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第118話  王子様、風と一体になる

「あ~楽しかった。1人で走るのも楽しいね!って、レオ?それは何だい?」


 1人で思う存分走り回って来たフィルが戻り、僕の横に置いてある物を見て疑問を投げかけて来た。


「お帰り、フィル。これはね、バイクとバギーだよ」


 そう、僕の横には、2輪のバイクと4輪のバギーがある。

 以前、ダストレア大樹海のノイシュヴァン山脈で、ミコトさんと遊んだ時にたくさん作った魔導具の1つです。


「バイクとバギー?初めて聞くけど、それは何なの?」

「そうだねぇ、以前、エドおじさんの戴冠式に自動車を贈ったよね?簡単に言うと、アレの1人乗りバージョンって言った所かな?操作方法はちょっと違うけどね。次はこれに乗って、走ってみない?」

「え、いいの!?」


 おっと、フィルの目が今まで以上に輝き出した!

 さっきまで走り回っていたせいで、ヘトヘトになりながらもイイ貌していたけど、今はそれ以上に嬉しそうだね。


「もちろん。ただ、その前に乗り方の説明をするよ。車の運転はしたことはある?」

「いや、あれは父上専用で、誰も触らせてもらえないんだ。後ろに乗せてもらったことは何度かあるんだけどね」

「あー・・・・・・なるほどね」


 どうやらあのオープンカーは、エドおじさんが気に入ってしまって、独占しちゃってるみたいだね。

 元々エドおじさんに贈った物だから、独占しようと別に構わないんだけどさ。

 今のフィルの表情を見る限り、フィルも運転してみたかったみたいだ。

 それなら、


「じゃあ、今日はこっちの運転をして、明日は車の運転をしてみようか?」

「うん!お願いするよ!」


 ではまず、バギーとバイクから運転の練習をしようか。

 実際のバイクとバギーとは異なり、僕の作ったこれらにはギアなんて物はありません。

 それと、運転方法は右のハンドルを捻ればアクセル、ブレーキは左のハンドルに付いているのが前輪、右足を踏み込んだ場所にあるのが後輪となっています。

 以上です。

 本物はもっと違うと思ったけど、高校生で死んだ僕が、免許が必要なバイクやバギーの構造なんて知ってるわけないでしょ!?

 最初は自転車と同じで、右ハンドルに前輪、左ハンドルに後輪のブレーキを付けてみたんだけど、アクセルを捻りながら前輪のブレーキを操作するのがやりにくかったので、ミコトさんと相談して今の形にしました。

 ちなみに、ミコトさんは車の免許は持っていたそうですが、バイクの免許は持っていなかったし、それほど興味も無かったそうなので、僕と同じく知識はありませんでした。

 ついでに、ウインカーなんて代物はありません。

 だって必要ないでしょう?

 フィルには最初、僕の後ろに乗ってもらい、その後、バイクとバギーのどちらにするか選んでもらった。

 悩んだ結果、バイクを選択し、いざ練習開始!

 初めての2輪車ではあっても、『転倒防止』を付与してあるため、バランスに関しては問題なし。

 最初はおっかなびっくり運転していたフィルも、30分後にはアクセルをブン回して丘陵地帯を駆け抜けていました。


「僕は今、風となって駆け抜けているんだね!」


 と、運転に慣れ始めてスピードを出せるようになった頃はそう言っていたのだけど、今は、


「イィィヤッホオオウゥゥゥゥゥゥゥッ!」


 何か、大きな声で叫びながら、アクロバティックな運転をしていますね。

 丘陵地帯だけあって起伏が激しいため、スピードを出して運転していると、車体が跳ねることがことがあります。

 最初はそれにビックリしていたフィルも、『転倒防止』の付与により絶対に転ばないと聞くと、次第にジャンプをやり始め、今ではトリックを決めるようになりました。

 各種ステータスも+補正をした結果、こんなことが出来るようになってしまいました。

 いや、教えたのは確かに僕なんですけど・・・・

 そして2時間後


「よし、バイクは極めた!レオ、次はバギーに乗ってもいいかい!?」

「あ、はい、どうぞ・・・」


 今度は王子様、バギーに挑戦する模様です。

 この王子様、ちょっとスピード狂の気がありますね。

 いくら転ばないからと言って、こんな不安定な丘陵地帯でスピード出し過ぎです。

 正確な速度は分かりませんが、恐らく、時速200kmは出していましたよ?

 怖くないのかな?

 ついでに、マシンを完璧に操っていました。

 僕が即興で作ったコース、長さ2km、幅1m、カーブの所だけは3mにしましたが、そこをコースアウトすることなく、猛スピードで走り抜けました。

 これだと短いと怒られてしまい、仕方なく全長5kmのコースも作りました。

 ちなみにフィルは、僕と同い年な為、まだ10歳です。

 そんな10歳児が、地球のプロ顔負けのテクニックでバイクを自由自在に操っている。

 とんでもな子供だな、フィルは。

 お前が言うなって?

 はい、ごもっともです。

 で、バギーに関しては、1時間くらいで飽きてしまったみたいですね。


「う~ん・・・・やっぱりバイクの方が楽しいなぁ・・・ねえ、レオ?このバイク譲ってくれないかな?」


 どうやらバイクが気に入ったみたいですね。

 でも、そんなにバイクが気に入ったなら、


「別に良いけど、良かったら、フィル専用のバイクを作ろうか?」

「本当!?お願いするよ!」


 フィル専用バイクの制作が決定しました。

 その後、日も暮れて来たので『空間転移』で王都の屋敷に戻り、フィル専用バイクをどのような仕様にしたいかの希望を聞く。

 デザインや色、どんな機能が欲しいか、などなど。

 希望を聞き終え、作成は明日からと決まりました。

 明日の予定は、朝から昨日の丘陵地帯に行き、まずは車の運転講習。

 その後、フィルは自由に運転を楽しみ、僕はそこでフィル専用バイクと、王家に献上する新作の自動車を作成する。

 自動車は王都に来る時にクラリス王女殿下と約束した、内部の空間を拡張したアレです。

 さすがに調度品とかは王家で用意してもらうとして、とにかく見た目と内装を豪華にしてみます。

 それと、王族が使うと言うことで、それなりの数の同行者もいるだろうから、内部はちょっとした屋敷程度の広さにしましょうか。

 全体の1/2が、王族が使う各部屋。

 個室が7部屋に、広間を1部屋、食堂も付けましょう。

 残りの1/2が、調理場、応接室、同行者と言うか、使用人の部屋、それと必要ないかもしれないけど、来賓用の部屋も用意。

 ちょっと気合を入れすぎたため、この王家専用車の作成には、3日もかかってしまいました。

 あ、フィルの専用機は2時間で完成しましたよ。

 こちらも色々やってみました!

 まず、水陸両用です。

 どんな悪路でも走破出来るついでに、水上も移動できるようにしました。

 もちろん、陸上と同じスピードで。

 それと、厄災級の魔物に襲われても大丈夫なように、このバイクに乗っている間は常に超強力な結界に囲まれるようにしてあります。

 それと、本来ならガソリンのタンクがある場所には、『空間収納』を付与したので、何でも持ち運びすることが出来ます。

 他にも各種付与を施してあるので、そうですねぇ、これに乗ればダストレア大樹海のかなり奥の方まで行けるんじゃないですか?

 ただこの結界は、受ける攻撃の強さに比例してMP消費も多くなるので、『MP回復』の付与がされていても、厄災級の魔物の強力な攻撃を何度も受けると、MP回復が追い付かなくなり、結界が維持できなくなってしまうので、絶対に安全だとは言い切れないですけどね。

 あ、この3日間ですが、フィルを色んな所に連れ回してみました。

 身分を隠し、今まで僕が言ったことがある場所限定だけど、他の街に行ってみたり、山の奥へ行ってバイクに乗って川を逆流してみたり、ダストレア大樹海を2人で爆走してみたりしました。

 フィルのバイクを作った後、一緒に遊んでいた為、車は夜に作ることになってしまいましたが、まあ、大した問題ではないですね。

 そうして僕達が王都に訪れてから、あっという間に1週間が過ぎ、明日はとうとうスティード領に帰る日になりました。

 この一週間の内訳は、初日は王都に到着後に翌日の謁見の準備。

 2日目は謁見と言うか、ダストレア大樹海の調査報告とガロウデットの処分(まだ生きている)と、僕が2年後に領主になる事が決定。

 それと、王家とカルナ宰相にミノタウロスゼファロスを丸々1頭譲り、帰宅する時には王子であるフィルが、スティード邸へ泊まりに来ることが決定。

 3日目は中級街でお買い物。

 詳細は・・・・・思い出したくないので割愛します。

 4日目は中級街と上級街でお買い物、以下同文。

 あ、それと、襲撃を企てていた連中を未然に再起不能にして、僕の腹心候補のダリムさんをゲット。

 5日目から7日目はフィルと一緒に遊び倒した。

 フィルをスピード狂に目覚めさせてしまった気もしないではないけど、深く考えるのは止めよう。

 それと、フィル専用の水陸両用バイクと、王家に献上する特殊車両を作成しました。

 で、7日目の夕暮れ前、つまり今はフィルを王城に送り、そのままさっき完成したばかりの特殊車両を献上する為に馬車に乗っています。


「あっという間の3日間だったね、レオ。友達とこんなに長く遊んだのは初めてだから、楽しかったよ」

「それは僕もだよ。本当に楽しかったね」


 2人で楽しんだ3日間のことを振り返る。

 あ、最初の2日間のことは、僕達の中では何も無かったことになっています。

 僕は賊を潰したけど、フィルはほとんど何もしていなかったし、楽しい思い出として語り合う場面が無かったから、一切話題にも上がりません。

 もし話題がその事になってしまった場合、馬車の空気が重く沈み込むことが分かりきっているしね。

 そうして楽しい思い出話をしていると、王城に到着。

 城門を潜ると、そこには本日のお勤めが終わったお父様だけではなく、国王であるエドおじさんと、その護衛の近衛騎士団長のディアレスさんと近衛騎士が20人いた。

 お父様はそのまま僕と一緒に馬車に乗って帰る為で、エドおじさんは息子であるフィルのお出迎えかな。

 エドおじさんと簡単な挨拶をし、話は例の車両へ。

 すでにお父様から、今日納車する旨は伝えてもらってあるので、後は渡すだけ。

 この場で取り出そうとしたら、さすがにここだと人が多いからと、近衛騎士団の訓練場に移動することになった。

 訓練場に移動している間に、カルナ宰相や他の王家の皆さんも呼ばれたようで、すぐに全員が近衛騎士の訓練場に集まった。

 あ、クラリス王女と一緒にメルト兄様もいる。


「さあ、レオ。早く新型の車を見せてくれないか?」

「はい。こちらです」


 早く車が見たくてソワソワしているエドおじさんの言葉に苦笑しながら、『空間収納』機能の付いたブレスレットから例の特殊車両を取り出す。

 見た目はマイクロバスで、入り口をかなり大きめに作ってあるので、大人4人くらいが横に並んで乗り込むことが出来ます。

 外から内部を見ることは出来ないけど、今まで作った馬車と同様に、内部からは外を見ることは可能。

 もちろん内部は空間拡張してあるので無駄に広く、内装も豪華に仕上げてあります。

 ただ、調度品は何も置いてないので、そこは王家の皆さんのセンスでお願いします。

 王家の皆さんの反応は、予想通り唖然としていましたね。

 空間拡張されている為、外見とは桁違いの広さになっていますす。

 って、初見ならともかく、空間拡張した馬車に乗ったことがあるフィルとクラリス王女がなぜ驚いてるの?

 聞いてみたら、


「いや、だって、あの馬車よりも広いから・・・・」

「まあ、ざっと10倍の広さはあるからね」

「えっと、内装が凄く豪華なんですけど?」

「それはそうですよ。だってこれは王族用の車ですからね。頑張りました!」

「えっと、その・・・・」

「どうしました、クラリス様?」

「言い難いのだけど、この内装、城の装飾より素晴らしい出来なのだけど・・・」

「お褒めにあずかり光栄です。気合入れてやらせて頂きました!」

「クラリス姉様。レオに関しては悩むだけ無駄ですから、あるがままを受け入れましょう。


 そんなに凄かったのかな、この装飾?

 芸術とか良く分からないけど、王家に献上する物だからと、スキルをフル活用してみたんだけど、やりすぎてしまったみたいですね。

 混乱しているクラリス王女に、弟であり、今さっきまで僕と一緒にいたフィルが諭している。

 いや、あれは諦めることを促しているのかな?

 これは深く考えないで、褒められているんだと受け取りましょう。

 そうしましょう。

誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。

もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。

気が向いたらで構いませんので、評価もお願いいたします。

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