表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/142

第56話 スティード騎士団参戦

 新国王エドワードの即位式から4日後、スティード家は他の貴族に先立ち、領地への帰路についていた。

 王家と友人関係を築いているスティード家が、いつまでも王都に留まっていると、良からぬことを企てる者が出て来てしまう。

 5歳のレオナルドが命を狙われたことから分かるように、貴族には自分の地位の為なら何でもやったり、自分では努力をしないくせに、他人を妬むことに精を出す器が小さいクズがたくさんいる。

 そんな連中から家族を守る為、また、余計なトラブルを避けるため、スティード家は早めに王都を離れることにしたのだ。

 このことは王家や宰相も承知済みで、別れを惜しみながらも見送ってくれた。

 そしてスティード家恒例の、旅のついでに行われる悪党&魔物狩りは、いつも使っているルートは行きでほとんど狩り尽してしまっていた為、どうせだからと別のルートで帰ることになった。

 王都の滞在が短かった為か、他の街に寄ることを聞いた2人の娘は、とても喜んでくれた。

 ほとんどノーティスの街から出られない為、他の街に行くのが楽しみで仕方がないようだ。

 家族会議の結果、今回は王都の西側から回って帰ることにした。

 そして王都から西にある最初の街、キロアスの街には、夕方前に到着することができた。

 宿を取ろうとしたところ、この街の領主であるニコラス=テデア=キロアス子爵の好意により、領主の屋敷に泊まらせて貰えることになった。

 なお、ニコラス子爵の領地はこのキロアスの街だけなので、家名と街の名前が一緒だ。

 このニコラス子爵は、スティード家と同じく権力に興味が無く、民を大事にし、街を発展させることに尽力している数少ない貴族だった。

 ニコラス子爵は常々、自分と同じく領地を発展させることに尽力しているスティード家と話しがしたいと思っていて、たまたまスティード家がこの街に訪れたのを知り、屋敷に招待した。

 その日の晩、食事を終えた後、スティード家とキロアス家は街の運営について議論し、充実した時間を過ごした。

 その最後に、最近この近辺で盗賊や魔物の目撃情報がないか確認した時、


「そう言えば3日ほど前になりますか、ここから更に西に大きな森があるのですが、そこに大型の魔物が目撃された、という報告が冒険者組合(ギルド)からありましたね。今は調査の準備をしていて、整い次第出発すると聞いております」


 その話を聞いて、グレンとジルベストの目が光った。


「ほう、大型の魔物ですか。それは危険そうですね、父上?」

「ああ、全くだ。ニコラス殿、どうだろうか?その調査、我がスティード家に任せてはもらえまいか?何、冒険者組合(ギルド)には私から話しを通しておこう。こう見えて、私はA級の冒険者でな。結構顔が利くのだ」

「よろしいのですか?私としても、王国にその名を轟かすスティード騎士団が向かってくれるのなら、文句などありません。お願いしてもよろしいですか?」

「ええ、我々にお任せください」


 そうして、翌日はスティード騎士団が総出で森に調査に行くことになった。

 もちろんこれは善意ではなく、いや、善意も含まれてはいるが、それ以上に大型の魔物に興味があっただけである。



 翌日の朝、スティード騎士団500名が集まり、冒険者組合(ギルド)に調査に行くことを報告し、出発した。

 もちろん危険が伴う為、2人の妻と娘たち、それと執事とメイドといった非戦闘員は、キロアス邸に残ってもらってだ。

 そして調査に出発して4時間が経過し、目的の森が見えてきた頃、それは起きた。

 目的地の森から突如、巨大なドラゴンが飛び上がり、しばらく滞空した後、キロアスの街の方へ飛び立っていった。

 これに慌てたスティード騎士団は急いで反転し、キロアスの街に戻った。

 ドラゴンに襲われていると思ったキロアスの街は、パニックに陥ってはいたが、しかし予想に反して何の被害も無かった。

 急いで街に入り、ニコラス子爵に話しを聞くと、ドラゴンはこのキロアスの街を通り越し、更に東へ向かったそうだ。

 キロアスの街の東には何があるか?それは、王都エスカフィールだ。

 そして今王都には、新国王エドワードの戴冠式が執り行われた関係で、いつも以上に多くの人がいる。

 そんな王都に、超級から厄災級に分類されるドラゴンが襲い掛かったらどうなるか?

 そもそも、王都の戦力でドラゴンに勝てるのか?


「スティード騎士団!すぐに王都に戻るぞ!」

「「「「「はっ!」」」」」


 そして全員が王都へ向けて出発する。


「ちょ、グレン伯爵、待ってください!そのまま行くのですか!?ここから王都まで、馬を走らせてもでも5時間近くかかりますよ!?準備をしなければ、馬が途中で倒れてしまい、王都に辿り着けなくなりますよ!?」


 それを見ていたニコラス子爵が、慌てて止めに入った。

 確かに、ここから王都まで馬の脚でも5時間はかかるだろう。

 何せ、馬は重い鎧を着こんだ騎士と、さらに自身も馬用の鎧を着ているため、スピードが出ないのだ。

 さらに、この距離を走らせるとなれば、確実に途中で体力が尽き、倒れてしまうだろう。

 なのでニコラス子爵は、乗り換え用の馬を手配しようとしていた。

 だが、グレンの答えは、予想を裏切るものだった。


「うむ、確かにそうだな。よし、スティード騎士団よ!馬はここに置いていくぞ!全員に対魔物用特殊装備を渡す!、準備が出来た者から順に、王都まで走っていくぞ!」


 何と、馬に乗らずに自分達の足で走っていくと言い出したのだ。

 これにはニコラス子爵も、口を大きく開けて驚くことしかできない。

 馬でも5時間はかかるのに、なぜか自分の足で走っていくと言っている。

 もしかして、グレン伯爵は王都の救援に行く気が無いのではないか?

 しかも、スティード騎士団は団長であるグレンの言葉に、


「「「「「応っ!」」」」」


 と、気合の入った返事を返し、グレン伯爵から何かを渡された騎士達が、その場で装備の交換を始めてしまった。

 ん?あの装備、今どこから取り出した?各自が乗っていた騎馬にでも載せていたのか?

 そうしている内に、1人また1人と装備の交換が終わった騎士が、王都に向けて走り出した。

 馬が走るよりも、遥かに早いスピードで。

 そして、次々と走り始めるスティード騎士団の騎士達。

 そして気付けば、全騎士が走り出し、あっという間に姿が見えなくなってしまった。


「・・・・・・・・・・・え?」


 あっけに取られているニコラス子爵の元に、家族に説明をするためと装備の交換の為に屋敷に入っていったグレン、ジルベスト、メルティウムの3人が戻って来た。


「それではニコラス殿、我々も今から王都に向かいます。恐らく王都では、大勢の怪我人が出ている事でしょう。もし良ければ、回復魔法が使える者を王都まで手配してもらえないだろうか?」

「え、あ、はい、分かりました・・・」


 未だにあっけに取られたままのニコラス子爵は、何とか返事をし、そして意識をこちらに取り戻した。


「あ、あの、グレン殿!さっき、あなたの騎士達が、物凄い速さで走って行ったのですが!?」


 と、さっきの現象が信じられず、グレンに聞いていた。


「ああ、それについては戻ってから説明しますよ。では父上、メルト。私達も行こうか!」

「ああ、騎士達に装備を渡していたから遅れてしまったな。急ごう!」

「はいっ!」

「それでは、ニコラス殿。また後でお会いしましょう!」


 そう言って、3人は走り出した。

 先程走り去った、騎士達よりもさらに早いスピードで。

 この段階で、ドラゴンが森を飛び立ってから、2時間が経過していた。


「・・・・・・・・」


 暫くフリーズしていたニコラス子爵は、気持ちを切り替え、王都へ送る治療班の手配を始めた。

 先程グレンがスティード騎士団に手渡したのは、緊急事態用にレオが用意しておいた、特製魔導装備が収納されている指輪だ。

 その指輪も、グレンの指輪に収納されていた為、端から見ると、いつの間にかグレンの手に指輪がある、という状況になっていた。

 この装備、緊急事態用に用意されていたにも関わらず、訓練で何度も使われていたりする。

 訓練もせず、いきなりこんな非常識な装備をわたされても、対応できないと考えた結果、この装備を使った訓練をつんでいた。

 おかげでこの緊急事態に際し、何の混乱もなく装備を整え、出発することが出来ていた。

 ちなみに、ドラゴン発見からすぐに装備の切り替えを行わなかったのは、慌てていた為に、すっかりその存在を忘れてしまっていたせいだったりする。



 キロアスの街を出て1時間30分後、遂に王都が見えて来た。

 王都から離れた場所で、防衛軍がドラゴンと激戦を繰り広げているのが見える。

 詳しい戦況はまだ分からないが、全体の動きを見て、劣勢なのは分かった。

 だが、まだ壊滅的な被害が出ていないようだったので、先行しすぎていたグレンとジルベストとメルトはペースを落とし、騎士団を待った。

 3人だけが先行して攻撃するよりも、レオの魔導装備により大幅にステータスを向上させた500人の騎士団と一斉攻撃した方が、効果があると判断したからだ。

 先述の通り今回の装備は、レオが初期に作った、STRとVITとAGLを+2000にする装備ではない。

 レオがダストレア大樹海に行く前に完成させた、全ステータスを+5000にする、対上級以上の魔物を想定した装備になっている。

 全員が揃い、ドラゴンまで残り2km程度となった時、ドラゴンが宙に浮いた。

 そして口に光りが集まり、ブレスを放つ準備動作に入っていた。

 それを見たグレンは


「総員、矢を構えろ!目標、前方のドラゴンだ!」

「「「「「はっ!」」」」」


 全員が矢を構えたの確認し、


「放てぇっ!」


 その号令と同時に、約500本の矢が、今まさにブレスを吐こうとしていた黒龍に向け、放たれた。

 今騎士団が装備しているのは、全ステータスが+5000される鎧と、STRが+2000される剣もしくは槍と、弓の2つだ。

 つまり、今の騎士達にかかっているSTRの補正は、+9000となっている。

 その力で放たれた矢は、2kmの距離を物ともせずに飛び、見事黒龍に降り注いだ。

 残念ながら、騎士達の放った矢は距離がありすぎたため、勢いが殺されてしまい、黒龍に刺さらなかった。

 だが、STRが+20000の補正が掛かり、かつ、もとのステータスが高いグレンとジルベスト、それと+15000の補正が掛かっていたのだが、自己進化のおかげで、現在は+17000のメルトの放った3本の矢が、黒龍に突き刺さった。

 それに驚いたのか、黒龍がブレスを放つのを止め、こちらを向いた。

 対してこちらは、矢を放った直後から走り始め、黒龍まで残り1kmまで迫っていた。



「あれは、グレンか!?ジルベスト殿もいる!メルトまで!?いや、だが、間に合ってくれたか!」


 城壁の上で見ていたエドワードは、黒龍に矢を放ち、さらにとんでもない速度でこちらに向かって来ている一団が、スティード騎士団だと高性能『望遠(テレスコープ)』で確認した。

 そして、声の限り叫んだ。


「皆の者!今まで良く耐えてくれた!たった今!アステリア最強の騎士団、スティード騎士団が到着したぞぉっ!皆は下がり!後は彼らに任せるのだっ!」


 グレンから例の魔導装備の事を聞いていたエドワードやウィリアムは、スティード騎士団が最強だと認識している。

 だがそれは、他はカルナバル宰相以外、誰も知らない事だった。

 だから、スティード騎士団が最強と呼ばれたことに対し、今まで黒龍と戦っていた8つの騎士団員達は憤った。

 だがそれも一瞬の事で、あれだけの遠距離から放たれた矢が黒龍まで届き、さらに3本だけとはいえ、やすやすと黒龍に突き刺さったのだ。

 さらに自分達が満身創痍であることも手伝い、この場はスティード騎士団に託すことにした。

 そして、今まで黒龍と戦っていた全員が城壁の方へ移動するのと入れ替わり、遂にスティード騎士団が黒龍に肉薄した。

 黒龍は想定外のダメージを負わされた、自身に刺さった矢を忌々しく思い、それを成した人間を1人残らず殲滅してやろうと地面に降り、迫り来るスティード騎士団の方を向いた。

 だがそこで、さらに想定外の事が起きていた。

 さっきまで遠くにいたはずの人間達が、いつの間にか目前に迫っていたのだ。

 そのことに驚き、動きが止まってしまう。

 そのスキを突くように、人間達が攻撃を仕掛けて来た。

 彼らスティード騎士団が取った戦法は、ディアレスが考えたのと同じ、1撃に全力を込めたヒット&アウェイだった。

 それに気付いた黒龍は、高い防御力を誇る自慢の鱗に攻撃が弾かれた人間を、順に潰してやろうと考えた。

 だが、それは実現しなかった。

 なぜなら、スティード騎士団1人1人の攻撃が、全て、黒龍の鱗を切り裂き、体に傷を負わせていったからだ。


『GUOOOOOOッ!?』


 ダメージは少ないとは言え、連続で叩きこまれる斬撃に驚き、黒龍は初めて叫び声を上げた。


「「「「「「何いぃッ!?」」」」」」


 そして、それを見ていた、今さっきまで黒龍と戦っていた者達からも驚愕の声が上がった。

誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。

もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ