第2話 転生前 狭間の世界
本日2日目の投稿です。
誤字脱字、文法の誤りがあると思いますが、ご容赦ください。
目を開けたらそこは、真っ白な空間だった。横になっていた体を起こし、周りを見渡しても、只々白い色だけが支配している何も無い空間。
なぜ僕は、ここにいるのだろう?
直前の記憶を思い出してみる。あれ?僕は確か死んだはずじゃなかったっけ?
「ほっほっほっ!やっと起きたみたいじゃの!」
「えっ!?・・・エェッ!?」
声がした方を向くと、1人の老人がバサッと音を立てて振り向いた。
ついさっきまで何も無かったこの空間に、何の前触れもなく現れたことに驚き、その見た目のインパクトに更に驚いてしまった。
見事なまでの白髪はオールバックでまとめ、髭は上品に整えられ、目尻は下がり、柔和そうな印象を受けた。が、問題は首から下にあった。
金の刺繍が施された派手なスーツ!全ての指には大振りの宝石がはめ込まれた指輪!手首には黄金の時計とブレスレット!首元にはこれまた黄金のネックレス!そして、何を考えているのか、でっかく虹色に輝く「愛」一文字が書かれたマントを羽織っている。
はっきり言って、マント以外は、どこぞのマフィアの首領か、金に物を言わせた下品な成金の装いとなっている。しかも似合ってない!違和感しかないよ!特にマントの存在感が半端ない・・・
あっ、よおく見ると、靴まで細かい宝石を散りばめているのか、キラキラ輝いてるよ。
「ほっ!この高貴な者が身に纏う衣装に驚いてくれたみたいだのう!わざわざ用意した甲斐があったわい!どうじゃ?似合っておるかのう?」
僕の驚愕に満足してくれたのか、その御老人は嬉しそうにニコニコしてくれている。
どうしよう。こんなに喜んでいるのに下品だ、似合ってないだとか言えない。どう応えようか迷って固まっていると
「おお、すまんすまん。いきなりこんな何もない所に、儂のような爺と2人っきりになってて訳が分からんじゃろう。まずは説明からじゃな。ここはな・・・」
良かった。服装の話題はここで打ち切りになりそうだ。
「死後の世界じゃ」
あ、やっぱり僕は死んだんだ
「そして儂は、簡単に言うと神じゃ」
「・・・・・・・・え?」
今、なんか、とんでもない単語が出たぞ?死後の世界はともかく、神?
「正確にはここは、あの世の一歩手前の狭間の世界での、儂が君の魂を繋ぎ止めているのじゃよ」
ということは
「取り合えず僕は、死んだってことでいいですか?」
「うむ。そうなるの」
「そうですか。それで、あの、神って?」
「まあ、正確にはこの世界の魂の管理をしている者じゃな。人間界に何か干渉できるわけでもないしの」
だめだ。もう訳がわかんない。なんで神が僕と一対一で会話なんてしてるの?
「あの、その神様が僕に、何の御用でしょうか?」
「その話の前に、神楽星夜君。君は死ぬ直前のことを覚えておるか?」
「ええ、はい。覚えています」
僕の名前は神楽星夜。17歳で帰宅部の県立桐谷高校の2年生だ。身長は176㎝で、趣味は筋トレ。消防士で人助けと筋トレが趣味だった父と、元婦警で、同じく人助けと筋トレが趣味の母の背中を見て育った為か、僕も人助けをするために、日々体を鍛え続けていた。
その両親も、僕が12歳の時に人助けの為に命を張り、亡くなった。それから5年間、両親との思い出の詰まった家を1人で守ってきた。
隣家の高原家とは、父親同士が友人で、家族ぐるみの付き合いをしていた。特に同い年の次女、雪乃とは生まれた時からの付き合いで、学校のクラスもよく同じになり、仲が良かった
両親が亡くなった後も、高原家の皆は今までと変わらない、いや、今まで以上の付き合いをしてくれて、特に雪乃は1人きりになった僕が悲しみで落ち込んでいる時に
「おじさんとおばさんの代わりに、私がずっと星夜君と一緒にいるよ」
と、僕が立ち直るまで、ずっとそばで支えてくれた。
高原家の皆には、感謝してもし足りない。
1番辛い時に支えてくれた雪乃には、僕が必要とされなくなるまで何があっても守ろう、そう誓った。
そんな雪乃に誘われて出かけたショッピングモールで、突如爆発が起こり、上から瓦礫の雨が降ってきた。悲鳴を上げて逃げ惑う周りの人たちと一緒に、恐怖に震えている雪乃を抱えて外への出口を目指して走ったが、爆発の規模が大きく、また、ショッピングモールの中央付近に居た為、脱出が遅れてしまい、瓦礫に逃げ道を塞がれてしまった。
すぐ上で爆発が起こり、見上げれば無数の瓦礫が降ってきた。とっさに雪乃を下にして覆いかぶさり、両手を突っ張って自分の体で屋根になる。直後、背中に瓦礫が降り注ぎ、そのあまりの衝撃に吐血をしてしまう。
「星夜君・・・」
下から弱々しい声がして視線を向けると、そこには守ると誓った恩人が、涙を流していた
「ごめんね・・・私が買い物に付き合ってって言わなければ、こんなことにならなかったのにね・・・」
「気にするな。ゴフッ!なんとかお前だけでも助かるように、僕が降ってくる瓦礫から守るからさ、もう少し我慢してくれよ?」
少しでも安心させるために笑顔で言ってみたが、吐血し、更に降ってくる瓦礫によってケガをし続けている状態では、無理があったかな。
「もういいよぉ・・・もう頑張らなくていいよぉ・・・」
「そうはいかないんだよ。僕はお前を守るって誓ったんだから。最期まで頑張ってみるよ」
正直、もう体の感覚が無い。両親に倣って鍛え続けた体のおかげで今まで耐えてきたけど、そろそろ限界のようだ。視界もぼやけてきたし、少しずつ音も聞こえなくなってきた。
「あっ」
雪乃の声がやけに良く聞こえた。そして
「星夜君、ずっとずっと好きでした」
その言葉に自然と
「僕も好きだったよ。今までありがとう」
その直後、とてつもない衝撃を背中に感じ、僕の意識は無くなった。
たぶん、この時死んでしまったのだろう。
「そうだ雪乃は!?あいつはどうなった!?生きているのか!?」
ついつい神様相手に、襟元を両手で掴んで詰め寄ってしまった。神様相手に。
「はっ?!申し訳ありませんでした!」
慌てて手を放し、すぐさま土下座をする!いやだって、神様相手だよ?日本人における謝罪の最上級をしなければならないのは当然でしょ。
「あ~、え~よ、え~よ。それだけ雪乃さんのことが心配だったんじゃろう?それにすぐに謝ってくれたしの、このことは不問にするのじゃ」
どうやら許していただけたようだ。けど今はそれよりも
「改めて、雪乃はあの後どうなったんですか?」
「うむ、それはな」
ニコッと神様が笑う。その表情を見て安心した。ああ、無事だったのか。
「君と一緒に瓦礫に潰されて亡くなってしまったよ」
「は?」
「じゃから、君が最後に感じた衝撃は、特大の瓦礫が落ちてきた時の衝撃でな。君と雪乃君は一緒に瓦礫の下敷きになり、死んでしまったんじゃよ」
目の前が真っ暗になった。じゃあ、僕は雪乃を守ることはできなったのか・・・
いや、落ち込む前にやることがある!
「それでなっ・・」
「なんであんたは笑顔でそんなこと言えるんだよ!」
さっきとは違い、今度は確固たる自分の意志で神様の胸倉を掴んだ。神様は更に何か言おうとしていたが、関係ない。
それでも神様は、より一層口元と目元を緩ませた。さらに笑みを深めたのだ。
それを見た瞬間、頭の中が真っ白になり、無意識に神様の顔面を殴っていた。
いや、その直前で拳が何かにぶつかって止まっていた。それでも僕は全力を持って拳を押し付け続けた。が、それ以上拳が前に進むことは無かった。
「やはり君は良いのう」
怒りで我を忘れていた僕の耳に、今まで以上に優しい、慈しむような神様の声が届いた。
「誰かの為、いや、愛する者の為なら、たとえ神が相手でも本気で怒り、立ち向かうことができるのは、とても心が強いのう」
?どういうことだろう?
「君は儂を神だと認識し、敬い、畏れながらも、愛する者が貶められたら立ち向かった。なかなか出来ることではないぞ?」
「僕は試されたんですか?」
だとしたら、いくら神様でも悪趣味だ。
「いやいや、これは偶々じゃ。さっきの話には続きがあっての」
そう言えば、胸倉を掴む直前に何か言いかけていたような・・・
「雪乃さんはな、別の世界に転生してもらったんじゃよ」
・・・・・・・・・・・
「はいッ!?」
転生?何だソレ!?
「えっ、じゃあ、えっ・・・結局どういうことですか?」
「何じゃ、君は異世界転生を知らんのか?」
むしろ神様の方が驚いていた。何で?
「最近は異世界転生をテーマにした創作物が多く、ここ最近、異世界へ転生させた者は皆、すでに知っておったのじゃがのう。漫画やらラノベやらと、他の者たちは言っておったが、君は見ていないのか?」
あーなるほど。そういうことか。
「すみません。お恥ずかしい話し、僕は時間があれば体を鍛えるか、勉強をしていたので、そっち方面は殆ど。ゲームならやっていたのですが、異世界転生がテーマのゲームは未経験でして。」
そうなのだ。人助けをする為に体を鍛え、何かあった時に困らないように勉強し続けていたら、いつの間にかそれが趣味になっていた。漫画は雪乃の部屋にあった物以外は、ほとんど読んだことがないのだ。
「まあ、簡単に説明すると、この地球で生き返らせることはできんから、別の世界で生まれ変わって、新しい人生を歩んでみんか?というのが異世界転生じゃ。地球の死者全員を転生させることは、人数が多すぎて出来んから、儂らが厳選した者たちだけじゃがな。もちろん、いろいろ特典を付けてあげて、なるべく生活に困らないようにしたうえでじゃ」
「特典ですか?例えば?」
「まず記憶を引き継いだままだったり、特殊な能力を持ったり、高い地位の子供に生まれ変わったり、いろいろじゃ。チートとか言っておったのう」
「なるほど。では雪乃は別の世界で生まれ変わって、幸せになれる、ということですね」
「幸せになれるかは、雪乃さん次第じゃがな。何せ、人生何が起こるか分からん。君の人生だってそうじゃったろう?」
「確かにそうですね」
でも、そうかあ。唯一の気掛かりだった雪乃のことが知れて良かった。未練が無いと言えば嘘だが、もう手が届かない所に行ってしまったから、これで満足としよう。じゃあ、そろそろ
「神様」
「ん?」
姿勢を正し、今までの人生の中でも、最も深い感謝を込めてお辞儀をする。
「僕なんかのために、わざわざお時間を頂き、ありがとうございました。雪乃の事を教えてくださり、ありがとうございました。もう未練はありません。ここは狭間の世界でしたか?そろそろ僕をあの世に送ってください」
神様に感謝の意を伝え、あの世に行く決意をする。だが、
「は?」
「え?」
神様の方を向くと、口を開けて呆けている。何か間違ったかな?
「あの、神様?」
「ハッ!?イヤイヤイヤイヤ!君は何をいっているのじゃ!?」
なんかすごい慌てている。
「え?神様は僕に雪乃の事を伝えるために、この狭間の世界に魂を繋いでくれているのですよね?だから用が済んだので・・・」
「今までのは只のサービスじゃ!本題はこれからじゃ!」
「え?」
本題があるの?なんだろう?雪乃の事を教えたから、何か対価を要求されるのかな?でも今サービスって言ってたし、何だろう?
「君も異世界転生するんじゃよ!」
・ ・ ・ ・え?
「マジで?」
「マジで!」
「何故です?さっき転生するのは厳選された者だけって言いませんでしたか?」
「だから!厳選した者に君が含まれているの!」
なぜ?なぜだ?なにゆえ?なぜなの?だめだ、混乱してきた。
「混乱しておるの?なぜ君が選ばれたかと言うとじゃな、儂の選考基準は、どれだけ愛が深いか、じゃ!」
「愛!?」
「そうじゃ。君は命を懸けて愛する者を守り、命が尽きるその瞬間に、愛の告白され、成就した!この世で最も美しく、死の瞬間まで輝くもの!それが!愛じゃ!」
バサッ!
マントを翻し、虹色に輝く「愛」一文字を強調する神様。どうしよう。なるべく見ないようにしていた服装に、どうしても目が行ってしまう。
「君の愛!しかと見届けさせてもらった!故に!神楽星夜君!君に異世界転生する資格あり、と儂は判断したのじゃ!」
神様がとても光輝いている。体中に散りばめられた、悪趣mゲフンッゲフンッ!豪華な装飾品と相まって、とても眩しい。
「と、言うわけで、君、異世界転生ね」
と相成りました。
「ところで君、今失礼なこと考えなかった?」
「まさか!気のせいですよ!」
次回は明日投稿する予定です。