第121話 孤児院へ行こう
若返りの魔導具を作ってから20日が経ちました。
あれからすぐ、王妃様達用に2つの『若返り』が付与された魔導具を作り、王城へと送ってもらいました。
形状は腕輪で、ついでに『自動調節』も付与したので、装着者の腕に合わせて大きさが変化します。
形状に不満があった場合に備え、これは試作品であり、形状の希望があれば連絡が欲しい旨を書いた手紙を添えてあります。
それからずっと、僕はお父様とお母様達に付き、領主としての勉強を開始。
そして今日、お父様が緊急の案件でノーティスの街を離れたため、ちょうど良いと言う理由で僕は1日休みを貰もらいました。
そのせっかくの休日に、僕はノーティスの街唯一の孤児院を訪れました。
場所は街の隅、所得が少ない人達が住む区画にあります。
補足ですが、このノーティスの街はそれなりに広い割に、ダストレア大樹海から比較的近い危険区域であるためか、人が少ない。
その為、街の中心部から離れるほど、土地が余っていたりします。
なのでこの孤児院の周りは、殆ど誰も住んでいなかったりする場所です。
そしてこの孤児院は、4年前までは領主、つまりスティード家からの補助金だけではギリギリの生活を保っているだけだったけど、今は補助金の額が5倍に増え、以前よりも孤児の受け入れ人数を大幅に増やしても、余裕のある生活を送れるようになった場所です。
ついでに、新しい住居も増設されています。
補助金が増えた理由は、僕が孤児の現状を調査し、お父様に報告したからです。
孤児院にも入ることが出来ない孤児はどうなるか?
普通ならスラムにでも行き、孤児同士でコミュニティーを形成し、そこで仕事をしながら支え合って生きていくでしょう。
けど、このノーティスの街ではそれは出来ない。
なぜなら、他の街で孤児が、特に小さな子供がしている仕事の多くが、犯罪だからです。
日々の糧を得るために、金品や食料の窃盗や、闇ギルドのような組織の小間使いのような仕事ばかりで、真っ当な仕事をしている孤児は少数しかいない。
単純に、子供では出来る仕事が限られてしまう他、孤児と言うだけで偏見の目で見られ、商店では商品を盗まれてしまうのではないかと疑われ、どこも雇ってくれないのが理由ですね。
そしてこのノーティスの街は、スティード家が領主になってからは、アステリア王国随一の治安を誇る街で有名です。
今ではアステリア最強と呼ばれているスティード騎士団が街を巡回し、常に目を光らせているからです。
余談ですが、数十年前、余りにもこの街の治安が良すぎたため、この街に支部を置くことが出来なかった当時の闇ギルドの統括者が、こんなお触れを出したそうです。
『ノーティスの街に潜伏し、闇ギルドの支部を作れ。成功した者にはノーティス支部長の座を与え、同時に次期総括候補とする』
これを見た闇ギルドの構成員たちは、野望を胸に秘め、ノーティスの街に向かった。
その数、実にアステリア王国の闇ギルド構成員の約1/3にも達し、しかも有望とされる者の殆どが含まれていた。
何せ、成功すれば支部長の座と、次期総括候補という、闇ギルドの頂点に立つ可能性のある地位を手に入れることが出来るからだ。
当時の統括の予想を大きく上回る人数が動いてしまったが、これだけの闇ギルド構成員がいれば、支部が作られるのも時間の問題と思われていた。
そして半年後、見事にその全員が捕まった。
全員と言うのは、生き残った者の全員という事で、抵抗して命を落とした闇ギルド員は相当いたみたいです。
彼らは、スティード騎士団を舐めていた、訳では決してない。
ただ単に、スティード騎士団が彼らの想定の10倍以上の武力を有し、10倍以上優秀だっただけ。
いや、言い直しましょう。
彼らの想定の10倍以上、好戦的と言うか、戦闘狂だったからだ。
まず闇ギルドの構成員を見つけ、そこから芋づる式に他の構成員をあぶり出し、あっという間に壊滅させてしまったそうです。
半年もかかった理由は、情報を集め、ノーティスの街の住人に被害が出ないように綿密に、そして周りに悟られないように極秘で計画を立てたからだそうです。
表向きの理由は、闇ギルドのメンバーを1人も逃さない為、スティード家が有する全戦力を投入したらしいですが、本当の理由は、闇ギルド構成員の根絶と聞いた騎士団の全員が参加を希望し、それを当時のスティード家当主が了承したため、そうなった。
騎士団全員が参加を希望した理由は言うまでもなく、思いっきり暴れることが出来るからだ。
このことは、スティード家の書斎の中に保管されていた『スティードの歴史』と言う本に書かれていました。
ちなみに作者は歴代の当主で、代替わりする度にページが追加されている本でした。
その後、捕まえた闇ギルド構成員を尋問し、得た情報を精査した結果、判明した闇ギルドの支部の場所が王国中に知れ渡り、大規模な掃討作戦が決行。
闇ギルドはそこから10年は活動がままならない状況へと陥った、と言う過去があります。
その時を教訓に、アステリア王国の闇ギルドでは、スティード領には決して手を出すな、と言うルールが生まれたそうです。
まあ、そのアステリア王国の闇ギルドの本部自体が、もう無いんですけどね。
5年前、僕が初めて王都に行った時、暗殺者を差し向けて来たので、その報復に壊滅させてやりましたからね。
同じく暗殺者を差し向けて来た3つの貴族と一緒に。
いや~、あの時はいい仕事をしましたよ!
スティード領には手を出さないけど、スティード家次男の僕には手を出すって、訳が分からないけど、きっと、当時5歳の僕だったら大丈夫だとでも思ったんでしょうね。
生き残った闇ギルドでは、スティードには手を出すな、に教訓が変わったことでしょう。
おっと、かなり脱線してしまいましたね。
つまり、治安が良すぎることで孤児たちが生活しにくい街になっている、という事をお父様に報告しました。
ではどうすればいいのか?
孤児たちの為に、街の治安を悪くすることは当然できない。
ならば、孤児院を大きくし、孤児の受け入れ人数を増やせばいい。
そんなことをするメリットは何か?
そこで重要な役割を果たしたのが、学校の存在でした。
孤児院の子供達は、全員が強制的に学校に入学し、勉学に励む。
もちろん勉学だけでなく、学校での雑用もしなければならない。
入学したからには途中で退学することは許されず、卒業後はスティード領、もしくはスティード家が指定した領地で就職しなければならない。
と言った制約がある。
けどこれ、言い換えれば、在学中は学校の雑用をしてくれれば衣食住は全てスティード家が面倒を見るし、さらに卒業後の就職先まで斡旋するよ、ってことなんですよね。
この世界、学校は超裕福な家庭や貴族しか通う事が出来ず、普通なら勉強すらすることが出来ないんですよ。
しかもノーティスの街の学校の先生は、元貴族&あのカルナ宰相が見込んだ人材ばかり。
教える側が優秀なのです。
つまり、ここの学校でしっかり勉強してから卒業するだけで、アステリア王国内の貴族に匹敵する知識と教養を身に付けることが出来るんですよ。
そんな人材がスティード領にいる、と言うだけで、スティード領にとってはメリットになる訳です。
しかもこの学校では、孤児院の子供が優秀な成績を収めているんです。
これにはお父様も喜んで、孤児院へ予算をつぎ込んでくれましたよ。
そして、その中でも特に優秀な成績を収めているのが、僕の2人目の友人だったりします。
僕は3年ぶりにその友人に会う為に、彼が住んでいる孤児院を訪れ、今は玄関の中にいます。
「やあ、アクセル。久しぶりだね?やっとノーティスの街に帰って来れたから、会いに来たよ」
「もしかしてレオ!?3年振りだね!」
僕が会いに来たのは、友人のアクセル。
そして僕が着ているのは、貴族が着ていて当然の、上質な素材で作られた服、ではなく、一般的な質素な作りの服です。
アクセルには、僕が貴族、それも領主であるスティード家の次男だとは一切伝えていないので、驚かさない為に、この格好をしています。
この格好をしているけど、僕は今日、僕の正体をアクセルに伝え、そのうえでお願いをしに来たんですよ。
「突然の来訪で申し訳ないんだけど、ちょっとアクセルと話しがしたくてさ。今、時間はあるかい?」
「え、あ、えっと、大丈夫だけど、あ、院長先生に話して・・・・」
「どうしたのですか、アクセル?お客様ですか?」
アクセルの後ろから現れたのは、40代前半くらいの温和そうな女性だった。
「あ、院長先生。実は、その、友達が僕に会いに来てくれて、少し話しをしたいから時間が欲しいそうなのですが、大丈夫でしょうか?」
「アクセルのお友達?学校のお友達ですか?」
「いえ、3年ほど前に知り合った、学校とは関係のない友人のレオです。この3年間、ノーティスの街を離れていたのですが、戻って来たみたいで、僕に会いに来てくれたんです」
「まあまあ、そうなの?レオ君、アクセルに会いに来てくれてありがとう。折角来てくれたのだからこんな所ではなく、中にお入りなさいな」
「ありがとうございます、院長先生。それではお言葉に甘えて・・・」
院長先生は見た目通りな人みたいですね。
お言葉に甘え、中に入ろうとしたら、
「チーッス、邪魔するぜぇ」
ガラの悪そうなのが5人、勝手に孤児院の中に入って来ましたよ。
すみません。
やはり投稿が遅れてしまいました。
次回は3日以内に投稿できるように頑張ります。




