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第47話 魔王討伐依頼

 冒険者組合(ギルド)に戻り、報告を終えた俺は、ギルドマスターに呼ばれて応接室にいた。


「なあドラグルよ。頼みたいことがあるんだが、いいか?」

「何だ?オーガのことか?」

「すでに知っていたか?そうだ、オーガの群れがこの街に迫っているかもしれないんだ。だが、この街の戦力ではオーガジェネラルが率いるオーガの群れに、勝つことはできないだろう。だから、すまないがお前の力を貸しては貰えないだろうか?」


 ギルドマスターが頭を下げて頼んで来た。

 と、そのタイミングで扉がノックされた。

 何でも領主のノルン伯爵が来たそうだ。

 ギルドマスターは俺に断りを入れ、部屋を出て行った、かと思えば、すぐに戻って来た。

 ノルン伯爵を連れて。


「おお、キミがS級冒険者のドラグル殿か!はじめまして。私はここの領主、ノルン=クシャナ=ノーマンだ!」


 そう言ってノルン伯爵は、右手を差し出し、握手を求めて来た。

 貴族が平民に握手を求めることなんか、基本的にはあり得ない。

 俺の中でノルン伯爵の株が、グングン上昇していった。


「初めまして、ノルン伯爵。俺はドラグル。冒険者だ」


 俺はノルン伯爵の握手に応じ、挨拶を返した。


「早速ですまないが、ドラグル殿。もうギルドマスターから聞いていると思うが、この街にオーガの群れが迫っているようだ。しかもオーガジェネラルまでいるらしい。是非S級冒険者の君に、私達と共に戦ってもらいたいのだ!どうか、頼む!」


 そう言ってノルン伯爵は頭を下げた。

 ただの平民という設定の俺に対して。

 やっぱりコイツは気に入った!


「ああ、任せな」

「本当か!?だが、頼んでおいて何だが、相手はオーガジェネラルだぞ?命の危険すらあるぞ?」

「その程度なら、俺一人でも大丈夫だ。オーガごとき、物の数じゃねえよ」

「いや待てドラグル。いくらお前でも、1人では無謀だろう?」

「いや?オーガキングが相手でも余裕だぞ?」

「いやいや、そんな馬鹿な・・・」

「ん?外が騒がしくないか?」


 急に外が慌ただしくなったと思ったら、応接室の扉が勢いよく開かれた。


「お話し中に失礼します!大変です!オーガの群れが現れました!」

「何!?」

「もう来てしまったのか!?」


 どうやらオーガ御一行様が到着したようだ。


「オーガはどっちから来た!?」

「西からです!目視で確認できた数は30!おそらくオーガジェネラルが3体はいます!予想では、この街に到着するまで30分です!」

「くっ、直ちに民を東門から避難させ、騎士団を西門に集結させよ!」

「伯爵!すぐに冒険者も西門に向かわせます!」

「すまない!頼む!」

「はっ!よしドラグル!悪いがお前も来てくれ!オーガを迎え撃つぞ!」

「ああ分かった。だが、そこまで慌てなくても大丈夫だぜ?」

「何を言っている!?相手はオーガの群れだぞ!?」

「だから、俺1人で充分だって。いいからアンタ達は安心して見てなって。あ~でも確かに不安にもなるか?なら、西側の防御を固めていてくれ。攻撃は俺がやるからよ」

「はあっ!?」


 問答しているのが面倒だから、2人を置いて俺は街の西門に向けて移動した。

 基本的に肉弾戦しかできないオーガだから、当然遠距離攻撃なんざできない。

 だから急ぐ必要もないから、俺は歩いて移動したため、西門に到着したのは20分後だった。

 そして外を見ると、そこには報告通り、オーガジェネラル3体と配下のハイオーガとオーガの群れが見えた。

 すでにここ西門には、報告を受けた騎士と冒険者達が集まっているが、全員が死を覚悟した顔をしていた。

 しばらく待ってみたが、誰もここから打って出る気はなさそうだったから、俺が門から外に出ようと歩き出す。

 すると、俺に気付いたここの責任者らしい騎士に止められた。


「どこに行く気だ!?」

「ん?あのオーガを殲滅しにだが?」

「1人でか!?」

「ああ、そうだ」

「バカを言うな!ここは我々全員が協力して当たらなければ、この街が滅ばされてしまうのだぞ!?分かっているのか!?」


 あ~メンドクセー。

 無視して先に進もうとした時、ノルン伯爵とギルドマスターも到着した。

 馬での到着だったが、歩いて来た俺よりも遅かったのは、それぞれが各所に指示を出していたのだろう。


「待て、ドラグル殿!ここは全員と協力してくれ!」

「そうだぞ!いくらお前がS級冒険者とは言え、オーガジェネラル3体を相手に1人で突っ込んでいっては危険だ!考え直せ!」


 うるさいのが増えた。

 仕方ない。


「ちっ、分かったよ」

「おお、分かってくれたか!それでは・・・」

「じゃあ、こっから攻撃すっからよ」

「は?」


 俺は軽く右手を上げ、火魔法を発動させる。

 俺の周りに、直径50cm程度の大きさの炎の塊が10個生まれ、さらにそこに魔力を流し込み、大きさはそのままに炎を圧縮させる。

 充分圧縮されたのを確認し


「そらよ、『爆裂火炎弾(バーストフレア)』」


 上げた右上を振り下ろし、『爆裂火炎弾(バーストフレア)』をオーガの群れに向けて放つ。

 ここからオーガの所まで、距離にしてまだ1㎞近くあったが、余裕で届いた。

 そして『爆裂火炎弾(バーストフレア)』が着弾し、大規模な爆発が起きた。

 『爆裂火炎弾(バーストフレア)』とは、高密度に圧縮した炎が着弾と同時に弾け、激しい爆発を生む術だ。

 この魔法を高密度に圧縮することは、超上級技法とされている。

 つまり、普通の人間には使えない高等魔法だったりする。

 西門に集まっていた騎士、冒険者達は、その光景を見て唖然としていた。

 1㎞も飛ぶ魔法はもとより、それだけ離れているにも関わらず、こちらにまで届く爆風と熱に、言葉を失っていた。

 そして、爆発が収まったその場に立っていたのは、オーガジェネラルが1体だけだった。

 こいつは、『爆裂火炎弾(バーストフレア)』の威力に気付いた瞬間、他のオーガジェネラルを盾にして、何とか生き延びた賢いヤツだった。

 ただ、コイツは生き延びただけで、全身の皮膚は焼けただれ、満身創痍だった。

 俺はと言うと、オーガジェネラルが立っていたのを確認すると同時に走り出し、あっという間に辿り着いていた。

 そして、走っている途中で取り出した大剣を下段から切り上げ、オーガジェネラルを1撃で真っ二つにした。


「はあ~やれやれ。たいした運動にもならねえな、この程度じゃ。ん?どした?」


 オーガを殲滅し、イサエラの街に戻ると、全員が口を開けて固まっていた。

 後ろに何かいるのかと思って振り返っても、何もいない。

 何だ?


「おい、どーした?」

「な、な、何者なんだ?キミは?」


 一番最初に復活したノルン伯爵が、声を震わせながら質問してきた。


「あ?だから、俺はドラグル。ただのS級の冒険者だって言っただろ?」

「いや、しかし、あれだけの数のオーガを瞬殺してしまうとは・・・」

「そんなに不思議か?ダストレア大樹海だと、あの程度のはそこいら中にいるぜ?」

「何!?ドラグル殿は、かの樹海に行ったことがあるのか?」

「ああ、あるぞ?」

「なるほど。あの樹海から生きて戻れるだけの実力者なら、この結果も納得できるな・・・」

「あ~腹減ったな。お、そうだ!さっき大量にオークを狩って肉を手に入れたから、みんなで食わねえか?もちろん、金なんざいらねえよ!」

「いいのか?」

「ああ、皆で食おうぜ!」


 そうして、イサエラの街の危機は、とてもあっさり過ぎ去った。

 その夜は、俺からは大量のオークの肉が振る舞われ、ノルン伯爵からは大量の酒が振る舞われたため、イサエラの街をあげての祝勝パーティーとなった。

 その宴でノルン伯爵にも気に入られ、2人で肩を組んで酒を飲んだ。

 途中から伯爵の家族も合流し、酔っぱらったノルン伯爵に娘のレイラ=ノーマンを紹介され、2人きりにされてしまったりもした。

 この日は酒が入っていたためか、全員が陽気に盛り上がり、俺も聞かれるままに過去の冒険の話しをしていった。

 俺の長い人生、いや龍生で、ここまで人と関わり、ここまで楽しく語り合ったことは無く、俺は更にこの街が気に入っていた。

 その後、俺はこのイサエラの街を拠点にし、冒険者として依頼をこなしながら生活することになった。



 更に1年が過ぎた頃、魔族の侵攻に変化が生じた。

 今までは少しずつしか上陸してこなかった魔族が、急に大勢上陸するようになり、バルケスラ大陸に最も近いレシタクルス大陸最西部の国、グレオゴル王国が壊滅した。

 伝え聞いた話では、遂に魔王デリオスが前線に赴き、侵略を開始したらしく、その圧倒的な力の前に成す術もなくグレオゴル王国は滅びたそうだ。

 各所に設置されていた砦も魔王の足止めにもならず、簡単に陥落してしまい、グレオゴル王国の全戦力を集結させて臨んだ王都防衛戦も、半日としない内に王都陥落という結果に終わってしまったそうだ。

 魔王率いる魔族は、滅ぼしたグレオゴル王国を拠点とし、バルケスラ大陸から援軍が到着するのを待っているため、今は動いていないらしい。

 この隙に各国は会議をし、魔王に対抗するために勇者を立てることを決めた。

 各国から勇者と呼ぶに相応しき手練れを選出し、これを勇者候補とし、グレオゴル王国の隣の国、ヒノマイカ王国で勇者選定の儀を執り行うことになった。

 そして、最強の冒険者と呼ばれている俺がアステリア王国代表の勇者候補となり、ヒノマイカ王国に向かうことになった。

 当然、目的は勇者になることではなく、魔王の討伐だ。

 ホントはメンドーだったんだが、セレスに経過報告をしに会いに行ったら、魔王討伐を依頼されちまった。

 今までは海を担当していた神獣達が、魔族の渡海を阻んでいたからこそ被害が少なかったのだが、魔王が現れてからは戦況が一変し、神獣が全て蹴散らされてしまったそうだ。

 海の神獣最強のリヴァイアサンのステータスは5000万だったが、それでも魔王には敵わず、瀕死の重傷を負い、今は治療に専念しているそうだ。

 おい、5000万って、人型の俺と同じじゃねえか。

 それでも魔王に勝てなかったってことは、このままじゃマズくね?

 龍王気を使ってステータスを上げれば、何とかなるか?

 他の神獣、クジラ型の神獣ケートス、ウミガメ型の神獣アスピドケロン、海馬の神獣ヒッポカントスの3体は殺されてしまったそうだ。

 おかげで海を守れる神獣の数が極端に減り、魔族は神獣による障害を気にしないで渡海出来てしまっているのが現状だ。

 そして、以前のベヘモスの件がある為、セレスは陸の神獣を海に派遣したくないそうだ。

 そこで、丁度レシタクルス大陸を旅している俺に白羽の矢がささり、魔王を討伐することになった。

 アイツ、始めから俺に魔王を討伐させるつもりだったな!

 樹海を出る時、


「ダストレア大樹海の外は今、結構大変なことになっているから、悪いんだけど助けてあげてよ」


 とか言ってたしな。

 まあ、神獣が負けるほどの力を持った魔王が相手なら、俺以外に勝てる奴なんていないだろうから、やってやるけどな。

 実はちょっと楽しみだったりする。

 今まで戦って、苦戦したことがないからな。

 魔王デリオスだっけ?期待してるぜ?



「あの~ミコトさん?」

「何だ?」

「さっきから話に出てくるノーマン伯爵って・・・」

「そいつに関する質問はまだ受け付けねえぞ?どうしても質問したけりゃ、最後までしっかり聞きやがれ」

「分かりました、我慢します。それじゃあ、樹海を出た時に会ったという、ナイザット辺境伯についての質問はどうでしょう?」

「それなら構わねえが、殆ど知れねえぞ?何せ、俺がアステリアに戻って来た時にはすでに壊滅していて、誰も生き残っていなかったしな。あ、そういやテオスタークのクソ野郎はしぶとく生き残っていたな」

「そのテオスタークがどうなったか知っていますか?」

「あ~っと、確か領地も財産も民も失ったから爵位も没収されて、どこかで野垂れ死んだんじゃなかったか?何だレオ?あのクズのことが気になるのか?」

「気になると言いますか、その話を聞いている限りだと、ナイザット辺境伯の領地って、今は僕の家が管理しているスティード伯爵領じゃないかな~と」

「はあっ?もしかしてお前って、あのクズ野郎の子孫なのか?」

「もしかしたら、とも思いましたが、家名も違いますし、何より野垂れ死んだんですよね?なら大丈夫ですよ」

「なら良いけどよ。でも、本当に大丈夫か?お前の親、あのクズみたいな奴じゃねえよな?」

「ああ、それなら大丈夫ですよ。僕の親は領民思いの領主ですし、闘いでは常に先頭に立って敵を蹴散らす騎士ですから。ちなみに引退した祖父は王国最強の騎士とまで呼ばれ、父は王国最優の騎士と呼ばれていますが、その実態はただの脳筋です」

「なら大丈夫そうだな。ん?脳筋が領地を経営出来るのか?」

「ああ、もちろん領主としての仕事もしっかりこなしていますよ。決してバカではないのですが、ある一定のラインを超えると、途端に力技で解決しようとする癖はありますけどね。それに、2人の母がさらに優秀なので、特に問題ないですよ」

「ホントに大丈夫か、それ?てか2人の母って何だよ?」

「僕の父、グレン=シオン=スティードには2人の妻がいて、第1夫人がジェシカ=スティードで、第2夫人が僕の母であるクリスティーナ=スティードです。貴族では世継ぎを残すために、特に上位貴族では一夫多妻はよくあることですよ?」

「そうなのか?そう言えば俺ってレオの家族の話し、聞いたことがないよな?この話が終わったら教えてくれよ」

「ええ、いいですよ」

「よし、じゃあ続きを話すか!」

誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。

もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。

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