第12話 お披露目会を見よう
お披露目会は、爵位の低い貴族から順に鑑定していく。今日、ここにいるのは準男爵家の子供が3人、男爵家の子供が3人、子爵家の子供が1人、伯爵家の子供が2人、合計9人の子供達がいる。今の所、子爵家までの7人が鑑定が終わった。レベルは2か3で、ステータス平均は22くらい。以前、鑑定で見たメルト兄様のステータスよりも、若干低い。
大人達は、ステータスに一喜一憂し、1でも高いステータスをお互いに自慢していた。そして残す所はあと2人。メルト兄様と、ノーマン伯爵家のダラスだけとなった。
あ、皆、鑑定の結果が気になって、ステージの前の手前3メートルまで押しかけている。それ以上は、鑑定されている子供の家族以外は立ち入り禁止となっている。
どちらが先に鑑定を受けるか、となったが、
「メルティウム。そんなにそわそわしているなら、さきにどうぞ」
「いいの?ダラスィードこそ、たのしみにしていたんでしょ?」
「おれはあとでいいよ。さきにやっちゃえよ」
なんとダラスが、いやダラスさんがメルト兄様を気遣って、順番を譲ってくれた!
さっきの挨拶の時は、ちょっと嫌なヤツかな?と思ってしまったが、違ったみたいだ!人を気遣うことが出来る、優しい人だった。心の中で呼び捨てにしていて、すみませんでした!ん?ダラスさんの父親、ルドルフ伯爵がニヤニヤしているけど、どうしたんだろう?まあいいや。
というわけで、メルト兄様が先に鑑定することになった。
「それでは、メルティウム=シオン=スティードのステータスを鑑定する!メルティウムよ、こちらへ」
アルバート侯爵がステージ中央の鑑定石が置かれた台座に、メルト兄様を呼ぶ。鑑定石は1メートルくらいの高さの台座に安置されていて、そこに手を置いて「鑑定」と言えば、ステータスが他の人にも見えるように表示される。当然、そんな高さに5歳児の手を届かせるのは大変なので、台座の前に、50㎝くらいの踏み台があり、それに乗って、鑑定石に手を置く。
「かんてい」
メルト兄様がそう言葉を発すると、鑑定石の上にステータスが浮かびあがる。それをアルバート侯爵が読み上げてくれる。そのステータスは以下の通り
名前:メルティウム=シオン=スティード
年齢:5歳
種族:人間
職業:貴族
レベル:5
HP:57/57
MP:47/47
STR:62
ⅤIT:55
INT:48
MND:40
AGL:47
DEX:38
今までの子供と比べて、倍以上の差のあるステータスだった。大広間がざわつく。今までのステータスと比べても明らかに高いし、レベルも5だ。前見た時は、まだ3でだったから、子供の身でありながら、この短期間に2もレベルを上げたことになる。剣術(小)のスキルを習得するために特訓した成果が、しっかりステータスに反映されていた。
お父様とお祖父様が拳と拳をぶつけて、満面の笑みを浮かべている。ジェシー母様もうっすら涙を光らせて喜んでいる。周りの貴族から「さすがはスティード家」「いったいどれ程の努力をしたのか」「やはり脳筋一族は違うな」と称賛の声を贈ってくれている。もう、脳筋一族は褒め言葉として捉えることにしました。
会場が未だに驚きに包まれている中、ダラスさんとルドルフ伯爵だけは未だにニヤニヤしている。何だ?
メルト兄様が誇らしげに台座から離れ、ダラスさんと入れ替わる。すれ違う時、ダラスさんがメルト兄様に小さな声でつぶやいた。内容は、つぶやかれた兄様と、支配圏を発動させていた僕以外には分からなったようだ。その言葉は
「かくのちがいをみせてやるよ」
どういうことだ?
僕たちスティード家は他の貴族達と同じ位置まで下がり、ノーマン伯爵家の3人、ルドルフ伯爵と夫人、それと夫人に抱かれた子供。僕と同じ2歳児くらいかな?が代わりに前に出る。
ダラスさんが台座に乗り、鑑定石に手を置き
「かんてい」
「何だと!?」
鑑定結果を見たアルバート侯爵が驚愕している。支配圏を発動していた僕も、ステータスを見て驚いていた。そのステータスとは
名前:ダラシィード=クシャナ=ノーマン
年齢:5歳
種族:人間
職業:貴族
レベル:7
HP:384/384
MP:420/420
STR:366
ⅤIT:375
INT:448
MND:433
AGL:302
DEX:234
何だこのステータスは?高すぎる!?このステータスは、馬車の中でお祖父様から聞いた、一般的な騎士並みに高いぞ!?ありえない!
そう思っていたのは僕だけではなく、周りの貴族たちも同様だった。
「なんだこの数値は!?」「ありえないぞ?!」「もしや勇者か!?」「賢者様かもしれないぞ!」などなど。
お父様とお祖父様も
「私でもこれほど高くは無かったぞ」
「私が10歳くらいの頃のステータスと同じくらいだな」
驚愕している。みんなが盛り上がる中、僕は一人冷静になっていた。だって、それでも僕の方のステータスの方が圧倒的に高しい。もしかしたら、ダラスさんも、成長補正のスキルを持っているのかもしれない。それなら納得が出来る。
そんな中、ダラスさんは超ドヤ顔です。そして父親のルドルフ伯爵も上機嫌に
「はっはっはっ!さすが我がノーマン家の長男だ!このアステリア王国の未来を背負うにふさわしいステータスではないか!これからの成長が楽しみだ!なあ、皆の者、そうは思わないか!?ノーマン家に付くなら、守ってやってもいいぞ?それ相応の対価を払うなら、だがな?」
あ、ダメだこの人。典型的なクズ貴族だ。力を盾に、好き放題やるタイプと見た。ダラスさんを見ると、この場にいる全員を見下しているかのような表情だ。あ、子爵家の女の子に婚約者になってもいい、とか言って迫ってる。アカン。この人も父親と同類のニオイがしてきた。これは止めないと面倒なことになりそうだぞ。
「よさぬか、ルドルフ伯爵。ここは子供たちのステータスを披露する場であって、政治の駆け引きをするところではないぞ」
アルバート侯爵がやんわりと止めに入った。さすがは侯爵!動揺している他の貴族とは違いますね!さすがに上位の貴族に言われたら、ここは引かざるを得ないだろう。かと思いきや
「はっ!いい気になっていられるのも今の内ですぞ、侯爵閣下?このダラスが成長すれば、王国にとって、無視できない存在になるでしょう。もしかしたら、王女様との婚約もあり得るかもしれんぞ?そうしたら、お前よりも格上になるかもしれないが、どうする?」
うわぁ~、完全にアウトだよこの人。それは未来の可能性の1つであって、現段階ではアルバート侯爵の方が上なんだけど、気付いているのかな?
アルバート侯爵が呆れて黙ってしまったのを、きっとビビッて黙ったのだと勘違いしたルドルフ伯爵は、
「さあ、お前たちはどうする?私に服従するか?それとも逆らうか?逆らった場合、将来どうなるか保証は出来んぞ」
調子乗ってます。どうしようか?いっそ僕のステータスを鑑定石で公表して、黙らせようかな?
「いい加減にしろルドルフ!今のセリフは我々への宣戦布告と見なすぞ!」
お父様がキレた。さすが王国でもトップクラスの実力者、迫力がハンパない。それをモロに受けたルドルフのおっさんは、完全にビビッてしまっています。少し漏らしたんじゃない?あ、こんなバカでゲスな人には、爵位なんか付けて呼びません。おっさんで充分です。息子にも敬称はいらないね、ダラスと呼ぼう。もちろん心の中限定ですよ。
「どうするのだ?このまま続けるのであれば、国王陛下に今回のことを報告し、一戦交えることも厭わぬぞ?知っていると思うが、我が領地の軍勢は王国随一だ。それでも挑む覚悟があるならばそのまま続けるがいい」
目がマジです。本当に戦争しそうな勢いですよ。
足がガクガクしているおっさんは
「じょ、冗談に決まっているではないか?我が子を少し自慢しただけで戦争とは、貴殿こそ落ち着かれたらどうだ?はは、そうだ、すまんが私は領地でやることが山積みでな、このまま帰らせてもらおう。お披露目も終わったことだしな。な?」
おっさん必死です。そりゃ、今の段階で戦争なんてしたら、確実に負けることが分かっているわけだし。そもそも、こいつの味方になろうって貴族はいるのかな?こんな性格のやつが当主なら、僕は遠慮したいね。
「おい、ダラス!帰るぞ!」
「は、はいおとうさま!まって!」
そう言って大広間を出ていくノーマン伯爵一家と、それを慌てて追いかけるダラス。
本当に大丈夫か?この一族?
「すまない、グレン伯爵。助かったぞ」
アルバート伯爵がお父様に声をかけ、それを皮切りに、他の貴族の方々もお礼を言ってきた。特に、ダラスに言い寄られていた女の子の父親であるグリード子爵は、何度もお礼を言ってきていた。
脳筋と言われようが、やるときはやる男!我が父グレン伯爵。その男気を見れて、僕は満足ですよ。
ただ、気になっていたことがある。INTが448もあったのに、あの話し方は何だろうか?それだけあれば、普通に話せるのではないだろうか?僕のように。だけど、ダラスの話し方は他の5歳児と同じ程度だった。いや、INT48のメルト兄様の方が、上手に話せていたように思える。以前、僕が話せるのを知った時、お父様はINTがどれだけか聞こうとしていたし。どうなんだろう?関係ないのかな?もしかして、改竄スキルでステータスを書き換えた?まさかね?
もうダラスはいないし、考えても結論は出ない。なら、もう考えるのは止めよう。今はお披露目会が無事に(?)終わったということで、鑑定が終わったメルト兄様たちを労ってあげればいい。
「よし!もし将来、ノーマン伯爵家が戦争を仕掛けてきたら、我々がで結託して返り討ちにしてやろう!」
「「「「おおぉぉぉっ!!」」」」
おい脳筋!いつまで戦争の話しで盛り上がってんの!?ほら、ステージの上で、子供たちが困ってるよ!何とかしたげてよ!
しかし、若い当主たちはお父様の熱気に乗せられて、すごい盛り上がっている。このまま本当に戦争しちゃうとかないよね?何かウチの脳筋に洗脳されてない?大丈夫?
そんな若い父親連中には見切りをつけて、最も落ち着いているであろうアルバート侯爵の方を向くと、そこには
「もし、戦争になった場合、侯爵領からはどれくらいの軍勢が出せる?」
「そうですね、すぐに動かせるのは3千くらいでしょうか。時間をかければ8千は行けます。ジル義兄さんの方はどうですか?」
「私は当主を譲ってしまったからな、伯爵家の兵を動かすことは出来ぬが、冒険者ギルドには顔が利くからな。質の良い冒険者を千くらいなら集められるだろう」
こっちもこっちで戦争の話しをしていた。ほとんど計画性のないお父様達のグループの話し合い(と言えるのかアレ?)と違い、こちらは戦力をいかに集めるか、実質的なことをやっているよ。
ちょっと、脳筋に毒されている皆さん?そろそろ今日の主役たちをステージから下ろしてあげましょうよ!!
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。




