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第50話 魔王対勇者

 いくつもの階段を上り、王城の中を進んで行く。

 当然城の中にはまだ魔族や配下の魔物や魔獣が多くいたが、目に入ったヤツから全て殲滅していった。

 通路を塞ぐほどの巨体を持つ魔物を、城の中に配置するなんて、何考えてんだ?

 通路通る時に邪魔になんねえのか?

 そして、上の階に進むにつれ、気配が強くなる。

 俺が足を止めたのは、謁見の間の扉の前だった。

 こっちとしては分かりやすくていいけどさ、何で魔王って玉座で待ってくれてんの?

 いや、確かに、通路でバッタリ出会ってしまって、そのまま最終決戦、なんてのは御免だけどな?

 まあ、いっか?

 じゃあ、魔王デリオスとご対面と行こうか!

 謁見の間の扉を蹴破り、中に入る。

 そして正面の玉座には、見た目は俺と同じ20代前半の男が座っていた。

 黒髪黒目の穏やかな表情をした、パッと見だと日本人じゃね?

 と思ってしまったほど、日本人、というか、地球のアジア人のような特徴を持った男だった。


「お前が魔王デリオスだな?」

「ああ、そうだよ。そういう君は誰だい?」

「俺はドラグル。一応勇者ってことになっている」

「へ~、やっぱりいたんだ、勇者。ってことは、僕はここで死んでしまうのかな?」

「さあな。そいつはお前次第だろう?俺が勝てばお前は死に、お前が勝てば俺が死ぬ。そのどちらかだろ?」

「ふふっ、そうだね。それじゃあ、早速やろうか?」

「ああ、やろうぜ!」


 俺は剣を構え、デリオスが動くのを待った。

 が、いつまで経っても動く気配が無い。


「おいデリオス?」

「何だいドラグル?」

「てめえ、何で構えないだよ?」

「ああ、それは先手を譲る為さ。君が頑張ってここまでたどり着いたご褒美だよ。何せ僕は魔王だからね。その位の余裕は見せないとさ」

「ああ、そうかい。じゃあ、遠慮なく行くぜ!」


 そして俺は、いつもの大剣に持ち替えて、全力で斬りかかった。


「あ、これはやばい・・・」


 玉座に座ったまま、慌てて剣を抜いたデリオスが、俺の斬撃を受け止めた。

 その瞬間、俺の攻撃に耐え切れなかった玉座の間の床が陥没した。

 足場が崩れたことにより玉座の間から落ちた俺達は、下の部屋に着地する。


「やるじゃねえかデリオス。俺の攻撃を防ぐなんてよ?」

「いやいや、そっちこそやるねえ、ドラグル。傷を付けられたのは久しぶりだよ」


 デリオスの右の頬には、俺の斬撃がかすり、一本の赤い線が走っていた。


「ふふふっ、これは期待できそうだねえ。丁度いい暇潰しになりそうだよ。じゃあ、今度はこちらから行くよ?」

「おう、かかって来いや!」


 そして、勇者対魔王の決戦が始まった。

 2人の戦いは激しく、20分戦った頃には、王城は完全に崩れてしまっていた。

 それほどの戦いをしたにも関わらず、ドラグルもデリオスも、たいしたケガはしていない。


「はあ、はあ、なかなかやるじゃねえか!お前ほど強い奴は初めてだぜ?」

「はあ、はあ、そうかい?僕も君ほどの実力者は初めてだよ」

「そいつはどうも」


 20分戦って分かったのは、お互いの力が拮抗しているという事だ。

 俺は龍王気を使い、ステータスを最大倍率の2倍、つまり1億まで上げて戦っていたが、デリオスを攻め切ることが出来なかった。

 対するデリオスは、まだ魔族の戦闘形態になっていないにも関わらず、その俺と互角に戦っていた。

 こいつはマズイな・・・

 お互い呼吸が整い、もう一度斬りかかろうとしたら、


「さて、そろそろ僕の本気を見せようかな?」


 と、デリオスが言ってきやがった。

 あ~、やっぱりなるよな~戦闘形態に。

 このままじゃ勝てねえよなあ?

 でも、このままの状態で、やるだけやってみるか?



「じゃあ、戦闘形態に移行するから、ちょっと待っててね」


 そして、デリオスが変身を始めた。

 頭の横、耳の上から2本の羊のような角が生え、背中からは4対の鳥のような真黒の翼が生えた。

 肌の色は黒く変色し、髪は白くなって腰のあたりまで伸びた。

 真黒だった目は金色に輝き、穏やかそうだった表情は、好戦的な、凶暴な表情へと変化していた。

 体も大きくなり、今は10mくらいになった。

 なんだかRPGの魔王っぽいな?


「ふう~、やっぱりこっちの方がしっくりくるな」


 戦闘形態への変身が完了したデリオスがつぶやく。


「なあ、デリオス?」

「あ?何だ?」

「お前、見た目だけじゃなく、口調まで変わってねえか?」

「それがどうした?こっちが俺本来の口調だぜ?」

「あ、さいですか」

「じゃ、続きをやるか?」

「ああ、やろうぜ」


 そして俺は、気付いたらふっ飛ばされていた。

 城下町まで飛ばされ、地面に激突して止まった。


「いって~~~っ!」


 今のはかなり効いた。

 この世界に転生してから受けたダメージで、間違いなく最高記録を更新したな。


「はは、何だよ。簡単に吹っ飛んでくれるなよな?」


 ゆっくりデリオスが近付いて来た。


「おう、なかなか良い攻撃じゃねえか。効いたぜ」

「そうかそうか!じゃあ、もっと喰らいな!」


 そして、デリオスによる一方的な攻撃が始まった。

 俺は防御に専念し、少しでもダメージを減らしながらスキを伺い、反撃をする。

 だが、俺の攻撃は全て弾かれ、代わりに攻撃を受ける。

 10mの巨体のくせに、かろうじて動きが見えるほどのスピードで攻撃を放ってきやがる。

 まあ、このサイズだからこそ、かろうじて動きが見えているんだろうけどな。

 もしこれが俺と同じサイズだったら、防御なんかできずに攻撃を全て喰らっていたかも知れねえな。

 サンブレイズの街を破壊しながら、俺とデリオスの戦いは続いている。

 いや、正確には、俺がサンブレイズの街を破壊しながらデリオスにふっ飛ばされている。

 こりゃあマジでやばいな。

 手も足も出ねえよ。

 

 どれだけ時間が経ったか?

 1時間くらいか?それともまだ10分くらいか?

 そんなことも分からないくらい、俺はデリオスに一方的に痛めつけられていた。


「どうした勇者?もう終わりか?」


 ふっ飛ばされたまま立ち上がらない俺に、デリオスが攻撃の手を止めて話しかけて来た。


「おう、ちょっと休憩中だ」

「そうか?なら少し付き合ってやるよ」


 お?デリオスも休憩するみてぇだな。

 ついでに、気になっていたことを聞いとくか?


「なあデリオス。聞いてもいいか?」

「あん?何だよ?」

「お前さ、もしかして転生者か?」

「っ!?ああそうだ。もしかしてお前もか?」

「ああ、まあな」

「はは、俺は魔王に転生して、お前は勇者か?やっぱり魔王の方が上みてえだな?」

「どうだろうな?それより、お前の前世は地球人か?」

「なんだそりゃ?俺はアルスバイン出身だぜ?お前は違うのか?」

「ああ。俺は地球の日本出身だ。なあ、なんでお前は魔王になることを選んだんだ?」

「あ?決まってんだろ?力で全てを支配するためだ。俺が生まれたアルスバインは、魔王が支配した世界だったんだよ。俺達人間は魔族の奴隷で、何もかも搾り取られるだけの人生だったぜ?」

「それが何で魔王に転生することを選んだんだよ?そこは勇者になって、魔王を倒そうとは思わなかったのか?」

「何言ってんだお前?俺はむしろ魔王に憧れたね。圧倒的な力で世界を支配する。力があれば何でもできる。魔王を中心に世界が回るんだ。最高じゃねえか!」

「おいおい、マジかよ。じゃあ何か?お前は力で世界を支配する為に、魔王を選んだのか?」

「力はいいぜぇ?何をしても許されるんだからな!力は絶対だ!何でも思いのままだ!欲しい物は何でも手に入り!誰もが俺にひれ伏す!最高じゃねえか!まあ、俺の上に魔神なんて居やがるけどよ。そいつも今は封印されて何も出来ねえからな。だから俺が世界を支配して、俺が好き勝手できる世界に変えてやるのよ!」

「ああ、そうか。お前にはそんな野望があるんだな」

「まあな。お、そうだ!お前俺の下に付かねえか?お前は俺の次に強い。なんなら世界征服が終わったら、どっかの国をくれてやってもいいぜ?お前が好き勝手出来る国だ。どうだ?」

「ワリィな。そんなのに興味ねぇよ」

「チッ、そうかよ。で、お前は何で勇者になった?まさか、正義に憧れて、とかじゃねえよな?」

「いや、そもそも俺は、勇者として転生したわけじゃねえよ」

「は?じゃあ、何に転生したんだ?」

「ドラゴンだ」

「は?何言ってんだお前?どっからどう見ても、人間じゃねえか?」

「人化のスキルで変身してんだよ。さて、と。そろそろ休憩も終わりにするか?」

「お、もういいのか?何か遺言はあるか?」


 デリオスは自分が負けるとは微塵も思っていないみたいだな。

 やれやれ。


「お前がもっとまともなヤツだったら、このまま見逃してもよかったんだけどな。だが、お前をこのまま生かしておいたら、世界が滅茶苦茶にされちまいそうだからよ。俺も本気を出すことにするわ」

「何言ってんだお前?」

「俺はドラゴンだって言っただろ?今から本来の姿に戻るわ」

「はあ!?」

「じゃ、ちょっと待ってろ」


 人化を解く。

 俺の体が光りに包まれ大きくなり、元の体、神龍の姿に戻る。

 光が収まった時、そこには全長100mの巨大なドラゴンがいた。


「おい、ドラグル!何だその姿は!?」

《だから言ったろ?俺はドラゴンに転生したって。これが俺の本当の姿、女神セレスの眷属のドラゴンを統べる龍王で、種族は神龍だ。それとドラグルは偽名でよ。本名はミコト=シューティングスターってんだ》

「は、そうかよ!ドラゴンになったから何だ!的がデカくなっただけじゃねえか!」

《なら、試してみるか?》

「上等!」


 そして、魔王対勇者の最終ラウンドが始まった。


「オラ、オラ、オラアアアッ!」


 デリオスが魔法を使い、攻撃を連続で仕掛けてくる。

 それを俺は、風魔法と光魔法を高密度に圧縮して纏わせた前足を払って掻き消すと同時に、ついでにドラグルを攻撃する。


「ぐあああああぁぁぁぁぁ・・・・・・!」


 それだけでデリオスはサンブレイズの街を縦断し、崩壊した王城まで飛んで行ってしまい、瓦礫に埋もれた。


「クッソ!まだまだーっ!」


 瓦礫を吹き飛ばして飛び上がり、さっきとは比べ物にならない魔法を放ってくる。

 やはり魔王だからなのか闇魔法が多く、そして威力も高い。

 さっきまでの、人化した状態の俺が喰らっていたら、間違いなく大ダメージを受けていたであろう攻撃だ。

 だがそれもさっきまでの話しで、神龍の姿に戻った俺のステータスは5億。

 そこからさらに龍王気を纏ってステータスを2倍にしてあるから、今は10億。

 これまでの戦闘を見て、恐らくステータスが3億~4億のデリオスでは、どうあがいても勝ち目はないだろう。

 俺は、デリオスが放った、超圧縮された1000を超える闇魔法の球体を、適当に放ったブレス一発で全てを消し去り、ついでにデリオスにも当ててやった。

 1000以上の闇魔法を消したことにより、かなり威力が落ちていたが、避けることも出来ずに直撃してしまったデリオスは、また王城に落ちていった。


《どうだ?まだやれるか?》


 動けなくなったデリオスに近付き、声をかける。


「なめんじゃねえよ。今起き上がって、テメェを殺してやんよ!」

《そうか。だが、こっちはそろそろ飽きて来たからな。次で終わらせてやるよ》

「はっ!やれるもんならやってみろよ!」


 そう言って起き上がったデリオスだが、それだけで精一杯のようだ。

 どうやらさっきの一撃のダメージが甚大で、デリオスはもう動けならしい。

 いつまでも長引かせるのは悪いからな。

 一撃で葬ってやるか。

 俺は上空に浮かび、口に魔力と龍王気を集め、融合し圧縮する。


「はは、何だよそりゃ?そんなの喰らって、生き残れる気がしねえよ・・・」

《そりゃそうだ。こいつは俺の、世界最強の神龍が放つ、最強の攻撃だぜ?こいつを防がれちまったら、俺にはもう成す術が無くなっちまうよ》

「そいつは良いことを聞いたな。なら、コイツを耐えれば俺の勝ちってか?」

《かもな。じゃあ、行くぜ?》

「おう、来いよ」

神龍の吐息(アトミック・ブレス)!》


 俺の口から放たれた真っ白な光の奔流がデリオスを飲み込み、そして、消えた。

 ついでに旧ザイナッハ王国首都、サンブレイズの街と一緒に。

 『神龍の吐息(アトミック・ブレス)』の光が消えた後、魔王デリオスの姿は跡形もなくこの世から消滅していたが、


《・・・・・・・・・アレ?》


 ついでに王都サンブレイズも消え去り、そこに残ったのは巨大なクレーターだけだった。


誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。

もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。

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