第42話 女神様との邂逅 2回目
「封印を自動で維持できる魔導具、ってことですか?」
「ああ。どうだ?」
「どうだ、と言われましても、調べてみないと何とも言えませんね」
「じゃあ、調べてくれねえか?」
早速そんな魔導具が作れないか、検索します。
検索と言っても、『魔方陣学』のスキルに含まれている知識を総動員して、望む結果の出せる魔方陣が無いかを調べるだけ。
無限とも言えるような知識の中から、条件に合致していく組み合わせを探し、更に他の組み合わせと重ね、様々な魔方陣を構築していく。
さらにその魔方陣を混ぜ合わせ、全く異なる効果の魔方陣を生み、さらに組み合わせる。
などと、普通の人がやったら一生かかっても終わらないのでは?と思えるほどの過程を、頭の中で猛スピードで成していく。
今まで作った魔導具の核となる魔方陣の構築は、殆ど一瞬で、一番大変だったステータスダウンの魔導具ですら1分もかからずに完成していたのに、今回の魔方陣は複雑すぎて、なかなか完成しない。
1時間が経過した。
まだまだ完成しない。
ミコトさんは黙って待ってくれている。
「あ~ミコトさん?」
「ん?出来そうか?」
「え~と、恐らく出来ると思うんですが・・・」
「出来るのか!?やるじゃねえか!」
「いやあの、聞いてください。出来るとは思うんですが、ものすごく複雑で、完成するのにかかる時間も分からないんですよ」
「おおよそで構わねえから、どの位かかりそうなんだ?」
「そうですね・・・・魔導具の核となる魔方陣の構築だけで1日。魔方陣を実際に描くのには4ヵ月~5ヵ月、もしかしたら半年くらい掛かってしまうかもしれませんね」
今まで作って来た魔導具の魔方陣とは段違いの複雑さの為、工程が今やっとスタートラインに立って程度だったりします。
「こんな大規模な魔方陣は今まで描いたことが無いので、あくまで予想です。申し訳ありませんが、もしかしたら1年以上かかってしまうかもしれませんね」
「そんなに早く出来るのか!?」
「・・・・・・へ?」
僕は魔導具の制作に、とんでもない時間がかかってしまうことを説明したつもりだったんだけど、ミコトさんの反応がコレだった?
何でだ?
「魔導具ってのは、専門の技師たちが何人も集まって、長い時間をかけて作るモンだろ?それをたった1人で、今までにない大規模なヤツを作るんだろ?1年なんて、早すぎる方なんじゃねえのか?」
「確かに、僕の魔導具作成のスピードは、一般の技師たちと比べ物にならないレベルですけど、1年ですよ?長いと思わないんですか?」
「たった1年だろ?お前、俺の年齢知ってるか?4151歳だぞ?1年なんて、あっという間よ!」
そうだった、この人は龍で、4000歳を超えているんだった。
それだけ長く生きた人からすれば、1年なんてあっという間だろう。
前世からも含めて、まだ25年程度しか生きていない僕とでは、感じる時間の流れが全然違うのだろう。
「分かりました。じゃあ、時間に関しては問題ないんですね?」
「ああ、無いな。だから魔導具の方は頼むぜ?」
「ええ、任せてください!」
「よし、それじゃあセレスに報告に行くか?」
「報告ですか?」
「そうだ。だってレオは依頼を達成したんだろ?なら、セレスに報告するべきだ」
「ですが、どうやって?」
「どうって、女神像の前で祈るだけだろ?」
「その女神像がないんですよ」
「あ?そんなの自分で適当に作れば良いじゃねえか?」
「え?そんなので良いんですか?ちゃんとした教会の職人が作ったのじゃなくても?」
「まあ普通は、教会の上級司祭級のヤツが祝福した女神像じゃなきゃダメなんだがな。考えてもみろ。俺達の肩書は何だったか?」
「肩書ですか?女神の使徒?」
「そうだ!そして俺達は教会のトップ、教皇よりも立場が上の聖職者ってことになっている。つまり!」
「僕達が作った女神像は、勝手に祝福されている!?」
「そういうことだ!」
確かに、少し考えれば分かることだった!
ダストレア大樹海の調査に夢中になりすぎて、全く気付かなかった。
決して女神セレス様に会うのが面倒だった訳ではありません。
本当ですよ!
「じゃあ、こことは別の場所に、俺が作った女神像があるから、移動するか?」
「そうですね。いや、今から僕が作っちゃいましょうか?」
「作るって、今からだろ?時間がかかっちまうから、移動した方が速いだろ?」
「いえ、材料ならいくらでもあるので、1分程度で作れますよ」
「お前本当にスゲエな!?じゃあ、任せるよ」
「はい。ちょっと待っててくださいね」
では早速、異空間収納の中から適当な石を取り出して、ナイフで削っていく。
え?ナイフで石が切れるのかって?
僕のステータスなら余裕です。
あ、コレ大理石だ。
まあいっか?
1分後、高さ1.5mほどの女神像が無事完成した。
「本当に1分で出来たな・・・」
「以前女神様には会いましたので、そっくりに作ってみました。自信作です!」
「いや、1分でちゃちゃっと作ったのを自信作って言われてもな?いや、いい。じゃあ、とっとと祈るか?」
「そうですね」
そして2人同時に祈りを捧げる。
「やあやあ、待っていたよ2人とも?」
目を開けると、そこは真っ白な空間で、女神セレス様が待っていた。
頭に怒りマークを付けて。
「ミコトは100年ぶりだね。いつも封印ありがとう」
「おう、気にすんな」
「レオは3年ぶりだね」
「ええ、お久しぶりです」
「で、なんで2人とも私にすぐに会いに来てくれなかったのかな?特にレオ!メッセージは見ていたよね?何で会いに来ないのさ!?」
「だって、教会なんてこの樹海の中にある訳ないですし」
「言い訳はしない!私の像を自分で作れば良いってこと、キミなら少し考えれば気付けたんじゃないの!?」
「いえ、全く気が付きませんでした。さっきミコトさんに教えてもらうまで、こんな方法があるなんて知りもしませんでした」
本当のことなので、正直に答える。
それでも女神様は文句を言い続ける。
「だから言い訳はいいの!それにミコトもだよ!起きたんだったらすぐに、私に挨拶するのが筋ってもんじゃないの!?だいたいねえ・・・」
「なあセレス。お前、ただ単に寂しかっただけじゃね?」
「っ!?」
ミコトさんの一言で、女神様の口が止まった。
「いやいや、ミコトさん?何を言ってるんですか?相手は女神様ですよ?寂しいとかは無いのでは?」
「いやだってよ?こいつが言っている事って、昔の俺の嫁が、俺が長期間家を離れてから帰って来た時に言っていたのと、内容が同じなんだぜ?」
「え?嫁?ミコトさん結婚していたんですか?」
「おう、かなり昔にな」
「へえ~。奥さんはどんなドラゴンなんですか?」
「あ?嫁は人間だぞ?」
「え?」
「この樹海を出て、人間の姿で生活していた時に結婚したんだよ」
「マジッすか?」
「マジで」
何とビックリ!
ミコトさんは結婚していた!
しかも人の姿で!
「それっていつ頃に、どこの国でだったんですか?」
「ああ、あれは・・・」
「私を無視するなああああああああああっ!」
「うわっ!?」
「うおっ!?」
ミコトさんの過去の話を聞こうと思ったら、突然女神様が叫び出した。
ミコトさんが結婚していたという事のインパクトが強すぎて、すっかり女神様のことを忘れていた。
「何なんだい、君たちは!?私のことを無視しないでよ!」
「なんだ。やっぱりお前、寂しかっただけじゃねえか」
「みたいですねえ」
「うっ!?・・・・そうだよ。ずっと一人でいたから寂しかったんだよ!悪い!?」
「そうですね。その寂しさによるイライラを僕らにぶつけられても、ただ迷惑なだけですね」
「お、レオ良いこと言うな?ま、その通りだ」
「うぅ、なんだよキミたちは・・・・乙女が悲しんでいるといのに、少しは慰めようとは思わないのかい?」
「「乙女?」」
「何よ!?」
「レオ、ちょっと来い」
「はい」
ミコトさんと僕は女神様から少し離れ、背を向けて話し合った。
「なあレオ、あいつって乙女か?」
「いえ、そんなことは無いと思いますよ?そもそも乙女って、若い女性を指す言葉ではありませんでしたっけ?」
「だよな?少なくとも、あいつは俺達よりも年上だよな?」
「ええ。さっきのミコトさんの話から、軽く数万年は生きているはずですよね?」
「ああ、もしかしたら億単位で生きているかも知れねえぞ?外面だけは若いが、この世界での最高齢者のはずだぜ?」
「やっぱり乙女は無理がある、と?」
「そうなるよな?」
「ですが相手は女神様ですよ?どうしますか?」
「う~ん・・・取りあえず、ここは大人の対応と行こうぜ?」
「つまり?」
「あいつの乙女発言には、一切ツッコまない、てのでどうよ?」
「異議なし」
「よし」
結論が出た所で僕達は振り返り、女神様の前に戻る。
「すみません、お待たせしました!」
「何を話していたんだい?」
「そんなの男と男の秘密だ。女が気にするもんじゃねえよ」
「ただお互いの認識に、誤差が無いか確認しただけですよ。結論は出ましたから、お気になさらずに!」
ジト目で聞いてくる自称乙女の世界最高齢者に、僕達はイイ笑顔で答える。
「もういいや。それよりも!今日はどうしたんだい?」
「いえ、依頼が完了したので、その報告と報酬を貰いに来ました」
「え?まだ完了していないよね?」
「完了していますよ?」
「ああ、しているな」
「え?だって、まだミコトに頼まれた魔導具は、まだ作っていないよね?」
「そうですね」
「じゃあ・・・」
「え~と、女神様?僕に依頼した内容は覚えています?」
「もちろんだよ。『ノイシュヴァン山脈のどこかにいる龍王に会って来て』だよね?」
「はい。ですから龍王のミコトさんに会いましたよ」
「え?・・・・・あ」
「気付きましたか?僕は、龍王に会え、としか言われていないんですよ」
「俺もレオからそう聞いたし、今お前も自分で言ってたよな?俺に会って来いって」
「いや、でもさ、普通は会って何かをするもんだよね?」
「ああ、だからやったぜ?」
「ええ、やりましたね?」
「何をだい?」
「「模擬戦」」
「え?」
「あ、あと一緒に食事もしましたね」
「おお、あのステーキは美味かったな!また今度作ってくれよ!」
「分かりました。今度は他の魔物の肉も食べましょうか?」
「そうだな、頼むよ」
「そんなのアリかい!?」
「いや、だって、女神様は何も指定しなかったじゃないですか?何をするのか聞いても、『会えば分かる』しか言いませんでしたよね?」
「だから、それが封印の間の・・・」
「ならそう言ってくださいよ。何も教えてくれないから、僕はミコトさんの依頼で、楽しく食事をして、全力を出して模擬戦をしたんですよ?それなのに、まさか無効とは言わないですよね?」
「う・・・」
「では依頼は完了したという事ですね?」
「レオはお前の言いつけはしっかり守ったぜ?こいつに落ち度は無いよな?」
「うう・・・」
「まさか、女神様ともあろう御方が、自分の説明が足りなかったのが原因なのに、約束を守らないとかはしないですよね?」
「おいレオ。それはいくらなんでも失礼だぞ?女神が約束を破るはずねえだろ?これでも世界中から崇め奉られている神なんだぜ?そんなことするはずねえだろうが?」
「はっ!?確かにそうでした。すみません女神様、無礼な発言をお許しください!」
「ううぅぅっ・・・」
どんどん小さくなっていく、この世界の唯一神として、全ての人からの信仰を一身に受けている女神セレス様。
もう威厳なんか全くない。
いや、そんなのは始めから無かったかな?
今回のことに関しては、女神様の不手際のせいで、こちらに非はありません。
言われた通りのことをちゃんとやったし、報酬を貰うのは当然でしょう?
まあ、これが人間社会の腐った上司なら、「そんなことは言われなくても分かるだろう!」とか権力を傘に、自分勝手な理屈をこねて逃げている事だろう。
そんなことをすれば、当然部下からの信頼も逃げ出すけどね。
こんなことをしている貴族なんて、アストレア王国にはたくさんいましたよ。
以前暗殺者に追われていた時、情報収集の為に支配圏を広げて調べたら、こんなクズがたくさんいましたよ。
おっと、脱線してしまいましたね。
さて、女神セレス様は、一体どうのような対応を見せてくれるのでしょうか?
対応の仕方によっては、女神の使徒を辞めようとも思っていますよ。
「はぁ~、仕方ないか。今回のは私のミスだからね。いいでしょう。レオナルド=シオン=スティードの依頼達成を認めましょう」
「ありがとうございます」
ああ、良かった。
もしここでゴネられたらどうしようかと思いましたよ。
その場合は、女神様からの依頼の達成率が、大幅に落ちることになっていたかもしれませんね。
「それで、私に何を願うんだい?」
「そうですね、神獣全てに命令する権利を貰えませんか?」
「え?何で?」
「いえ、またフェンリルみたいな駄犬に絡まれるのも面倒ですし、もし僕が留守中に、僕の大切な人たちが襲われていた場合、助けに行かせることもできるじゃないですか?神獣ならどんな魔物や魔獣が出ても倒せるでしょうし」
「う~ん。まあ、いっか?じゃあ、それでいいね?」
「はい、お願いします」
これにより、僕は神獣への命令権を得た。
これで今後、出会った神獣に絡まれることは無くなっただろう。
たとえ絡まれても、力でねじ伏せることも出来るけど、無用なトラブルは避けたいからね。
「それで、ミコトはどうしたの?」
「俺はレオの付き添いと、ついでにヴァッシュの封印の経過報告だな」
「報告がついでなんだ・・・それで、封印はどうなの?」
「全く問題ないな。この100年での変化は無しだ」
「そう、良かった。やっぱりキミにお願いして正解だったよ」
「おかげで殆どここから出られなくなっちまったけどな」
「それは本当に悪いと思っているよ。でも、レオナルドのおかげで何とかなりそうなんだよね?」
「まあな。そう言えばどんな魔導具なのか聞いてなかったな?レオ、どんなのになるんだ?」
言われてみれば、何も説明していなかったっけ。
「まだ完成どころか、思索中なので確定ではないですが、それでも良いですか?」
「ああ、教えてくれ」
「私も知りたいな」
「分かりました。では説明しますね」
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