第15話 ルドルフのおっさんがおかしいぞ?
「貴様、どんな不正をしたんだ!」
大絶叫に包まれる中、横にいた自称、真の強者(笑)のオーガストが突っかかって来た。
「いや、何もしていないよ?普通にステータスを鑑定石で見せただけだし」
「ウソだ!」
ついさっきまで散々コケにしていた相手が、実は自分より遥かに強かった、だなんて認められないんだろう。まあ、実際はチートスキルのおかげなんだけど、そんなことをコイツに教えてあげる義理はない。無視しよう。
「そうだ、証拠だ!そのステータスが、ウソではないという証拠を見せてみろ!」
無視していたら、なんか言い始めた。
「証拠も何も、鑑定石で見えた数値なんだから、それ以外にどうしろと?」
「鑑定石はアテにならない!」
何言いだしてんのコイツ?
「改竄のスキルを使用すれば、鑑定石で見れるステータスの数値など、いくらでも変えられる。お前の父が改竄を使用できるのは知っているんだ。お前も改竄を使って不正しているんだろう!?」
え?お父様、改竄持ってるの?初めて知った。それよりも、ここまで食って掛かってくるのは不自然だな?もしかしてコイツ
「そう言う君こそ、やけに高いステータスじゃないか?やけに不正に詳しいみたいだけど、もしかして自分が何かやっているんじゃないのかい?」
「はっ、バカバカしい!俺のは努力した結果だ!」
否定したが、一瞬動揺したのを見逃さなかった。つまり、お前の方が何かやっている、と。まあ、見なかったことにしてあげよう。
「そうなんだ。僕も努力した結果なんだけどね?それを否定するってことは、オーガスト君。今の自分が努力したってのを否定しているようなものだよ?」
「ふざけるな!お前のはあり得ないんだよ!」
INTがいくら高くても、所詮は5歳児。自分は正しくて、他が間違っている、というのを地で行くタイプだね。話が通じないよ。
ふと周りを見ると、全員がこちらを見ている。未だに興奮しているのは、目の前のオーガストのみとなっていた。
「今年は規格外が2人もいたが、それだけこのアステリア王国の未来は明るい、と言えるだろう。これからも、子供たちの健やかな成長を願う。」
あの後、落ち着きを取り戻した大人達により、なんとか場は収まった。というか、皆の脳の許容量がパンクして、一周回って冷静になった感じかな。まあともかく、アルバート侯爵の計らいにより、今年のお披露目会はここに終了した。
皆が大広間を後にする中、アルバート侯爵から、スティード家とノーマン家だけ残るように言われた。何でも、僕とオーガストのステータスが高かったため、国王陛下に報告しなければならず、そのための打ち合わせを今からするそうだ。
お父様、ルドルフのおっさん、アルバート侯爵だけが別室で話し合いをして、その間、残った家族は別室で休んでした。もちろん、スティード家とノーマン家、別々の部屋で。
お父様を待っている間、家族から質問攻めにされた。あの、普段から殆ど動じないお母様まで興奮していた。やはり聞かれたのは、勇者の称号を持っているのか?何故そんなにレベルが高いのか?どうやって上げたのか?何を隠しているのか?などなど。
これらの質問は、どうせお父様が戻ってもされそうだったので、家族が全員揃ったら、必ず話す、という条件で、今は落ち着いてもらった。しかし、興奮冷め止まぬ感じで、僕への質問は無くなったが、家族、執事、メイド、騎士達がまだいろいろ話している。
ああ、アンとメルト兄様はお休み中です。アンはまだまだ小さいからおねむで、メルト兄様は、お披露目会中に、周りの貴族、主に親同伴の女の子達に囲まれて、挨拶というか、あわよくばお近づきになろう、という魂胆の、貴族の付き合いに巻き込まれてお疲れなのだ。まあ、僕のステータス発表がトドメを刺した、とも言える。部屋に入るなり、疲労で倒れてしまった。メルト兄様、お疲れ様でした。
しばらくして、お父様が部屋にやって来た。今日はこのままアルバート侯爵に御厄介になり、明日、領地に戻ることになった。
さあ、皆お待ちかねの質問ターイム!と、思いきや、話し合いが終わったお父様も、さっきまで興奮していた皆も疲れてしまったようで、明日、改めて話すことになった。
皆が部屋で休んでいる間、お父様に気分転換に散歩してきたらどうかと提案された。アルバート侯爵にも、邸内を自由に歩いても構わないとも言われているそうなので、ちょっとアイゼン侯爵邸を散歩しようと思い、通路に出ると、ルドルフのおっさんが待ち構えていた。
できれば会いたくなかった人物だ。支配圏を展開していなかったことを後悔する。何か嫌味や、ステータスが不正だとか言われるのを覚悟していたら、
「レオナルド、私の息子オーガストが無礼を働いてしまって、すまなかった」
何と、最低の貴族だと思っていたルドルフのおっさんが、頭を下げて謝罪してきた。
「お前が驚くのも無理はない。貴族の当主が、こうして子供に頭を下げることなど、基本的にありえないからな。だが、ここには私とお前しかいない。人の親として、筋を通させてくれ」
「あ、いえ、そんな。ルドルフ伯爵。僕は気にしていませんから、どうか頭を上げてください」
全くの想定外の事態に、混乱した頭では、こう返すのが精一杯だった。
「そうか、ありがとう。オーガストはな、兄のダラスが高いステータスだったことを誇りに思っていなてな、いつもダラスと訓練をしていたのだ。いつの日か必ず、兄弟2人でアステリア王国最強の騎士となって、この国を守るためにな。その為に、血の滲む努力を重ね、このお披露目会で皆に示したかったのだ。我ら兄弟こそが、最強になるであろう資質を持っているのだ、とな」
何かルドルフのおっさんが話し始めた。
「だが、どんなにステータスが高くても、まだまだ子供よ。他の貴族の子供達のステータスを見て、自分より遥かに劣っていることを知り、調子に乗っていたようだ。だが、そこに更なる強者が、お前が現れた。冷静ではいられなかったのだろう」
確かに、オーガストは相当取り乱していたしね。ステータスはともかく、5歳の子供の行動としては、まあ、不思議ではないのかな?
「お前も、私の2人の息子も、将来この国を背負って立つにふさわしい人材だ。だが、まだまだ子供だ。これから成長して、もっと素晴らしい大人になってくれ。そして、よかったら私の息子たちとも仲良くしてれないか?3人で切磋琢磨し、より強くなってほしい」
おかしい。僕の持っていたルドルフ像がどんどん崩れていく。これは何かの罠か?それとも、あのステータスを見て、媚び諂おうとしているだけか?
分からないけど今は
「ありがとうございます。ダラス殿、オーガスト殿と手を取り合い、必ずやこの国を背負える貴族となり、この国を守って見せます」
こう返しておく。
「それで十分だ。ああ、すまないが、ここで私達が会って話したのは秘密にしてくれ。バレると、いろいろとうるさくなるからな」
そう言って、ルドルフのおっさんは行ってしまった。
その真意は分からないけど、少なくとも敵意は感じなかった。ルドルフのおっさん、何か悪い物でも食べたかな?それともこっちが本当の顔か?分からない。取りあえず、秘密と言われたから、このことはお父様にも黙っていよう。
翌日、お世話になったアルバート侯爵に挨拶し、アイゼン領フレテクスの街を出て、スティード領ノーティスの街への帰路に就く。当然、帰りもクローク領に寄っていく事になっている。従姉弟達からは、お披露目会がどうだったか聞かれたが、僕のステータスに関しては、国預かりとなり、箝口令が敷かれてしまっているので話せない。しかし、いくら貴族とはいえそこは子供。好奇心が勝り、大人達がいない所でしつこく聞いてくる。
どうしようか困っていると、何とアンが大活躍してくれた。
「えっとね、えっとね、レオおにいさまはすごかったです。」
「みんなおどろいていたです」
「となりにいたおにいちゃんと、れおおにいさま、けんかしてたです」
と、精一杯教えてくれようとしていた。まだ小さな子供なので、かなり抽象的な説明だが、その姿を見た従姉弟達はアンに気を取られ、そのまま誤魔化すことができた。
ありがとう、アン!今度お菓子をあげるよ!
そして、無事にノーティスの街に帰ってくることが出来た。
ちなみに帰りの馬車の中では、恐怖の質問攻めに会っていた。何せ馬車と言う狭い密室の中だ。逃げ場なんてありません。
まずはお父様からの質問
「まずは、レオ。あのステータスは本物か?」
「お父様、本物のと言いますと?どういうことでしょうか?」
「お前はたくさんの本を読んでいるから知っていると思うが、スキルの中にはステータスを変えることのできる物もある。例えば私が持っている改竄とかな」
知っています。と言うか、持ってます。本当は、改竄でステータスを減らして発表するつもりだったけど、オーガストがケンカを売って来たので、ムカッとした結果、改竄を解除してしまったのだから。
「言っておくが、私が改竄を使うのは、ステータスを誤魔化すためじゃないぞ?あのスキルにはな、自身のステータスを一時的に5倍にする効果があるんだ。まあ、その副作用で1年はステータスが1/10になってしまうがな」
「はい、効果については本に書いてあったので知っています」
「最後に使ったのは3年前か。ちょうどレオが高熱で倒れる前だったな。おかげでその頃の私のステータスは、だいたい550くらいだったな。結構苦労したものだ。運よく強力な魔物が出なったから良かったが、もしそんなのが出て来ていたら、今頃私は死んでいたかもしれんな」
いや、そんな良い笑顔で言わなくても。
「もちろん使っていないよな?」
「はい、使っていません。いま常に使っているのは、手加減のスキルです」
「ほう、何故だ?」
「はい、手加減のスキルが無いと、このステータスでは日常生活すらままならないですからね。ですから、常に手加減を発動して、生活しています」
「ふむ。筋は通っているな。よし、次だ。どうやってそこまでレベルが上がったのだ?私よりも10も高くて、ステータスも大きく離されていて、正直に言って、凹んだぞ?」
やっぱり聞いてきますよねえ。誤魔化すか、それとも正直に答えるか。
悩んだ結果、正直に答えることにしました。嘘をついても、どうせいつかバレるしね。
「実は、夜中にコッソリ抜け出して、ダストレア大樹海で修行していました」
「ウソだな」
即答されました。
「いえ、本当です」
「待て。いろいろおかしいだろ?夜中にコッソリ抜け出したのは分かる。だが、ダストレア大樹海だと?遠すぎる。子供がすぐに行って帰ってこられる距離ではない。そもそも、あの樹海は危険度SSSの地域だぞ?ウソをつくなら、もっとマシなのにしろ」
ちょっと目がマジです。まあ、予想できていたので、ここも正直に話す。
「移動に関しては、僕は1度行った場所には、空間転移出来るんです。ダストレア大樹海には、4歳の頃にお祖父様に近くまで連れて行ってもらったので、いつでもいく事ができます」
「待て。今何と言った?空間転移だと?」
「はい、言いました」
「あの伝説の魔法のか?」
「そう言われているみたいですね」
「本当に使えると証明できるか?」
伝説上の魔法である空間転移を、こんな5歳の子供が使えるって言っても、当然信じられないよね~。では論より証拠で
「ではお父様。今から空間転移で家まで一緒に行きましょうか?」
「よし、行こう」
「分かりました。では馬車を止めてもらっていいですか?移動できるのは決められた場所だけなので、動いている馬車に戻ってくるのは難しいので」
「わかった」
そういう訳で、ちょっと小休止することになりました。
「ではお父様。行きましょうか」
お父様に手を差し出しながら言う。なぜなら、あくまで転移する起点は僕なので、僕以外の人や物と一緒に転移するには、僕に触れていなくてはならないからだ。
「ああ」
お父様が手を掴む。顔には出していないが、お父様がすごく緊張している。何せ、伝説の魔法を体験するのだから、しょうがないと言えばしょうがない。
「では、行きますよ」
空間転移を発動させる。
ちょっとここで補足をさせてもらう。僕のINTは現在915,900。空間支配スキルで干渉できる、支配圏の広さはINT×半径1㎝。つまり、約9㎞の範囲になる。ここから家までは、軽く50㎞以上ある。なのに、なぜ空間転移が使えるのか?
それは、普段は支配圏を50mに設定し、それ以外の余った分、約9㎞分の容量を、空間転移用に確保してある。もう少し細かく説明すると、半径9㎞の球体を平らに引き延ばし、広大な面積を覆う。そこに、1度でも行ったことがある場所、という条件付けをすることにより、今いる所と、目的地の空間を繋げることで、転移を可能としている。
ざっくり言うなら、レベルが上がってINTが増えれば。近い将来、一度でも行ったことのある場所なら、世界中どこでも転移できるようになるよ、ということです。
では、お父様を連れて空間転移!
はい、あっという間に着きました。僕の部屋です。
「どうですかお父様?僕の部屋ですよ」
振り返ってみると
「信じられん・・・」
呆然としているお父様がいました。
「いや、まだだ。これは幻かもしれん。部屋を出るぞ!」
まだ信じられないお父様は、そのまま部屋を出ていってしまった。
「え!?旦那様!?いつお戻りになられたんですか!?」
部屋の外からメイドの驚いた声がした。そりゃそうでしょう。今ここにいるはずのないお父様が、突然、家の中に現れたのだから。
「すまん。少し確認したいんだが・・・」
お父様がメイドに色々と質問している。まだ幻かもしれないと疑っているようで、スティード家の家族構成、今日は何日なのか、部屋の配置などなど。
しばらくして、お父様が僕の部屋に戻って来た。手には書類の束が。何でも、態々自室から溜まっていた書類を持ってきたそうだ。馬車に戻ったら目を通すらしい。
お父様がやっと納得してくれたようなので、空間転移で馬車に戻る。
馬車の中は無人で、皆外に出ているようだった。
「戻ったぞ」
お父様の声に気付き、全員こちらにやって来た。
「グレン、どうだった?」
「父上、間違いなく、本物の空間転移でした。証拠として、自室に溜まっていた書類を持ってきました」
「よし、レオ。次は私を連れていけ」
「ダメですよお義父様。次は私ですよ。ね~レオ?」
「クリスずるい。私も行きたい」
その場にいる全員が空間転移をしたいと言い出した。普段は一歩下がって、主達を立てる執事やメイド、護衛の騎士達までもが、こぞって押しかけてきた。
結果、3回に分けて、みんなでまとめて転移しました。転移した方も、転移されたスティード邸もパニックです。転移した側は興奮し、された側は理解が追い付かず、卒倒するものまでいました。
もう、このまま帰ろう、という話も出たけど、領主一行が街に入った形跡もなく、いきなり家にいるとか、不自然すぎて怪しまれるため、仕方なしに元の場所に戻って、馬車でゆっくり帰ることになりました。
なお、この空間転移に関しては、他言無用となりました。
だって、伝説の魔法ですよ?ステータス以上にバレたら大変なことになりそう。
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




