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第119話  2人の王妃

 驚愕の表情から王族の方が全員復活した後、バス内部の説明に入る。

 と言っても、運転席の説明をしたくらいで、後は普通の屋敷と同じだから、すぐに終わってしまったんですけどね。

 じっくり時間をかけて車の中を見た後、エドおじさんが運転することに。

 運転の仕方は以前献上したオープンカーと同じなので、大きさの違いによる調整も『運転補助』の付与(やってみたら作れた)をしてあるので問題無し。

 けど別の問題が発生。

 エドおじさんの次に、フィルが運転をしてしまった。

 今までは、王家ではエドおじさんしか運転することが出来なかった車を、フィルがあっさりと。

 今までは、エドおじさんしか運転できなかった為、車に関してはエドおじさんが独占していた車を、フィルがごく自然に。

 今までは、車の運転は危険だということで、誰も運転させてもらえなかった車を、フィルが何の問題も無く。


「レオ、ちょっとこっちへ」


 それを見て、口を大きく開けて呆けていたエドおじさんは、我に返り、僕を少し離れた所へと連れて行った。


「ねえ、レオ?どうしてフィルが車の運転をしているんだい?」

「一昨日から今日まで、色々な所で色々運転したからだね」

「その運転の仕方は、レオが教えたのかい?」

「うん、そうだけど?」

「何で?」

「何でって、フィルが運転してみたいって言ったからだよ。あ、フィルから聞いたよ。僕が贈ったオープンカー、エドおじさんが独占していて乗せてもらえないって」

「それは、あのオープンカーは私にくれたんだろう?私が使って何が悪いと言うんだい?」


 あ、ちょっとエドおじさんが拗ねた。

 ああ、世界にまだ自動車はあれ以外にないから、自分の物にしたかったんだね。

 もしかして世界に1台、と言う言葉に弱いのかな?

 実際には、スティード領に僕が試作した2台と、ダストレア大樹海の中心、ノイシュヴァン山脈のミコトさんの所に3台、合計5台の車がここ以外に存在しているんだけどね。


「別に悪くは無いけど、たまには乗せてあげてよ。とても悲しそうに、父上が乗せてくれい、って言っていたよ?」

「う・・・」

「だからフィルには車の他に、バイクとバギーの運転も教えちゃったし、専用のバイクを作って渡したよ」

「え、バイク?バギー?何それ?」


 僕の不用意な発言の結果、このままバイクとバギーを5台ずつ献上することになりました。

 ただし、献上するにあたって1つ条件を付けさせてもらいます。


「このバスとバイクとバギーは、エドおじさんにではなく王家に献上した物です。なので、決して誰かが独占しないようにしてください。特にバスは、大人数が乗車することを前提に広く作ってあるので、決して1人で乗らないでください。いいですね!?」

「・・・・・はい」


 皆の前で贈呈式みたいのことをして、ついでにその条件を発表。

 主にエドおじさんに対しての条件であり、それを聞いていた他の王族の皆さんからは歓声が上がった。

 何でも戴冠式以降、誰も自動車に乗せてもらえなかったそうで、王家全員が不満を持っていたとか。

 そこから30分くらい使って、王家とついでに近衛騎士団に車とバイクとバギーの運転の仕方を説明。

 試乗した人たちは大興奮でした。


 運転説明会が終わり、そろそろ帰ろうとしたら、ウィリアム先王とカルナ宰相、それとフィルとクラリス王女の母親である第1王妃のアメリア様と、第2王妃のエリザベス様に捕まり、近くの応接室へ連行されてしまった。

 あれ?どうしたんですか?

 

「え~と、アメリア様、エリザベス様、ですよね?初めまして。スティード伯爵・・・」

「貴方の事は良く知っていますよ、レオナルド」

「ええ、挨拶など無用です」


 自己紹介を途中でぶった切られてしまいました。

 もしかして、怒っているのかな?

 僕、何かやらかしたっけ?

 ダメだ、思い出せない。

 いや、思い出せない以前に、何もしていないよね?

 それにしては、僕を連行した4名の顔が真剣すぎる。

 特に2人の王妃様。

 何故?


「それよりもレオナルド、いえ、レオ、と私達も呼ばせてもらいましょう。娘のクラリスの夫となる、メルトの弟ですものね?」

「あ、はい」

「ただ、分かっていると思いますが、私達の事は名前で呼ぶように。間違っても、夫である陛下と同じように呼ばないこと。いいですね?」


 エドおじさんと同じってことは、おばさんって呼ぶなってことだよね?

 ええ、分かっていますとも。

 先日のお母様とジェシー母様が、お父様に年齢を聞かれた時の反応を見て、学びましたからね。


「はい、分かりました。アメリア様、エリザベス様」

「よろしい」


 ふう、何とかお二人の機嫌を損ねるのは回避できたらしい。

 じゃあ、もう僕は帰ってもいいのかな?

 お父様を待たせてしまっていることだしね。

 僕は用は済んだと解釈し、部屋を出る為に扉に向かおうとすると、


「お待ちなさい、レオ。どこへ行くのですか?」


 どうやら本題はこれからのようでした。

 ですよね~。

 たかが僕との挨拶の為だけに、2人の王妃様と先王陛下と宰相が僕を連行するはずがないですよね~?


「えっと、それで?僕に何の御用でしょうか?お父様を待たせてしまっているので、出来れば早く戻りたいのですが・・・」

「そんなことは些事です。もっと大事な案件があるのです」


 些事って、まあ、貴方達からすればそうかもしれませんがね?

 僕としては、結構重要なことですよ?


「その案件とは?」


 多少イラッとしましたが、相手はエドおじさんを除けばこの国のトップ達。

 そして、親友と将来の義理の姉となる人の母親。

 我慢して先を促します。

 最初、誰が話すか4人が目を合わせ、その場で行われたアイコンタクト。

 いや、あれはアイコンタクトと言うより、顔で会話を成立させていたような・・・

 4人の大人の表情がコロコロと変わる様は、失礼ではありますが、見ていて面白かったです。

 特にウィリアム先王とカルナ宰相が、何で自分が説明しなきゃいけないの!?的な、目を大きく見開いて驚愕していたのには、吹き出しそうになりました。

 そして最終的に、フィルとクラリス王女の母親であるアメリア様が、4人を代表して話すことになったようです。


「すみません、待たせてしまいましたね。その案件とは・・・」

「はい」


 何だろう?

 アメリア様から、とんでもない気迫を感じる。

 この気迫は、ダストレア大樹海から戻ったその日に、お父様とお祖父様から感じたモノに匹敵するのでは?

 その気迫に、それと態々皆から離れてまで話したい内容。

 僕は緊張し、次の言葉待つ。


「レオ、貴方、魔導具なら何でも作れるのですよね?」

「え?ええ、まあ、大抵の物なら・・・」


 魔導具?

 まあ、よほど無茶な物でもなければ、大抵の物なら作れるけど、この気迫、ただ事ではないですよね?

 何だろう?

 どんな魔導具を所望されているのだろうか?


「では、美容に関する魔導具を作ってくれないかしら!?」

「へ?」


 美容?

 え、どういうこと?


「へ?ではありません!美容です、美容!」

「出来るのですか!?出来ないのですか!?どちらです!?」


 いつの間にか、エリザベス様まで加わっていた。

 おうっ!?

 (プレッシャー)が倍になった!?


「え~っと、具体的には、どのような物をお望みでしょうか?一言で美容と言われましても、どのような効果を求められているのかが分からないと、出来るかどうか調べようがないのですが・・・」

「そんなの決まっています!若さと美しさです!」

「それ以外に何があると言うのです!?」


 えぇ~怒られてしまいました・・・・

 いや、まあ、美容の究極目標はそうでしょうけどね?

 でも、


「あの、お二人とも充分若くてお美しいですけど?」


 ウチの2人のお母様もそうだけど、このお2人も充分若くてキレイなんですよ。

 2人共子供を産んでいるし、クラリス王女とフィルの年齢を考えると、お母様とジェシー母様とそれ程歳が離れていないはず。

 何が不満なんだろう?


「あら、ありがとう。ですが、社交辞令はいりません。私達は国王陛下の妻、王妃として、常に美しくなければならないのです」

「その通りです。他国からの使者が謁見に来た際、王妃である私達の見た目が若く美しければ、それは陛下の、ひいては国の誇りとなりましょう。ですがもし、醜いと思われてしまっては、この国の品位も問われてしまいます。ですから、私達は国の為にも毎日美容に気を遣っているのです」

「はあ・・・・」


 な~んか、国の事を持ち出して、自分達の美容を正当化しているような気もしないではないですが、もしそれを指摘した場合、間違いなく僕は、この2人を敵に回してしまうと確信したため、黙っています。

 この国の重鎮であるウィリアム先王とカルナ宰相が、2人に対して全く意見できていないことを鑑みるに、この判断は間違っていないのでしょう。


「それで、どうなのです!?」


 どう、と言われても、僕は美容の事なんて全く分からないから、簡単には答えられないですね。

 けど、身近に詳しい人がいるんですよね。

 しかも2人。

 もりとん、お母様とジェシー母様です。

 この2人から意見を聞き、いくつか試作してみようかな?

 正直、この場で王妃様達から話しを聞いたところで、完全に専門外の事なので、きっと理解できないと思うんですよね。

 それならば、お母様達に色々話しを聞き、魔導具を作り、効果を体験してもらった方がより良い物が作れそうですからね。

 そもそも、鬼気迫る王妃様から話しを聞くよりは、身内から聞く方が気が楽ですしね。

 なので時間を頂き、完成したら献上する、ってことで提案してみましょう。


「試したことが無いので、出来るかどうかが分かりません。なので、時間を頂けないでしょうか?スティード領には僕の工房があるので、そこで色々と試してみようかと思います。もちろん、完成しましたら献上いたしますが、いかがでしょうか?」

「そう、ですね・・・分かりました。無理に急かして、欠陥品を渡されても困りますからね。では、出来上がり次第、連絡をください」

「分かりました」


 そうして僕は、やっと解放されました。

 あれ?

 ウィリアム先王とカルナ宰相は、何で一緒にいたんだろう?

 聞いてみたら、


「何、簡単な話しだ。もしレオナルドが渋った場合、私達の権限で出来る限りの褒賞を提示するように頼まれてな」

「私は、先王陛下に無理矢理連れてこられただけなんだ・・・」

「そう言うな、カルナ。普段はともかく、あの時の2人には絶対に逆らえないだろう?」

「それはそうですが、どうして私なのですか?エドワード陛下で良いじゃないですか?」

「そんなの、万が一これで何か問題が起きた場合、アイツは関知していなかった、と言い逃れできるようにする為であろうが」

「まあ、理解は出来ますが・・・・納得したくありませんね・・・」

「そう言うな。私とお前の仲だろう?」


 簡単に言ってしまえば、お財布係として同席していたってことですかね?

 確かに、王妃様が何か物を欲しがった場合、それは国がお金を出さなければならない。

 なので、国のお金を動かせる人がいないと今の話しをすることが出来なかったから、この2人が一緒にいたってことですね。

 でもそれって、普通は財務大臣的な役職の人がやるのでは?

 あ、僕が魔導具を作れることを知っているのは限られた人だけだから、知っている2人が来たのか。

 けど、万が一って、何を想定していたんでしょう?

 う~ん・・・・ま、いっか?

 ウィリアム先王は、口調こそ普通だけど、表情が、その、見ただけで疲れているのが分かる状態です。

 カルナ宰相共々、諦めた顔をしています。

  

「お二人も、ご苦労様です・・・・」


 僕からは、こんな言葉しか贈れません。

 頑張ってください・・・

誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。

もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。

気が向いたらで構いませんので、評価もお願いいたします。

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