2人掛けのソファーに座った。
けどセシリアは座らない。
座っていいのか分からない、といった、戸惑いの表情を浮かべていますね。
そりゃあ、信奉している女神様が目の前にいるからね。
どうしていいか分からないのだろうね。
「そんなに緊張しなくてもいいよ、セシリア。キミもレオナルドの横に座りなよ」
「は、はい・・・」
セレス様に勧められたため、おずおずと、僕の横に座ってくれました。
「それで、セレス様?何でここにセシリアまでいるんですか?」
「うん?そんなの私が呼んだからに決まってるでしょ?」
「それは分かってます。そうではなく、セシリアをここに呼んだ理由はなんですか?と聞いているんですよ!」
絶対、この女神様は分かってて言っている。
もしセレス様が女性じゃなかったら、そのニヤニヤしている顔に、一発ぶち込んでたかもしれないですね。
「ああ、それは簡単な話でね。レオナルドとここで話しながら、セシリアに神託を下すのが面倒だったから、一緒に済ませようと思って呼んだんだよ」
「そんな理由で呼んだんですか!?」
その予想外の答えにビックリですよ!
いや、この女神様ならあり得る話ですけどね。
だって、この女神、結構いい加減で抜けている所あるし、寝すぎて魔神が大陸移動させてたことに気付かなかったくらいだし。
セレス様の行動に、呆れと諦めがつきました。
はぁ~・・・
「あ、あの!本当に女神セレス様なのですか!?」
「うん、そうだよ。改めて初めまして、聖女セシリア。私がこの世界の神、セレスだよ。よろしくね~」
相変わらず軽いな、この女神!
いや、まあ、下手に神々しすぎても、きっと肩が凝るだろうから、このくらいがちょうどいいのかな?
「お会いできて光栄です!それと、私を救ってくれてありがとうございました!」
「いやいや、私はただ助言しただけだよ。キミが助かったのは、キミ自身が最後まで諦めなかったことと、そこにいるレオナルドが間に合っただけだからね。私はほとんど何もしていないよ」
「それでも!ありがとうございました!」
セシリアは、信奉する女神に会えたことが嬉しいのか、とても興奮しているようだね。
っていうか、こいつ、この世界に感化され過ぎじゃない?
なんで、こんな敬虔な信者になってんの!?
「さて、それじゃあそろそろ、2人が来た目的を果たそうか?」
放っておけば、いつまでも話が始まらなさそうな気配を察したのか、セレス様が強引に話しを進めてくれましたよ。
ありがとうございます。
僕だけの力だけでは、話しを進めることが出来なさそうな空気だったので、助かりましたよ。
だって、女神セレス様に会えたのが嬉しすぎて、恍惚とした表情をしているんですよ、この聖女様!
取りあえず、隣の遠くに行ってしまった幼馴染は無視しよう。
「そうですね。それでは、今、セレストメディエル聖教国にいるという女神の使徒は、偽物ってことで良いですか?」
「そうだね。そもそも、このレシタクルス大陸にいる女神の使徒は、キミとミコトの2人だけ、いや、1人と1体だけだからね」
やっぱり偽物だったんだ。
ちょーっと楽しみにしていたのに、残念ですよ。
「では、その偽物の目的は分かりますか?」
そう、これが一番知りたい情報ですよ。
教皇の一族を捕らえ、セシリアを賞金をかけてまで生け捕ろうとしている。
なぜ?僕には情報が少なすぎて分からないけど、セレス様ならあるいは、と。
「多分だけど、次の教皇になって、権力を手に入れたいんじゃないかな?女神教の教皇って相当高い地位だし、セレストメディエル聖教国は大国だからね。で、次期教皇になるのに手っ取り早いのが、そこにいる聖女セシリアと結婚することなんだよね」
「はあっ!?どう言う事ですか、それ!?」
セシリアと結婚すると、次期教皇?何で?
「それは私が説明するね」
いつの間に正気に戻ったのか、セシリアが会話に参加してきました。
お帰りなさい。
「私の先代の聖女、ヴィヴィアンが結婚した相手が、後に教皇となったんだよね。もう、1000年前のお話なんだけどね?けど、このお話って結構有名で、私が聖女だって分かったら、私の旦那様になる人が次の教皇だって流れになっちゃってたの。おかげで、連日婚約者になろうとする人たちとのお見合いばっかりで、結構疲れたわ・・・」
よっぽど大変だったんだろうね。
虚ろな目をしていますよ、聖女様が。
「それも、しばらくしたら殆ど無くなったんだけどね。大陸の北部で、女神の使徒様が現れたって報告が来て、それが広まったからね」
そして僕をじっと見つめてくる。
何だ?と思ったけど、あ、そうか!それって僕の事だ!
「それで、女神の使徒様については、本人の強い希望によって詳細が伏せられていたけんだよね。分かっているのは男性で、今はセレス様の依頼を遂行中、ってことだけ。でもね、それしか情報が無くても、女神の使徒様が男性だと知った皆が、聖女である私と結婚するべきだ、って勝手に騒いじゃったのよね。しかもお父様もお母様も乗り気になっていたし。だから私と結婚するために、私を生け捕りにしたいんじゃないかな?」
「なるほどね。つまり、セシリアと結婚すれば、自動的に教皇になって、セレストメディエル聖教国の代表として、世界に対しても強い発言権を持つ、と。で、セシリアと結婚できるのは女神の使徒だと」
次の教皇になるのは女神の使徒を名乗って、セシリアと結婚するのが手っ取り早くて確実な方法ということだね。
納得しかけたけど、ちょっと待てよ?
女神の使徒って、元々教皇よりも上の地位だよね?
「あれ?別にセシリアと結婚して、教皇になる必要ってないんじゃない?だってそいつ、女神の使徒なんでしょ?」
ん?どういういことだ?
「あ~、考えられる可能性が2つあるんだけどさ、聞く?」
セレス様が控えめに割り込んで来た。
「聞きます。どんな可能性ですか?」
「うん。1つが、その偽者の女神の使徒ってさ、頭が悪いんじゃないかな?目的が教皇になって権力を得る、だから、女神の使徒は通過点って思っているだけかもしれないし」
「いやいや、それはいくらなんでも馬鹿すぎますよ。もっと他の理由があると思いますよ?」
「う~ん・・・・そうなるともう1つの可能性かな。純粋にセシリアに惚れていて、どうしても結婚したい、とか?」
「それも、ちょっとどうかと思いますが・・・いや、そもそもその偽物って、何歳くらいなんですか?」
「詳細はまだ分からなくて申し訳ないんだけど、多分30代前半だね」
「よし、変態に認定だ!」
「うん。私、そんなのと結婚したくない!」
まだ10歳に満たない子供に求婚する20代前半の男って、現代日本なら完全にアウトですよ!
ポリスマンが出動しちゃいますよ!?
そんな危険なヤツを、セシリアに近付けさせるわけにはいかないね!
「じゃあ早速、その偽物をブチのめしに行こうか!じゃあ、セレス様。僕らはこれで・・・」
「ちょっと待とうか!?もう少し伝えたい情報があるんだけど!?」
「何ですか?手短にお願いしますね」
「ちょっとレオ君!?セレス様に対して失礼過ぎない!?ちゃんと話は聞こうよ!」
「そーだそーだー!セシリア、もっと言ってやってくれよー!」
「分かりましたよ。それで?伝えたい情報って何ですか?」
僕としては、今すぐその変態野郎をぶっ飛ばしてやりたいところなんですけどね!
別にそのようなことを想像するのは個々人の自由ですが、実行したらまずいでしょ!?
そんな危険人物、すぐに排除した方が世の為人の為ってもんですよね!?
でも、セレス様と、特にセシリアが話しを聞くように言ってくるから、しょうがないですね。
「まず、今のは私の予想だから、必ずそうとは限らないからね?そこは間違えないように!」
「え?そうなんですか?女神様なのに、分からないんですか?」
「だから、考えられる可能性って言ったよね?そのことについてはまた後で説明するとして、本題はこっち」
そして、セレス様はセシリアの方を向き、
「セシリア。キミの家族は全員無事だよ。そして、殺されることは今の所、無い」
「本当ですか!?お父様、お母様、お兄様達は無事なんですね!?」
「うん、間違いないよ」
「良かった。良かったよ・・・・」
ずっと心配だったんだろうね。
セシリアは涙を流し、喜んでいた。
やっぱり、セシリアもこの世界の家族が大事なんだね。
僕もそうだから、その気持ちは良く分かるよ。
「ただ、残念だけど、聖騎士達は何人か殺されてしまったよ。教皇達を守る為、偽の女神の使徒に刃向かって一瞬で返り討ちさ。聖騎士長や、団長、それに追随していたトップクラスの実力者たちは、何人かは生きているけど、その全員が重傷を負っていて、動くことが出来なくなっているよ。見せしめとして、死にはしない程度の治療しかされず、苦しまされているけどね」
聖騎士って、確かセレストメディエル聖教国の主力だよね?
その主力のトップが全滅って、国の防衛は大丈夫なの?
いや、何かあれば、その偽の女神の使徒が何とかするのかな?
「生きている聖騎士もいるのですか!?」
「うん、結構いるよ。キミの父上である教皇が、偽者の女神の使徒が聖騎士のトップ連中を一瞬で蹴散らしたのを見て、すぐに降伏したからね。あれは英断だったよ。おかげで、犠牲が少なく済んだからね」
「そうですか・・・・それでお父様達が、今は殺されることがない、とはどういう事でしょうか?」
「セシリアが戻ってくるまでは、手を出さないようだよ。理由は分からないけど、生かしておくことで、キミに対しての人質にする気かもね?例えば、結婚を迫ったりとか」
「よし、やっぱり殺しに行こう」
「異議なし」
「だから例えばって言ったよね!?ただの可能性だよ!?」
う~ん、どうしても偽物の女神の使徒に対しての殺意が、すぐに溢れて来てしまう。
やっぱりセシリア関連だからかな?
「それにしても、さっきから可能性とか、例えばが多いですね?後で説明するって言ってましたけど、どういう事なんですか?」
さっきまで、すぐにでも偽女神の使徒の息の根を止めに行こうとしていた手前、こんなことを聞くのもなんですが、気になってきちゃっいましたよ。
「ああ、実はね・・・」
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