第30話 ルドルフ伯爵って実は・・・
屋敷に帰ってすぐ、思いもよらない来客があった。
何と、ルドルフのおっさんがやって来たのだ。
執事が応接間ではなく、防音設備のある訓練場の休憩室に案内したので、僕とお父様もそちらに向かう。
メルト兄様は、王城から帰ってきらすでに寝ていたので、同席しません。
初めての長旅でしたからね。
休憩所に着き、ルドルフのおっさんと向き合うと、
「レオナルド!お前は何を考えているのだ!?」
開口一番、いきなり怒られてしまった。
え?何でこの人怒ってるの?
大人しくしているみたいだけど、あんたも僕がいなくなれば都合がいい貴族の一人だと思っていたんだけど?
「お前はあの樹海がどれだけ危険なのか、レオナルドに教えていないのか!?」
今度はお父様に怒り出した。
「落ち着けルドルフ」
「これが落ち着いていられるか!いいか!?あれはレオナルドを消すために、ザカート侯爵と他の貴族が協力している暗殺計画だぞ!?おまえはそんなことも見抜けないのか!?」
「だから落ち着けってルドルフ。そんなこと、俺もレオも、それどころか陛下や宰相だって分かっているぞ?」
「何だと!?だったらなぜ受けたのだ!?そんなに息子を殺したいのか!?」
何だ?
目の前にいるのはいったい誰だ?
ルドルフのおっさんに変装した別人じゃないのか?
何でこのおっさんが僕を心配して、態々家にまで怒鳴り込んできているんだ?
訳が分からない!
「いいかレオナルド?あの樹海はな、この大陸で最も危険な場所で、かつて完全武装した騎士団が3日ともたずに、命からがら逃げてきたような場所だぞ?そんな所に行ってみろ?いくらお前のステータスが高くても、すぐに命を落としてしまうんだぞ?今ならまだ間に合うかもしれん。この任務を取り消すために、すぐに王城へ行くぞ!」
「だから落ち着けと言っているだろうが!」
スパーンと、小気味良い音を立てて、お父様の平手がルドルフのおっさんの頭を叩いた。
お父様としては軽く叩いたのだろうが、相当の衝撃があったみたいで、叩かれたおっさんは涙目になっていた。
だけど、それでやっと落ち着いてくれたようだ。
「いいかルドルフ?このレオナルドはな、すでに1人でダストレア大樹海に行っているんだよ。そしてな、オークキング程度なら、瞬殺出来るだけの力を持っているんだ。だから大丈夫だ」
「何を言っているんだ?こんな子供がオークキングを倒せるなど・・・」
「現に、私と父上の2人がかりで闘ったが、手も足も出なかったんだよ」
「は?」
そこからお父様による、いかに僕が強いのかの説明が始まった。
それを聞き終えたルドルフのおっさんは、
「こいつは本当に人間か?」
「失礼な!れっきとした人間ですよ!」
ついつい言われた疑問に対して、叫んでしまった。
まあ確かに、異常なステータスではありますけどね?
ユニークスキルを3つも持っているし。
「その話が本当なら、私がこれ以上言うことはないが、しかし、う~む、信じられんなあ・・・」
一応は納得してくれたみたいなので、僕からも疑問を投げかけてみる。
「それにしても、何故ルドルフ伯爵がそんなこと言いに、この屋敷まで来たんですか?」
「うん?何かおかしいか?」
「いや、だって、お披露目会で会った時、あまり我が家と仲が良さそうじゃなかったので、何でだろう、と思いまして・・・」
「あ~・・・しまった、ついやってしまった・・・」
「もういいだろう、ルドルフ?レオはそう簡単に口を割る男ではないさ。こいつには話してしまってもいいんじゃないか?」
「いいのか?」
「ああ、大丈夫だ」
何の話だろう?
それにしてもこの2人、やけに仲が良いな?
あれ?おかしくないか?
「実はな、レオ。このルドルフは、わざと私と敵対しているように見せかけていてな?そうすることで私と敵対している他の貴族が近づいて来やすくなり、そいつらの動向を私に教えてくれているんだよ」
「え?なんでそんなことをしてくれているんですか?」
「俺も、もうやらなくていい、って言っているんだが、コイツが中々頑固でなあ」
「何を言うか!私が、いやノーマン家がお前に受けた恩のデカさを考えたら、こんなのではまだまだ返し切れていないわ!」
「だから、そんなのは気にするなって、ずっと言ってるだろう?」
「いーや、私の気が済むまで、あの時の恩は返し続けるからな!」
「えーと、つまり?どういうことでしょうか?」
「私の家は昔、他の貴族達に命を狙われていたことがあるんだよ。私の父が、周りの領地の圧政から逃げてきた領民を大勢保護してな。彼らの為に私財を投げ打ち、家を建て新しい村を作り、ノーマン領に住まわせたのだ」
「それが面白くなかった、圧政をしていた貴族がな、こいつとその家族に暗殺者を差し向けてきたんだよ。何せ領民が減ればそれだけ税収が減り、逆にノーマン家は領民が増えるから税収が上がる。実際は逃れてきた領民にからは税を得ていなかったから、赤字だったらしいがな」
「その時に私がドジを踏んでな、賊どもに捕らわれてしまったのだ。私の父と母に、私の命が惜しかったならおとなしく自害しろ、と迫られてな。父と母が要求を呑もうとした時、このことを知ったこのグレンとジルベスト殿が率いるスティード騎士団が到着してくれてな。瞬く間に賊を殲滅してくれたんだ」
「ああ、あの時は間に合って本当に良かったよ」
「何を言っている!お前その時『改竄』スキルを使用したせいで、その後の1年間、ステータスが1/10になってしまったではないか!」
「仕方がないだろう?そうしなければ、賊どもがお前とお前の家族を殺しそうだったんだぞ?もしあの時、『改竄』でAGLを5倍にしていなかったら、きっとお前は死んでいたぞ?」
「ええい、うるさい!それで、命を救われた我がノーマン家は、スティード家に大きな恩ができたのだ。それをどうやって返すか悩んだ結果、武力はともかく、こいつらは搦め手に弱いからな。そういった策略から守るために、敢えて敵対しているように見せて、情報を集めているんだよ」
まさかの真相でした!
クズ貴族だと思っていたルドルフのおっさんが、実はいい人だった!?
確かに、いろいろ調べてみた時、ノーマン伯爵領の変な噂を聞かないどころか、むしろ優れた統治者だという話を聞いたくらいだし、今回のザカート侯爵達のような動きも無かった。
ルドルフ伯爵!今までおっさんと呼ばわりしてすみませんでした!
「まあ、そういうことだ。悪いがレオ、これは内緒にしてくれよ?」
「ああ、まだ他の貴族に知られるわけにはいかないからな。頼むぞ、レオナルド」
ああ、だから態々防音設備のある訓練場の休憩室に案内したんだね。
「それとなグレン。ちょっと相談があるんだがいいか?」
「何だ?」
「私の2人の息子、ダラスとオーグについてなんだがな・・・」
「ダラシィードとオーガストがどうかしたのか?」
「うむ・・・何と言えばいいのか・・・あの2人がな、ちょっとおかしいんだ」
「おかしい?どんなふうにだ?」
「私はそんな教育はしていないのだが、何というか、選民思想が強くてな。自分達は選ばれた存在だとでも思っているのか、尊大な言動が多くなってきているのだ」
「まあ、あのステータスだからな。そう思っても仕方がないかもしれないが・・・そういえば、あの2人のステータスは、今はどうなっているんだ?」
「実はな、ダラスが1500、オーグが1200まで上がっているらしいんだ」
「ほう、それは中々の逸材じゃないか!」
「だがな、2人ともまだ10歳にも満たない子供だぞ?確かにここにはレオナルドと言う規格外がいるが、それを無視すると、あの2人の成長速度は速すぎる」
確かに、僕はユニークスキルの『成長補正(極)』のおかげでステータスが異常に高いけど、あの2人のステータスも異常だ。
もしかして、彼らもユニークスキルを持っているのかな?
だとしたら、例の選民思想的な言動も頷ける。
だって、ユニークスキルって超レアで、選ばれた者にのみ授けられるスキルと言われている程だからね。
「2人に何か怪しい点でもあるのか?」
「いや、教育係から話しを聞いても、怪しいことをしているわけではなさそうだ」
「なら、純粋に努力をしたのだろう」
「だといいのだがな」
「もし、お前で手に負えなくなるようだったら、一度スティード領に連れてきたらどうだ?私の騎士団は精鋭ぞろいだからな。調子に乗っている子供に、絶対に越えられない壁を見せてやることもできるぞ?」
「そうだな。その時は頼むよ」
話し合いが終わり、ルドルフ伯爵が帰ることになった。
「ああ、そうだ。私が今日来たのは、私がレオナルドに嫌味にしか聞こえない激励をしに来た、ということにでもしておいてくれ。貴族街を堂々と馬車で通って、この屋敷まで来たからな。他の貴族には当然見られているから、もし何か聞かれたらそう答えてくれ」
「分かった。いつもすまないな」
「こっちはかつての恩を返しているだけさ。気にするな」
そう言って帰って行った。ルドルフ伯爵、今までおっさんって心の中で呼び続けて、マジですみませんでしたー!
翌日、また王城に呼ばれた。いつもの部屋に案内され、いつものように3人が向かいに座った。
「すまないな。昨日聞き忘れてしまったことがあったから、また呼ばせてもらったぞ」
「いいよ、陛下。気にしないでくれよ。陛下からのご命令ならば、いつでも参上するさ」
相変わらずの陛下とお父様のやり取り。
周り人がいる時はともかく、こういうプライベートな所だと砕けた口調になる。
ある程度は慣れてきたけど、どうしても違和感が拭えない。
だって相手はこの国の王様ですよ?
「ダストレア大樹海には、おそらく来年に行ってもらうことになるだろう。お前の要望通り、7歳になるまでは待ってもらう」
「はい陛下。ありがとうございます」
僕も以前に、僕は陛下にとって孫みたいなもの、と言われているけど、だからと言ってお父様みたいに接することは出来ないですよ。
「うむ、それでだな。例の学校の方はどうだ?もう開校していると聞いているのだが」
「はい、それでしたら問題ありません。今は全員、文字の読み書きができるように勉強してもらっています。今後の予定では、2~3年目は計算や歴史、地理や政治に関する勉強を満遍なく行います。なお、1~3年の間は、魔導、武術の授業も受けてもらいます。そして4年目からは専門分野に分かれての勉強を3年間行い、卒業という形をとります」
「ほう、専門分野とな?どんなのがあるんだ?」
「はい、主に商人科、役人科、兵士科、魔導科の4つです。商人になれば、国の経済が良くなりますし、役人になれば行政に貢献できます。兵士、魔導士になれば国の戦力があがります。そして、どの課を選ぶにしても、最初の3年で全ての基礎を身に付けてもらうので、最低限の知識と武力を持つことが出来る予定です」
「なるほど。良く考えておるな。で、進捗はどうなのだ?」
これには校長であるお父様が答える。
「現在一期生は6~12歳の子供が集まり、全員同じ授業を受けてもらっています。やはり文字の読み書きに苦戦している子が多く、まだまだ成果が出ているとは言えません。しかし、中には物覚えの良い生徒もいるので、2年生になる前にテストを行い、その成績で1クラスだけ特別クラスを作ろうと思っています」
さすがにこれは臣下から王への報告なので、お父様の口調は丁寧なものになっている。
「ほう、そしてそのクラスだけは先に進む、という訳か?」
「いえ、それでは成績の差が広く一方なので、授業内容は同じで行く予定です」
「では、何が特別になるのだ?」
「それは設備です。設備を他のクラスよりも良い物にして、差をつけるのです。そして、定期的にクラスの入替テストを行い、生徒全員で競争をしてもらうのです」
「なるほど。できる者だけを伸ばすのではなく、全員を常に争わせながら、全員を伸ばすわけか」
「その通りです。そして1年の終わりには、成績の上位3名に何か賞品を贈ろうと思います。そうすれば、されに生徒のヤル気が上がることでしょう」
話しを聞き終えた陛下はしばらく考え
「うむ!面白い!これは王立学校では出来ない方策だな!通学している生徒が全員平民で、授業料が無料、貴族のようなくだらない権力争いや派閥など関係ないからこそ全員でできる競争!これは1期生が卒業した時が楽しみだ!」
「ええ、その通りですね陛下!グレン!お前にしては中々の方策ではないか!いいね!」
「ええ、これは期待が出来ますね!グレン伯爵、良かったら生徒たちの成績をテストが終わる度に送ってはくれないだろうか?どんな結果になったのか見てみたい!」
陛下、エドおじさん、カルナバル宰相が絶賛してくれています。
良かった、このやり方を考えたのは僕だということは、黙っておこう。
「ありがとうございます。しかし、これを考えたのは私ではなく、レオなのです。褒めるのならレオをお願いします」
と思ったらあっさりバラしちゃったよ!?
あ、そういえばこの人、っていうか、スティード家って手柄とかには興味がないんだった。
「ほう、お前が考えたのか?一体お前の頭の中はどうなっているんだ?よくもまあ、魔導具と言い学校と言い、次々と新しいことを考え付くものだ」
「あはははは、ありがとうございます」
まさか前世での知識です、とは言えないから、ここは笑ってごまかしておこう。
話し合いも終わり、王城をあとにする。
今回の話し合いの結果、王国から必要な人材があったら用意するので言うように、とのお言葉も頂けた。
それと、年に3回行うテストの結果を毎回宰相に送ることになった。
それから3日後、メルト兄様と王都を見て回り、お土産を買ってからスティード領に帰ることになった。
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




