第43話 封印の魔導具
「まず、あの封印の間を囲うように魔導具を配置します。核となる魔方陣の規模によっては、封印の間全体に配置することになるかもしれません。それと、僕とミコトさんはステータスを抑える魔導具を装備します。例えばこの、STRが1/10,000になる魔導具の剣です。この時抑えられている、9,999/10,000のステータスを魔導具を通して封印の間に送り、そこに僕らがいなくても封印の維持ができる、と言う代物です。僕は日常生活を送るうえで、これだけのステータスは必要ないので、常に送り続けることが可能です。ミコトさんも、5億越えのステータスなんて、常に必要無いですよね?」
「まあ必要ないな。今まで戦ってきた中で、1億越えのステータスだったのは魔王デリオスとレオくらいだしな」
「それでは大丈夫ですね?」
「ああ、問題ない、と言いたいが、この人の姿の時だとな、俺のステータスって1/10になっちまうんだよ。この状態でさらに抑えられちまうと、いざと言う時に役に立てなくなるぜ?最悪負けちまうかも知れねえしな」
「ああ、それなら大丈夫です。魔導具を外せばすぐに元のステータスに戻りますし、何なら、人の姿の時に抑えられている9/10のステータスを封印に使えるように調整も出来そうです」
「そうか?なら大丈夫だな」
「問題は、この魔導具を壊されると、また作り直さなければならないことです。何者かが侵入した場合に備え、安全の為に封印の間自体を隔離しても大丈夫ですか?」
「隔離って、どうやるんだい?」
「僕の『空間支配』を使って、誰も侵入出来ないように空間ごと切り離してみようと思います」
「そんなこと出来るの?」
「まずはやってみないと何とも言えませんが、恐らく大丈夫でしょう」
「でもさ、それだと誰も近付けなくなるよね?もし封印に異常が出た時はどうするの?誰も侵入できなかったら、ヴァッシュがまた何かやらかすかもしれないよ?」
「そうですねえ。それでは、女神様が信頼する者だけは入れるようにしましょうか?女神の使徒と神獣はどうですかね?」
「あ、それいいね!それでお願いするよ」
「分かりました。まあ、だいたいこんな感じですね。問題は、その魔導具を作るのに、何ヵ月もかかってしまう、ってことぐらいですね」
「1年もかからないんだろ?なら問題なしだろ?」
「うん、そうだね。正直に私は、もっと時間がかかると思っていたから、むしろ良い方に予想が外れてありがたいよ」
「では、それでやってみますね」
魔導具作りと空間隔離の許可が下りたので、すぐに取り掛かるとしましょうか!
「じゃあ、その魔導具が完成した暁には、依頼達成という事でまた1つお願いを聞いてあげるよ」
「え?良いんですか?」
「もちろん!だって、キミが今やっている事って、紛れもなく世界平和に貢献することだよ?それほどの偉業なら、神として報酬を与えるべきだからね!」
「ありがとうござます!」
最初の依頼を、女神様のミスとは言え、言いくるめる形で成功報酬を貰ってしまっているのに、今回も報酬を貰えるそうだ。
おそらく本来なら、ここまで終わらせて依頼完了だったはずなのにね。
何て太っ腹な依頼者なんだろう!
本人の前では決して言わないけどね!
女性に太っ腹なんて言ったら、どんな恐ろしいことになることやら・・・
「じゃあ、今度は俺の願いを叶えてもらおうか?」
「そうだったね。ミコトは何が望みだい?」
ミコトさんもお願いをしに来ていたのか?
まあ確かに、100年間ずっと封印の為に、あの場所に留まっていたみたいだしね。
寝てたって言っていたけど、そこは無視しよう。
「この場所を離れられるってことだからな。また樹海の外に出たいから、今の世界情勢を教えてくれよ。あ、やっぱ今じゃなくていいや。レオの魔導具が完成して、俺がここから離れても大丈夫になったら、その時に教えてくれよ」
「うん、いいよ」
え?そんなお願いなの?
きっと顔に出ていたのだろうね。
ミコトさんが僕の顔に気付いのか、補足説明をしてくれる。
「一通りの望みは叶えてもらっているからな。この程度しか、今は望むことが無いんだよ。それに、100年寝ていたから、世界の情勢なんか本当に分かんねえしな」
「はあ・・・」
まあ、ミコトさん本人がそれで良い、って言っているんだから、僕がごちゃごちゃ言う事ではないからね。
「ねえ、キミ達を見ていてずっと気になっていたことがあるんだけどさ、聞いても良いかい?」
「どうぞ?」
「なんだ?」
「どうしてキミ達は、そんなに仲が良いの?初めて会った時から見ているけどさ、すぐに打ち解けていなかった?」
「そう言われてみれば、そうだな?」
「ん~何ででしょう?」
「なあ?」
言われてみれば確かに、ミコトさんが僕の小屋に来てからすぐに食事を一緒にして、その後は戦闘して、また食事して。
その間に、何か仲良くなりそうな出来事も特に無かったよね?
何でだろう?
「気付いたらこんな感じでしたよね?」
「そうだよな?一緒にステーキを食ったからか?」
「そもそも、何で僕は初対面のミコトさんを、いきなり食事に誘ったんでしょうね?」
「俺も、何で初対面のレオに食事に誘われて、一緒に食べてたんだろうな?」
「不思議ですねえ?」
「不思議だなあ?」
2人してその原因が分からない。
ホント、何でだろう?
僕はミコトさんを見た瞬間、この人は安心できる、とでも思ったのかな?
「取りあえずの結論だけどよ、俺とお前のフィーリングが合った、ってことでどうだ?」
「どうだって言われても、それ以外に考えられないですよね?」
「だよなあ?」
「じゃあ、それで行きましょうか」
「おう」
「と言うわけで、僕とミコトさんは、お互いが会った瞬間にフィーリングが合ってしまったので、ここまでの仲になりました」
「え?キミ達の関係ってそれで良いの!?」
「良いも何も、それしかねえんだからしょうがねえだろ?」
「そうですよ。それとも女神様は何か知っているんですか?」
「え?いや知らないけどさ?でもそんなことで、そこまで仲良くなれるの?」
「現になってるじゃねえか。それとも、俺とレオの仲が良いとマズいのか?」
「そんなことはないよ?むしろそっちの方がありがたいけどね」
「なら問題ないですね」
「だな」
「はあ~、もういいや。人間ってそんなもんなんだと思うことにするよ・・・」
「それよりも、僕とミコトさんが初めて会った時から見ていたんですか?」
「うん、そうだよ?だって、ここにいても暇なんだもん。特にやることもないから、ずっと世界を見ているんだよ」
「え?それって覗きじゃ・・・」
「待てレオ!それ以上言ってやるな!」
「え?」
「ちょっと来い!」
そう言われて、また僕とミコトさんは女神様から離れ、背を向ける。
「以前俺が全く同じことを言ったらな、ヒステリー起こして大変だったんだ。だから、覗きとか絶対に言うんじゃねえ。いいな?」
「それは迷惑なこと、この上ないですね。分かりました、気を付けます」
「よし。いいか?あいつはここから出られないらしいから、俺たちみたいな女神の使徒が必要なんだよ。そこだけは理解してやれよ?」
「はい」
そして僕達は何食わぬ顔をして戻って来た。
「すみません。お待たせしました」
「キミ達さあ?・・・いや、もういいや。だから、私は世界の情勢にも詳しいのだよ。例えば、レオナルドの国、アステリア王国では、近日中に王位が交代され、第1王子が即位する、ってのも知っているんだよ」
「え?それは本当ですか?」
「うん、ついこの間決まったらしいよ?」
「そうなんだ。じゃあ、僕が帰ったら、エドおじさんが国王になっているんだね」
「他にも・・・」
女神様から、他国の話しをいろいろ教えてもらえた。
ただ残念ながら、どの国も特に用が無いので、どうでも良い知識だったりする。
女神セレス様は今まで1人でいたせいか、軽く3時間は話し続けていた。
そろそろ話しのネタが無くなって来たのか、もしくは思い出せないだけか、どちらにせよ女神様の話が途切れた。
この時を待っていましたよ!
「じゃあ、そろそろ帰るか?」
「そうですね」
「え~、もう帰っちゃうの~?」
「だって、ここには何も無いからなあ。長居する意味も特に無いしな」
「僕も早く魔方陣を完成させたいですからね」
「ぶ~、分かったよ~。でもまた遊びに来てよね」
「ええ、時間が出来たら来ますよ」
「じゃ~な~」
そして僕達は元の世界、封印の間に戻った。
それはもう、逃げるように。
だって、あのままだったら、いつまで拘束されるか分からないからね。
「さて、と。僕はこのまま魔方陣の構築を続けますが、ミコトさんはどうします?」
「そうだな~。取りあえず、ここから離れさせた眷属のドラゴン達を呼び戻して、ついでに狩にでも行ってくるかな?」
「あ、じゃあミノタウロス系の魔物がいたら、持って帰ってきてください。またステーキにしますから」
「お、いいね~。じゃあ、探してみるわ。他にも良さそうなのがいたら狩って来るな」
「ええ、お願いします」
「じゃあ、行ってくる」
「あ、何なら外まで送りましょうか?」
「見送りなんかいらねえよ」
「いえ、そうではなくて。僕は空間転移が出来るので、この迷宮の入り口まで一瞬で行けますよ?」
「お前、ホント何でも出来るな!?でも、いいよ。ちょうど少し運動したかったから、入り口までは走っていくからよ」
「そうですか?分かりました。それでは行ってらっしゃい」
「おう、行ってくるぜ」
そしてミコトさんは、走ってこの封印の間から出て行った。
さてそれじゃあ、僕は魔方陣の構築の続きでもやりますか。
それからずっと魔方陣を構築し、途中で食事をして、不眠でやって、何とか完成した。
で、その魔方陣を描くのにどれくらい時間が掛かるかシミュレートした結果、不眠不休で4ヵ月という結果となり、ちゃんと休憩と睡眠を取りながら、1日8時間作業すると1年かかることが判明した。
そのことをミコトさんと女神セレス様に伝えた所、2人ともゆっくりでも良い、と言ってくれたので、のんびり作ることにしました。
魔方陣の構築が終わって数日後、僕はミコトさんに呼ばれ、一緒に山の中にいた。
「どこへ向かっているんですか?」
「そいつは秘密だ。あ、そうだ。お前に驚いてもらいたいから、支配圏は使うなよ?もちろん危険は無いからな」
「と言うことは、本当にビックリするような物がこの先にあるんですね?」
「まあな。きっとレオなら気に入ってくれると思うんだけどよ?」
「分かりました。ミコトさんがそこまで言うのなら、支配圏を切って、黙って付いて行きますよ」
「おう!期待してくれて良いぜ!」
そう言って山の中を10分ほど移動した。
そう聞くと結構近かったような印象を受けると思うけど、ここにいるのはステータスが異常な2人である。
人間形態の為、AGLが5000万のミコトさんに合わせて移動している。
ここでは魔導具を作っているだけなので、ステータスはそのままにしてあります。
そもそも、AGLを下げてしまうと、魔導具の完成にも影響が出てしまう為、今は常に全開にしてあります。
10分でだいたい50㎞くらい進んだかな?
到着した場所は、他と何にも変わらない山の中だった。
「おし、到着だ」
「ここですか?」
「ああ、正確にはこの先だがな」
「ふ~ん?あ、ここ、空間が歪んでいますね?」
「正解だ。さすがだな」
「『空間支配』のおかげで、空間に関することなら大抵は分かるんですよ」
「相変わらずとんでもねースキルだな?じゃ、中に入るぜ」
「はい」
ミコトさんが先頭で、空間が歪んでいる場所に向かって行く。
空間の歪みを通り過ぎると、一瞬で景色が変わる。
ダストレア大樹海を歩いている時に何度も体験した、突然季節が変わったアレと同じだ。
ただ、今回変わったのは季節ではなかった。
「うっわー!何ですかここ!?でかい屋敷じゃないですか!?」
そう、目の前にあったのは、明らかにドラゴンサイズの家だった。
恐らく、神龍の姿になったミコトさん用の屋敷だろう。
入り口の扉が、ざっと130mくらいある。
屋敷は2階建てのようで、その高さは軽く400mはある。
なんだろう、僕が小人になった気分になってしまうよ。
「はっはっはっ!驚いたか!?ここが俺の住処だ!」
「もしかして自分で作ったんですか?」
「そうだ!と言いたいが、俺はそんなに器用じゃねえんだよ。こいつはセレスの依頼の報酬で貰ったんだ。神龍の姿の俺でも暮らすことが出来る屋敷をくれ、ってな」
「やっぱり神龍用の屋敷なんですね?」
「ああそうだ。だがこれだけじゃねえぜ?中に入るぞ」
まだ何かあるのかな?
入り口に向かって行くミコトさんの後を追い、僕も向かう。
入り口に近付くと、両開きの扉がこちら側に向かって自動で開いた。
だが、中は真っ暗で何も見えない。
たぶん、外から見えないように何かを仕掛けてあるんだろう。
余談だけど、空間の歪みを超えた先がこの家の庭で、その庭から屋敷の扉まで、軽く2㎞はありました。
そしてミコトさんに続き、家の中に入った。
その途端、さっきまで暗かった室内が明るくなった。
いや、魔法で外から見えないようにしていたのが、内部に入ったことで見えるようになったんだろう。
そして、中に入って目に飛び込んできたものを見た瞬間、
「うっわ~!何ですかコレ!?」
「どうだ?驚いたか?」
「驚きました!」
「最高だろう?」
「最高ですね!」
ちょっと興奮してしまいました!
なぜかって、そこで目にしたのは、入り口の両側に整然と並ぶドラゴン達だったからだ。
左右に3体ずつ、計6体の、ミコトさんほどではないが、50m以上の大きさのドラゴンが整列している。
もちろん剥製なんかではなく、生きている本物。
感動ですよ!
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




