第65話 街で情報収集
「お前、もしかして、雪乃、か?」
「星夜、君?」
その女の子の言葉を聞き、僕は確信しました。
この女の子は、転生した高原雪乃だ、と。
僕がかつて神楽星夜だった頃、守ると自分に誓った相手であり、そして守ることが出来ずに、一緒に死んでしまった相手。
この世界には、転生した雪乃を今度こそ守り抜くと誓い、愛を語る神様に雪乃と同じ世界に転生できるように願いました。
そして女神の使徒になった時、女神セレス様から転生した雪乃はこの世界にいることを教えられ、けど今は会うことが出来ないと言われていた。
あれから4年以上が経過した今、やっと、やっっと出会えた!
それで、この状況なんだけど、
「ねえ、コイツ等はお前を狙っている追手なんだよね?」
「うん、そう。それに、私達を守ってくれた騎士達も、きっとコイツ等に・・・」
なるほど。
まさか2人だけで逃げて来たとは思ってはいなかったけど、護衛の人達はすでに殺されてしまっていたようですね。
「そうか、分かりました。すぐ終わらせるから、少し待っててね」
「うん!」
雪乃が元気に返事をしたの見て、僕はこの賊の殲滅を開始した。
まずは僕と雪乃が会話をしている隙に、真後ろまでまで迫っていた3人を、振り向きざまに剣を一閃させ斬り捨てる。
「何!一撃で3人斬っただとっ!?」
隊長(仮)が死んでいるため、再びドレアドが出しゃばって来た。
口だけだけど。
本人は、僕が隊長(仮)を切り捨てた時には後ろに下がり、指示出しに専念し始めた。
僕にビビッて逃げたとも言うね。
「さて、先に僕を殺すと言い、襲い掛かって来たのはあなた方です。自分が殺される覚悟はあるんですよね?」
「ま、待ってく・・・」
ドレアドが何か言いかけていたけど、無視して殲滅を開始します。
約50人が相手でも、僕から見たら烏合の衆でしかないので、戦闘は10秒もしない内に終了しました。
ただ、雪乃に会えてテンションが上がってしまったのか、ちょっと力加減を間違えてしまい、2~3人は残して話しを聞こうと思っていたのですが、全員斬ってしまいました。
しょうがないので、後で街にでも行って、情報収集をしますか。
っと、それよりも、
「お待たせ。もう大丈夫ですよ」
まずは雪乃と、ついでに護衛の女騎士さんを安心させないとね。
そう思って声をかけたら、雪乃が気絶してしまった!?
「セシリア様!?セシリア様ーっ!?」
女騎士さんが慌てて雪乃を抱きしめ、声をかける。
そうか、雪乃はこっちではセシリアって名前なんだね。
「大丈夫ですよ、気を失っただけのようですね。きっと安心して、緊張の糸が切れたのでしょう」
女騎士さんを安心させるため、僕は近付きながら声をかけた。
だけど、この女騎士さんは安心するどころか、僕を警戒し出した。
「近付くな!」
雪乃、じゃなかった、セシリアを左手で抱き、右手には剣を持って僕に突き付けてきた。
うん、まあ、気持ちは分からないでもないですよ?
いくら護衛対象が僕と話しをしていたとは言え、こっちは50人を秒殺してしまうだけの力を持っていますしね。
助けてもらったとは言え、警戒するのは当然だろうね。
「大丈夫ですよ。僕には貴方達に危害を加える気はありませんから、安心してください」
敵意は無いことを示すため、剣を鞘に納め、両手を上げる。
「助けてもらったことには感謝します。ですが、貴方が安全であるかどうかは、こちらが判断します!」
ダメみたいですね。
もっとギリギリの戦いでもすれば良かったかな?
圧倒的過ぎて、逆に不信感を与えてしまっただけみたいですね。
う~ん・・・・面倒になってきた。
「それで?」
「え?」
「だから、貴女が僕を安全かどうか判断するのは良いですが、その後はどうするのですか?」
「え、その・・・」
「僕を信用しないのは結構ですが、その弱り切った体で、このダストレア大樹海で生き延びることができるのですか?もしまた追手が来たら?貴女ごときで対処できるのですか?」
「・・・・・」
僕としては少しでも早くセシリアを保護し、安全な所で休ませてあげたいんだけど、この女騎士さんが駄々をこねるせいで保護が出来ない。
それに苛立ってきているのか、自然と口調が険を帯びていくのを自覚している。
これ以上ごちゃごちゃ言うようなら、力ずくで対処しようかな?
と、ちょっと危険なことを考えていたら、
「分かりました。申し訳ありませんが、私達を、いえ、セシリア様だけでも良いので、助けてはもらえないでしょうか?」
そう言って持っていた剣を下に落とし、セシリアを抱えながら頭を下げてくれました。
良かった。
手荒な真似はしないで済みましたよ。
「ええ、もちろん貴女も含めて保護しますよ。ではまずは安全な所で休みましょうか?貴女もセシリアも、酷く衰弱しているようですしね」
「安全な場所があるのですか!?」
「ええ、ありますよ」
僕が結界を張れば、ダストレア大樹海の中であろうと、そこは安全地帯に早変わりです。
「そこにはちゃんと休める設備もありますから、安心してください」
土魔法で作った小屋と、魔物の素材で作った布団がね。
「では、そこまで案内してもらえますか?」
「ええ、良いですけど、その前に・・・」
「あっ」
疲労がピークに達していた女騎士さんの後ろに一瞬で周り込み、意識を狩り落としました。
それにしても、とんでもない根性のある人だった。
体力はとっくに限界を迎えていたはずなのに、まだ立っていたし、たぶん、このままセシリアを抱えて僕に付いてくる気だったんでしょう。
おそらく、自分の命を削ってでも。
そんなに大事にされているセシリアって、何者なんだろう?
護衛に騎士が付くほどだから、王女様かな?
有力なのは、このヴェージガーブ王国の王女で、王国内でクーデターが起きたか戦争で負けたかして追われていた、かな?
それは後で調べましょうか。
今はこの2人を休ませましょう。
支配圏を広げて探ってみた感じだと、ここはダストレア大樹海の端っこの方みたいなので、また追手が来るかもしれないですね。
それなら、もっと奥に行って、そこで小屋を作って休ませるとしますか。
僕はセシリアと女騎士さんを抱え、ダストレア大樹海の奥へと進んで、じゃなかった、戻っていった。
普通の人なら、ここまで辿り着くには3週間はかかるだろう場所まで移動し、いつもより大きめの小屋を作りました。
なにせ今は2人のお客さんがいるからね。
小屋の中にベッドを2つ用意し、疲労回復効果を付与した布団を敷き、セシリアと女騎士さんを運びました。
2人共ケガをしていましたが、それはとっくに治癒魔法で治療してあります。
さて、これで2人は大丈夫でしょう。
相当疲労が蓄積していたようで、しばらく起きる気配がないので、今の内に僕は情報収集をするためにダストレア大樹海を出ることにしました。
2人に莫大な賞金がかかっている、と野盗共が言っていたから、きっと街まで行けば何か情報が得られることでしょう。
僕は2人を置いて小屋を出て、いつも以上に強力に結界を張り、最寄りの街を目指して移動を開始しました。
普通の人なら3週間かかる距離も、僕なら1時間で到着できます。
いつもなら走ってい行くところですが、今は少しでも早く行きたかったので、空間支配を使って空を飛んで行きましたよ。
いや~早い早い!
あっという間にダストレア大樹海を出て、ヴェージガーブ王国最北の街、ヌカンテスが見えて来たので、人目に付かないように地面に降り、入り口から街に入りました。
支配圏を発動して情報を集めた結果、いろいろと判明しました。
まず、6000年ぶりに現れた女神の使徒がセレストメディエル聖教国に来て、今は首都のセレスハートにいるという事。
その女神の使徒が女神セレス様の言葉を聞き、現教皇とその一族を捕らえていること。
教皇の長女であり、1000年ぶりに現れた聖女であるセシリアが逃げだしていたこと。
その聖女が数名の護衛を連れていて、女神の使徒がその全員に賞金をかけ、捜していること。
セシリアだけは生け捕りにし、護衛達に関しては生死不問で、生け捕りにした場合は好きにしても良い、という事。
すでに護衛の殆どが捕まり、残りはチェスカという名の女性の騎士見習いだけということ。
以上が、ヌカンテスの街で得た、セシリアに関する情報でした。
僕以外に人間の女神の使徒がいたんですね。
と言うか、僕は自分とミコトさん以外の女神の使徒のこと、全く知らないんですよね。
こんど女神セレス様に聞いてみまようかな?
それにしても、その女神の使徒、なぜセシリアの狙っているんだろう?
何か秘密でも持っているのかな?
まあそれも、教皇の一族を捕らえるように言ったセレス様に聞けば分かよね。
この事も含めて、後で聞きに行こう。
それと、折角街まで来たのだから、食料でも買い込んでいきましょうか。
肉に関しては、魔物や魔獣のがまだまだたくさんあるので良いですが、野菜が少ないので、大量に買い込みました。
さて、欲しい物は手に入れたので、そろそろ戻ろうかな?と思ったら、尾行されていましたよ。
これがゴロツキやチンピラの類なら、無力化して放置するところだったんですが、困ったことに、この街の衛兵さんでした。
目を付けられてしまった原因は、おそらくこの大量の食材ですね。
1回買い物をしたらすぐ異空間収納にしまうべきだったのですが、ついついあれもこれもと食材を見て回ってしまった為、結構な量になってしまいました。
そんな大量の食材を、見たことのない子供が1人で買い漁っているのを見たら、不審に思われても仕方がないでしょう。
これで僕がどこかの宿屋や食事処の裏口にでも入って行けば、納得してもらえるのでしょうけど、残念ながら、僕はこのまま街を出る予定なのです。
これは明らかに僕のミスなので、できるだけ穏便に済ませようと思います。
と、言う訳で、衛兵の皆さんの死角になる建物の裏に回り込み、誰にも見られていないのを確認して、大量の食材を異空間収納の中にしまい、僕は空間転移でその場から離れました。
ヌカンテスの街では、もしかしたらちょっとした騒ぎになるかもしれませんが、誰にも被害が出ていないので、ご勘弁ください。
僕が空間転移で向かった先は、セシリア達が休んでいる小屋です。
空間転移は、1度行ったことがある場所にしか移動できない為、行きは使用できませんでしたが、帰りは問題なしです。
小屋に入り、セシリアと騎士見習いのチェスカさんがまだ寝ているのを確認し、僕は料理を作ることにしました。
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




