第14話 やっちまったー!
さあ、いよいよ僕のお披露目会だ。メルト兄様の時と同じく、今回もアイゼン侯爵領のフレテクスの街に向かっている。今回の同行者は、お父様、お母様、お祖父様、ジェシー母様、メルト兄様、アンの家族6人と、前回同様、執事とメイドと護衛の騎士20名だ。 シャルはまだ1歳だから、家でお留守番。アンは3歳になったから、一緒に連れて来ていた。
前回同様、お母様の実家のクローク領に寄り、これまた前回同様に従姉弟に可愛がられた。特にアンの可愛さにメロメロになっていて、以前もみくちゃにされた経験のある僕とメルト兄様は、こっそり離れて難を逃れた。次来るときは、シャルもいるんだよな。2年後のアンのお披露目会の時を考えると、軽く現実逃避したくなる。後で従姉弟達に捕まったアンに怒られてしまった。すまん、妹よ。
今年もトラブルもなく順調にフレテクスの街に到着し、お披露目会当日を迎えた。メルト兄様の時と同じく、伯爵家である我が家は一番最後に到着するように出かける。
基本的な流れは前回と一緒で、まず、同行した騎士の内16人が警備に周り、4人がアイゼン侯爵邸に同行する。邸内に入ると、大広間に案内された。今回の参加者は前回よりも少し多く、準男爵家4、男爵家3、子爵家2、伯爵家2の11家族が来ている。
広間に入ると、次々と他の貴族の人達が挨拶に来た。メルト兄様の時とは殆ど違った顔ぶれであり、知らない人ばかりだったが、2人ほど見知った顔もあった。
同じ伯爵家であるノーマン家と、前のお披露目会で一緒だったティアレス子爵家だ。ダラスに言い寄られていた女の子の家だったりします。
ティアレス子爵家は、なるべくノーマン家から離れていて、僕達スティード家が大広間に入ってきたら、すぐに近くに寄って来た。そんなにノーマン家を警戒しなくてもいいんじゃ・・・。いや、気持ちは分からなくもないけどさ。
で、そのノーマン伯爵家当主のルドルフのおっさんなんだけど、少し前回と様子が違う。何か言いたそうな、しかし言い出せない、そんな焦っているような困っているような表情で、お父様の方をチラチラ見ている。
何だろう?そういえば前回の件で、国王陛下に釘を刺されている、って話だったから、そのせいかな?
一通り貴族との挨拶が終わったので、お父様に連れられてノーマン伯爵家の所へ向かう。正直行きたくはないんだけどね。
「やあ、ルドルフ殿。今年も私達の息子同士が、同じ年にお披露目会に出ることになりましたな」
朗らかに挨拶をするお父様とは対照的に、ルドルフのおっさんは
「あ、ああ。そうだな。今年もよろしく頼むよ」
前回と違って、やけにおとなしい。やはり、国王陛下からの言葉が効いているのかな?それにしても、やけに挙動不審だな。視線はキョロキョロと彷徨い、汗もかいている。
しばらくお父様と簡単な挨拶をした後、覚悟を決めた顔になり
「すまない、グレン。このお披露目会が終わった後、少し時間をもらえないか?どうしても話したいことがある」
と、会談の予定を取り付けに来た。
「ああ、構わないぞ?なんだ?宣戦布告でもするのか?」
お父様は笑いながら、冗談を交えつつ了承した。
いや、お父様にとっては冗談でも、前回のお披露目会でやらかしたルドルフのおっさんにとっては、冗談にならない返しじゃないのソレ!?
「ああ、すまない。この後、私の次男のオーガストのことで驚かせてしまうと思うが、どうか冷静に受け入れてほしい。ではお披露目会のあとに、またな」
何だろう?より深刻な顔をしてしまったぞ?それにオーガストって、ルドルフのおっさんの次男だよね?驚かせてしまうって何かあるの?いや、そんなことよりも、あのおっさんの態度の方が驚きだよ。正直に言って、気持ち悪い。
しばらく貴族同士で歓談していると、大広間の扉が開き、アルバート=サイス=アイゼン侯爵が入って来た。こちらも前回同様の挨拶が行われ、お祖父様から義弟である侯爵へ、3人目の孫であるアンの紹介もされていた。侯爵は頬を緩め、アンに優しく話しかけている。もうそれは、だらしないくらい表情を緩めて。
あの、侯爵?アンに夢中になるのはわかりますが、周りに他の貴族がいますよ?そんな威厳の無い姿を見せちゃっていいの?
えーとお祖父様?孫自慢はそのくらいにして、そろそろ挨拶の順番待ちをしている他の貴族の方達に譲られてはどうでしょうか?
と、思いつつも、この緩み切った空気の中、結局そんなことは言えませんでした。
しばらくして我に返った侯爵が、名残惜しそうに、本当に名残惜しそうにアンから離れたことで、やっと他の貴族達が挨拶を始めた。身内が迷惑をかけて、本当にすいません。あ、男爵家がお祖父様を見習って、1歳の娘を紹介している。アルバート侯爵の反応はいかに?
普通でした。娘を紹介した男爵は、アンの時との反応の差に、呆けた顔をしております。そりゃね、一方は姉夫婦の孫、言わば身内の子。一方はたいした付き合いもない、あわよくば取り入ろうという下心満載の他人の子。対応が違うのは当然でしょう?やっちゃったね、あの男爵家。まあ、貴族、特に下級の男爵家からしたら、チャンスがあれば上級貴族とパイプを作りたい、という気持ちは分からなくもないけどさ。
ふと視線を大広間前方のステージに向けると、鑑定石が運び込まれていた。そろそろお披露目の時間みたいだ。すぐに待機していたメイドのヒルデが近づいてきて、そろそろなのでステージに行くように促される。
「レオナルド様、スティード家の者として周りから期待されているようですが、そんなことは気にしないで楽しんできてくださいね」
ヒルデから悪意のないプレッシャーをかけられる。そんなふうに周りからは期待されてます、って言われたら、ねえ?まあ、僕のステータスなら問題ないけどね。
ステージの上に今回お披露目をする11人が揃うと、アルバート侯爵から
「皆、待たせたな!これより子供たちのステータスのお披露目を行う!」
との宣言と共に、お披露目会のメインイベント、ステータス鑑定が始まった。
やはりというか、9人の鑑定が終わって、前回同様、皆のステータス平均はレベルが2か3の、数値は22くらいだった。で、これまた同様に、残りは伯爵家の僕と、ノーマン家のオーガストだけとなった。順番は予め発表されていて、先にオーガストからとなっている。
今までの子供達の鑑定時と異なり、今は会場中が緊張感に包まれている。以前、長男のダラスが圧倒的なステータスを誇ったため、もしかしたら次男も、と思われているのと同時に、またノーマン家が何かやらかすのでは、との不安もあるようだ。
そのノーマン家の面々は、長男のダラスと次男のオーガストは、余裕そうにニヤニヤしている。さぞルドルフのおっさんもニヤついているのだろう、と思っていたら、奥さんと2人で、すごく緊張した、不安そうな顔をしている。
どうしんたんだろう?何か以前と違うぞ?
オーガストがステージ中央にある、鑑定石の台座まで行き、手を置いて
「鑑定」
「なっ、バカなっ!?」
そして前回同様、鑑定石の前にいたアルバート侯爵が驚愕する。そのステータスとは
名前:オーガスト=クシャナ=ノーマン
年齢:5歳
種族:人間
職業:貴族
レベル:16
HP:1108/1108
MP:933/933
STR:1064
ⅤIT:975
INT:882
MND:943
AGL:731
DEX:475
ステータスが公表され、会場が大騒ぎになった。
「バカな!あり得ないぞ!?」「次男もだと!?本当にノーマン家から勇者が産まれたのか!?」「5歳でこれだと!?信じられん!」
大騒ぎと言うか、大絶叫です。僕も純粋にビックリですよ。ダラスが得意げに高笑いしている。いや、これはお前じゃなくて、弟もステータスだよ?その横でノーマン夫妻が頭を抱えている。あれ?ここは喜ぶ所じゃないの?どうしたの?
ルドルフのおっさんの行動が理解できずにいると
「はははははっ!どうだ見たか!?これが俺のステータスだ!俺こそ勇者と呼ばれるにふさわしいステータスだろう!?はははははっ!」
オーガスト君、超ご機嫌です。話し方もINTに見合って、はっきり喋れている。でも何だろう?オーガストの目がイッちゃってるように見える。興奮しすぎただけかな?
「さすがは俺の弟だ!これならいずれ、我ら兄弟がこの国最強と呼ばれるだろうな!」
兄のダラスが嬉しさのあまりか、大口をたたき始めた。まあ、このまま成長すれば、それもあり得るかもしれないんだけどね。
「ふはははは、そうだな兄様。もうスティード家など、目じゃないだろう!」
オーガスト君絶好調!そしてこちらを向いて
「なんだっけお前の名前?ゴミだっけ?どうだ?これが真の強者のステータスだ!おまえらは王国最強と言われているようだが、このステータスには敵わないだろう?」
あ、カッチーンと来ました。誰の名前がゴミだ。ちょっと調子に乗りすぎだろコイツ。黙らせてやる。
いつまでもステージ上で調子に乗っているオーガストを無視して、
「アルバート侯爵。僕も鑑定をしてもよろしいでしょうか?」
「あ、ああ、すまないなレオナルド。それでは次の鑑定を行う。オーガストよ、下がりなさい」
とりあえず鑑定の続きをしてもらうことにした。
「ハッ!別にお前、鑑定なんかしなくてもいいんじゃないか?俺の後だと、ただ恥をかくだけだぜ?王国最強のスティード家のお坊ちゃん?」
よし、決めた。完膚なきまでに黙らせる。改竄スキルを解除。
ステージの下を見ると、ノーマン家と入れ替わって、スティード家がステージ前まで来ていた。まだよく分かっていないアン以外の全員が、未だに驚愕し続けいる。安心してください、お父様、お母様。僕のステータスはアイツより遥かに上です。
鑑定石に手を置いて
「鑑定」
・・・・・・・
アルバート侯爵が絶句している。
「そんな、まさか・・・ありえない・・・」
そうつぶやき、震える声で発表された僕のステータスは
名前:レオナルド=シオン=スティード
年齢:5歳
種族:人間
職業:スティード伯爵家次男
レベル:68
HP:835,743/835,743
MP:972,105/972,105
STR:854,922
ⅤIT:833,887
INT:915,900
MND:891,437
AGL:740,004
DEX:792,193
「・・・・・」「・・・・・」「・・・・・」
誰1人声を上げなかった。やべっ、イラッとしたせいで、何も考えずに元のステータス見せちゃった。どうしよう。
「あの、みなさん?」
余りの沈黙に耐えられず、声を上げる。その後、一番最初に復活したのは
「ば、ば、バカな!?なんだこれは!?こんなのありえないだろう!?貴様、何か不正でもしただろう!?この卑怯者め!?」
さっきまで調子に乗りまくっていたオーガストだった。その声を皮切りに
「平均80万以上だと!?」「今度こそ勇者だ!」「いや、神だ!」
オーガストの時とは比べ物にならないほどの大騒ぎ、いや、もはや絶叫大会へと変貌していた。横では、さっきまで調子に乗りに乗っていたオーガストが、ギャーギャー喚いている。自分が褒めたたえられると思っていたら、それ以上のステータスが出たのだ。そりゃあ慌てるだろうさ。それが狙いだったんだし。
やってしまった。やらかしてしまった。このお披露目会のせいで、今後の僕の人生が、大きく動くこととなってしまった。
今まで投稿したのを読み直してみて、セリフの所が読みにくいと感じたので、今回からセリフの前後は1行空けていきます。今まで投稿していた分は、順次改稿していく予定です。




