第116話 レオナルド対襲撃者
さて、僕らを襲おうとしていたロクデナシ達の話しをサクッとしちゃいますか。
敵は、金で雇われた荒事が得意なのが約150名と、その黒幕が10名。
一瞬で150名を気絶させ、残った黒幕は、僕の家族に手を出そうとしたことを後悔させながら、遠い世界へ行ってもらいました。
以上。
もっと詳しく説明しろ?
失礼しました。
では、詳細はこちらです。
あの後、あの連中の中では唯一のまともな人、ダリムさんが味方に付き、約150対2で戦う事になりました。
なったんですが、さすがにこの人数を相手にしては、ダリムさんは確実に負けてしまい、最悪、命を落としてしまう為、僕が一瞬で無力化しました。
やり方は簡単。
相手の顔の前に移動して、脳震盪が起こるように顎に1発入れただけです。
それを全員分、つまり150回繰り返しました。
おまけとして、強烈な殺気も放っておきました。
なんでそんな面倒な事をしたのか?
それは、僕と言うか、僕の家族を襲撃しようとしたことを後悔させてやる為です。
ただ全員を無力化するだけなら、適当に衝撃波でも発生させれば、一瞬で全員気絶したでしょう。
もっと言えば殺す方が簡単でしたけど、所詮は金で雇われただけ、ということで、情状酌量の余地はあると判断し、それはやめました。
で、なんでそんな面倒なやり方をしたのか?
想像してみてください。
自分が意識を失う直前に覚えているのは、僅か10歳の子供の顔と、死しか予感させない強烈な殺気。
あ、もちろん、全員に僕の顔が見えるように、『空間支配』で足場を宙に作り、お互いの顔の高さを合わせましたよ。
これできっと、僕の顔を見るたびに恐怖が蘇ってくること間違いなし!
もう2度と、僕の前には姿を現さないでしょう。
と思ったのですが、考えてみれば、僕が誰なのか名乗っていませんでした。
まあ、誰かを襲おうとすれば、こういう目に遭う事もある、とだけでも理解してくれれば良しとしましょう。
もしかしたらですが、子供の顔を見るだけで恐怖が蘇る可能性もありますが、そんなの知ったこっちゃないですね。
さて、チンピラ150人の話しはこれくらいにして、黒幕たちのその後について話しておきましょうか。
話は150人を無力化するちょっと前からですね。
「クソッ!なんであのガキがここにいるんだ!?オイ、お前等!すぐにこの場を離れるぞ!」
「「「了解!」」」
仮面を被ったリーダー格の男の言葉に、残りの男達が従う。
その総数は10名。
今、僕と相対している150人とは違い、コイツ等は僕が誰で、この場にいる全員でかかっても勝てない事を知っている。
だから、まだ正体がバレていない今の内に、雇った150人を壁にしてこの場から逃げることに決めたようですね。
ただね、残念ながら、お前達の事はとっくにバレているんだよね。
昨日、僕達の監視を始めた時から。
その事を知らない黒幕達、僕達を監視していた奴らの一部は、見事な判断力を発揮し、逃げる為にすぐに出口へと向かった。
が、
「どこに行くつもりですか?」
「「「「!?」」」」
その進行方向に僕が現れたため、全員の動きが止まってしまいましたね。
そりゃあ、つい今さっきまで150人の男達と相対していた僕が、その男達を越えて目の前に現れたら、驚くのも無理はないですよね?
「な、なぜ、そこに・・・」
どささささささささささささささっ!
仮面の男の声は、その直後に大量の男が地面に倒れる音に阻まれ、続けることが出来なかった。
その音に、恐る恐る後ろを振り返ると、そこには今さっきまで立っていたはずの150人の男が、1人の例外もなく地面に崩れ落ちていた。
「ひっ!?」
「まさか、今の一瞬で・・・?」
「ここまでの化物だとは・・・」
化物って、まあ、多少の自覚はありますけど・・・
こう正面から言われると、さすがの僕でもちょっと傷つきますよ?
それはともかく、
「どうして貴方が生きているんですか?ガロウデット男爵?いえ、爵位は剥奪されているので、ガロウデット元男爵と呼びましょうか?」
「っ!?」
そう、この連中のリーダー格である仮面の男は、昨日の内にザカート侯爵によって処刑されたはずの、元ダストレア大樹海調査団副団長のガロウデットだった。
昨夜にお父様から、ガロウデットの処刑は予定通り執行され、報告の為にその首が王城に運ばれた、と聞いていたのですけどね。
ザカート侯爵にとっても有用なガロウデットは、死を偽装してこういった裏仕事に回っていた、と言う事ですね。
で、処刑されたのは影武者。
見た目はソックリ、とまではいかなくとも、おおよそが似ていさえいれば、血が抜けて変形した、とか、処刑の際に暴れたため、傷が付いた、とか適当なことを言って誤魔化したんでしょう。
ザカート侯爵なら、その程度の事はやりそうですからね。
他の監視しているだけの連中に比べ、この過激ともいえる行動を選択したのも、僕への恨みからでしょうね。
完全にただの逆恨みなんですが。
「お前は誰と勘違いしているのだ?コイツはガロウデットではないぞ?」
黙ってしまったガロウデットに代わり、他の奴が否定して来た。
まあ、ここで声を出してしまっては、バレてしまうから話せないのは分かるんですが、今更ですよね?
さっきまで大声で話していたし、つい今しがたも声を聞きましたよ。
そもそも『支配圏』を展開している僕には、コイツがガロウデット、と呼ばれていたことも筒抜けなんですよね。
態々問答するのがめんどくさいなぁ・・・
もういいや。
「そうですか。まあ、それならそれで、手間が省けるってことで僕は良いんですけどね」
「どういうことだ?」
「ん?どうもこうも・・・・」
ここで、僕は一気に殺気を放出する。
それだけで、そこに転がっているゴロツキと違い、それなりに訓練を受けているであろうコイツ等が、恐怖で動けなくなる。
あ、全員失禁している。
汚いなぁ・・・・
「僕の、いや、スティード伯爵家にケンカを売ったのだから、生きて帰れるとは思っていないよね?もしお前がガロウデット男爵だったのなら、生きたまま王城に連行してやるつもりだったけど、違うと言うのなら、この場で全員消しても問題ないでしょう?」
「ひ・・・あ・・・・」
ガロウデットが何か言おうとしているけど、一昨日の謁見の時と同様、言葉が発せられないでいるので、何が言いたいか分からないし、分かりたいとも思わない。
他の連中も同じく、口をパクパクさせているだけですね。
コイツ等にはこれ以上の興味が無いし、仮に尋問したとしても、コイツ等の証言はザカートのブタに握りつぶされてしまうでしょう。
だから、もういいよね?
「僕の家族に手を出そうとしたんですから、当然、覚悟は出来ているんですよね?」
手の平を前方に掲げ、火魔法を発動させる。
ボッ
小さな音と共に監視者9人の体が一瞬にして炎に包まれ、そして、一瞬にして炎と共に消えた。
その場に残った物は、何も無い。
着ていた服の破片も、燃えカスも、消し炭も、焦げ跡も、何も無い。
一瞬にして、どこかに転移したのかと思わせるほど、何も残っていない。
残っているのは、僕の気まぐれで残った、最後の1人だけ。
そいつは周りを見て、この一瞬で自分以外の9人が跡形もなく消されたことを知り、絶望した。
次は自分の番だ、と。
「さて、最後は貴方ですね。別に、貴方だけを生かそうと思っているわけでは無いですよ?僕の家族に危害を加えようとしたことをより後悔させるために、最後に1人だけ残しただけです。では、10秒だけ差し上げるので、残りの人生を楽しんでください。10・・・9・・・」
「あ・・・・あ・・・・あ・・・・」
最後の1人は、相変わらず口をパクパクさせているだけで、何も出来ない。
僕の殺気に当てられて、動くことが出来ないだ。
普通ならとっくに気絶していそうなほどの殺気を浴びせているのですが、『空間支配』の便利機能を使い、絶対に気絶しないようにしています。
あ、10秒経ちましたね。
「1・・・0。では、さようなら」
そして、最後の1人の意識は闇に沈んだ。
「さて、こんなところかな?」
僕は今、目の前で気絶しているガロウデットを含めた10人の監視員を見下ろしています。
え?跡形もなく消したんじゃないのかって?
いやいや、こんな小悪党にそこまでしませんよ。
もしこの襲撃計画が実行されていたら話は別ですけど、未遂でしたからね。
未然に僕が防いだだけで、僕が動かなければ確実に実行されてはいたのですが、それは無視して結果だけ見ましょう。
種明かしをしますと、まず最初に全員を個別に『空間支配』の結界の中に閉じ込めます。
次に、全体を火魔法を使って炎で覆い、同時に全員に他の仲間が見えなくなるように、ステルス迷彩を各結界にかけます。
その結果、炎が消えたら、自分以外の仲間があの一瞬で全員消され、残ったのが自分だけ、と、全員が錯覚した訳です。
あ、それぞれに張った結界は、炎からの防御はもちろん、僕以外の声が聞こえないようにしてあります。
これにより、この10人にはチンピラ150人とは比べ物にならないレベルの、強烈なトラウマを植え付けることに成功しました!
もう僕の顔を見ただけで、失神するんじゃないですか?
ついでにダメ押しもしておこうかな?
結界の機能をほぼすべて解除し、メッセージを残すことにしました。
内容は、
「次、スティード家に関わった場合、一切の警告抜きに消します。どう解釈しようと自由ですが、悪意があろうが無かろうがそっちの言い分など関係なく消すので、よく考えて行動するように」
こんな感じかな?
もちろん、次は本気で消しますよ。
これ以上見逃していやる義理は無いですからね。
ガロウデットは2回目じゃないのかって?
僕に対してはそうですが、僕の家族に対しては初犯なので、大目に見てあげましょう。
このメッセージは読み終わると自動で消えますが、おまけとして、メッセージが消えると同時に僕の殺気が一瞬だけ放出されるようにしました。
これだけやれば、少なくともこの10人はスティード家に関わろうとしないでしょう。
関わるとはどこまでの範囲なのか?
それは人によって解釈が異なると思いますが、だからこそ、コイツ等はきっと、スティード家に近付こうとすらしなくなのでは、と考えています。
関わる、の解釈の幅が広すぎて、どこまでが許容範囲か分からないですからね。
調べようにも、それは自分の命を使って出ないと調べられないので、好き好んで調べようとはしないでしょう。
さて、それじゃあやることも終わったので、ダリムさんを連れて皆の所に戻りましょうか。
そうそう、このダリムさん。
150人の仲間を裏切って、その150人と相対するなんてなかなか度胸のある人だから、スティード騎士団に推薦しようと思います。
スティード騎士団は強さを求められていますが、それ以上に、どんな強大な敵と相対しても引かない勇気を持っていること、が入団の条件です。
どんなに強くても、勝てない戦いはしない、とか言っちゃってる人は要りません。
だって、スティード騎士団の役目って、魔物からアステリア王国を守る事なんですから。
150名の敵を前にして、僕の事を知らないまま150名の仲間を裏切り、僕に加勢して戦おうとしたことをお祖父様に伝えたら、その日の夜にはスティード騎士団入団が決定しました。
もちろん、ダリムさんは騙されていただけだったことも伝えてあります。
ありますが、正直な話し、敵から退かない勇気さえあれば、多少性格に難があろうと気にしないのがスティード騎士団です。
単純に、過酷な訓練や魔物との戦闘で、そんなのは勝手に矯正されてしまうのですから。
そんなことが可能なのは、アステリア最強の脳筋であるお祖父様とお父様がいるからなんですけどね?
ダリムさんと一緒に皆と合流した後、その後は何事もなく平穏に時間が過ぎました。
予定通り上級街へ移動し、女性たちの買い物は続きましたが、流石は上級街ですね。
貴族の服に着替えたにも関わらず、中級街であったようなトラブルは一切起こりませんでしたよ。
回った店の店員は、僕達がスティード家だということは馬車に描かれている家紋で分かっていて、お近付きになろうと精一杯のサービスをしてくれました。
強いて不都合があったことを上げるなら、フィルの正体に気付いている人が何人もいて、店内の空気が張りつめていたことぐらいかな?
王族に粗相があっては、どんな目に遭うか分かりませんからね。
まあ、この国王族は大らかなので、普通に接していれば問題ないんですけどね。
買い物も終わり、夕方には貴族街のスティード邸に帰ってきました。
その後、王城から戻って来たお父様も含め、全員で夕食。
さらにその後、お父様からダリムさんの入団許可が下りました。
あ、ダリムさんは今、スティード騎士団の護衛が寝泊まりしている部屋に行き、色々と教わっているみたいです。
主に、戦闘に関することを。
もうちょっと詳しく説明すると、模擬戦をして実力を計っているみたいですね。
結果は、ダリムさんのボロ負けでしたが・・・・・
今後に期待ですね。
スティード家の女性による王都散策が本日をもって終了となったため、明日は何をしようかフィルと部屋で相談していると、お父様に呼ばれました。
何だろう?
お父様の執務室に入ると、挨拶もそこそこに、
「レオ、単刀直入に聞くが、あのダリムをスティード騎士団に入れた目的は何だ?」
と、いきなり質問が来ましたよ。
むう、さすがお父様。
僕に目的があったことは見抜かれているようです。
別に隠すことでもないので、正直に話しちゃいましょうか。
「2年後、僕は領主になるじゃないですか。なので、今の内から僕と一緒に来てくれそうな人を集め、育てて行こうかな、と。理想を言ってしまえば、将来的には僕の腹心になってもらいたいですからね」
「その1人目が、あのダリムなのだな?」
「ええ、そうです」
その後、僕の考えを説明し、これからも気になった人材がいたらドンドン連れて来ても良い、と許可を貰えました。
ついでに、ダリムさんには隊長クラスの訓練が課せらることが、本人の預かり知れぬところで決定されました。
しかも期間が2年しかない為、相当なスパルタになる予定だそうです。
ダリムさん、頑張れ!
お父様には聞かれはしなかったけど、実はもう1人、目を付けている人物がいます。
その人物は現在、スティード領にて毎日勉強をしています。
スティード領に帰ったら直接交渉をしようと思っていますが、その人物には将来の夢がある為、無理強いは出来ません。
まずは僕の身分を隠したまま話しをして、興味を持ってくれたのならスカウトしてみようと思っています。
他の人をスカウトする時も、基本的には僕の身分は隠していく予定です。
だって、僕の地位を聞いて、甘い汁を吸おうと企んで付いて来られても邪魔ですからね。
なので、余り具体的な話しはしないで、こんなことをやってみないか?的な誘いをしてみようと思っています。
こんなやり方で、まともな人が付いて来てくれるかどうかは分かりませんが・・・
とは言っても、僕はもうしばらく王都に滞在するので、これはもうしばらく先の話しですけどね。
誤字、脱字など、お気付きの点が御座いましたらご指摘をお願いいたします。
もし、この作品を読んで面白い、と思って頂けたら幸いです。
気が向いたらで構いませんので、評価もお願いいたします。




