第51話 こんな所で明らかになる秘密
ちょっと魔王との戦いでテンションが上がってしまい、やり過ぎちまった。
どうしようと悩んだ挙句、どうせ目撃者はいないからと、その場から逃げることにした。
適当に逃げた結果、実は西に向かっていたようで、隣のバルケスラ大陸から侵攻してきた魔王軍を見つけた。
もう魔王はいないから放っておこうかとも思ったが、コイツ等がそのまま侵攻し続けたら面倒になりそうだったんで、行きがけの駄賃にと殲滅しておいた。
せっかく神龍の姿になったから、もう少し暴れたかったってのもあるけどな。
そして海まで行くと、魔王軍がまだまだ渡海しているのが確認できたから、ここまで来たからついでにと言う事で、バルケスラ大陸まで攻め込み、片っ端から魔王軍を殲滅してやった。
ここまでやれば、しばらくは軍の編成なんて出来ないからレシタクルス大陸も安全だろう。
ちょっとバルケスラ大陸の内側まで行っていたため、レシタクルス大陸に戻って来たのは魔王を倒して1週間後だった。
一仕事終え、サンブレイズがあった所まで戻ったら、何と置き去りにした勇者候補の奴らと、魔王討伐の連合軍みたいなのが来ていた。
その時の俺は知らなったが、俺が放った『神龍の吐息』の光りがカイシスの街からも見え、何が起こったのかを調べる為に調査隊が組まれたそうだ。
で、ヒノマイカ王国国境からサンブレイズまでにいた魔神の眷属は全て俺が殲滅していたため、調査隊は大した障害もなく、僅か1週間で到着していた。
そして彼らが目にしたのは、跡形もなく消し飛んでいる旧グレオゴル王国の首都、カイシスの街と、空を飛ぶ巨大なドラゴンの姿。
当然調査隊の連中は騒ぎだすが、俺はそれ以上に慌てていた。
人間にとって、ドラゴンなんんて恐怖の対象でしかないし、こんなデカいドラゴンがここにいて、王都サンブレイズが消滅している。
このドラゴン、つまり俺が何かをやらかしたと疑われてしまうことは間違いなしだ。
まあ、疑うも何も、その通りなんだけどな。
どうするか考えた俺は、とりあえず一芝居打って誤魔化すことに決めた。
《人間達よ。すでに魔王デリオスは、勇者ドラグルによってすでに討たれた。もう、魔王軍の脅威に怯える必要はなくなったのだ》
「ドラゴンよ!それはどういうことだ!?」
俺の念話に対し、殆どの人間が戸惑っている中、勇者選定の儀で最後まで残り、俺と闘ったヒノマイカ王国近衛騎士団長のジェラルドが声を張り上げ、質問してきた。
助かった。
これで全員が無反応だったどうしようかと思っていたぞ。
《言葉の通りだ。1週間前、この地で勇者ドラグルと魔王デリオスが激闘を繰り広げたのだ。魔王デリオスの力でこの街は破壊されてしまったが、勇者ドラグルはかろうじて勝利を収め、魔王を滅したのだ》
「では、その勇者ドラグルは今、どこにおられるか!?」
《魔王を討伐した後、西に進みバルケスラ大陸に渡り、レシタクルス大陸の脅威となるであろう魔王軍の残党を討ちに行ってしまったわ。その後、ヤツがどうなったかは私にも分からぬ》
何とか正気を取り戻し、俺の話しを聞いていた調査団の連中は、ざわざわと話し始めた。
そして、またしてもジェラルドが質問をしてきた。
こいつ、この調査団の団長か?
「ドラゴンよ!あなたは私達の敵か!?それとも味方か!?それを明確にして頂きたい!」
まあ、尤もだな。
ドラゴンと言うだけで奴らは警戒していたが、俺に敵意が無く、話し合いをしようとしていることを察してくれたらしい。
流石は近衛騎士団の団長をやっているだけのことはある。
《安心しろ。私は女神セレスの眷属のドラゴン、神龍シューティングスターだ。女神の使徒であり、この地には女神セレスの依頼で魔王デリオスを討ちに来たのだ。すでに、ドラグルによって魔王は倒されてしまっていたがな》
「女神の使徒様ですか!?それは失礼をいたしました!」
《気にするな。この周りにいた魔族の残党はすでに私が討伐しておいた。これ以上、魔族が侵攻してくることはないであろう》
「では、本当に魔王デリオスは滅んだのですか!?」
《さっきからそう言っているだろう?魔王デリオスは勇者ドラグルによって討たれた、と》
「では・・・」
《後は貴様らで調べろ!私の用は済んだから、帰る!》
「な、お待ちを!もう少しお話しを・・・・!」
このままではいつまで経っても話が続きそうな雰囲気だったから、面倒になったんで逃げることにした。
俺は空高く舞い上がり、雲を抜け、完全にジェラルド達から見えなくなったのを確認したら、ダストレア大樹海に向けて飛んで行った。
はあ~疲れた。
まあ、これで世界もしばらくは平和になるだろう。
取りあえず1ヵ月はノイシュヴァン山脈で休んでから、ノルン伯爵の所に戻るか。
あ、それと魔王討伐依頼の完了報告もセレスにしないとな。
と、いうわけで、俺はノイシュヴァン山脈にある俺の屋敷に向かった。
「いや~ご苦労だったねミコト!あの魔王は神獣よりも強かったから、キミが負けたらどうしようかとヒヤヒヤしていたよ!」
俺は今、セレスがいる真っ白な世界、神の間にいる。
デリオス討伐完了を報告するためだ。
「ああ、アイツは本当にやばかったぜ?神龍の姿にならなきゃ、絶対に勝てなかったわ」
「そうだね~。でも君は勝った。やっぱり例え魔王でも、ウチの眷属最強の神龍には手も足も出なかったみたいだね!」
「逆に言えば、俺がいなかったらヤバかった、ってことでもあるがな」
「あはははははっ!ミコトが勝ったんだら、そんなことはどうでもいいんだよ!」
笑ってごまかしているが、セレスの頬を、一筋の汗が流れていったのを俺は見逃さなかった。
まあ、どうでもいいか?
「で、今回の報酬なんだけどよ」
「うんうん。何が良いんだい?」
「俺と人間の女の間に、子供が出来るようにしてもらいてぇんだがよ。どうだ?」
「うん?その相手はノルン伯爵の1人娘、レイラ=ノーマンかい?」
「ああ、まあ、な」
「ふ~ん?」
セレスがニヤニヤしているのが、スッゲームカつく!
「どうせ俺のことを見てたから知ってんだろ?多分、この後ノーマン領のイサエラの街に戻ったら、俺とレイラは結婚することになるからな。で、どうなんだ?」
「一応聞くけど、もし無理だって言ったらどうするの?」
「そん時はイサエラの街に戻らねーで、このままここで過ごす。で、どーなんだよ!?しっかり答えろや!」
相変わらずのニヤケ面が俺を苛立たせる。
こいつの話し方とこの顔を見た限りだと、多分出来るな。
「うん、出来るよ。でもいいのかい?キミの子供は、恐らく超高ステータスで生まれてくる可能性が高いよ?それに、ほとんど老いることが無い君が、すぐに老いて死んでしまう人間と一緒になるのは、余りおススメしないよ?」
「ああ、それに関してだが、子供は普通の人間として生まれるようにしてほしい。まあ、数百年に1度くらいは、多少ステータスが高い子孫が生まれてもいいかもな。その前に、ノルンとレイラには俺が何者なのかをしっかり説明し、受け入れてもらえるなら結婚しようと思う。で、子供が1人前になったら、俺はまたここに戻ってくるつもりだ」
「え?それでいいのかい?」
「ああ」
「ふ~ん?分かった。ミコトがそう望むのであれば、そうしよう」
そして俺は、人間との間に子供が出来るようにしてもらい、アステリア王国ノーマン伯爵領、イサエラの街に戻って来た。
俺がイサエラの街に入り、住民が俺の存在に気付くと、街はパニックに包まれた。
すでにヒノマイカ王国から俺が勇者に選ばれ、単身魔王討伐に向かい、それを成しえたという話はアステリア王国に伝えられていた。
ただし、俺がさらにバルケスラ大陸に渡り、その後は生死不明の状態で、未だ発見されず、ということも伝わっていた。
その報告を聞いたアステリア王国国王アグステウムや、ノルン伯爵を始めイサエラの住民は大いに盛り上がり、そして俺が生死不明と知り、大いに悲しんだ。
そんな中、俺が何事も無かったかのように戻って来たから、そりゃ驚くわな。
ぶっちゃけ、俺が生死不明になっているなんて、微塵も考えていなかった。
少し考えりゃ分かったのにな。
騒ぎを聞きつけたノルン伯爵が飛んできて、すぐに屋敷に通された。
そして、たまたまイサエラの街に来ていたアグステウムやレイラ、そしてノルン伯爵邸に押しかけて来た住民の前で、勇者候補として旅立ってから今まで何が起きたのかを説明を求められ、話せる所だけを話した。
まあ、その後いろいろあって、結局レイラと結婚し、俺はドラグル=クシャナ=ノーマンを名乗り、このノーマン伯爵領の領主となった。
それと、アグステウムの提案で、俺は勇者ドラグルとは別人であるとし、表立って力を振るう事は控えた。
つっても、こっそり冒険者としての活動は続けたがな。
そうそう、無事子供も生まれた。
男と女が1人ずつで、ステータスは平均よりちょっと高い程度だった。
セレスがしっかり仕事をしてくれたみたいだな。
それなら数百年後、もし俺の血筋が途絶えていなければ、ケタ外れのステータスを持った子孫が生まれるかも知れねえな。
何でそんなことをしかかって?
だって、そっちの方が面白そうだろ?
俺はそれから20年間、ドラグル伯爵としてノーマン領を守り、長男に家督を譲った後は、ダストレア大樹海に挑むという名目で、ノイシュヴァン山脈に帰って行った。
俺が神龍で、女神の使徒であることは、妻のレイラ、義父のノルン、親友のアグステウムの3人だけに打ち明け、秘密にしてもらった。
その後、俺が居なくなってからのノーマン伯爵家がどうなったかは分からねえ。
無責任に聞こえるかも知れねえが、俺が今後一切、アステリア王国及びノーマン伯爵家に関わらないと決めたのは、妻レイラと親友のアグステウムだからだ。
別に恨まれていたとかじゃねえぞ?
俺が来ちまえば、大抵の困難は乗り切れちまう。
それに甘えてしまえば、この国はこれ以上発展しなくなるかもしれないし、調子に乗って他国の侵略などをしてしまうかも知れない。
現に、俺が伯爵をしていた20年間に、いくつもの事件が起こり、俺がバレないようにこっそり解決していたのもかなりあるしな。
俺が去る時、アグステウムとレイラが約束をして来た。
「私はお前から受けた恩は決して忘れない。どこまで守られるか分からんが、ノーマン伯爵家が謀反でも起こさない限り、不当な理由で取り潰しにしないこと、子々孫々守らせよう」
「私もあなたがそうして来たように、民を決して見放さず、困っていたら手を差し伸べるように、子供達に伝えていきましょう。我がノーマン家は、常に弱き民達の味方であり続けましょう」
と。
まあ、ちょーっとばかり他の領主の圧政に苦しみ、逃げて来た奴らを保護し、領地内に村を20くらい増やしはしたな。
当然、他の貴族からは文句を言われたが、そこはしっかりお話しして解決したぜ?
たまーに肉体を用いた言語で語り合ったこともあるけどな?
おかげでノーマン伯爵領は、王国民からの絶大な支持を勝ち取った。
そのため、俺達のことを面白く思わない貴族を抑えるためにも、ノーマン家は決して伯爵以上の爵位を求めない、と公言しておいた。
そう言っとけば、自分の地位が大事な上位貴族達は、そうそうバカな真似はしなくなる、というアグステウムの提案を採用し、実際に何かされることもなかったな。
で、いろいろ地盤を固めた俺は、後顧の憂いなく樹海に帰ることができた。
その後ノーマン伯爵家がどうなったかは、本当に知らない。
「まあ、以上が俺が勇者ドラグルとして活動していた頃の話だな」
「そうだったんですね、ありがとうございました。やけに結婚してからの話しが大雑把だった気がしないでもないですが、そこは空気を読みましょう」
「おう、そうしてくれや。それでレオ、1つ聞いてもいいか?」
「ノーマン伯爵家のことですか?」
「ん、まあ、な。今後一切関わらないと決めたとは言え、こんな話をしたら気になってきちまってよ?で、どうなんだ?まだ残っているか?」
「ええ、もちろんです。それに、僕の父グレンとノーマン伯爵家現当主のルドルフさんは、協力関係にありますからね」
「おお、そうかそうか!まだ残ってんのか!」
「ええ、それにミコトさんの奥さんが言っていたように、苦しんでいる民を守る、立派な領主だと父から伺っていますよ」
「お、そいつは嬉しいな!あと、ノーマン家に化物じみたステータスのヤツがいたって話は聞いたことねえか?」
「ありますよ。さっき話したルドルフ伯爵の息子、長男のダラシィード殿と次男のオーガスト殿がまさしくそうです。2人とも僕と同世代なので、お披露目会でステータスを直接見たから間違いないですよ」
「はは、そうか!本当に生まれやがったか!しかも2人もだと?そいつは将来が楽しみだな?」
「ええ、1年以上前ですが、2人ともまだ10歳に満たなにも関わらず、大人の騎士よりもすでに強かったですからね。将来が楽しみだと父が言っていましたよ」
「なーんかお前に言われると、素直に喜べねえな?」
「まあまあ。恐らくですが、このまま成長すれば、2人とも王国最強と呼ばれている僕の祖父よりも強くなるだろう、と言われていますよ」
「そうか。お、そうだ。レオ、悪いんだけどよ、1つ頼まれてくれねえか?」
「何ですか?」
ミコトさん異空間収納を発動し、中から2振りの剣を引っ張り出した。
1つは大剣で、もう1つは長剣だ。
これってもしかして・・・
「お前がアステリア王国に帰った時、その2人がまだ強くなることを諦めていなかったら、この剣を渡してやってくれないか?できればお前と1度戦い、ボロ負けした後が良いな。もう察していると思うが、この剣は俺がドラグルとして活動していた頃に愛用していた剣だ。強さを求め続けているようなら、是非渡してもらいたい。頼まれてくれねえか?」
きっと自分で渡しに行きたいのだろうけど、約束があるから行きたいのを我慢しているのだろう。
ならば、僕の答えは決まっている。
「分かりました。その依頼、引き受けました!」
「ああ、頼む」
そうして、僕がアステリア王国に戻ったらやることが、1つ増えました。
それにしても、こんな所であの2人の異常に高いステータスの秘密を知ることになるとは、完全に想定外でしたよ。
樹海調査初日の夜に、ガロウデットからノーマン家は勇者の子孫かも、という話を聞いた時はもしかして、とは思ったけど、まさか神龍の子孫だったとはね。
やっと勇者の過去話が終わりました。
予定ではもっと短くなるはずだったのですが、まだまだ文章の作成が下手なのでご勘弁ください。
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




