第62話 高原雪乃の場合
私の名前は高原雪乃。
17歳で帰宅部の、県立桐谷高校の2年生です。
いえ、正確にはでした、と言うべきだね。
だって私、死んじゃったんだもん。
隣の家に住んでいる、幼馴染の神楽星夜くんと2人で買い物に行った日、爆発事故に巻き込まれて、私を庇ってくれた星夜君と一緒に上から落ちて来たコンクリートの塊に潰されちゃって、仲良く死んじゃったみたい。
この星夜君とは、生まれた時からの付き合いで、両親同士の仲も良かった為、家族ぐるみの付き合いをしていたんだよね。
私はなぜか男女問わずイジメられることがあり、その都度、星夜君が守ってくれた。
そして、なぜか学校のクラスが一緒になることが多く、小さい頃はイジメられていた私は、自然と星夜君と一緒にいることが多くなっていた。
私が12歳の時、星夜君の両親が亡くなった。
両親の死にショックを受け、生きる気力を失っていた星夜君に恩返しをしようと、今まで以上に一緒にいる時間を増やし、励まし続けた。
多分、この時にはすでに、私は星夜君が好きだったんだと思う。
だって、いくら子供だったとは言え、好きでもない男の子とずっと一緒にいるなんて無理でしょ?
それに私、星夜君と一緒にいるの、すごい嬉しかったし。
でも、告白する勇気が無かった。
拒絶されるのが怖かった。
理想としては、星夜君から私に告白してほしかった。
そうなれば即OKを出していたんだけど、あの朴念仁には無理ね。
もしかしたら、と淡い期待を持っていたこともある。
高校受験が終わったら、中学を卒業したら、高校に入学したら、と待ち続けたけど、一向にその気配は無かった。
コンチクショー!
おっと、ついつい魂の叫びが漏れてしまいました。
私、女として見られていないのかな?
顔はまあまあだと思うよ?
家事は得意だし、というか、星夜君の身の回りのお世話は私が全部やっているし。
掃除洗濯にご飯まで。
欠点と言えば、体が、その、女性らしさが少ないというか、体形がスリムすぎると言うか・・・
体ね!?この女性らしくない体のせいなのね!?
ここまで甲斐甲斐しく世話を焼いているのに、私に告白してくれないのは、この体のせいなのね!?
ええい!もう待つのは止めた!
今度買い物に誘って、そこで私から告白してやる!
って、覚悟を決め、星夜君を買い物に誘っていざ告白!と思ったら、なぜか向かったショッピングモールで爆発事故が起きた!?
ちょっと!?私の一世一代の大勝負の日に、何てことしてくれんのよ!?
ちょっと運命を呪ってやりたくなりましたよ。
爆発で建物が崩れていく中、私は星夜君に手を引かれ、出口に向かって逃げた。
その最中、恐怖で動けなくなった私を星夜君がお姫様抱っこしてくれた!
ラッキー!
じゃなかった。
未だに爆発は続き、上からどんどん瓦礫が降って来る。
そして道が瓦礫で塞がれてしまい、足を止めた時、上から大きな爆発がしてたくさんの瓦礫が降って来た。
それを察知した星夜君が、とっさに私の上に覆いかぶさり、身を盾にして私を瓦礫から守ってくれた。
けど、その衝撃で口から血を吐いていた。
それを見た私は、
「星夜君・・・ごめんね・・・私が買い物に付き合ってって言わなければ、こんなことにならなかったのにね・・・」
星夜君に謝っていた。
「気にするな。ゴフッ!なんとかお前だけでも助かるように、僕が降ってくる瓦礫から守るからさ、もう少し我慢してくれよ?」
自分の命が危ないこんな時でも、私を守ってくれる。
そのことが嬉しくて、でも、こんな状況になってしまった運命が悔しくて、涙が出て来た。
「もういいよぉ・・・もう頑張らなくていいよぉ・・・」
「そうはいかないんだよ。僕はお前を守るって誓ったんだから。最期まで頑張ってみるよ」
え?これってまさか、告白されてるの、私?
だって、男の子が私を守るって誓った、って言ったんだよ?
これはもう、私と生涯添い遂げるってことよね?
そうよね!?うん、そうだと決めた!?異論は聞きません!
私が幸せの絶頂を迎えた時、視界に大きなコンクリートの塊が落ちて来たのが見えた。
「あっ」
これ無理だ。
もう死んだね、私達。
それなら最後に・・・
「星夜君、ずっとずっと好きでした」
今日の買い物の最後にする予定だった告白を、今ここでした。
さあ、返事は?
「僕も好きだったよ。今までありがとう」
よっっっしゃーーーー!
と喜んだのも束の間、次の瞬間、星夜君の向こうには落ちて来た大きなコンクリートの塊が!
あ、これ死んだ。
そう悟った瞬間、私の心を満たしていたのは、深い深い後悔と哀しみだった。
だって、死の直前に想いが成就したんだよ!?しかもこの流れだと、ずっと両想いだったんじゃない!?
もっと早く告白しとけば良かったよーーーーー!
その感情を最後に、私の意識は消えた。
はずだった。
気が付くと、私は真っ白な空間にいた。
見渡す限り、ただただ白いだけの空間。
その中に1つ、真っ黒があった。
それは僅か5mほど先にあって、よく見てみると、人の形をしていた。
いや、人の形ではなく、人だ。
真っ黒のドレスに身を包んだ、黒髪の女性だった。
顔は黒いヴェールで覆われているため、表情が分からない。
とにかく全体が黒い、としか言い表せない女性だった。
どうしていいか分からず、私が困惑していると
「こんにちは、高原雪乃さん」
女性の方から唐突に話しかけられた。
「あ、はい。こんにちは。あの、貴女は誰ですか?それにここはどこですか?」
「ええ、ここは・・・」
ちょっと長くなってしまうので割愛するけど、簡単に言うと、この女性は女神様だそうです。
その仕事は、死んでしまった魂を選別し、選ばれた魂を他の世界に転生させる、というものでした。
異世界転生キター!
ラノベでその手の作品を読んでいた私は、ちょっと、いやかなり嬉しかった。
だって、異世界転生と言ったら、チートスキルのプレゼントは鉄板でしょ?
どんなのが貰えるのか楽しみにしていたら、何とポイント制で、そのポイント内ならいくつでも貰えるみたい。
じゃあ、私のポイントは?というと、50ポイントあった。
これは女神様曰く、多い方らしい。
そのポイントの基準は何か聞くと、これは担当している神様によってそれぞれ異なるそうで、この女神様の場合は、死の直前に哀しみの感情がどれだけ多かったか、だそうです。
うん、確かに私、死の直前に長年の想いが成就し、幸せの絶頂だったのが、その1秒後には死んでしまった。
これは、今までの人生で最大の哀しみだったね。
上げて上げて上げて、行くとこまで上げられてから、底の見えない谷に突き落とされた、そんな感じでしたよ。
まあ、そのおかげで転生出来るんだから、少しは感謝しているけどね?
でも、複雑だなぁ・・・
気持ちを切り替えて、転生の特典を選びますか!
悩んだ末、選んだのはこの3つ。
称号 聖女 25ポイント
ユニークスキル 成長補正(中) 20ポイント
神へのささやかなお願い 5ポイント
聖女の称号に関しては、ただの憧れです。
どんな未来になるか分からないけど、すっごく興味があったから選びましたよ。
王女も捨てがたかったけど、悩んだ結果、こっちにした。
聖女と言っても、必ずしも良い事ばかりじゃないと思うけど、不安よりも興味が勝ってしまいました。
成長補正(中)は、これはあらゆる成長に補正をかける物と睨み、選びました。
もしかしたら、これで私も女らしい体になれるかも、と期待を持っいてます。
だって、あの起伏の乏しい体形はコンプレックスだったから・・・
最後のは、女神様から星夜君も転生するって教えられていたから、同じ世界に転生できるようにお願いしました。
同じ世界で死んで転生することになっても、また同じ世界に転生するかどうかは分からない、とのことだったので、絶対叶う訳ではないらしいけど、僅かな望みを持って、お願いしてみました。
だって、折角恋が成就したんだから、また一緒になりたいと思うじゃない?
そして私は、異世界に転生をした。
目を開けた私の視界に入って来たのは、超豪華な部屋だった。
え?もしかして私、大金持ちの家に生まれたの?
体を動かそうとしたけど、思うように動かない。
どうやら今の私は赤ちゃんみたい。
それでも何とか体を動かしていると、誰かに急に体を持ち上げられた。
「おはよう、セシリア。どうしたの?」
私を持ち上げた女性が、優しく声をかけて来た。
この女性が私のお母さんかな?
一言でいうと、超美人!
ピンクの緩くウェーブしたロングの髪型に、優しそうなタレ目、そして出る所は出て、引っ込むところは引っ込んでいる、まさに私が夢見た体形をしている。
って、髪の色がピンク!?
え?これって地毛なの?
流石はファンタジーの世界・・・・
私を転生させてくれた女神様から、剣と魔法のファンタジーの世界とは聞いていたけど、こんな所から常識を覆されるとは思ってもみませんでしたよ。
いやいや、それはともかく!
この女性が私の母親なら、私の将来も期待が出来る!
だって、こんなグラマラスな美人と同じ遺伝子を受け継いでいるってことは、もしかしたらもしかするわけですよね?
それに私には成長補正(中)がある!
憧れの体形に成れる可能性が高くなりましたよ!
そう言えば、私のことをセシリアって呼んでいたよね?
じゃあ、私の名前はセシリアってことかな?
うん、悪くない。
あれ?そういえば、何で私、この世界の言葉が分かるんだろう?
ここは異世界で、この女性は異世界人ってことだよね?
なんで私、異世界の言葉を理解できているんだろう?
って、疑問に思ったのも束の間、私はすぐに納得していた。
だって、異世界転生したら、その転生先の世界の言葉が理解できるなんて、常識じゃない!
っていうのを思い出したからよ。
テンプレね。
でも残念ながら、私はまた赤ちゃんだから、言葉を話すことが出来ないようね。
さっきから話そうと頑張っているんだけど、「う~、あ~」と、呻くことしかできません。
まともに動けなかったのは、まだ体に筋肉が付いていないからね。
でも、いいわ。
時間はまだまだあるんだから、ゆっくりこの世界の事を調べましょう!
この世界は中世のヨーロッパ程度の文明レベルらしいけど、これだけ豪華な部屋があるってことは、控えめに見てもそれなりの財力があるはずよね?
なら、食うに困るような事態に陥り、口減らしで殺されることもないはず。
私の成長するうえで、何か大きな障害とかもきっと無いよね?
なら、これから時間をかけて成長して、この世界を存分に満喫しよう!
そしていつか、この世界に転生しているかもしれない星夜君を、探しに行こうかな。
いつも読んでくださっている皆様、ありがとうございます。
作品の投稿を始めて2ヶ月が経過し、ブックマーク登録件数が100件を超え、PVも4万を超えました。
人気作家の方々と比べると微々たるものですが、素人の私にとってはとても大きな数字で、読んでくださっている皆様には深謝申し上げます。
会社員の為、仕事に忙殺されて、もしかしたら毎日更新が止まってしまうかもしれませんが、私の作品を読んでくださる方々がいる以上、出来る限り続けて行こうと思います。
今後も宜しくお願いいたします。




