第24話 あの模擬戦の真実
国王陛下との謁見が無事に(?)終わってから2日後、王都にあるスティード邸は、お客様をお迎えしていた。
そのお客様とは、エドワード=ヴィルヘルム=アステリア。このアステリア王国の第一王子だ。
昨日の謁見後に行われた模擬戦と、これからの予定について話しをしに来てくれたそうだ。
「やあ、レオ。昨日はご苦労様だったね」
「いえエドワード殿下。お気になさらないでください」
「いやいや、そんなに畏まらないでよ。いつも通り、エドおじさんとして接してほしいな」
「え、それはちょっと。さすがに不敬罪になりませんか?」
「私が良いって言っているんだから、良いんだよ」
「そうだぞレオ。こいつは公務の時はともかく、プライベートではこんななんだ。いつもと同じようにしてやれ」
「まあ、殿下本人と、お父様がそう言うのならそうします」
「ああ、頼むよ。で、昨日は本当にありがとうね。予定通りとは言え、お前には負担をかけてしまった。予想はしていたけど、ポリマスはとんでもないクズだったね。おかげで簡単にあいつを、軍から追放出来たよ」
そう、この間の模擬戦は始めから予定されていたのだ。
王都のこの屋敷に到着したその日に、お父様から説明があった。
王都の屋敷到着後、お父様の部屋に僕は呼ばれた。
「レオ、今の内にお前に伝えなきゃいけないことがある。謁見の後、お前は近衛騎士団長のディアレス殿と模擬戦をすることとなる。これは国王陛下からお前の実力が見たい、とのお達しでな。そこで国王陛下を守る精鋭部隊、近衛騎士団の団長と1対1で闘ってもらうことになっている」
「近衛騎士団長とですか?それは、大ケガをさせないように気を付けなければなりませんね」
「そうだな。だがな、おそらくお前がディアレス殿と戦うことはない」
「え?どういうことですか?」
「ディアレス殿に代わり、他の騎士、もしくは騎士団が名乗りを上げてくるだろう。最有力候補は黄牙騎士団で、次が蒼哭騎士団だな」
「その2つの騎士団と戦う、ということですか?」
「ああ、おそらくだがな。特に黄牙騎士団は悪い噂ばかりが立っている。たぶんこのどちらかの騎士団が、お前と戦おうとするだろう」
「何故ですか?」
「黄牙騎士団はお前を殺すためだ」
「何で!?」
いきなり騎士団が僕を殺しに来るって、どういうこと!?何かしたっけ!?
「私、というか、スティード家を良く思っていない貴族がいてな?性質が悪いことに、そいつらは大抵が侯爵とか辺境伯とかの上級貴族なんだよ。その理由は簡単で、伯爵家である我がスティード家の戦力が強く、それなりの戦果まで挙げている。そうすると、また陞爵するのでは?と、気の小さい連中が考えていてな。それが面白くないのだろう。そこにお前という規格外が現れた、となれば、邪魔になる前に消してしまおう、という流れになったみたいだな」
あ~つまりそれは
「僕は貴族のくだらない嫉妬で、命を狙われるってことですか?」
「まあ、そういうことだ」
頭が痛くなってきた。それって、子供を殺してまで阻止することか?
いや、ウチはそんなに欲がない一族だからかもしれないけど、何を考えているんだ?
貴族ってわけが分からない。
「それで、バックに大貴族が付いていて、ここ数年で騎士団全体の質が上がってきているが、ろくでなしの集まりである黄牙騎士団がそういった貴族に頼まれて、お前を殺そうとしてくるだろう」
「蒼哭騎士団もそうなのでしょうか?」
「いや、あいつらは純粋に強者と戦うのが好きな戦闘狂の集団だ。ただ、加減を知らん連中だ。もしかしたらアホな貴族に唆されて、お前と戦おうとするかもしれない」
「はあ~。分かりました。その覚悟はしておきます。で、そうなった場合、僕はどうすればいいのでしょうか?」
「簡単だ。黄牙騎士団だったら、徹底的に潰せ。騎士団長のポリマス以外は殺してしまっても構わん。蒼哭騎士団だった場合は、誰1人殺さないように手加減し、制圧しろ」
「大丈夫なんですか?騎士団の人を殺してしまっても?」
「そこは心配するな。お前も知っている男が、必ずお前を守ってくれる」
「誰ですか?」
「それは当日までのお楽しみだ。だが、ひと目見ればソイツが味方だと分かるはずだ」
というやり取りがあった。
その男とはもちろん、今、目の前にいるエドおじさんだったわけで。
だから僕は黄牙騎士団との模擬戦中に、何度かお父様とエドおじさん、それと共犯の国王陛下の方を見て、確認を取っていた。
国王様が、やれ、ってサインを出しているんだから逆らえないですよね。
「最近の黄牙騎士団は素行が悪くてね。いや、もともと悪かったんだけど、もう街のゴロツキと大差がないことをしでかしていたんだよ。ただここ数年で、黄牙騎士団が異常に強くなっていてね。軍功をちゃんと立てて、かつ多くの貴族が後ろ盾になっていたから、処罰しようとしても手を回されてしまってね。おかげでどんどんエスカレートしていってね。陛下も手が出せなくて頭を悩ませていたよ。どうにか出来ないかと、ずっと機会を伺っていたんだ」
「そんな時に、規格外のステータスが持つ子供が、つまりお前が現れてな。俺の方からエドに提案してみたんだよ。王城で謁見からステータスの確認、それから模擬戦までの一連の流れをな」
「その話を聞いた時は、耳を疑ったよ。いくら何でも、5歳の子供にそんな危険なことはさせられるものか、ってね。そしたら、じゃあ今度腕試ししてみるから、しばらく待てと言われてね」
「で、この間の手合わせの結果を話したら、コイツも納得してくれてな。まあ、俺のことを良く思っていない奴らは結構いる。必ずそいつらが黄牙騎士団を使って、お前を消そうとしてくることは予想できていたからな」
「そうだね。もしかしたら蒼哭騎士団が戦いたがるかもしれなかったから、今日は任務を与えて、王都から離れさせしね」
「もし黄牙騎士団が動かなかったら、どうしたんですか?」
「そしたら、そのままディアレスと普通に模擬戦をしてもらって終わりだったね」
「そういえば、ディアレス騎士団長はこの話を知っていたんですか?」
「もちろん。黄牙騎士団は騎士の恥さらしだ!といつも怒っていたからね。この話しを持って行った時は、とても喜んでくれていたよ。ああ、そうそう。陛下とディアレスがレオにはとても感謝している、と言っていたよ」
一国の王から感謝されるなんて、とても光栄なことだね。
家に帰ったら、アンやシャルに自慢しよう、なんて考えていたら
「今は忙しくて時間が出来ないけど、陛下がもう一度レオと話しがしたいって言っていたから、もうしばらく王都にいてね?おそらく10日はかからないと思うよ」
何ともう一度謁見することになっていた。でも、時間が出来ないって、やっぱり国王は多忙なんだね。
「分かりました。それにしても、やっぱり国王とは忙しいんですね?」
「あ~、今は確かに忙しいんだけど、公務でってわけじゃないんだよ。ポリマス達黄牙騎士団を尋問していてね。それで得た情報から、いろいろ調べているんだ」
「黄牙騎士団といえばあれか?ここ数年で、急激に強くなった理由を探っているのか?」
「ああ。それがまっとうな手段で手に入れた強さなら良いんだけど、もしそうでなかった場合、その方法は?情報はどこから?他にそれを知っている者は?調べることは山のようにあるのさ。陛下がやらなくてもいいことなんだけどね、どうしても自分で調べたいって言って聞かないんだよ」
ふと疑問に思ったことがある。
「あの、黄牙騎士団ってそんなに強かったんですか?正直に言って、スティード騎士団と比べてると全然弱ったですよ?技術なんか殆ど無かったですし、死ぬ覚悟なんか持ってすらいませんでしたよ?」
そう、模擬戦をしてみた感想としては、ちょっと訓練したようなレベルの技術しか持っていない、スティード騎士団に来たら下っ端にしかならない程度のレベルだった。
相手を殺す覚悟はあっても、自分が殺される覚悟は無い。
王国を守る騎士としての、心構えすらできていない連中だった。
「ああ、確かにあの騎士団は、数年前までは騎士団のなかでは最弱で、騎士のゴミの掃き溜めと言えるような連中だった。それが、ある時を境に急激に強くなってな。年に1回、騎士団員はステータスの測定があるのだが、測定するたびに年々上がっていき、ついにはステータスだけなら王国でもトップクラスの騎士団となったのだ」
「そうなんだよ。だけど、そのステータスの割には技術は拙いままだし、そんなに訓練しているわけでもない。明らかに不自然でね、ずっと理由を調べているんだよ」
それから聞いた話を要約すると、ステータスだけ上がったチンピラ同然の黄牙騎士団は、素行はともかく、武功を多く上げた。
そして、その力に目を付けた貴族達がバックに付き、さらに冗長していった。
その貴族達が邪魔をして、調査も思うように進まない。
でも、今回の件で騎士団を解体する口実が出来、さらに王命を無視して模擬戦で真剣を使って僕を殺そうとしたことで、王家が参加した騎士の身柄を拘束することが出来た。
これから調査が大きく進展するだろう、ということだった。
エドおじさんは、もう一度僕にお礼を言って、王城に帰って行った。
翌日から僕は、王都を自由に散策した。
もちろん、ただ散策するのが目的ではないく、いくつか狙いがある。
第1は純粋に好奇心から。
これだけ広い街を、この世界に転生してから初めて見たので、街がどうなっているか興味があったからだ。
支配圏を使えば、屋敷にいてでも把握は出来たのだけど、そんな無粋な真似はしません。
自分の足で歩き、目で直接見るのが楽しいのです!
第2は謁見した次の日から、複数の敵意ある視線を感じるようになった。
この視線の相手はどこにいるかは分かっている。
もちろん、支配圏は使っていません。
スキルの『気配察知』で、十分に分かってしまうのです。
で、この視線の相手、あわよくば指示を出したヤツまで炙り出せないかな、と油断している風を装っている。
第3は家族へのお土産を選ぶため。
最初の予定では、謁見を終えたらすぐに帰るはずだったけど、先日エドおじさんが伝えてきたように、国王陛下にもう一度謁見することになった。
なので、陛下の都合がつくまで、最長で10日ほど時間が出来てしまい、そんなに長い時間を王都で過ごすなら、家で待っている家族に土産でも買ってこい、とお父様に言われ、お小遣いをもらった。
そう、お小遣いです!
この世界で初めての、自分で使えるお金を手に入れたのですよ!
ちなみに渡されたのは、金貨1枚と大銀貨5枚と銀貨10枚。
日本円にして約160万円也。
子供に渡すお小遣いの金額ではないね!どんだけ金持ちなんだ?この世界の貴族って!?
たぶんだけど、大量に作った魔導具のお礼なのかもしれないね。
と、以上3つの目的を持って僕は今、中級街から大通り周辺を散策している。
楽しい。とにかく楽しい。
お父様も僕の戦闘力を知っているので、護衛なんて邪魔者を付けることもなかった。
僕は今、自由を満喫しているのだ!
王都を散策して3時間くらい経過した頃、僕は大通りから横にずれた路地を歩き始めた。
周りをキョロキョロ見るのに夢中になって歩いていたら、いつの間にかこんな所に来ていた、と見られるように装ってみた。
なぜそんなことをしたのか?答えは簡単。
僕を監視する視線が、ついに20を超えたからだ。
ハッキリ言って不快です。気持ち悪いです。
きっとストーカーに付きまとわれるのってこんな感じなんだろう、と思ってしまうくらいに、気味が悪いです。
なのでまとめておびき出して、2度とストーキング、じゃなかった、2度と監視が出来ないようにしてやろうと思いました。
さあ、人気が無い物騒な所まで来ましたよ。
ここを曲がれば袋小路だ。
襲撃するには絶好の場所だよ?という訳で、賊は早くカモーン!
なんて、都合よく行くわけないよね~?
と思ったら、ゾロゾロと出てきちゃったよ。
袋小路に入った僕を囲むように、総勢22名の不審者。
全員もれなく暗殺者です。
それとは別に、上の方に3人。
僕が正面の22人に意識が向いている時に、頭上から奇襲をかける係だね。
バレているから、奇襲にはもうならないんだけどね。
「何か僕に御用ですか?」
「・・・・・・・」
声をかけても反応なし。
「何ですかあなた達は?こんな子供を大人数で囲って。はっ!?まさか変質者ですか!?子供の男にしか性的興味を持てない、歪んだ性癖を持つ変質者がいると聞いたことがあります!あなた達がそうですね!?ちょっと近寄らないでもらえますか?変質者の異常な性癖が移ったら最悪なので!」
「・・・・・!」
挑発してみた。
反応は少しあったけど、相変わらず無言。
じゃあ、少し揺さぶってみようかな?
「あれ?もしかしてこの変質者の集団は、全員しゃべれないんですか?困ったな~?ねえ、そこのレガノル公爵の暗殺者さん。何か言ってくださいよ?」
「!?」
「やっぱりしゃべれないのか。じゃあ、その横のツェルド子爵に雇われた3人はどうですか?もしくは一番後ろにいる、ワグマイカ伯爵家の執事さんでも良いんですけど?」
「「「!?」」」
「あれ?本当に話せないの?もうこの際、上にいる闇ギルドの暗殺者さんでもいいですから、誰かしゃべってくれませんか?」
「「「!?」」」
これだけやっても、誰も話してくれない。
ビックリしてくれたから、揺さぶりは成功したのかな?
まあ、これからもっとビックリすることになるけど。
「ああ、そうそう。あなた方を2重で監視していた人達は、全員眠ってもらっています。どうやったかは秘密です。なので、今からここで何が起ころうとも、誰も助けてくれませんし、それどころか誰も気付いてくれません。もちろん、僕を殺そうとしているあなた達を逃がすつもりもありません」
そう言って殺気を放つ。
文字が密集していて読みにくいと感じたので、また少し書き方を変更しました。




