第40話 本気を出した結果
神龍の姿になったミコトさんは、まさしく神々しい、と呼ぶにふさわしい威容だった。
四本足に巨大な翼が生え、頭には角が4本あり、尻尾もある。
そして全身が真っ白な白竜の姿だった。
ついでに、淡く全身が光っています。
僕の中では白い=神聖なイメージが強いせいかもしれないけど、それだけではなく、纏っている雰囲気というか、発せられているオーラ?とでも言えばいいのだろうか?
とにかくもう、体全体から『神』みたいなモノが溢れ出ている。
《どうだレオ?俺の本当の姿は?カッコイイだろう?》
フェンリルの時と同じく、頭の中に直接声が聞こえる念話で話しかけられる。
カッコイイかだって?そんなのは当然
「凄くカッコイイですよ、ミコトさん!」
前世では恐竜に憧れ、当然のようにドラゴンにも憧れた少年時代を過ごした僕。
いや、まあ、今も少年なんだけどね?
精神年齢は25歳だけどさ?
そんな歳になっても、子供の頃に憧れた生物を生で見るのは心が躍る。
《そうだろ、そうだろう?カッチョいいよな、俺?やっぱドラゴンに転生して正解だったわ!》
それはもう、嬉しそうに笑っているミコトさん。
ひとしきり笑った後、
《さ、どうすんだ?この状態の俺とやってみるか?》
「そうですね、折角ですからお願いしてもいいですか?」
《おう、だけどいいのか?今の俺は、さっきの10倍のステータスになるぜ?》
「げ、10倍ですか?う~ん・・・・それでもお願いします!」
《はっはー!いいねお前!じゃあ行くぜ?やばくなったらすぐに言えよ?死んじまったら何にもなんねえからな?》
「はい、分かりました!胸をお借りします!」
「よし!じゃあ行くぜ?」
そう言って、ミコトさんは無造作に前足を振るった。
だけどそれは、ドラゴンであるミコトさん視点で見た場合の話しであって、人間の僕視点で見ると、でっかい壁がとんでもないスピードで迫って来ていた。
「ふんっ!」
剣を両手で持って、全身に力を入れて防御する。
避けるのは簡単に出来るんだけど、ここは敢えて受け止めて見ようと思います。
その結果、
「うわあああぁぁぁーーー・・・・・!」
え~、軽く1㎞は吹っ飛ばされたかな?
《おーい、大丈夫かー?》
すぐにミコトさんが飛んで来た。
たぶん、ミコトさんからしたら、ぺち、って感じだったんだろうけど、僕からすれば、ドガン!という、凄まじい衝撃だった。
「ええ、大丈夫ですよ。もう傷は回復しましたから」
そう、僕は今の攻撃で、両腕の骨が粉砕骨折していた。
していたんだけど、あっという間に治っています。
以前ケガをした時に、『空間支配』を使ってキズが治らないかな~なんて思って試してみたら、一瞬にして傷が再生しました。
その後の実験により、体の部位を欠損しても再生することが判明。
なので、僕はこれを『超再生』と呼ぶことにしました。
なぜ「超」と付けたのかというと、魔物の中には再生する能力を持っているのがすでにいて、僕の再生はそれと比べ物にならないスピードだったため、『超再生』と名付けました。
《マジかよ!?お前スゲーな!》
「ありがとうございます。それでミコトさん、もう一度戦ってもらえませんか?」
《あ?俺は別にいいけどよ、お前は大丈夫なのか?》
「ええ、今度は僕も本気を出しますから」
《はあ?今までお前も手加減していたのか?》
「ええ、魔導具を使って、ステータスを抑えていました」
《そりゃおもしれーな?いいぜ、やってみろよ?》
「はい、それでは準備しますので、少し待っていてください」
そう言って僕は、STRを1/10,000にする魔導剣と、AGLを1/10,000にする魔導靴、そして、VITを1/10,000にする皮の鎧を脱いだ。
この鎧は、以前3週間引きこもってひたすら魔導具を作っていた時に作りました。
なぜ作ったのか?
理由は簡単で、余りにも魔物や魔獣の攻撃が弱すぎて、闘っているっていう実感が湧かなかったからです。
考えても見てください。
こっちの攻撃は一撃で敵を殺すことができ、相手の攻撃は一切ノーダメージ。
そうすると、魔物達との戦いはただの作業になってしまい、ハッキリ言ってつまらない!
余りにも虚しくなり、どうするか考えた結果、このVITを下げる鎧を作ることにしました。
これで、超級以上の魔物達の攻撃は僕に普通に届くようになり、それなりに戦闘が充実するようになりました。
ただ、HPが無駄に高すぎるため、命の危険が殆ど無い、っていう難点もありますけど、そもそも死にたいわけではないので、これで満足です。
これにより、今までステータスでゴリ押ししていた戦い方を改め、技術を使った戦闘をすることを覚え、いるかどうか分からないけど、格上の相手への戦い方が何となく分かってきましたよ。
まあ、ミコトさんとステータスを抑えた僕とでは差がありすぎて、全く意味が無かったですが・・・
それはさておき、全ての魔導装備を外し、ステータス8億越えの状態になりました。
「お待たせしました。では、やりましょうか?」
《そうだな。じゃあ、もう一度さっきの攻撃行くぜ?》
またミコトさんが、巨大な前足を振るって攻撃してきた。
それを僕は、片手を上げて迎える。
ドゴンッ!
でかい衝突音だけして、ミコトさんの前足は僕を動かすことすらできず、止まった。
その時の衝撃で地面が陥没したが、それだけだ。
《ハア!?片手で止めた!?なら、これならどうだ!?》
今度は体を捻り、遠心力を付けた巨大な尻尾による攻撃が来た。
僕はそれを、今度は両手で受け止める。
《いってええええ!》
ミコトさんの尻尾が、僕にぶつかった場所で折れ曲がる。
さっきと同様、尻尾の攻撃でも僕を動かすことができず、しかしミコトさんは体を回転させているため、止められた尻尾がさらに僕の腕にめり込む。
それはとても痛いでしょう・・・
《レオ!お前どんだけ頑丈なんだよ!?普通、これだけの体格差があったら、吹っ飛ぶだろう!?》
「まあ、地球だったらそうなんですが、ここは異世界で、ステータスが物理法則を無視しまくっている世界ですから・・・」
《くっそー・・・よし、じゃあ本気出して戦うか?》
「そうですね、お願いします!」
と、いうわけで、神龍対異常な人間の本気の戦闘が始まった。
え~、結果だけ先に伝えると、山が3つ消し飛びました。
お互い本気を出して戦ったんだけど、体の小さな僕の方が小回りが利き、かつ的が小さいから有利で、逆にミコトさんは体が大きすぎるため、攻撃を避けるのが大変そうだった。
お互いの攻撃でふっ飛ばしてふっ飛んでの応酬で、しかしお互いすぐに回復しているから決着がつかない。
そもそも決着をつけるのが目的ではないんだけど、お互いに今まで全力で戦える相手がいなかったため、時間を忘れて戦い続けてしまった。
ふと気が付くと夜が明け、朝になっていた。
そして気付く。
「あれ、ミコトさん?ここに山がありませんでしたっけ?」
《そうだな。確かに3つほどあった気がするんだが、どこにいったんだろうな?》
「不思議なことがあるもんですね~?」
《だな~》
2人揃って、大量の冷や汗をかいています。
今、僕とミコトさんは思っていることは同じはず
『『やべ、熱中しすぎてやり過ぎた!』』
と。
それはさておき、この後どうしようかな?
「ミコトさん、どうします?」
《どうするったって、やっちまったモンは仕方ねえ。それより、今からお互い最後の攻撃をしねえか?》
「まだやるんですか!?」
《だって、もったいねえだろ?たぶん、これから先、こうやって俺達が戦うことなんか無いんだぜ?》
「確かに・・・」
《な?やろうぜ?最後に1発よ?》
「う~ん・・・・・よし、やりますか!?」
「そう来なくちゃな!じゃあ俺は、俺が使える最強の攻撃であるブレスで行くぜ?」
「最強の攻撃ですか?そういえば僕にはそんなのないですねえ・・・」
「マジかよ?何かねえのか?何かこう、お前の使える魔法を複合させた術とかさあ、厨二っぽい名前の技とかさあ?」
「厨二って、ちょっと待ってくださいね?ええっと・・・・あ、ありました。僕が使えるであろう最高の術が!」
「本当か!?よし、それで来い!」
そして、2人で空に飛ぶ。
先程の山が3つ消し飛んでいたことを反省し、なるべく被害が少なそうな上空で闘うことにした。
ミコトさんは翼で、僕は『空間支配』を使って空に行く。
《ま、こんな所か。おいレオ、寒くねえか?》
「ええ、大丈夫です。さあ、やりましょうか?」
《そうだな、んじゃ、行くぜ!》
そう言ってミコトさんは口を大きく開き、エネルギーを溜めていく。
フェンリルが放ったブレスに似ているけど、内包しているエネルギーがケタ違いだ。
対する僕も両手を前に突き出し、魔力を高め、火、水、風、土、光、闇の全属性の魔法を1点に集め、圧縮している。
ほぼ同時に、お互いの準備が終わった。
《神龍の吐息!》
「終末魔法、神々の黄昏!」
ミコトさんから放たれた真っ白な光の奔流と、僕が放った虹色に輝く光の奔流がぶつかる。
その瞬間、世界から一切の音が消えた、かのように錯覚した。
暫くの間、2つの光りがぶつかり合い、お互いを相殺して消えた。
その直後、今度は世界が大音響に包まれた。
レオナルド=シオン=スティードとミコト=シューティングスターの2人を中心に、大気が、いや、空間が震えていた。
それを聞いた2人は
『『ヤベッ、やり過ぎた!?』』
と、また全く同じことを考えていたという。
この空間震は5分ほど続き、収まった。
《下に降りるか?》
「そう、ですね」
そして地面に向かって降りていく1人と1体。
ミコトさんは途中で人間の姿に戻った。
戻った?元はドラゴンだから、変化した、の方が正確かな?
地面に着いた途端、2人揃って地面に座り込んだ。
「なあレオ、さっき空間が震えていたよな?」
「はい、僕が感知した限りでは、恐らくダストレア大樹海全体が震えていたっぽいですね」
「うっわ、マジかよ?」
「恐らくですが」
「「はあ~・・・・・」」
暫く2人とも放心したまま、空を眺める
「そうだ、ミコトさん?」
「ん?」
「朝食食べますか?」
「あ~そういえば夜通しずっと闘っていたんだよなあ。確かに腹は減っているから、食うか?」
「そうですね、じゃあ、小屋に行きましょうか?」
「おう。っていうか、あの小屋は無事なのか?」
「ええ、結界を張ってあるので無事でしたよ」
そして到着した小屋の中に入り、ミコトさんはイスに座り、僕は料理を作る。
「何か食べたいものはありますか?」
「肉」
「じゃあ、またステーキにしますね」
「おう。がっつり食うから、多めで頼むぜ?」
「分かりました。色んな部位を用意しますよ」
と、いうわけで、朝から大量のステーキと言う、朝食にふさわしくないメニューを作り、2人で平らげた。
いやだってさ、たぶん8時間くらい連続で闘っていたから、もうお腹が空いて空いて、今なら何でもおいしく食べられますよ。
「ふぅ~、ごちそうさん」
「お粗末様でした」
「それにしても、最後のお前の攻撃、ありゃ何だ?」
「神々の黄昏ですか?」
「そう、その物騒な名前の魔法。あんなの見たことねえよ?」
「あれは、無属性を含む、全属性の魔法を極まで習得した者だけが使える魔法ですよ。純粋に破壊の魔法らしく、神にすらダメージを与えられる終末魔法ですね」
「はあ?レオ、お前、その若さで全属性の魔法を極めたのか?」
「まあ、いろいろとありまして。それよりミコトさんの放った攻撃こそなんですか?神龍の吐息って、核兵器ですか?」
「ああ、ありゃ俺が魔力と龍族だけが持つ龍気ってのを混ぜ合わせてな、そうして生まれたエネルギーをぶっ放す技なんだよ。で、そのエネルギーがな、どうやら核反応みたいな状態で生まれたらしくてな?だからアトミックってついてんだよ」
「え!?じゃあ放射能とか大丈夫なんですか!?」
「ああ、そいつに関しては大丈夫だ。性質は似ているが、純粋なエネルギーになるってだけで、副作用みたいなもんはねえんだよ」
「なるほど、じゃあお互いの撃った攻撃は、奇しくも同じ性質だったのですね?」
「そうみたいだな?俺もお前も魔力を融合させていたわけだからな」
「そうですね。じゃあ・・・」
「ああ、そうだな・・・」
「この2つの技は、非常事態にならない限りは使用しない、ということで」
「ああ、異論は無い」
僕らが出した結論。
あの2つの技がぶつかると、とんでもないことになるから、出来れば使いたくないよね?
と言うことになりました。
「さて、それじゃあ僕は疲れたので寝ますけど、ミコトさんはどうします?ベッドならまだありますよ?」
「お、そうか?じゃあ悪いけど使わしてくんねえか?俺もさすがに疲れたよ」
「分かりました。では・・・・・・はい、どうぞ」
「あんがと。じゃあ、早速寝るわ。外のことは起きてから考えるか」
「ええ、そうしましょう。おやすみなさい」
「おやすみ」
そして2人は眠りについた。
この2人が起きてから考えると言っていた外が、一体どうなっているかと言うと・・・
更に山が8つほど消し飛んでいました。
もちろん言うまでもなく、神々の黄昏と神龍の吐息が衝突したことによる被害です。
2人は現実逃避することに決めたのです。
一方いその頃、アステリア王国では、突如国を襲った空間震に戦々恐々としていた。
「カルナ!これは何だ!?何なのだ!?」
「陛下、落ち着いてください!今、全力で宮廷魔導士団が調査しています!だから落ち着いてください!」
「これが落ち着いていられるか!?何なのださっきのは!?世界の終わりか!?」
「今はまだ調査中です!宮廷魔導士団からの報告を待ちましょう!」
「はっまさか!?神が私に言っているのか?そろそろ王位をエドワードに譲れ、と」
「ちょっ、何を言っているのですか!?」
「よし、私は決めたぞ!カルナ宰相!」
「何でしょうか?」
「私は王位を退く!そしてエドワードに王位を譲るぞ!」
「はい!?」
「戴冠式は来月だ!準備をせよ!」
「ちょっと!何言い出してんですか陛下!?考え直してください!」
「いいや!これはもう決定事項だ!これは決して覆さん!」
「いや、ですから!落ち着いて!下さいと!言っているんですよ!私は!?」
その後、しばらく話し合い(?)をした結果、本当に来月に戴冠式を行うことになってしまった。
なお、この空間震だが、実はレシタクルス大陸全土に広がっていたりする。
世界の各国で混乱が起きたのは、想像通りです。
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




