第67話 ちょっとキレた
全力で移動したため、何とかフェニックスより先に超級の魔物に辿り着きました。
ふう~、間に合って良かった。
主にミノタウロスゼファロスが生きていてくれて!
ガデッサインフェルノ?
あれはもう、どうでもいいですね。
あ、フェニックスが来ちゃった。
《む?何故人間がここにいる?》
現れたフェニックスは、全長が20m、翼を広げると端から端まで40m以上はある、予想通り炎に包まれた巨大な鳥だった。
それにビビったのか、2体の超級の魔物が逃げようとしたので、闇魔法で影に干渉し、動きを封じて起きました。
そしてやっぱり、念話で会話をするようです。
「こんにちは、神獣フェニックス。僕は女神の使徒のレオナルド=シオン=スティードです。初めまして」
《おお、貴方がそうであったか!母セレスから聞いておりますぞ!》
「あ、それじゃあ、僕に全神獣への命令権があることも知っていますよね?」
《もちろんですとも!あ、今何か命令されますかな?》
良かった。
以前の依頼の報酬である神獣への命令権は、しっかり伝わっていたようですね。
それなら話は早い。
「ええ。実は今、この2体の魔物を倒そうと思っていまして、手出しはしないでください。それと、この先に僕以外の人間が2人いますが、一切危害を加えないでください」
《それならたやすいことですな!分かりました!それでは我はここより去りましょう!》
「我が儘を言ってすみません。それでは、お願いしますね」
「ええ、それでは我はこれで!」
そう言ってフェニックスは、大空へと帰って行った。
ふぅ~、助かった。
ミノタウロスゼファロスの件もそうだけど、こんなのが現れたら、セシリアもチェスカさんもビックリしてしまうからね。
よし、それじゃあ2人の所に戻りましょうか!
闇魔法で動きを封じていた2体の魔物を開放すると、コイツ等、すぐに逃げ出そうとしましたよ!
まあ、今の魔法で僕との実力差が理解できただろうし、自分達よりも格上の神獣フェニックスがあっさりと引き下がったのを見たら、そりゃ逃げたくもなってしまうでしょう。
が、逃がしませんよ!
またしても闇魔法を使って動きを封じ、そのまま引っ張って戻ることにしました。
「すみません!お待たせしました!」
「「っ!?」」
暫くして戻ってきた僕を見て、待っていた2人が声を出せないくらい驚いていた。
「どうしたんですか?」
「レ、レオ君!?その引きずってるの何?」
「え?これですか?これはさっき言っていた、超級の魔物ですよ?こっちがガデッサインフェルノで、こっちがミノタウロスゼファロスです」
「もう、仕留めたのですか!?」
「え?まだですよ?これはコイツ等が逃げようとしたから、動けないようにしてここまで引っ張って来たんですよ」
「「・・・・・・・・」」
2人共絶句してしまった。
何でだろう?まあいいや。
「では、これからこの2体の超級の魔物を倒しますので、見ていてくださいね?」
「いや、あの、倒すも何も、もうすでに決着がついているように見えるのですが?」
「え、まだですよ?だって、まだ戦っていないですし、2体ともまだ元気ですよ?・・・今はなぜか大人しいですけど、何ででしょう?」
「それは、もう死を悟っているだけではないでしょうか?レオナルド君はこの2体に何をしたのですか?」
「えっと、逃げ出そうとしていたので動きを封じて、ここまで引っ張って来ただけですよ?」
「たぶんですが、その過程でこの魔物は、レオナルド君に決して勝てないと悟ってしまい、死を覚悟しているのではないでしょうか?」
「そうなんですか?そういえばさっきから全然暴れなくなりましたね?でも、折角連れて来たんですし、こっちのガデッサインフェルノはどうでもいいですが、こっちのミノタウロスゼファロスのお肉はとっても美味しいんですよ。なので、今からやっちゃいますね」
と、言う訳で、2体の拘束を解き、向かい合う。
そして次の瞬間、全力で2体が逃げ出した!?
「ちょっと!?」
巨大な2体の魔物が、我先にと逃げていく。
「逃がすか!特に肉!」
そして僕はミノタウロスゼファロスに一瞬で近付き、首を一撃で落とす。
次に別の方向へ逃げていたガデッサインフェルノを、これまた1撃で首を落とす。
ガデッサインフェルノは危なかった。
だってあの方角って、そのまま行くと樹海の外に出ちゃうからね。
あんなのでも超級の魔物だから、放っておいた場合、下手したらヴェージガーブ王国が壊滅的な被害を受けていたかもしれない。
ま、初めから逃がす気なんてありませんでしたけどね。
そもそも、ここから外に出るまで、どれだけの距離があることやら。
何事もなく魔物を始末し、僕は2人の所まで戻ってきました。
「どうですかチェスカさん?これで信じてもらえたでしょうか?」
「え、ええ。あれを見せられては、信じるしかないでしょう・・・」
良かった、信じてもらえたようです。
「えっと、レオ君が異常に強い事は分かったんだけど、これからどうするの?」
「どうするって?」
「私達を助けてくれるの?」
「ああ、もちろん、そのつもりだよ?あ、その前に、2人は今の状況をどこまで把握できているの?」
「私が知っているのは、セレス様からの神託で、セレストメディエル聖教国にやって来た女神の使徒様は偽物で、北に向かって逃げるように言われたことと、北に進めば私を助けてくれる人、つまりレオ君がいるっていうこと。それと、私達に賞金が懸けられ、追手がいること、くらいかな?」
「そうですね。強いて言うなら、セシリア様は生け捕りにして、私や他の護衛の騎士は生死不問、といった所ですね」
殆ど僕が知っている情報と同じだね。
あと補足するなら、セシリアの家族が全員捕まっているんだけどね。
それよりも、今何て言った?
「女神の使徒が偽物?それにセレス様からの神託って何!?」
「ああ、私は聖女だから、女神セレス様の声を聞くことが出来るの。それで、その女神セレス様から下った神託で女神の使徒が偽物で、私を狙っていることを教えてもらったから、逃げたの」
「あ、そうなんだ。なんだ偽物か。折角2人目の仲間に会えると思ったのに、違うのかぁ」
「え?仲間?」
僕の何気ない呟きを、チェスカさんがしっかり拾っていた。
「あ、しまった・・・」
その途端、チェスカさんが僕とセシリアの間に立ち、剣を向ける。
「貴方は、いや、貴様は偽物の女神の使徒の仲間だったのか!?」
また誤解させてしまったようです。
どうしよう?
と思っていたら、
「チェスカ、黙ってて」
またしてもセシリアが、チェスカさんを黙らせようとしてくれています。
「ですが、この者は今・・・」
「いいから黙っていてください。あなたが一々邪魔をするから、さっきから話が先に進まないのですが?」
「・・・・申し訳ありません」
「それで、レオ君?さっきのはどういう事?」
う~ん・・・・どうしようかな?
でも、セシリアは聖女で、女神セレス様の声を聞けるなら、別に良いか?
よし、話しちゃおう。
「えっとね?実は僕は女神の使徒なんだよ。それで、セレストメディエル聖教国にいる女神の使徒が仲間だと思ったんだけど、どうやら違ったみたいだね」
「「はぁあっ!?」」
正直に話したら、2人に驚かれてしまった。
そりゃ、偽物の女神の使徒が現れたと思ったら、今度は目の前にいるのが本物だと言われれば、そうなってしまうのも仕方がないですよね?
「えっと?本当にレオ君は女神の使徒なの?」
「そうだよ。嘘を言っても意味がないからね」
「証拠は?」
「証拠?う~ん・・・女神セレス様は結構話し方が軽い、とか?」
「当たっているけど、それじゃあ弱いなぁ?他には?」
「他?う~んと、僕以外には、このダストレア大樹海の中央にいる龍王が、女神の使徒、ってのは?」
「え、そうなの!?そんなの私も今知ったわよ!?」
「じゃあダメか・・・それなら、僕が祈りを捧げれば金色に光るってのは?」
「それよ!じゃあ、早速教会に行って、お祈りを・・・」
「申し訳ありませんセシリア様。ここはダストレア大樹海の中なので、教会はありませんよ?」
「そうでした・・・・」
何とか証拠になりそうなのがあったのに、教会がないから確認できないと来ましたよ。
ん?別に教会じゃなくてもいいんだよね?
「えっと、教会はないけど、女神像ならあるよ?」
「本当?どこに!?」
「ここ」
そう言って僕は異空間収納から、僕お手製の女神像を取り出す。
「この女神像に向かって祈れば、問題ないでしょ?」
それを見た2人の反応は、
「ちょっとレオ君!?何この素晴らしい女神像は!?どこで手に入れたの!?」
「いえ、こんな素晴らしい物、そうそう手に入る訳ありません!どこから盗んで来たのですか!?」
なんだろう、どんどんチェスカさんの発言に苛立ってきたな。
いや、ここは我慢我慢、と。
「盗んだ物ではありませんよ。これは僕が自分で作ったんです」
「ウソ!?レオ君て器用過ぎない!?」
「そんなの信じられますか!さあ、正直に白状しなさい!」
あ、そろそろ我慢の限界が来そうですよ。
「さあ、レオナルド君!どこの教会から盗んで来たんですか!?教会の持物を盗んだ盗人には、厳罰が課せられますよ!」
よし、我慢終了!
「ちょっと黙れ」
「ひっ!?」
「あ、キレた」
ちょっとうるさいから、かる~く殺気を飛ばし、チェスカさんを黙らせる。
それを見たセシリアは、うん、冷静だね。
「だから言っていたでしょう?チェスカが邪魔をすると、話が先に進まないって。それに、レオ君は普段は温厚だけど、じつこく邪魔をしてくる人は敵認定して、急に攻撃的になるから」
流石は幼馴染!僕のことを良くお分かりで!
「それと、1度レオ君の敵になったら、容赦しなくなるよ?レオ君の実力は知っているでしょ?何で態々神経を逆撫でするようなことばかりするの?もう私はフォローできないからね?」
「も、申し訳、ありませんでした・・・」
「私に謝ってどうするの?」
「レオナルド君、申し訳ありませんでした!」
土下座してきましたよ。
まあ、いいでしょう。
だって、普通に考えたらあり得ない話しばかりしているからね、僕。
「じゃあ、話しを進めるよ。この女神像は、女神の使徒である僕が作ったので、教会にある祝福を受けた女神像と同じになっている。だから、これの前で祈りを捧げれば、僕の体は金色に光るよ」
「あ、なら私も一緒に祈りを捧げても良いかな?もしかしたら、新しい神託が下るかも知れないし」
「ああ、そうか。別に構わないよ」
「じゃあ、早速祈ろうか?」
「そうだね」
僕らはその場で膝をつき、祈りを捧げました。
チェスカさんは、まだ土下座中でした。
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




