第61話 まさかの出会い
僕は全速力で1km先の、女性2人が50人の追手に追い詰められている現場に向いました。
僕にとって1kmの距離なんて、ものの数秒で行けちゃうんですよね。
で、現状はどうなのかと言うと、体中に傷を負い、ボロボロになった女性の騎士が、護衛対象であろう少女を背にかばい、50人の敵に対して剣を向けている。
うん、まさに絶対絶命の大ピンチだね。
ここは僕が颯爽と現れ、女性を助ける場面なのかもしれないけど、もしかしたらこの2人が大犯罪を犯した極悪人で、相対している50人は世界の平和の為に命をかけてここまで追いかけて来た、とか言う状況かもしれないからね。
そんなワケ無いか?
でも、安易に行動するのはやめます。
なので、もうちょっと詳しい情報を得るために、ここは1つ声をかけて見ましょう。
「こんにちは。皆さんはこんな所で何をしているのですか?」
「「「「「!?」」」」」
その場にいた全員が驚き、一斉に僕の方を向いた。
そして更に驚いた。
なぜなら、そこにいたのが子供だったからだ。
すでに50名の敵に囲まれている女性2人には余裕がなく、すぐに僕から視線を外し、再び敵に向き直る。
対して50名からなる男達には余裕があり、突然現れた僕を観察している。
なぜこんな危険な所に子供が?
ここは世界最大の危険地帯であるダストレア大樹海。
まだ浅い部分であるとは言え、それでも危険であることに変わりはない。
自分達も入り込んでいるのだから、他にも誰かがここにいたとしても、腕に覚えのある命知らずが探索に来ているのか、自分達と同じように何かしらの事情があるのかと、まあ納得は出来る。
出来るのだが、それが子供1人だけとなると話が違ってくる。
それも、ダストレア大樹海の奥から現れたのだ。
明らかにおかしい。
一緒にいた仲間が魔物に襲われ、1人で命からがら逃げて来たのか?
それにしては息1つ乱していないし、服も汚れていない。
こいつは一体何者だ?
男達は僕の正体が分からず、慎重になっていた。
なので、1番最初に動いたのはボロボロの女性の騎士だった。
「少年!早くここから逃げなさい!こいつらも無関係のキミには手を出さないはずです!急いで!」
きっと、樹海の奥から現れた僕を不審に思っているに違いない。
だがそんなことは無視して、自分が危険な状況であるにも関わらず、見ず知らずの僕を逃がそうとしている。
うん、この人は良い人だと認定しよう!
僕は2人の女性の前に移動し、50人の男達の前に立った。
「何をしているの!?早く逃げなさい!」
騎士の言葉は無視して、男達と相対する。
さて、この50人はどうだろうか?
「おう、小僧。テメェは何モンだ?」
一番前にいた、明らかにガラの悪いスキンヘッドの男が声をかけて来た。
う~ん、コイツ、というか、コイツみたいな連中を以前見た気がするんですよね~?
どこでしたっけ?
ああ、今は質問されていたんでした。
どちらが悪なのか分からない以上、無視は良くないですね。
だってもしかしたら、髪の毛先程度の可能性ですが、この一団がヴェージガーブ王国の正式な騎士かもしれないですし、余計なトラブルは回避するとしましょう。
「初めまして。僕はアステリア王国から来ました、スティード伯爵家の次男で、レオナルド=シオン=スティードと申します」
「アステリア王国だぁ?そこって確か、大陸西部の小国だよな?」
あ、こいつバカだ。
たぶん、大した教養を身に付けていないぞ。
いや、ここは大陸南部だから、知らなくても普通かな?
「いや、ドレアドさん。アステリア王国は大陸北部っす」
「ええ、北部の国っすね」
「たしか、それなりに豊かな国っすね」
どうやら、一般常識レベルの知識のようでした。
そしてこのスキンヘッドは、ドレアドという名のようですね。
「あぁ!?んなわけあるか!オイ小僧!アステリア王国ってのは、大陸西部の小国だよな!?」
あ、やっぱりバカだ。
せっかく周りの部下?っぽい人たちが教えてあげたのに、自分のミスを認めない。
こんなのが上で、彼らも苦労しているんでしょうねぇ・・・
そして僕は、アステリア王国の貴族として、母国の間違った情報を与える訳にはいきません。
なので、
「いえ、大陸北部ですよ。それと小国ではなく、それなりに豊かな国ですし、武力は大陸北部でも有数ですよ」
と、真実を伝えてあげました。
さてドレアドさんはどう反応するかな?
と、思っていたら
「ちっ、そうかよ。で、そのアステリア王国からはるばる何しに来たんだよ?」
あ、意外と冷静だった。
きっと逆上すると思っていたんですが、読みが外れてしまいましたよ。
「いえ、王国からの依頼で、このダストレア大樹海の調査に来たんですよ。それで、アステリア王国から南に真っ直ぐ進み、ここまで来たってわけです」
「ってことは、テメェはこの樹海を通って来たってのか?バカかテメェ?そんなの誰が信じるってんだよ?」
む、確かに。
普通に考えて、それは非常識極まりない発言だった。
でも、事実だしなぁ・・・
「ああ、そうか。そういう事か!」
ん?突然ドレアドが何かを察したようだ。
何だろう?
「さてはテメェ、コイツ等を逃がすために雇われたな?ダストレア大樹海を突っ切って来たって言えば、大抵の奴はテメェがとんでもねぇ実力者だと勘違いするとでも思ったか?はっ、所詮ガキだな。どうせならもっとマシなウソにしとけよな、クソガキ!」
「え?何言ってんの?」
あ、つい口に出ちゃった。
いや、だってですよ?
そんな穴だらけの推理を、そんなドヤ顔を決めて言われてもですね?
それこそ誰も信じないでしょ?
「な、まさか!?」
「確かにそれなら、こんな所にガキが1人でいることの説明が付く!?」
「まさかこのガキを使って油断させて、コイツの仲間がすでに俺達を取り囲んでんじゃねぇのか!?」
「さすがドレアドさん!素晴らしい推理っす!」
おい。
もうツッコむ気すら起きませんよ。
「な、少年!そうなのか!?助けがそこまで来ているのか!?」
ちょっと女騎士さん!?貴女まで信じないでくださいよ!
いや、この絶望的な状況では、それこそ藁にも縋る想いなのだろう。
そう思いましょう。
「いえ、残念ながら、僕1人だけです。そもそも、仲間がいるのなら始めから一緒に来ていますよ」
「くっ、そう、か・・・・」
端から見て分かるほど、落胆してしまった女騎士さん。
何かすみません・・・・
「ではキミは、私達とは無関係なのだな?」
「ええ、そうですよ」
「そうか、それなら、すぐにここから逃げなさい!コイツ等の目的は私達です!無関係ならあなたに危害を加えることは無いでしょう!さあ、早く!」
それでも気を取り直し、再び僕に逃げるように伝える。
だが、
「ははっ、安心しな!そのガキも逃がすわきゃねーだろ?おい坊主?何でこんな所にいやがるのか知らねえが、運が悪かったと思って、諦めて死ねや」
「ここにいる理由は、今さっき言ったでしょう?あと、せめてこの2人を襲っている理由を教えてもらえませんか?」
「そんなの知ってどうするよ?」
「まあまあ、どうせ殺すんだ。冥途の土産に教えてやってもいいだろ?」
お、どうやら理由を教えてもらえるようですね。
ドレアドを押しのけて今出てきたのが隊長かな?
さっきまで偉そうに僕と話していたドレアドが、あっさりと引き下がったからね。
ここからは隊長(仮)が話してくれるらしいね。
「いいか小僧?この2人には莫大な賞金がかかってんだよ。で、逃げ出したこいつらを俺達は追いかけてたって訳よ。分かったか?」
「いえ、さっぱり。この2人は何かしたんですか?」
「何だと?まあいい。さあな?詳しくは知らねえ。知っているのは、ガキの方は生け捕りにして、女騎士は生死不問で捕まえたヤツの好きにしていいってことだけだ。ぐへへ・・」
あ、思い出した。
こいつらを見て、以前見たことがあるな、と感じた理由。
それは、コイツ等の纏っている雰囲気が、スティード領から王都を行き来するたびに狩っていた、野盗や山賊と言った連中と同じなんだ。
何ですぐに気付かなかったのか、と言うと、それは簡単です。
僕、何年間人に会っていなかったと思うんですか?
約3年ですよ!?
それだけ人に会っていなかったら、そんな印象の薄い連中のことなど忘れていたって仕方がないですよね?
この約3年間、出会っていたのは魔物と魔獣とドラゴンと女神様だけでしたからね。
と、言う訳で、僕の中ではコイツ等の職業はただの野盗、ってことに認定しました。
もしかしたら別の職業かもしれないけど、この発言と、この女騎士さんを捕まえた後の事を想像してニヤけている顔を見る限り、真っ当な人種でないことが良く分かります。
その瞬間、僕の行動は決まった。
この50人の盗賊どもを殲滅して、2人を助けよう。
え?始めからそうしろって?
だって久しぶりの人ですよ?
コミュニケーションを取りたくなっちゃったんですよ!
しょうがないでしょう!?
はっ、落ち着くんだ僕!
よし、それでは気を取り直して、と。
もう1つ聞いておこうかな。
「なるほど、分かりました。それで、僕を殺そうとする理由は何ですか?」
「決まってんだろ?お前を生かしておく理由が無いからだよ。だから小僧、大人しく死ねや!」
そう言い終わったと同時に、隊長(仮)が斬りかかって来た。
うん、分かっていたけどさ?
やっぱり行動が野盗の類と同じだね。
いや、チンピラ程度かな?
あと、不意打ちのつもりだったようだけど、凄く遅いね。
僕は余裕で攻撃を見切り、あっさり避け、スキだらけの隊長(仮)の首を斬り飛ばした。
「「「「「!?」」」」」
再び驚いている盗賊を無視し、僕は後ろの2人を振り返って見た。
考えてみたら、今までハゲと野盗の親分としか話していなかったから、初めてまともに顔を見た気がする。
「どうやらコイツ等は悪党のようなので、加勢しますよ」
「えっ?今のはキミがやったの?え?え?」
どうやら女騎士さんは混乱しているようです。
よく見てみると、結構美人だったりします。
スレンダーな体形で、鍛えられた体は無駄な肉が無い。
見た目はちょっとキツめな美人といった所かな?
今は追手との戦いで、真っ黒の長髪は乱れ、目に隈ができ、鎧は傷だらけ、体中から血を流している。
それでもなお、美人だと分かる顔立ちをしている。
体に追っている傷は浅く、命に別状は無さそうですね。
その女騎士さんの後ろには、僕と同い年くらいの女の子がいて、僕をガン見している。
ピンクの髪をした、可愛らし女の子だ。
こちらも追手から逃げ続けた結果、体中がボロボロになっている。
大きなケガはしていないようだけど、かなりの距離を逃げていたのだろう、靴や服が酷く汚れている。
そして女騎士さんと同じく、目に隈が出来ている。
2人だけでずっと逃げて来たのかな?
それもこんな危険地帯まで。
ずっと緊張し続けて、まともに休むことも出来なかったんだろうね。
そして何でだろう?
さっきからずっとその女の子が目を大きく見開いて、僕を見続けている。
そんな少女を、なぜか僕も見つめてしまっていた。
何だろう?
初めて会う筈なのに、以前にもどこかで会ったことがあるような、いや、以前から良く知っているような、そんな不思議な感覚がした。
そして唐突に、1つの答えが頭に浮かんだ。
僕はその答えを確かめるかのように、声をかけていた。
「お前、もしかして、雪乃、か?」
「星夜、君?」
61話にしてやっとヒロイン登場です。
自分で書いておいてなんですが、先にお兄ちゃんは婚約するし、コレは物語としてどうなんでしょう?
それとストックが尽きたので、しばらく文字数が少なくなります。
ご了承ください。




