第39話 龍王
ノイシュヴァン山脈とはどういった所なのか?
まずその地形は、ヒマラヤ山脈を想像してください。
雲の上に飛び出した山頂は雪に覆われ、見渡す限りの山、山、山。
だけどそこはさすがにダストレア大樹海、自然の摂理なんて関係ナシ!
標高は8,000mどころか、軽く10,000m越えもあったりするけど、なぜか辺り一面雪景色ではない。
なんと言えばいいのか、場所によてっては花が咲き乱れたり、暑い日差しとセットで山の中なのに無駄に広い海があったり、かと思えば紅葉した樹木が景観を楽しませてくれたりしている。
もちろん、普通に辺り一面雪景色の場所もあったけど、なぜこんな標高の高い場所で、四季を感じられるんだと激しくツッコみたい!
特に海!
樹海の中にもあったけど、何で山の中に海がある訳!?
もしかしたら湖かな?と思ったけど、表示されたのは
『ノイシュヴァン海』
だった。
磯の香りもすれば、バッチリ波もある。
理屈はよく分からないけど、空間が歪んでいるからね。
だから海があってもしょうがないよね?
と、無理やり自分に言い聞かせ、これ以上考えないようにしました。
あ、当然のように魔物や魔獣がわんさかと出てきます。
上級から超級の魔物が目白押し!
たまに厄災級も出てきます!
残念ながら、今まで会ったことのない魔物、魔獣が殆どいなかったので、見敵瞬殺で進んでいます。
3週間程度でほとんどの山を制し、残す山も僅かとなってきた。
1番怪しかった、中央にある標高14,000mくらいの山がハズレだったので、仕方がないのでしらみつぶしに山を探している。
そんなある日、適当な山の頂でいつも通りの野営をしていると、来客があった。
コンコンっ
「お~い。誰かいるのか?」
扉がノックされ、人の声が聞こえた。
まあ、支配圏は解除していても、『気配察知』は常にオンにしているから、人間サイズの何かかが近づいてきていることは察知していたんだけどね。
うん?スキルは全て消されたんじゃなかったかって?
ええ、女神様の消されてしまいましたね。
ただ、『空間支配』を使えばすぐに再現できるので、そうしているだけです。
本当に便利ですよね、『空間支配』って。
「今開けま~す」
それはさておき、いつまでも待たせるのは失礼なので、迎え入れることにした。
「おっ、本当に人間がいるよ」
扉を開けると、そこにいたのは、どう表現すればいいかな?
歳は20代前半くらいで、綺麗な金髪金眼の男が立っていた。
ただ恰好が何と言うか、全身黒の衣装を着て、顔には化粧をしたヴィジュアル系のお兄ちゃんだった。
もしかして僕と同じ転生者だろうか?
何て考えていたら、向こうから挨拶をしてきた。
「俺はミコトって名前だ。初めまして、人間君」
「僕はレオナルドと申します。初めまして、ミコトさん」
「中に入ってもいいか?」
「どうぞ。ちょうど夕食を作ろうとしていた所ですので、良かったら一緒に食べませんか?」
「お、いいのか?悪いな、頼む!」
そう言って、突然の来訪者、ミコトさんが小屋の中に入って来た。
さすがに2人だと椅子が足りないので、予備の椅子をもう一脚出し、テーブルも少し大きめのと取り換える。
「座って待っていてください。すぐに出来上がりますから」
「おう。で、何を食わせてくれるんだ?」
「今日のメニューはパンと野菜のスープ、メインディッシュがミノタウロスゼファロスのステーキです。あ、ステーキはどのくらい食べますか?サーロインだけでも1tはありますよ?」
「超級のミノタウロスゼファロスのステーキか!じゃあ1㎏をレアで焼いてくれ!」
「分かりました。少し待ってくださいね」
ミノタウロスゼファロスとは、ミノタウロスの最終進化と言われている魔物で、その巨体は軽く20tはありました。
そして、ミノタウロス系の魔物は、肉が美味いことで有名だったりします。
上位種になればなるほど味は格段に上がっていく。
つまり、ミノタウロスの最上位種であるゼファロスの肉は、絶品、の一言に尽きます。
残念ながら、Sランクの超級の魔物なので、その味は文献だけに残され、例え王族でも一生口にすることが出来ない肉でもあります。
もし市場に出回れば、信じられない値が付くこと間違いなしの代物です。
10分後、出来上がった夕食をテーブルに並べ、ミコトさんと向かい合って食事をする。
「それでは、いただきます」
「うまそうだな。いだたきます」
2人で日本で食事をする時の挨拶をしてから、ナイフとフォークを使って食べ始める。
「おおっ!?やっぱりうめぇ~な、ミノタウロスのステーキは!」
「そうでしょう?それも最上級のミノタウロスゼファロスの肉ですからね。こんなの、このダストレア大樹海に来なければ食べられませんでしたよ」
「ああ、マジでうめぇーよ!遥か昔に食った松坂牛よりも美味いんじゃねえか?」
「あ~、僕は高級ブランドの牛肉を食べたことが無いから、分からないんですよ。でも、やっぱり松坂牛よりも良いですか?」
「俺が食ったのは、遥か昔って言っただろ?あんま覚えてねーよ。だが、少なくともこの肉は、この世界で食った肉の中では最も美味いと言えるね!」
「やっぱりですか!じゃあ、折角だから他の部位も食べてみますか?」
「いいのか!?」
「ええ。それじゃあ、最上級部位と呼ばれている、シャトーブリアンにしましょうか?」
「マジか!?食う食う!」
「どれくらい食べますか?」
「逆に聞くが、どれだけ食べていいんだ?」
「シャトーブリアンだけでも500㎏くらいはありますよ?」
「そうか・・・・じゃあ1㎏で頼む!もちろんレアで!」
「はい、わかりました」
で、焼き上がったシャトーブリアンをテーブルに並べ、
「「いただきます!」」
さっそくがっつきます!
「うんめぇ~~~!何だコレ!?肉が口の中に入った瞬間に溶けたぞ!?」
「ええ、一瞬でしたね。それなのにこの濃厚な味わい。まさに最高級部位ですね!」
「今までゼファロスは何回も食ってるけど、このステーキは格別じゃねえか!?レオナルド、お前、料理スキルとか持ってるのか?」
「もちろんです!やっぱり料理はおいしい方が良いじゃないですか!」
「俺も習得すれば良かったかもな~」
「まあまあ、今はこの食事を楽しみましょうよ」
「そうだな・・・・やっぱうめええええっ!」
久しぶりの楽しく賑やかな食事は、ミコトさんがお代わりを4回するまで続いた。
「はあ~、食った食った。ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様でした」
その後、椅子に座ったまま、食事の幸福感に包まれていた。
「よし、じゃあそろそろ本題に入るか?」
「そうですね、お願いします」
しばらくして、唐突にミコトさんが話し始めた。
「じゃあ、改めて自己紹介するな。俺はミコト=シューティングスター。種族は神龍で、ここでは龍王をやっている。で、お前と同じ女神の使徒であり、お前と同じ、地球は日本からの転生者だ」
「では僕も改めまして、レオナルド=シオン=スティードです。アステリア王国スティード伯爵家の次男で、このダストレア大樹海の調査に来ました。同じく女神の使徒で、日本からの転生者です」
「なんだよ、俺が龍王とか転生者だって聞いても全然驚いていないな?やっぱり気付いていたか?」
「龍王に関しては初めて会った時から。だって、こんな所に人がいる訳ないじゃないですか?」
「それを言ったら、お前はどうなんだよ?」
「僕はまあ、ほら。規格外だからいいんですよ」
「何だそりゃ?」
「でも、ミコトさんが日本人だと確信したのは、食事をする前の挨拶でしたね」
「ああ、やっぱりか?あの癖だけはどうしても抜けないんだよな~」
「僕もですよ。他にも、松坂牛の話が出ていましたからね。それで分からなかったら、僕は日本人ではなかった、というレベルですよ」
「ははっ、違いねえ」
二人で和やかに笑った。
「で、お前がここに来た目的は何だ?」
「それがですね、女神の使徒になったその日に、龍王に会え、としか言われていないんですよ」
「セレスにそう言われたのか?」
「ええ」
「そうか、あいつに言われたのか。なるほどなあ・・・」
暫く僕をジロジロ見ながら考え、
「よし、分かった。じゃあ、お前の力を見せてもらいたいから、腹ごなしの運動に、ちょっと戦わねえか?」
「いや、よく分からないんですけど?」
「セレスがここでレオナルド、お前にやらせたいことってのに心当たりがあるんだけどよ、それには資格がいるんだよ。まあ、単純に強ければいいんだけどな。で、レオナルドにその資格があるかテストしたいから、俺と闘ってもらいたいんだわ」
「はあ、そういうことでしたら構いませんよ?それと、僕のことはレオと呼んでください。レオナルドだと長いでしょ?」
「お、ワリーな。じゃあレオ、早速だけどいいか?」
「ええ、やりましょう」
「参考までに聞いておきたいんだけどよ、レオが今まで戦った中で、一番強かったのはどいつだ?」
「そうですね、半年くらい前に戦った、神獣のフェンリルですかね?」
「フェンリルか!?で、勝ったのか?」
「ええ、調子に乗っていたので、軽く躾てやりましたよ」
「ははは、あのフェンリルを躾けたのか?そりゃ期待できるな。ああ、言っとくが、俺はあの犬ッコロより強いからな?」
「もちろん、それは分かっていますよ」
会話をしながら、僕とミコトさんは外に出て、何もない所まで移動した。
「おし、この辺でいいか?」
「そうですね」
「じゃあ、やるか!」
「え?そのままでいいんですか?」
「そのままって?」
「だってミコトさんは神竜、ドラゴンなんですよね?その人間の姿のままでやるんですか?」
「ああそうか、この格好な?いや、元人間としては、こっちの方が動きやすいんだよ。まあ、力は制限されちまうがな。そうだな~、じゃあレオの力が俺の期待通りの強さだったら、100%の力を出せるドラゴンの姿で闘ってやるよ。それでどうだ?」
別にドラゴンの姿が見たいわけではなく、そんな力が弱まってしまっている人間の姿のままでいいのか?という意味で聞いたんだけど、まあいっか?
「それでお願いします」
「よし!じゃあ今度こそやるぞ?」
ミコトさんはそう言い、無造作に立っている。
僕の方からいつでもかかって来い!ということだろう。
じゃあ、とりあえず魔導具を発動させたまま、1/10,000のSTRで攻撃してみるとしますか。
「では、行きます!」
「来い!」
僕はミコトさんに向かって走り、剣を振りかぶり、渾身の力を込めて振り下ろす。
だが、ミコトさんはギリギリまで引き付けた後、紙一重で躱す。
ならばと、高速の10連撃をたたき込むが、それも全て余裕を持って躱されてしまった。
なら今度は、封印していた『剣術(極)』を使って斬りかかる。
さっきまでとは鋭さが違う斬撃に、さすがのミコトさんも動揺し、そのスキを逃さずに1撃を入れた。
当たった、と思ったが、その斬撃はミコトさんの手で弾かれていた。
「何だ今のは?急に剣筋が鋭くなりやがったぞ?」
「ずっと封印していた『剣術(極)』のスキルを使ったんですよ」
「その年で『剣術(極)』だと?やるじゃねえか!だが残念だったな。お前の剣には重さが足りねえよ。そんなんじゃ、俺を認めさせることは出来ねえぜ?もし隠しているなら、もったいぶってねえで奥の手を見せてみろよ?」
「そうですか?じゃあ遠慮なく」
そう言って僕は。剣に火魔法を付与し、炎を纏った魔法剣で斬りかかった。
「うおっ!?危ねぇ!」
さっきと同じく、剣を手で弾こうとしたミコトさんは、直前で危険を察知したのか、避けることを選択した。
チッ!惜しい!
ミコトさんの判断は正しいと言える。
なぜなら、魔法の威力に関係しているINTは、一切抑えていない。
なので、この魔法を纏った攻撃は、さっきまでのSTR8万程度の攻撃ではなく、それにINT8億で使った魔法を上乗せした攻撃となっていたのだ。
この攻撃方法こそが、僕がこの魔導装備を作ってから、STRだけでは勝てない相手と剣で戦う為に編み出した攻撃方法です。
魔導銃はどうしたかって?
ちゃんと使っていますよ?
でも、たまには体を動かしたいじゃないですか?
そんな時は、剣を使って戦っていました。
「何だよそれ?魔法剣か?」
「そんなところです」
「さっきまでのしょぼい攻撃と違って、とんでもねえ重圧を感じたぞ?」
「ええ、奥の手ですからね」
「レオはSTRよりもINTの方が高い、魔法職向きなのか?」
「今はそうですよ」
「今は?なんか引っ掛かる言い方だな?」
「それに関してはおいおい説明しますよ。では続けましょうか?」
「おう、来いや!今度はこっちからも攻撃するぜ?」
「望むところです!」
と、いう訳で、第2ラウンドが開始されました。
さっきまでは防御に徹していたミコトさんが、ガンガン攻めてきた。
僕に合わせてくれたのか、いつの間にか手にしていた剣で横薙ぎに斬りかかってくる。
たぶん、僕と同じ異次元収納のスキルでも持っているんだろうな。
避けようとしたけど、あまりにも早すぎる踏み込みで間合いを一瞬で詰められ、防御に切り替えた。
剣を縦にして何とか防いだ、と思ったら、そのまま100mほど後ろに吹き飛ばされてしまった。
どんだけのSTRで攻撃したんだ、この人!?
驚きながらも正面を向くと、もう目の前にミコトさんがいて、次の攻撃に移っていた。
今度は上段からの斬り下し。
こんなの喰らったら、ケガしちゃうかもしれないから、今度は全力で逃げに徹した。
空振ったりその斬撃は大地を切り裂き、衝撃波が辺り一面を震わせる。。
ミコトさんも剣術のスキルを持っているようで、その1撃1撃が鋭い。
僕も守っているだけでなく、剣に魔法を纏わせて攻撃力を上げ、かつ体にも風魔法を纏わせてスピードを上げて応戦することにした。
暫く斬り合い、生まれた衝撃波で辺りの地形が変わった頃、距離おいて改めてミコトさんと対峙した。
「やるじゃねえかレオ、想像以上だな!フェンリルを躾けたってだけのことはあるな!」
「ありがとうございます。ということは、僕は認めてもらえたのでしょうか?」
「おう、合格だ!」
「それは良かった!」
「レオ、お前は魔王デリオスって知ってるか?」
「ええもちろん。300年前に勇者ドラグルによって討たれた魔王ですよね?」
「もうそんなに前なのか。いや、そうじゃなくて、お前の力な?間違いなく魔王デリオスよりも上だぜ?」
「え?そうなんですか?」
「おう、闘った俺が言うんだから間違いねえよ!お前はたいしたもんだよ!」
どうやらミコトさんの試験には、無事に合格できたらしい。
それにしてもミコトさん、魔王とも戦ったことがあるんだ。
当時のことを聞いてみたいな。
特に勇者ドラグルについて、本当にノーマン伯爵家の先祖なのか?とかね。
なんて思っていたらミコトさんから
「それじゃあ約束通り、ドラゴンの姿の俺と闘わせてやるよ!」
「え?」
そう言えばそんな話になっていたような・・・・
「それじゃ、少し待っててくれよ?」
そう言った途端、ミコトさんの体が光りに包まれる。
その光はどんどん大きくなり、おおよそ100mほどになった時、消えた。
そして消えた光の中から、100mほどの大きさの、真っ白なドラゴンが現れた。
《これが俺の、龍族の王にしてこの世界にたった1体しかいない神龍の、真の姿だ!》
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




