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第49話 やっと魔王討伐へ

 面倒だった勇者選定の儀が終わり、俺は勇者の称号を手に入れた。

 だから何だ!

 ただ無駄に時間を過ごしただけじゃねえか!

 その後の調査で、あの勇者選定の儀はやはり賭博の対象となっていて、俺が優勝したことにより大損したこの国の貴族共が、俺の2回戦の相手を買収して異議を申し立てしたことが分かった。

 この貴族共の予定では、自国が立てた勇者候補である、王国近衛騎士団長のジェラルドが優勝するはずで、その為にいくつも小細工をしていた。

 現にこのジェラルドは、最終戦まで勝ち残っていたし、人間にしてはそれなりに強かった。

 まあ、他の奴と同じく5秒で決着がついたけどな!

 そうそう、例の暗殺者も、このクソ貴族共が仕掛けた小細工の1つだった。

 本来の予定なら、3回目の襲撃も計画されていたらしく、その内容は10人で襲うというものだった。

 だが、俺に一瞬で無力化された最初の暗殺者が意識を取り戻し、俺にはいくら人数を揃えても絶対に勝てないと言い張り、計画が実行されることは無かった。

 他にも、他の勇者候補に様々な妨害をしかけ、買収したりしていた。

 これは、俺が独自に調査をした結果、判明したことだ。

 俺に暗殺者をしかけてきた闘技場の警備員とちょっとお話しして、その上司ともお話しを重ね、黒幕に辿り着いたからこそ知りえた情報だ。

 その後の調査で国王もこの事実を知り、この貴族達を処罰しようとしたが時すでに遅く、その貴族達は全員何者かの襲撃を受け、屋敷が全壊し、大ケガも負っていた。

 真っ先に疑われたのが俺らしいんだが、その時の俺はすでに旧グレオゴル王国に向かっている最中で、王都からは馬でも1週間かかる距離に居た為、すぐに容疑者から除外されたらしい。

 では犯人は誰なのか?

 真相は闇の中へと消えていった。

 ま、犯人は俺なんだけどな!

 俺のAGLをもってすれば、夜の内に王都カイシスに戻り、一瞬で屋敷を襲撃し、夜の内に元の場所まで戻るなんて、ヨユーヨユー!

 だって、俺のAGLは鑑定石で表示した12万じゃなく、5000万あるからな!

 ああ、この不正には国王は関わっていなかったから、手を出すのは止めてやった。

 もし少しでも関わっていたなら、そうだな、王城が瓦礫の山になっていたかもしれないな。

 さて、そんな過去のどうでいい話しはここまでにして、王都カイシスを発って10日後、俺はようやく旧グレオゴル王国の領地へと辿り着いた。



 旧グレオゴル王国の領地に入り、最初の1日は変化が何も無かったが、2日目に入ると変化が訪れた。

 まず特筆すべきは、魔物や魔獣がこれでもかと襲い掛かってくる!

 これ、ダストレア大樹海よりも魔物の密度高くねえか?

 酷いときなんか、1時間ぶっ通しで魔物と魔獣が襲い掛かって来たからな。

 あ~、1人で来て良かった。

 仲間なんか連れて来ていたら、たぶん俺以外は全滅していたわ、これ。

 実は勇者選定の儀が終わった後、参加していた勇者候補から8名が、俺に同行したいとヒノマイカ王国に申し入れて来た。

 それを聞いたメガロス国王が、俺に何の断りも入れずに勝手に承諾しやがった。

 で、王都を発つその瞬間に、同行することを伝えてきやがった。

 足手まといにしかならないから要らない、と言ったが、元勇者候補の連中が無理矢理にでも付いて行く、と言いやがったので、好きにさせてやることにした。

 そしてメガロスの野郎には、殺気をぶつけてやったよ。

 次ふざけたことをしやがったら許さねえ、というメッセージを込めて。

 おかげでアイツは、大勢の前で気絶し、失禁までしやがった。

 これでちょっとはスカッとしたから、俺は旧グレオゴル王国に向かって出発した。

 足手まといを8人も引き連れて。

 で、出発してから8日目の夜。

 つまり俺が王都カイシスの貴族邸を襲撃した翌日、この足手まといどもを撒いてやった。

 もしこれでも俺を見つけられた場合は、最後まで連れて行ってやろうと思っていたが、誰1人として俺を見つけられた者はいなかった。

 なので俺は今、1人で旧グレオゴル王国を進んでいる。

 結果的に、これは正解だっただろう。

 あいつら程度の実力じゃあ、途中で死んでいたこと間違いなしだからな。

 何せ、厄災級の魔物まで出て来たんだからよ。

 厄災級の中でも、出現数が一番多かったのがドラゴンだ。

 魔神ヴァッシュにより生み出された、俺や俺の眷属とは別のドラゴン。

 見た瞬間に、コイツは俺の眷属じゃないと分かるし、どこからともなく殺意も湧いてくる。

 そいつらを蹴散らし、たまに魔族も出てきたが、ついでに蹴散らして進んでいく。

 ああ、魔族だが、見た目は殆ど人間と変わらないぞ。

 角が生えていたり、羽が生えていたり、皮膚の色が違ったりするのも中にはいるが、それは戦闘形態になった時の話で、普段は人間と変わらない見た目をしている。

 何でも、戦闘形態になっているだけでMPを消費してしまうらしく、省エネのために負担のない通常状態でいるそうだ。

 魔族とは、人間よりもステータスが高く設定されていて、常に魔素に覆われたバルケスラ大陸で生活している種族だ。

 寿命も人間よりは長いが、繁殖能力が極端に低い。

 女神の眷属である、エルフみたいな種族だな。

 ついでだから、人間以外の女神の眷属の説明をするか。

 エルフは長命で魔力が高い種族で、魔族と同じく繁殖力が低い。

 寿命が長いから、人間並みに繁殖してしまうと人口が飛んでもなことになってしまうからだろう。

 エルフが優れているのは魔力関係だけで、他は人間よりも低い。

 次に、ドワーフは力と手先の器用さに優れているが、魔力関係は低い。

 寿命は人間以上エルフ以下で、繁殖力も同じだ。

 エルフとドワーフは、昔からなぜか仲が悪い。

 お互いが持っていないモノを持っているせいなのか、それとも生みだしたセレスがそう設定したからなのか、それは分からない。

 もし後者だったら、性質が悪いな。

 セレスは何を考えてんだ?

 最後に獣人族は、攻撃と素早さに優れた種族で、寿命と繁殖力も人間と同じだ。

 ただし、魔法に関しては人間よりも劣ってしまう。

 この3種族は、実はほとんどレシタクルス大陸にはいない。

 レシタクルス大陸の南東、バルケスラ大陸の南西に位置したもう1つの大陸、クラウディア大陸にいる。

 このクラウディア大陸は、大きさがレシタクルス大陸の半分より少し大きい程度で、最大勢力の獣人族が平地を、山はドワーフ族が、エルフ族は森を支配して住み分けている。

 たまにレシタクルス大陸でもこれらの種族を見かけるが、その殆どが生活しているのは、大陸南東部に偏っている。

 少し脱線してしまったな。

 その魔族だが、魔獣達を従えて、侵入者である俺に襲い掛かってくる。

 侵入者って言っても、コイツ等魔族は侵略者だから、非難される云われは無いけどな!



 魔族と魔物と魔獣、面倒だな、魔神の眷属でまとめるか。

 その魔神の眷属を蹴散らしながら10日ほど歩くと、やっと魔王がいる旧グレオゴル王国の王都、サンブレイズが見えて来た。

 これだけ離れていてもヒシヒシと伝わってくる強者の気配!

 魔王デリオスまであと少しだ!

 期待に胸を膨らませ、俺は居ても立ってもいられず、サンブレイズに向かって全力で走っていく。

 途中、魔神の眷属がいた気がするけど、全部無視して走り抜け、王宮に到着した。

 王城の城門には、門番の魔族が立っていたから、挨拶をしてみた。


「よう、お勤めご苦労さん」

「ん?何だお前は?」

「なあ、魔王って今いるか?いるよな?」

「魔王様に何の用だ?」

「ああ、戦いに来たから、出てきてもらいたいんだけどよ?」

「はあ?」

「あ、わりぃ、名乗ってなかったな。俺はドラグルってんだ。ついこの間、勇者に認定されたから、魔王デリオスと早速戦いに来たんだよ」

「勇者だと!?」

「おう。だから、デリオスに会わせてくんねえか?」

「勇者だー!勇者が攻めて来たぞー!」


 あ、こいつ。

 俺の頼みを聞きもしないで、仲間を呼びやがった。


「何!?どこだ!?」

「勇者だと!?バカめ!返り討ちにしてやる!」

「囲め囲めー!決して逃がすなー!」


 あっという間に魔族に囲まれてしまった。

 

「ほう、貴様が勇者か?」


 城の方からがっしりとした体格の、身分の高そうな魔族がやって来た。

 派手ではないが、見ただけで魔導具と分かる装備でを包み、動きに無駄が無い。

 今まで見て来た、いや、ここで俺を囲んでいる魔族の精鋭よりも明らかに抜きんでた実力者だという事が感じられる。


「ああ、ドラグルってんだ。お前は?」

「私は魔王デリオス様に使える将軍の1人、ファウストだ。」


 俺の自己紹介に律儀に返してくれた。

 なるほど、コイツは将軍だったのか。

 人間社会と違い、魔族で将軍と呼ばれるのは本当の実力者である。

 これが人間の将軍となると、コネと権力だけでもなれるヤツがいるからな。

 そういう奴に限って無能が多い。

 まあ、偶に例外もいるが、ああいう国にとって害悪にしかならないバカって、どうにかなんねえか?

 なんて、俺が人間社会の闇の部分に思いを馳せていると、ファウスト将軍は周りをキョロキョロしながら聞いてきた。


「ドラグルよ、貴様1人だけか?他に仲間はいないのか?」

「他の奴は足手まといだからな。置いてきた」

「何?では本当に1人なのか?」

「だからそう言ってんだろ?」

「はっはっはっ!何と勇敢な人間か!気に入ったぞ!」


 どうしよう。

 敵であるはずの魔族の、それも将軍に気に入られてしまった。


「よし、ならばこの私が直々に殺してやろう!お前ら!手を出すなよ!」

「はっ!」


 そして、俺を囲っていた魔族の兵士達が包囲を解いた。


「では勇者ドラグルよ!存分にやり合おうではないか!」


 そう言ったファウストは、額から一本の角が生え、背中からは2対の蝙蝠のような翼が生え、肌の色が紫色に変色し、身長が4mほどまで伸びた。

 魔族の戦闘形態だ。

 戦闘形態になり、身長が大きく伸びるのは、それだけの強さを持っている証拠と言える。

 その手には、いつの間にか4mの身長に合わせた長剣が握られている。

 なら俺もと、ファウストに合わせて異空間収納から長剣を取り出した。


「準備はいいか?勇者ドラグルよ?」

「ああ、いつでも良いぜ?ファウスト将軍」


 そして、戦いが始まった。


「はあああああああっ!」


 ファウストが剣を、常人の目では追いきれないスピードで操り、斬りかかってくる。

 それも、ただ適当に斬っているのではく、防御している俺の動きに合わせ、1振り1振りが異なる軌道、異なるスピードで放たれている。

 普通ならこれだけの長剣を扱えば、小回りが利かずに大振りな攻撃になり、懐へ入る隙がどこかに生まれる。

 しかもファウスト自身が4mという大きさだ。

 しかし、その動きには隙が無く、STRが高いのだろう、長剣をまるで小枝のように軽々と振り回している。

 時にはフェイントを混ぜ、時には足技を混ぜ、時には魔法を放ちながらの戦い方は、流石は魔族の将軍と言った所だろう。

 俺はその攻撃を冷静に見極め、全てを防いだり避けたりして、ダメージを受けないようにしている。

 俺達の戦いを見守っている魔族からは、ファウストが圧倒的有利に攻めているように見えているのだろう。

 歓声に沸き、ファウストを讃える声まで聞こえる。

 だが実際には違う。

 ファウストは攻め続けているにも関わらず、ただ防御をしている俺に追い詰められていた。

 どれだけ攻めても、どんな攻撃をしても、全て軽く防がれてしまっている。

 そして、相手はチャンスなどいくらでもあるのに、一切攻撃をしてこない。

 それが不気味で仕方がないのだ。

 何度も必殺の攻撃を仕掛けているのに、まるで通用していない。

 そのことに焦りながら、それでも攻め続けているのは自分だと言い聞かせ、攻撃を続ける。

 しかし、ファウストは気付いていた。

 いや、悟っていた。

 この攻撃が止まってしまった時、それが自分の最期なのだと。

 まるで魔王様に挑んだ時のような感覚を、この目の前の勇者からも感じている。

 20分が経過し、さすがに周りの魔族たちも異常に気付き始めていた。

 全力で打ち込み続け、全身に汗を掻き、呼吸が乱れている我らがファウスト将軍に対し、ただ一方的に攻められ続けていた勇者は、息1つ見出さず、余裕の表情で相対している。

 そして、遂にファウストの動きが鈍り、攻撃の手が止まってしまった。


「ん?もう終わりか?」

「はあ、はあ、はあ、ば、化物め・・・はあ、はあ」

「はは、褒め言葉として受け取っておくぜ?」

「はあ、はあ・・・ふう・・・やれ」

「ああ、なかなか強かったぜ、ファウスト将軍」

「ふん、嫌味か?」


 その言葉を最後に、魔族の将軍ファウストの首が宙を舞った。

 俺が剣を横薙ぎに一閃させ、首を刎ねたからだ。

 首を斬られたファウストの表情は、苦悶の表情ではなく、満足した表情だった。


「う、うおおおおおっ!ファウスト将軍の仇だああっ!」


 1人の魔族が突っ込んで来たので、返り討ちにしてやる。


「クソッ、全員続けーっ!将軍の仇を討つのだあっ!」

「「「「おおおおおおおおっ!」」」」


 そして、俺達の戦いを見守っていた魔族が、決死の覚悟を決めて襲い掛かって来た。

 そんな覚悟を決めた戦士に情けは失礼だろう。

 俺は、向かって来た魔族を全て切り伏せた。


「チクチョウ!何なんだよお前は!?何で俺達の邪魔をするんだよ!?何で人間にお前みたいな化物がいるんだよ!?」


 最後の1人となった魔族が、俺に向かって喚き散らす。


「俺の仲間を、将軍を殺しやがって!死んでもお前のことを恨み続けてやるからな!」

「お前は何を言っているんだ?」

「あ!?」

「ここがどこだか分かるか?ここはグレオゴル王国っつってな、元々は人間の国なんだよ。お前らはこの国に何をした?これからお前らはこのレシタクルス大陸に何をする?いいか?お前らはただの侵略者なんだよ。お前らはこの国に生きていた人間の仇なんだよ。先に攻めて来た分際で、好き勝手ほざくんじゃねえ!」


 そう言って、剣を一閃させる。

 もう、動くものがいなくなると、俺は王城の中へと進んだ。

誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。

もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。

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