第66話 レオナルド慌てる
僕が今作っているのは、野菜たっぷりのスープです。
ヌカンテスの街で得た情報と、セシリアとチェスカさんの2人の状態を見て、おそらくここ数日はまともな食事をしていなかったのだと推察しました。
なので、お腹が減っているとは思いますが、いきなり固形物を食べさせるよりは、しっかり野菜を煮込んだ栄養のあるスープの方が良いと思い、作っています。
入っている野菜は、さっきヌカンテスの街で買ってきた物と、ダストレア大樹海で採れた薬草で、出汁は掛け布団にも使用しているAランクの鳥型の魔物である、フレースベルグの鶏ガラ(?)です。
これのスープを飲めば、不調だった体も全快になること間違いなしですよ。
消化しやすいように、野菜は長時間煮込みました。
野菜スープがいい感じに仕上がった頃、セシリアが目を覚まし、続いてチェスカさんが目を覚ましました。
もっと寝ているかと思っていたのですが、どうやら2人共、スープのいい匂いで起きてしまったようです。
「おはようございます。気分はどうですか?」
起きた2人に優しく声をかける。
「っ!?ここはどこですか!?私はいつの間に寝てしまったのですか!?」
「あ、星夜君、じゃなかった、えっとレオナルド君だっけ?おはよー」
片や状況が理解できず、慌てまくっている護衛と、片や僕がいるおかげか、全く警戒していない聖女様。
よし、チェスカさんに説明するのが面倒だから、無視しよう。
「今スープが出来上がりますから、2人共イスに座って待っていてください」
「え、レオナルド君って料理できるの?」
「こっちに来て習得したんですよ」
「そうなんだ。で、腕前の方は?」
「それは食べてからのお楽しみってことで」
「自信ありって顔だね?じゃあ、楽しみにしているよ」
「えっと、あの、セシリア様?」
僕とセシリアが普通に仲良く会話しているのを見て、チャスカさんが戸惑っている。
それはそうでしょう。
チェスカさんの知る限り、僕とセシリアはさっき会ったばかりなのに、まるで昔からの知人のように、しかも聖女として礼儀作法を徹底的に叩き込まれたセシリアが、ここまで砕けた話し方をしているのだ。
3年前からとは言え、レオナルドよりも遥かに付き合いが長いチェスカさんからしたら、異様な光景に映ったことでしょう。
「何ですか、チェスカ?」
「いえ、えっと、セシリア様がこのレオナルド君とずいぶん親しげに話していたものですから、驚いてしまいまして・・・」
「ああ、そうでしたか。私達はこのように仲良しですので、気にしないでください」
「え?」
「レオナルド君の料理楽しみだな~」
「え?あの、セシリア様?」
「お待たせしました。きっと消化器官が弱っていると思うので、消化に良い野菜たっぷりのスープです」
セシリアの大雑把すぎる説明にチェスカさんは困惑していますが、僕とセシリアの関係を説明しても、たぶん理解してもらいないと思うので、再び無視することにしました。
「ふ~ん、これがレオナルド君が作った料理ねぇ?」
「冷めない内にどうぞ」
「そうだね。では、いただきます」
「あ、では私も」
二人は1口スープを飲み、固まってしまった。
口に合わなかったかな?と思っていたら、2人共すごい勢いでスープを飲み始めた。
そして、あっという間に飲み干してしまった。
「おかわりありますけど、どうします?」
「「ください!」」
そして2人は3杯もスープを飲み干してしまった。
よっぽどお腹が空いていたんですね・・・
食事が終わり、今2人はデザートの果物を食べています。
こちらも消化に良さそうな、リンゴとバナナみたいな果物です。
「ねえ、レオナルド君?」
「はい?」
「何で私よりも料理上手いの!?」
「え?セシリア様って料理出来るんですか!?」
「ごめんチェスカ。今はちょっと黙っててください」
「はい・・・・」
「それで、何でなの?」
「何でって言われても・・・・料理スキルを習得したから?」
何か、セシリアが物凄い真剣な表情で質問してきて、割り込んで来たチェスカさんを黙らせた。
ちょっとコワいですよ?
「料理スキル?でもレオナルド君って伯爵家の次男なんだよね?いつ料理なんか覚えたの?」
「それは、ダストレア大樹海の調査に入ってからだよ。1人だったから、料理していたらいつの間に習得していたんですよ」
「うん、ツッコみたいことがたくさんあるんだけど、1つずつ良いかな?」
「どうぞ?」
「まず、話し方が気持ち悪い」
「おい」
たぶんダストレア大樹海の調査をツッコまれると思っていたら、まさかの口調でしたよ!?
「だって、そんなの私の知っているレオナルド君じゃないよ!?」
「いや、だってセシリアって聖女様なんですよね?しかも教皇の息女ってことは王女様みたいなものでしょう?だったら、それ相応の言葉遣いにするべきだと思い、敬語を使っているんですが」
「ええ、そうですね。いくらあなたが私達の恩人であっても、いくらセシリア様が大事な人だと言っても、それは当然の姿勢ですね」
「チェスカ。今大事な話しをしているから、黙ってて」
「はい・・・・」
またしてもチェスカさんを黙らせてしまいましたよ、この娘。
「それに、僕はアステリア王国の貴族としての教育を受けているので、この話し方が普通になっているんですよ」
「え~、私の前ではいつも通りがいいなぁ。私だって、聖女としての教育を受けているけど、レオナルド君にあの口調は違和感があるから、こうやって話しているんだし」
「う~ん・・・・分かった。じゃあ、昔みたいに接するよ。それでいいか?」
「うん!」
そうして、僕とセシリアの間では、話し方の件についての議論はおわった。
「あ、それとさセシリア?」
「何?」
「僕のことはレオって呼んでよ」
「レオね、分かったわ。じゃあレオ君、次だけど、ダストレア大樹海の調査って何!?どういう事!?」
あ、やっぱりツッコんで来た。
これに関しては、僕が女神の使徒ってことは黙って、アステリア王国から依頼されたってことを説明しました。
「え?それって、死んで来いってことじゃないの?」
話しを聞き終わったセシリアから、至極まともな意見が帰ってきました。
「僕を嵌めようとした貴族達はそういう意図だったね。けど、王国のトップ、国王陛下、第1王子、宰相閣下は僕の実力を理解したうえで、この依頼を承諾したんだ。正直、僕のステータスって人外になっているからね」
「あ、もしかしてチートスキル?」
「正解」.
「じゃあ、ダストレア大樹海を真っすぐ突っ切って来たのは、本当の事?」
「そうだよ。何体か厄災級の魔物とも戦ったけど、大したことなかったね」
「へ~、すっごく強くなったんだね!」
「いえ、セシリア様。それはウソです。こんな子供が、ダストレア大樹海を縦断出来るはずありません!ここには無数の魔物が・・・」
「チェスカ?」
「・・・・失礼しました」
セシリアは転生特典のチートスキルの事を知っているけど、チェスカさんは知らないからなぁ。
この反応は仕方がないことだけど、どうしよう・・・・
あ、そうだ。
「まあまあ、セシリア。チェスカさんの反応は普通だよ。何せ、有史以来誰一人としてこの樹海を踏破した人間はいないのだから。だからチェスカさん、その証拠を見せますよ」
「え?どうやってです?」
「ちょうど近くに超級の魔物がいるので、僕が倒しますよ」
「超級!?いけないセシリア様!すぐに避難しましょう!」
「何で?」
「だって、超級ですよ!?一国の軍隊が総出で闘っても、勝てるかどうか分からない相手ですよ!?」
「そうですね、知っていますよ。でもレオ君なら倒せるんでしょう?」
「余裕だね」
「じゃあ、問題ないでしょう?」
「な・・・・・」
絶句してしまったチェスカさんに、論より証拠という事で、超級の魔物退治を見せることにしました。
小屋の外に出て、近くにいる超級の魔物を支配圏を広げて探します。
はい、近くにいるんなてのはウソです。
あ、結構近くに2体発見!
近くと言っても、ここから軽く200kmは離れていますけどね。
それでは、早速こっちに連れてきましょうか。
やり方はいたってシンプルで、見つけた超級の魔物を超便利スキル『空間支配』を使って捕まえて、そのまま空輸して近くに落としました。
だいたいマッハくらいのスピードで移動させたので、10分程度で移動は完了。
空輸した魔物の安全を考え、魔物の周りの空間を固定し、一切の負荷がかからないように配慮しました。
まあ、この後さくっとやっちゃうんですけどね?
魔物2体を落とした場所は、ここからだと、だいたい10分後くらいに到着するかな?
準備が整ったので、2人を呼び、外で待つことにしました。
「今から10分後くらいに来ると思うから、それまでゆっくり待ちましょうか」
「あの、レオナルド君。質問してもよろしいですか?」
「何ですかチェスカさん?」
「ここって、まだダストレア大樹海の中なんですよね?」
「ええ、そうですよ?」
「なんでこんな立派な家が建っているんですか!?もしかして貴方が建てたんですか?」
チェスカさんは、あまりにも今いた小屋の中が快適だったため、ここがダストレア大樹海の中だということを、すっかり忘れてしまっていたようですね。
そして外に出て景色を見て、まだここが樹海の中だと思い出したようです。
「ええ、この小屋は僕が土魔法でちゃちゃっと建てた物ですよ。こんな風に」
そう言って僕は、適当な場所にもう1軒小屋を建てました。
所要時間は2分ほどで、何も無い地面から土が盛り上がり、みるみる内に小屋が出来上がっていくのを、チェスカさんとセシリアは口を開けて見ていましたよ。
「ね?」
「何か、これだけで貴方の話しが本当だと信じても良くなってきましたよ・・・」
「レオ君、凄いね・・・」
「そう言えば、何故レオナルド君は魔物が近くにいると分かったんですか?」
「それくらい分かりますよ。そんなことも出来なければ、ダストレア大樹海は生き抜けないですよ?」
「そうなのですか?」
適当に返事をしたら、取りあえず納得はしてくれたみたいです。
チートスキルのおかげです、なんて言えないですからね。
さて、超級の魔物が到着まで残り5分くらいとなった時、面倒なのが凄いスピードで接近してきました。
ダストレア大樹海の南を担当している神獣、フェニックスです。
どうやらダストレア大樹海の外に出そうな位置にいる2体の超級の魔物に気付き、排除するために向かっているようですね。
ちなみのその2体とは、以前フェンリルと戦っていた、全身に炎を纏った巨大な真っ赤な獅子のような魔物、ガデッサインフェルノと、食べると超美味いミノタウロスの最終進化形態である、ミノタウロスゼファロスです。
ガデッサインフェルノはどうだっていいけど、ミノタウロスゼファロスは是が非でも僕が仕留めたい!
だって、フェニックスですよ?
名前からして、全身炎に包まれた鳥ですよ?
絶対ににミノタウロス焼かれちゃうじゃないですか!?
「すみません!緊急事態が発生しました!ちょっと行ってくるので、ここで待っていてください!」
そう言って僕は、慌てて2人を置いて全力で走り出しました。
余計なことをしそうな神獣フェニックスより先に、ミノタウロスゼファロスを確保するために!
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