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第48話 勇者になった

誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。

もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。

 勇者選定の儀の為に招集された俺は、グレオゴル王国、いや、もう滅ぼされているから旧グレオゴル王国と言うべきか、その隣国、ヒノマイカ王国の首都、カイシスに来ていた。

 このカイシスの街中にある闘技場で勇者選定の儀を執り行う為、態々来てやったわけだ。

 詳しい内容は聞かされていないが、1番強い奴が勇者として認定され、魔王討伐に向かうらしい。

 闘技場だから、恐らく他の勇者候補とやり合うんだろうな。

 そんなことしないで、とっとと魔王と闘いに行きたかったんだが、ノルン伯爵とアステリア王国の国王が、態々頭を下げて勇者選定の儀に参加してくれと頼んで来たので、渋々行くことにした。

 この2人には、この1年でかなり世話になったからな。

 顔を立ててやることにした。

 何で俺が国王と面識があったのかと言うと、半年前に遡ることになる。


 イサエラの街を拠点に魔物を狩りまくっていたら、俺の噂が王都まで届き、国王アグステウス=ヴィルヘルム=アステリアの耳に入ったそうだ。

 そして俺に興味を持ったらしく、イサエラの街まで来やがった。

 この当時の国王は23歳で、金髪碧眼の美青年だったが、若くして王になったため苦労が絶えず、顔に疲れが出てくたびれた印象があった。

 そして、その苦労から逃げるために、見識を広める為と称してはよく遠出をし、政務をサボっていると噂されていた。

 実際は本当に見識を広め、民の声を直に聞き、政治に反映させていたんだけどな。

 それはともかく、初めて会った時は護衛も付けず1人でいたから、まさか国王だとは思わなかったよ。

 服装は一般的な冒険者風で、所作は確かに貴族みたいな上品さがあったが、疲れが顔に出てくたびれた印象だったからな。 

 それに、アイツは自分をテウスと名乗り、向こうの方からフレンドリーに話しかけて来たんだぜ?

 魔物討伐に一緒に連れて行ってくれ、とか、一緒に飲みに行こう、とかよ。

 まあ、剣術がそれなりに使えて、B級冒険者くらいの実力はあったからな。

 何度か一緒に依頼をこなしたら、テウスはもう立派な仲間だよな。

 そんな奴が国王だなんて、顔を知らない俺が分かる訳がねえだろ?

 コイツが来てから2週間した頃には、俺はテウスと肩を組んで酒を飲む間柄になっていた。

 そして、領主の仕事でイサエラをしばらく離れていたノルン伯爵が帰って来て、開口一番に


「へ、陛下!?なぜこのような所に!?」


 なんて言うから、コイツがアステリア王国国王、アグステウス=ヴィルヘルム=アステリアってことが発覚した。

 それを聞いた全員が頭を下げる中、俺だけがそのまま立ち続けた。

 いやだって俺は龍王だしさ?

 人間の国王に頭を下げる理由なんて無いだろ?

 そんな俺の理屈を知りもしないノルン伯爵が、


「ドラグル殿!こちらは国王陛下です!頭を下げてください!」


 と懇願してきたが無視した。

 すると、それを聞いていた周りにいたやつらが慌てだし、伯爵と同じく頭を下げるように言って来た。


「なぜコイツに頭を下げなきゃならねえんだよ?国王?知ったことか!コイツはテウスだ!俺のダチで仲間だ!なんでダチがいるってだけで、頭を下げなくちゃなんねえんだよ!?」


 と言ったら、全員絶句してしまった。

 別に俺の言葉が響いたわけではない。

 俺が不敬罪で処刑されてもおかしくない発言をしたことにより、言葉を失っただけだ。

 全員が絶句している中、唯1人だけが俺に話しかけて来た。


「お前は私が、いや余が誰か分かったうえで友と呼んでくれるのか?仲間と認めてくれるのか?」

「あ?当たり前だろ?それとも何か?俺みたいな冒険者とは、ダチになんかなれねえってのか?」

「いや、そんなことは無い!ドラグルよ。どうか私の友となってくれ!」

「は?何言ってんだ?俺はとっくにお前のことはダチだって言ってんだろ?今更改めて言うことじゃねえだろ!」

「そうか、そうだったな!うん、これからも友としてよろしくお願いする!」

「おう、こちらこそよろしくな!」


 というやり取りを経て、俺とテウス改めアグステウスは、それからも変わらぬ付き合いをすることになった。

 今まで王族であったため周りからは距離を取られ、友と呼べる者がいなかったアグステウスにとって、俺は初めての友だった。

 それからすぐにアグステウスは王都に帰ってしまったが、最低でも月に1回はイサエラの街を訪れ、俺に会いに来るようになった。

 アイツには色々な便宜を図ってもらったり、珍しい土産を貰ったりとした。

 もちろん俺も、狩った魔物の素材を渡したり、珍しいのを見つけたら譲ってやったりしていた。

 ああ、一度ダストレア大樹海にいる眷属のドラゴン達に、ミノタウロスゼファロスを狩らせ、持ってこさせたことがあったな。

 その肉をアグステウスには珍しい色をしたミノタウロスの肉、とだけ言って渡してやった。

 その結果、次からは毎回毎回、ミノタウロスの肉が無いか尋ねてくるようになっちまった。

 あの肉はマジでウマイからな。

 もしまた手に入ったら食わせてやろう。

 


 おっと、だいぶ脱線しちまったな。

 街を歩き、俺はカイシスの闘技場に辿り着いた。

 ここで勇者選定の儀を執り行うらしい。

 受付で、アステリア国国王アグステウス=ヴィルヘルム=アステリアの紹介状を見せ、中に通される。

 そうそう、アグステウスからは、無事に魔王との戦いから帰ってきたら、例え勇者に選ばれていなくても爵位をやるって言われたな。

 別に要らねえけど。

 ノルン伯爵からは、娘の婿に来ないか?と誘われているけど、俺、ドラゴンだからなあ。

 多分、人間との間に子供は出来ないぞ?

 まあ、1人娘のレイラとは、それなりに仲良くしているから、吝かではないが・・・

 やっぱ、世継ぎが生まれないとマズイよな?

 今度セレスに相談してみるか?

 また脱線しそうになっちなったな。

 俺は係りの奴に個室に通され、時間になるまで待機するように言われたが、待機している途中、2回暗殺者が襲ってきた。

 1回目は無力化して警備に突き出してやった。

 一応殺してないぞ?まあ、しばらくは寝たきりの生活になるとは思うがな。

 暗殺者を引き取った警備の奴は、小さく舌打ちしてきやがった。

 ふ~んなるほど?つまりコレは、グレオゴル王国のお偉いさんが絡んでいるってことか?いや、もしかしたら国王も関わっているかもな?

 よし、それならそれ相当の対応をしてやることにするか。

 そして懲りずに2回目の暗殺者がやって来た。

 さっきよりも腕利きのようだな。

 だが関係ねえ。

 俺は火魔法を使い、一瞬で塵1つ残さず焼き尽くした。

 人間が一瞬で焼き尽くされる程の火力だったが、水と風の魔法を使った防御結界で火魔法の効果範囲外に被害が出ないようにしたため、個室の中には一切変化した場所はない。

 床に焦げ跡とかないのかって?

 はっ、そんなヘマしねーよ。

 暫くして、先ほど舌打ちした警備員が来た。

 暗殺者からも俺からも、何も連絡が来ないから不審に思い、確認しに来たんだろう。

 そいつは部屋の中を見て、何も異常が無いと分かると、怪訝な顔をした。

 暗殺者が向かったはずなのに、暗殺者の姿も無ければ、争った跡も無い。

 まさか俺に暗殺者が来なかったか聞く訳にもいかず、そいつは異常が無いかの確認をしただけで帰って行った。

 それ以降、暗殺者は来なくなった。

 もし次の暗殺者が送られて来ていたら、ちょ~っとここの責任者とお話しするところだったけどな。

 主に肉体言語で。



 2時間以上待たされて、やっと時間になったらしく、係りに呼ばれて闘技場に進む。

 その闘技場は広く、中央には100m×100mほどのリングが中央に設置されている。

 周りの観客席には大勢の人が詰めかけ、この勇者選定の儀を見に来ていた。

 そのリングの上に、俺を含めた勇者候補16人が並び、司会者みたいな奴に1人1人紹介されていく。

 マイクみたいな魔導具か、風魔法で拡声しているのか、その声はよく響いていた。

 そして紹介が終わると、この勇者選定の儀の方法がやっと発表された。


「勇者に求めらるのは魔王を倒すことができるだけの強さ!ただこの1点のみです!ここにいる勇者候補の16人には、これからトーナメント形式で闘って頂きます!そして、優勝した1人が勇者の称号を得るのです!では勇者候補の皆様!戦いの前に順にパフォーマンスをして、自分の強さをアピールしてください!」


 司会者が勇者選定の儀の説明をしてくれた。

 なあ、別にこれ、勇者選定の儀なんて大層な名前付けなくてもよくね?

 つまりこれって、各国が厳選した世界でもトップクラスの実力者同士によるバトルトーナメントだろ?

 ただの見世物になっている気しかしねえんだけどよ?

 きっとこれ、裏で賭博の対象になってるぜ?

 とか思っていたら、勇者候補のアピールタイムになった。

 もうこれ、勇者候補なんて大層な呼び方しないで、ただの出場選手でよくね?


 う~ん・・・他の選手のアピールを見ても、よく分からん。

 剣舞を披露したり、魔法を撃ったり、分身して見せたり、わざわざ手の内を晒しまくってるのは良いんだけど、全員そんなに強そうに見えない。

 そして俺の番になり、とりあえず魔法を使うことにした。

 火・風・光の魔法を同時に発動させ、キラキラ光った炎の渦を作り出した。

 もちろん見た目が派手なだけでなく、これを魔物にでも放てば、軽く超級くらいの魔物なら一瞬で蒸発する程度の威力はあるぞ。

 今は威力を抑えて、周りに被害が出ないようにしているから、規模は当然小さめだけどな。

 その魔法を見せた途端、会場からざわめきが起きた。


「何だ、あの魔法は!?見たことが無いぞ!?」

「はっ!あんなの見た目だけのお飾り魔法じゃねえか!」

「いや、彼はもしや、3属性を操る魔法士なのか?なんて見事な魔法だ!」


 などなど、驚いているのが7割くらいと、まあまあ好感触のようだ。

 ここで高評価をとっても何の意味もないんだけどな。

 そして全員のパフォーマンスが終わり、トーナメントが開始された。

 まあ、どいつもこいつも、人間にしては強い部類に入っていたけど、俺の敵じゃなかったな。

 他の連中はなかなかの激戦を繰り広げていたが、俺は全て1発KOで終わらせていった。

 全4試合で、俺が使った時間は20秒。

 全て5秒程度で終わらせてやった。

 優勝が決まっても、会場はし~んと静まり返っていた。

 やがて、まばらに拍手が起き、少しづつ広がっていき、やがて闘技場全体が拍手に包まれた。

 ふ~やれやれ、これで魔王デリオスと闘いに行ける、と思ったら、


「皆様!、ただいまドラグル殿に不正があるとの疑いが掛かりました!しばらくお待ちください」


 と、ふざけたことを司会者が抜かして来た。

 何でも、俺と2回戦で闘ったヤツが、俺との勝負は八百長だったと言い張っているらしい。

 そのため、現在上層部で審議をすることになった。

 あ~これアレだ、主催者側の要望通りにならなかったから、俺を無理矢理追放して、目的のヤツを勇者にしたいだけの、くだらないヤツだ。

 ちょっとイラッと来たな。

 よし、


「あ~、ちょっといいか?」

「なんでしょうかドラグル殿?」

「なんかそこの雑魚がテキトー抜かしているらしいじゃねえか?で、審議とか面倒なことしねえでよ、俺から提案があるんだが、いいか?」

「提案ですか?」

「ああ。俺の実力を疑ってるんなら、俺1人対他の参加者15人で闘ってやるけど、どうよ?」

「は?」

「俺の八百長を疑ってんだろ?なら、俺がコイツ等よりも圧倒的に強いってことを証明してやっからよ。どうだ?」

「どうだ、と言われましても・・・」

「いや、それで良かろう」


 お?何か偉そうなおっさんが出て来たな?

 誰だコイツ?


「私はこのヒノマイカ王国の国王、メガロス=オルカ=ヒノマイカだ。ドラグルと言ったか?確かにそのやり方であれば、誰もお前の力を疑うまい。他の者はどうだ?もしここでドラグルを倒せば、お前たちにももう一度チャンスがあるぞ?」


 メガロス王の言葉に、全勇者候補がうなずいた。


「よろしい。だが、もう少し私に時間をくれないか?戦いを始める前に、お前たちのステータスを公表したいのだが、どうだ?その方が、今のようなくだらない物言いもなくなるであろう?」

「ああ、俺はいいぜ?」


 俺の素のステータスはとんでもないことになっているが、今はセレスに操作してもらっているから、普通に見せられる数値になっている。

 何せ、神龍のステータスだと5億あるし、人化しても1/10の5000万はあるからな。

 こんな事態になった時、さすがにこれはバレないように、セレスに協力してもらってある。

 俺が了承したことで、他の奴らも了承し、鑑定石が用意された。

 で、俺が1番手で鑑定することになった。

 その時のステータスが


名前:ドラグル

年齢:22歳

種族:人間

職業:S級冒険者

レベル:253

HP:149,582/149,582

MP:110,592/110,592

STR:125,843

ⅤIT:118,345

INT:121,484

MND:115,238

AGL:120,346

DEX:112,831


 だった。

 会場が静寂に包まれる。

 俺以外のすべの人が、勇者候補や国王も含め、絶句している。


「ふ、不正だ!こんなのステータスを不正に操作したに決まっている!」


 と、俺が八百長したとほざいた、2回戦の対戦相手がまたしてもほざいてきた。

 そして、徐々に周りからも不正を疑う声が上がった。

 あ~メンドクセェ・・・


「やかましい!」


 ドンッ!ゴガアアァァン!

 イラついた俺が地面を踏み抜き、リングを破壊する。

 石で造られた、頑丈なリングを。


「さっきから大人しくてりゃあ、ゴチャゴチャ抜かしやがって!そういうのが面倒だったから、全員まとめて相手してやるって言ってんだよ!文句がある奴は口を動かしてねえで、かかって来いよ!あ!?」


 吠えた。

 もうフラストレーションが溜まりまくって、爆発した。


「だいたい、何で俺が態々こんな雑魚しか集まっていねー所に来なきゃなんねえんだよ!?おれは早く魔王をブチのめしたいんだよ!これ以上俺の邪魔をする奴は、問答無用でぶっ潰す!分かったか!?」

「黙れイカサマ野郎!テメーはぎゃっ!?」


 真っ先に騒ぎ始めた2回戦の相手を、宣言通りにぶっ潰した。

 石のリングにめり込ませて。


「言ったよな?ぶっ潰すってよ?」


 その言葉に、全員が黙る。

 何か文句を言ったら、いや、しゃべっただけでも自分が同じ目に合うであろうことは、誰でも想像できたのだろう。


「よし、文句のあるヤツはいねえな?それじゃあ、まとめてかかって来い。時間がもったいねえから、もう手加減しねえぞ?死ぬ気でかかって来い」


 俺の言葉に、残りの勇者候補14人は誰も動けない。

 もう手加減しない、ということは、闘えばあのデタラメなステータスで攻撃されてしまう。

 俺が一瞬にして、さっきの雑魚をめり込ませたのを見ていたから、ステータスが本物だと気付いているらしい。

 何せ、15mは離れていたはずなのに、いつ移動したのかすら分からないスピードでの攻撃を見せつけられたのだから。

 そして、そんな事を簡単に仕出かした男が、今度は自分達と闘おうとしている。

 それは、残りの勇者候補の14人が、確実な敗北を、もしくは死を予見させるに充分だった。。


「何だ、来ねえのか?なら、こっちから行く・・・」

「「「「「降参します!!」」」」」


 全14名の勇者候補が、その場で土下座をした。


「あ?」


 勇者ドラグルが誕生した瞬間だった。



 後日、ヒノマイカ王国国王メガロスは語る。

「ドラグル殿以上に勇者にふさわしい者は、あの場にはいなかった。これは当然の結果である。決して、ビビったからではない!本当だ!」


 と。

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