第59話 大仕事完了!
「ふう・・・完成だ!」
ダストレア大樹海の中心に連なるノイシュヴァン山脈、さらにその中心にある魔神ヴァッシュが封印されている空間、通称『封印の間』で、レオナルドは呟いた。
完成したのはもちろん、魔神ヴァッシュの封印を効率良くする為の魔導具だ。
今までの封印は、この封印の間に数匹の神獣、もしくは神龍のミコト=シューティングスターが居続け、そのステータスを封印のエネルギーに変換して維持していた。
この封印の維持に最低限必要とするステータスは、全ステータスの平均が1億で、女神の眷属の中でも圧倒的なステータスを誇る神獣は、フェンリルやリヴァイアサン等の最強クラスでも5000万程度しかない。
その為、この封印の間には複数体の神獣が常にいた。
しかしそれも、ステータスが5億のミコトが女神の使徒に加わったことで、ミコト1人で賄えるようになった。
更に、余剰分の約4億のステータス分のエネルギーを蓄えることが出来、蓄えたエネルギー分が空にならなければ、この封印の間を無人にすることも出来る。
余剰ステータスが4億あるミコトが100年間ここにいると、約70年は無人にしても大丈夫、という結果も過去に出ている。
だが言い換えれば、ほとんど寿命の無い神龍とは言え、ミコトが70年間の自由を手に入れるには、100年間を犠牲にしなければならない。
8億のステータスを持つレオナルドなら、100年使えば100年分の余剰エネルギーが確保できるかもしれないが、人間であるレオナルドにとって、100年という時間は長すぎる。
そもそも人間の寿命は、そんなに長くない。
いや、たぶんレオナルドなら100年位なら余裕で生きそうだが・・・
それはともかく、簡単に説明すると、この封印の間に居なくても封印の維持ができる魔導具を作ることとなり、それが今、完成したのだ。
その作成に掛かった日数は、1年4ヵ月で約480日!
今まで作って来た異常すぎる性能を発揮する魔導具が、最長でも1日だった。
どれだけこの魔導具が複雑だったのか、どれだけ大変な作業だったのか、窺い知ることが出来るだろう。
当初は1年を予定していたこの魔導具の作成が、大幅に遅れてしまったのには、どうしても抗えなかった理由がある。
もしそれが無ければ、きっと10ヵ月程度で完成していただろう。
それ程までに作業を遅らせてしまった、その理由とはいったい何なのか?
それは、ほぼ毎日ミコトと遊んでいたからだ!
なぜかは分からないが、とにかくウマが合うこの2人。
そんな2人が顔を合わせたら、自然と脱線が始まり、子供のようにあれをしよう、これをしよう、と言い出した結果、それはもう、実に様々なことをやり始めた。
以前レオが作った銃を使って、超級の魔物や魔獣を対象にした狩りをしたり、オフロードバイクを作り、ノイシュヴァン山脈を走破したり、オフロードバイクが作れるなら水上バイクも作れるだろう、ということで早速作り、なぜかノイシュヴァン山脈にある海、ノイシュヴァン海で乗り回したりした。
他にも様々な遊びを繰り返した結果、魔導具完成が大幅に遅れ、業を煮やした女神セレスに注意されるまで遊び続けていた。
この2人、1人ずつならかなりの常識を持ち合わせているのだが、2人揃うとなぜか無駄にはっちゃける、という性質を持つ。
しかも無駄にステータスが高いおかげで、誰も止めることができない。
何度かミコトの配下の古代龍が総出で止めようとしたが、言葉通り一蹴されてしまい、その都度大けがを負わされている。
この2人、合わさると誰の手にも負えず、何をしでかすか分からない為、混ぜるな危険!を体現してしまっている、傍迷惑なペアである。
なので今は女神セレスにより、2人が会うのは2週間に1回と決められ、レオナルドは殆ど缶詰め状態で作業に集中させられていた。
なぜなら、魔導具作成に取り掛かって10ヵ月が経過した段階で、本来の予定なら殆ど完成間近のはずが、まだ2割程度しか出来ていなかったのだ。
このままではいつ完成するか分からない為、少しでも作業を早めたかったからだ。
そもそも、レオナルドには目的があり、その目的を成すためには、いつまでもここにいて意味がない。
レオナルドの為を思い、女神セレスはレオナルドには魔導具作成に集中させることにした。
レオナルドとミコトも遊び過ぎていた自覚があり、反省したため、このことに関しては一切反論せずに従った。
それで、一切遊ばずに封印用の魔導具を作り続けた結果、僅か6ヵ月で完成した。
女神セレスは言いたいことが山ほどあったが、何とか理性と気合を総動員し、飲み込んだ。
「で、レオ?あれはどんな魔導具なんだ?」
僕とミコトさんは今、女神セレス様のいる女神の間に来ています。
遂に完成した魔神ヴァッシュの封印する魔導具のことを、女神セレス様に報告する為で、ミコトさんにも来てもらっています。
いつも通りミコトさんの屋敷にある通称『祈りの間』に行き、僕が作った女神像の前で祈りを捧げ、この場所に意識だけが呼ばれた。
挨拶もそこそこに用意されていた椅子に座り、早速ミコトさんから質問が来ました。
「以前にも説明した通り、専用の魔導具を僕とミコトさんが装備することで、普段は使っていないステータスを封印の間に送り、封印に必要なエネルギーに変換する、という物です。なので、この魔導具が封印をするのではなく、封印を補助する為の魔導具ですね」
そう、言葉通り、この魔導具はあくまで魔神ヴァッシュの封印の補助しかできません。
だって、相手は神様ですよ?
そんなのを相手取り、たかがちょっとステータスが人外なだけの人間である僕に、封印することができる魔導具なんて作れるわけがないでしょう?
なので、セレス様が施した封印をサポートする魔導具を作りました。
というか、それが限界ですよ。
「これがその魔導具か?」
「ええ、そうです」
ミコトさんにはすでに、何種類かの魔導具を渡してあります。
剣や鎧、アミュレットに指輪に腕輪などなど。
これを全部つける必要はなく、1つ身に付けるだけで効果がある。
その効果とは、ミコトさんが人化により人型、つまり今の姿をしている時、本来の神龍の時と比べて抑制されている9/10のステータスを封印の間に送る、という物です。
人化するとステータスが強制的に1/10にされてしまい、残りの9/10のステータスを有効活用できないか考えた結果、作成しました。
つまり、
「ミコトさんは人化している時にその魔導具を身に付けているだけで、抑えられているステータスが自動で封印の間に送られている、という事です」
「なるほど?じゃあ俺はこれを持っていても、デメリットが何も無い、ってことか?」
「ええ、そうです」
「じゃあさ、レオナルド?ミコトがドラゴンの姿になっていた場合はどうなるんだい?」
今度はセレス様が質問をして来た。
「その時は、何も起きません。これはあくまで、人化によって浮いてしまっているミコトさんのステータスを使うだけの魔導具ですからね。それに、今まで長時間ドラゴンにならなければいけないような事態は、一度も起きたことは無いのですよね?」
「まあな。強いて言えばデリオスの時くらいか?あいつを倒した後、その姿のまま1週間かけて魔族どもにケンカを売ったくらいだしな?」
「そうですよね?なので、ミコトさんがドラゴンになるという事は、それだけ逼迫した状況だと思うので、態々そのステータスを抑えるような魔導具は作りませんでしたよ」
「うん、そういう事なんだね。分かったよ、ありがとう」
セレス様も納得してくれたようですね。
僕は更に説明を続ける。
「僕の場合は、今使っているような、ステータスを抑えている魔導具に、ちょっと手を加えただけですよ。その抑えている分のステータスを、封印の間に送るようになっています。ちなみに、僕が今度作るステータスを抑える魔導装備には、全て同じ機能を付け続けます」
「もし、いきなり強敵に襲われた場合はどうするんだい?」
「それに関しては、頑張れば勝てるようなら戦い、無理そうなら即座に魔導装備を外します。それだけで、僕のステータスは元に戻りますからね。それと念の為、防御に関するステータス、VITとMNDの抑制は半分にします。そうすれば、そうそう負けることは無いでしょうからね」
「確かに、今のレオナルドのステータスの半分なら、何かよっぽどの事態でも起きない限り、問題は無さそうだね」
「そもそも、お前の半分って4億だろ?普通に考えて、傷1つ付かねーんじゃねぇか?」
「ええ、ですので、この状態なら安全ですよ」
その後も2人に魔導具の効果に関する質問をされましたが、どれも特に問題なし、という事が分かっただけでしたね。
「それでレオナルド?こっちの魔導具の事は分かったけど、向こうの、封印の間に設置した方はどうなの?」
「ええ、あっちがこの魔導具の本命ですからね。しっかり説明しますよ」
セレス様が、封印の間に設置した魔導具について質問して来ました。
そう、いくらこっちの魔導装備の説明をした所で、向こうの魔導具の事を理解していなければ意味がないからね。
ついでに言っておくと、この魔導装備は、全部込みで1日完成しました。
核となる魔方陣はコピーしたからすぐに出来上がったので、時間が掛かったのは外装ですね。
特に、ミコトさんに渡した剣は、結構な自信作です。
柄や鞘には当然のように豪華な装飾を施し、刀身にも紋様を刻んであります。
それを見たミコトさんの反応はと言うと、
「流石はレオ!俺の好みを良く分かってるじゃねぇか!最高だぜっ!」
と、大層気に入ってくれたみたいです。
そうなるように作ったのだから当たり前だけど、目の前でここまで喜んでくれる姿を見ると、本当に作った甲斐があったと思いますよ。
おっと、話しを戻して、封印の間に設置した魔導具の説明でしたね。
「まず、封印補助魔導具を設置したおかげで、封印の間がだいぶ狭くなってしまいましたね。と言っても、あそこの空間自体がかなり広いですから、神龍形態のミコトさんが来ても、全然スペースに余裕はありますからね」
「ん?最初は封印の間全体に設置するって言ってなかったか?」
「ええ、当初は封印の間を覆うように設置するはずでしたが、調べて行く内に、ヴァッシュが封印されている岩を囲うようにした方が、より効果が高いことが判明しました。なので、この封印補助魔導具は、封印の間の中心にある魔神バッシュを封じた岩を取り囲むように設置してあります。おかげで、中心部分はドラゴンや神獣といった、大型の生物だと足の踏み場が無いくらいです。ただしそれは中心部分の話しで、壁際は比較的広くスペースが空いています」
「ふ~ん、なるほどな。だがレオ、1つ聞いてもいいか?」
「あ、私も聞きたいことがある」
「何でしょうか?」
今の説明で、何か質問されるような内容ってあったっけ?
「その、さっきから言っている封印補助魔導具ってのは、例の魔導具の名前か?」
「そうそう、私も聞きたかったのはソレ。何か名前とか無いの?」
「え?だから封印補助魔導具って名前ですよ?」
「・・・・・・・・マジか?」
「はい。何か問題でも?」
ミコトさんとセレス様が絶句している。
どうしたんだろう?
「なあ、レオ?この剣の名は何だ?」
そう言って、僕が先程渡した魔導剣をミコトさんが掲げた。
「それですか?それは魔導剣です」
「じゃあ、お前が持っている剣は?」
「これも魔導剣です」
「あ~、何だ?ちょっと待ってくれよ?」
ミコトさんが頭を押さえ、セレス様は顔を上に上げている。
何だ?何かあったのかな?
「あの、2人ともどうしたんですか?」
「あのさあ、レオナルド」
「何ですか、セレス様?」
「キミって、名前を付けるのが苦手だったりするのかい?」
「そうですねえ、苦手と言うより、面倒だから付けていないだけですよ」
「よし、分かった。おいレオ。取りあえず、封印の間に置いた魔導具だけでいいから、名前を付けろ」
「え?別にいいのでは?」
「「いいから付けろ!」」
なぜかミコトさんとセレス様の2人に怒られてしまった。
しかし、名前か~・・・・
メルト兄様とお父様とお祖父様に渡した鎧の名前を考えるのにも、かなり時間を使ったんだよな~・・・
う~ん、ここは1つ、また神話からもらおうかな?
と、僕が考えている間、セレス様とミコトさんが密談をしていた。
「ねえ、もしかしてレオナルドって、命名のセンスが無いの?」
「分からねぇ。今まで気にしてなかったからな。だが、アイツは何の違和感もなく封印補助魔導具と連呼していたぞ?もしかしたら・・・」
「そうか・・・まあ、今一生懸命考えているようだから、様子を見ようよ。で、もし変な名前だったら、分かってるね?」
「ああ、代替案をこちらでも考えておこうぜ・・・」
僕が一生懸命考えている中、2人はこんなやり取りをしていたようだ。
僕は集中しすぎていたおかげで、全く聞こえていませんでしたよ。
そして、
「お待たせしました、決まりました」
遂に魔導具の名前を決めることが出来ましたよ!
「そ、そうか。なんて名にしたんだ?」
ミコトさんとセレス様が緊張しているのが伝わってくる。
そんなに緊張するほどの事かな?
いや、今はそれよりも名前を発表しなければ。
「はい、あの封印補助魔導具の名称は、『天岩戸』です」
「そう来たか!?」
「え?何だい、それ?」
「俺達のいた国の神話に出てくる、神が引きこもった伝説の場所の名だ」
「地球の神話!?」
「ああ、だがそれにしても、確かにこの状況には合っているかもな。細かい部分はともかく、神が引きこもっているってのは合ってるしな」
「じゃあ、ミコトから見ても。合格かい?」
「70点ってとこだが、まあ合格で良いだろ!」
なぜか僕の命名に点数が付けられ、合否が決まったようだ。
なぜだろう?
「じゃあ、名前が決まった所で、その天岩戸はどんな魔導具なんだい?」
「ええ、あれは・・・」
気を取り直して、説明を始める。
あそこの魔導具1つ1つが意味を持ち、だが、多少魔導具が壊れたくらいでは、一切影響が出ない事。
魔導具の素材には、僕が錬成したオリハルコンをふんだんに使っているため、壊そうと思っても簡単に壊せない事。
侵入者防止の為、いくつかの準備をしたことを伝えました。
「侵入者防止に、何を仕掛けたんだ?」
「ええ、まずはあの場所には、女神の眷属であり、高いステータスを持つ者しか入れないようにしました」
「もし、対象外のヤツが入ろうとしたら、どうなるんだ?」
「ノイシュヴァン海に放り出されます」
「空間転移か?そりゃ面白いな?」
「ええ、そうでしょう?それと、もし万が一誰かが侵入に成功し、魔導具を壊そうとすると、僕とミコトさんがもっているステータスを抑える用の魔導具に信号が飛ばされます。そして、本人が願えば封印の間まで転移される、という物です」
「信号を受信したと同時に、転移させてやれば良いじゃねぇか?」
「それだと、例えば街中にいる時とかだと、一瞬で人々の目の前から消えてしまうので、大騒ぎになってしまいますよ?」
「あ、そうか。なるほどな?」
と、いろいろと質疑応答をし、一通りの説明が終わった。
「さて、それではレオナルド。見事私の依頼を達成したキミに、報酬をあげようか。君は何を望むんだい?」
そして、依頼達成による報酬を貰えることになった。
けどここで問題が!
魔導具を作るのと、ミコトさんと遊ぶのに夢中になりすぎて、何も考えていなかった!
そもそも、大抵のことはチートスキルのおかげで、自力で何とかなってしまうから、叶えたい願いなど無かったりします。
さあ、どうしようか?
暫く悩み、ふと、思いついた。
「あの、セレス様?このお願いは、僕以外の人に関係することでも良いんですか?」
「うん。それが因果を物凄く捻じ曲げたり、世界を滅ぼすような物でなければ大丈夫だよ」
「それでは、僕の兄、メルティウム=シオン=スティードとその婚約者、クラリス=アステリアの2人を、末永く幸せにして欲しい、というお願いでも大丈夫ですか?」
そう、今から8ヶ月ほど前に、メルト兄様とエドおじさんの長女でフィルの姉のクラリス王女殿下が婚約した、というのを手紙でしりました。
何でも、王都を黒龍が襲撃し、多大な被害を出しながらもこれを撃退したそうだ。
この時、スティード騎士団が大活躍をし、中でもお父様とお祖父様とメルト兄様の3人が獅子奮迅の活躍をして、最も黒龍撃破に貢献したそうだ。
その戦いを直接見ていたクラリス王女殿下が、黒龍を相手に一歩も引かずに戦い続けたメルト兄様に一目惚れし、なんだかんだで婚約することになったそうだ。
メルト兄様も満更ではなく、この婚約は両者納得の上で進められたそうです。
12歳になった兄様は、来年からは王都にある王立学校に通うことが決まっていて、そこでクラリス王女殿下と一緒に勉強することなっていて、今からとても楽しみにしている、というのを手紙で知らされていました。
メルト兄様からではなく、お母様からの手紙に。
本人からではないので、きっと、所々脚色がされているとは思いますが、メルト兄様がこの婚約を喜んでいるのは間違いなさそうなので、2人の未来が幸せであることを僕は望んでいる。
その為に女神様の力を借りてしまおう、と考えたわけです。
神の全力のサポートを受けられれば、この2人は必ず幸せになること間違いなし!だからね!
それで、女神セレス様の反応はと言うと、
「うん、その位なら良いよ。女神セレスの名に懸けて、その2人を必ず幸せにしてあげるよ!」
と、相成りました。
その後しばらく雑談を楽しみ、僕とミコトさんは女神の間から帰った。
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




