第17話 教会でのあれこれ
ちょっと短めです。申し訳ありません。
意識が体に戻り、目を開ける。周りにいた全員が僕を見ていた。あれ?そんなに時間は経過していないはずなんだけどな?それとも女神様の話がウソで、実は普通に時間が流れていたりして。
「レオ・・・」
声の方を向けば、お父様が唖然とした表情でこちらを見ていた。
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「今のは何だ?」
言っている意味が分からない。
「今のとは、何のことでしょうか?」
女神様と会っていたけど、そんなこと他の人が分かるわけもないし。
「お祈りを始めてしばらくしたら、お前の体が急に金色に光りだしてだな・・・」
「え?」
体が金色に光った?何で?
「お、お、おおぉぉおぉ・・・」
うん?司祭様が涙を流しながら、両手を組んで、片膝をついてこちらを向いている?って、これ、僕に対してお祈りのポーズを取っていない?
ふと周りを見ると、祈りの間にいたシスターまでも同じように、僕に祈っていた。何で?
「レオナルド様・・・あなた様は、女神の使徒様であらせられますか?」
「え、何で知ってるの?・・・あ」
状況に混乱し、つい口を滑らせてしまった。その結果、
「やはり!伝承の通り、使徒様だったのですね!?」
司祭様が感極まって、叫んでしまった。それを聞いていたシスターは、感動で泣き崩れ、騒ぎを聞いて入室してきたシスター達も、事情を理解してた途端に床に跪いて、涙を流し始めた。
「私の息子が女神の使徒だと・・・?」
お父様はすでに混乱している。お母様はというと
「あらあら、レオは凄いわね~」
相変わらずだった。本当にこの人、全然動じないな?
しばらくの間、教会の祈りの間にいる殆どの人が、感動の涙に震えていた。例外は3人。混乱しているお父様と、いつも通りのお母様。そして、もうどうでもいいや、と諦めて、椅子に座っている僕。
「あまりの事態に取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」
司祭様を筆頭に、シスター達が頭を下げてくる。
「それでは、レオナルド=シオン=スティード様が女神の使徒様であるということを、すぐに教皇様にお伝えさせて頂きます」
恭しく頭を下げ、司祭様が僕に報告してくる。
「すみません。その前にいくつか質問をしてもよろしいでしょうか?」
「はい、使徒様。何なりとお聞きください」
使徒様って、何かくすぐったいような、居心地が悪いような、変な気分になるけど、今はそれよりも質問だ。
「どうして僕が、女神の使徒だと気付いたんですか?」
そう、なんでだろう?女神様に使える教会の関係者だけ察知できるのか?それとも誰でもできるのか?それを知らなければ、今後の行動に支障をきたすだろう。何せ、女神の使徒とは、女神教において女神セレス様の次に尊い存在、というか敬うべき、崇拝すべき存在らしい。世界中の殆どの人が女神教徒である以上、他の人にバレると大騒ぎになり兼ねない。
「それは、過去に女神の使徒様が祈りを捧げると、体が眩い金色の光りに包まれた、という伝承が残っているからです。以来、わたくし共は、祈りを捧げる方々の中に金色に光る御方がいないか探していたのです。そして遂に、見つけることが出来ました・・・」
途中から司祭様がまた、涙を流してしまった。そう言えば、お父様が言っていたっけ。僕がお祈りしていたら、金色に光っていたって。なるほどね。
まだ涙を流している神父様を無視して、次の質問に行く。
「教皇様に報告すると、僕はどうなるのでしょうか?」
「はい、それはですね・・・」
司祭様が説明してくれるらしい。せめて涙と、ついでに垂れてきた鼻水は拭いてください。
「ます女神の使徒様は、女神セレス様の代行者、ということはご存知ですよね?つまり、この地上においては、女神様と同等であると位置付けられております」
代行者なのに、同等の扱いなの?と、ツッコみたい衝動に駆られるが、ここはガマンして聞く。
「もし使徒様を見つけたら、すぐに教皇様に報告することになっております。その後、女神教の総本山である、セレストメディエル聖教国からお迎えが参りますので、そのまま聖教国の首都、セレスハートまで行って頂きます」
あ、先が読めてきた。そのまま聖教国に束縛されて、象徴として祀られる、とか、信徒を導いてほしい、とかになる流れじゃない、これ?
「その後のことは、教皇様が預かることとなっておりますが、おそらく、次代の教皇様になっていただくことになるでしょう」
やっぱり。要は、女神の使徒なんだから、女神教に尽くすのは当然だよね?じゃあ、トップに立ってもらうからよろしくね。ということらしい。
それに対する僕の答えは、NOだ。僕にはやることがある。探さなければならない人がいる。ついでに女神様からの依頼もある。どうにか出来ないかな?
両親を見てみる。最初は驚いていたお父様は、今は落ち着いていて、お母様と一緒に喜んでくれている。これは助け舟を期待できないね。自力でどうにかしないと。何か方法は無いかな・・・。そうだ!
「すみません司祭様。教皇様への報告は、しばらく待ってもらえないでしょうか?」
「え?なぜですか使徒様?」
司祭様だけでなく、シスター達も「は?何言ってくれちゃってるのコイツ?」みたいな、心底不思議そうな顔を向けてくる。
「実は僕、女神の使徒になるにあたって、女神様から依頼を受けているんです。」
「そうなのですか?その依頼とは、どんなものなのでしょうか?差支えなければ、教えていただけないでしょうか?」
「申し訳ありません。詳しいことは説明できないのです。ただ言えることは、この依頼を達成するためには旅に出なければならないのです。それも、準備期間を含め、数年はかかってしまう旅です」
ウソは言っていない。女神様からは、3年以上5年以内の間に、ダストレア大樹海の中心にある山脈にいる龍王に会え、としか言われていない。これはまぎれもなく旅ですよ!
「そうなのですか?ですが、それは聖教国に行った後でも良いのではないでしょうか?」
「確かにそうですね。ただ、女神様からはレベルも上げるように言われているのです。その為には、毎日訓練をしなければなりません。聖教国へはそれなりに時間がかかってしまいますよね?そうすると、女神様の言いつけを守れなくなってしまうのです」
女神様に言われた、を強調して話す。女神教の教徒として、女神様の言葉を無視することは出来ないはず。そうでないと僕が困る!
司祭様の反応は
「分かりました。女神様からのお言葉でなるのなら、それを順守しなくてはなりませんね」
勝った!これでしばらくの自由を得た!
「ですが、教皇様には女神の使徒様が現れた、と言うことだけでもお伝えしてもよろしいでしょうか?」
う~ん、どうしようか?ちょっと悩んで
「分かりました。ただし、名前は出さないようにお願いします。いらない混乱や騒動が起きるのは防ぎたいので」
「ありがとうございます。それでは、レオナルド様が女神の使徒様であると分からないようにして、報告させていただきます」
「お願いします。女神様からの依頼を全て完遂した後、改めて伺いますので、名前の公表はその時までお待ちください」
「分かりました。その日が1日でも早く来ることを、心よりお待ちしております」
ふぅ~。何とかなった。これでしばらくは大丈夫だろう。最低でも、あと10年は自由でいたいからね。
え?最長でも5年じゃないのかって?はっはっはっ、ちゃんと言ったでしょう?女神様の依頼を全て(・・)完遂したら、って。女神様のパシリと言うことは、きっと他にも依頼があるはずだからね。
あ、そうだ。
「申し訳ありませんが、このことに関して、全員他言無用で願います。これは女神の使徒としての僕からの依頼です」
「分かりました。皆もそれで良いですね?」
司祭様が了承し、シスター達に声をかける。全員頷いてくれているので、多分大丈夫だろう。念の為、さらに釘を刺しておこうかな。
「ありがとうございます。これが守られなかった場合は、女神様への背信行為となりますので、重々お気を付けください」
「はい。肝に銘じておきます」
これで大丈夫だろう。
その後も、しばらく司祭様と話して、教会を後にした。
「はあぁ~。レオにはお披露目会でのステータスから、魔導具の作成、挙句には女神の使徒様とか、本当に驚かされてばかりだな。いつから女神の使徒様になったのだ?」
帰りの馬車の中で、疲れた顔のお父様がため息とともに、質問してきた。
「今さっきです」
「は?」
「ですから、先ほどのお祈りの最中に女神様とお会いし、そこで依頼を受け、女神の使徒になりました」
「女神様に会っただと?」
いつもなら大声を出して驚くお父様でも、さすがに声を潜めて驚いていた。大声を出せば、御者や近くを歩いている人に聞こえてしまうからね。もしくは単純に疲れていて、大声を出す元気が無かっただけか。
「はい。お祈りをした瞬間に、意識だけ別の世界に移動され、そこでお会いしました」
「待て。理解が追い付かない。普通、女神の使徒様は声を聴くだけではないのか?」
「おそらく、情報が正しく伝わっていなかったのでしょう。少なくとも僕は、お会いしてお話をしましたよ」
お父様の脳が許容量を超えてパンクしたのか、呆けた顔で固まってしまった。お母様?お母様は、僕を膝の上に乗せて、ニコニコしながら抱きしめたり頭をなでたりしてくれている。もう5歳、前世と合わせると22歳の僕としては、ちょっと恥ずかしい。
そのまま家に到着した。馬車を下りる前に
「お父様、お母様、申し訳ありませんが、他の家族にもこのことは内緒にしてもらえないでしょうか?余計な騒動を巻き起こしたくないのです」
結構切実にお願いしてみると、あっさりと了承してもらえた。
「分かった。いいだろう。レオ、こちらからも1ついいか?」
真剣な表情で、お父様が見つめてくる。ギュッと、僕を抱くお母様の腕にも力が入る。
「お前がどんなステータスを持っていようとも、例え何者であっても、私達の息子であり、家族であることは決して変わらない。困ったことがあれば、必ず相談してくれ。全力を尽くすからな」
嬉しい言葉である。
正直に言って、不安だった。人外とも言えるステータスに、あり得ないスキル。極めつけは女神の使徒である。これが権力に執着するような家族であったのなら、喜んで利用しようとすり寄ってくるだろう。
だがスティード家は違う。自分の持つ権力など、興味が無いのだ。磨くのは己の武。守るべきは民。それ以上でもそれ以下でもない。だから、不気味がられて距離を取られてしまうか、世界の為にすぐに聖教国に行け、と言われるのではないかと思ってしまっていた。
そんな不安も、今のお父様の言葉、そして、馬車の中でずっと僕を膝に乗せて抱えているお母様の行動で、改めて、この家族の愛を知った気がした。
だから
「ありがとうございます」
そう返した所で、馬車の扉が開けられ、そのまま家の中に入っていった。
親子3人、手を繋いで。
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